設立の手続き

ドローンの機体登録は法人成りで届出だけ。飛行許可は会社で取り直す

結論

ドローンの機体登録は、機体を会社へ移しても新規登録のやり直しにはならず、変更後の所有者(会社)が15日以内に登録事項の変更を届け出ます(航空法132条の8)。手数料はかかりません。一方、飛行の許可・承認は申請者ごとに出るもので、航空局の審査要領の「変更申請」に申請者の変更は含まれていません。会社として特定飛行をするなら会社名義で申請し直します。

  • 機体登録の有効期間は3年(施行規則236条の8)。新規・更新の手数料はマイナンバーカードによる電子申請で1機900円、書面で2,400円。所有者変更の届出には手数料の定めがない
  • 飛行許可・承認の期間は原則3か月以内、継続的な飛行なら1年が限度。申請は飛行開始予定日の10開庁日前まで
  • 東京23区・経費200万円・空撮(写真業・第1種5%)の試算では、損益分岐は2年目以降1,266万円、初年度1,364万円

ドローンの業務で個人事業主が持っている「許認可」は、実際には3つに分かれます。機体ごとの登録、飛行ごと・期間ごとの許可・承認、操縦する人の技能証明です。法人成りでの扱いは、この3つでばらばらです。

この記事は、空撮や点検・測量の補助をドローンで請け負っている個人事業主を想定しています。航空法と国土交通省航空局の審査要領で、それぞれ何をすればよいかを確認し、最後に法人化の損益分岐を計算エンジンで出します。

3つの手続きは、法人成りでの扱いが違う

先に全体を表にします。

区分誰に対するものか法人成りでの扱い
機体登録(132条の4)機体(所有者・使用者を登録)所有者・使用者の変更を15日以内に届け出る。新規登録はやり直さない
飛行許可・承認(132条の85・132条の86)申請者(飛行させようとする者)会社として飛ばすなら会社名義で申請する
技能証明(132条の42)操縦する人社長個人の資格のまま。移す手続きはない

無線局の免許を使っている場合は、もう1つ別の法律の手続きが加わります。FPV(映像伝送)や産業用の電波を使う機体は電波法の免許局で、こちらは事業の全部を譲渡したときに承継の許可を受ける仕組みです。詳しくは無線局免許の法人成りで整理しました。

機体登録は「所有者が変わった」の届出で済む

100グラム以上の無人航空機は、無人航空機登録原簿に登録しなければ飛ばせません(132条の2)。登録は所有者の申請で行い、原簿には所有者と使用者の氏名・名称と住所が載ります(132条の4第1項5号・7号)。

法人成りで機体を会社へ売る、または現物出資すると、所有者が個人から会社に変わります。航空法はこれを新しい登録ではなく、登録事項の変更として扱います。

登録無人航空機の所有者(所有者の変更があつたときは、変更後の所有者)は、(中略)変更があつたときは、その事由があつた日から十五日以内に、その変更に係る事項を国土交通大臣に届け出なければならない。(132条の8第1項)

届け出るのは変更後の所有者、つまり会社です。会社の登記事項証明書など、法人であることを示す書類を添えます(施行規則236条の10第2項が準用する236条の3第2項3号)。届出をしない、または虚偽の届出をすると、30万円以下の過料の対象です(161条4号)。

手数料がかかるのは新規と更新だけ

航空法関係手数料令8条が手数料を定めているのは、新規登録と登録の更新だけです。所有者変更の届出には手数料の定めがありません。

手続き手数料(1機あたり)
新規登録・更新(マイナンバーカード等で本人確認した電子申請)900円(同時に申請する2機目以降は890円)
新規登録・更新(その他の電子申請)1,450円(同1,050円)
新規登録・更新(書面)2,400円(同2,000円)
所有者・使用者の変更の届出定めなし

登録の有効期間は3年です(施行規則236条の8)。所有者を会社に変えても、有効期間の満了日が延びるわけではありません。会社で新しく買った機体は、会社名義で新規登録します。

機体を売らない選択もある

原簿には所有者と使用者を別々に載せられます。機体は社長個人の持ち物のまま、会社が使用者になる形も、航空法上は取れます。この場合も使用者の変更として15日以内の届出が要ります。

ただし税務の扱いは別の論点です。会社が社長から機体を借りるなら賃借料の取り決めが、買い取るなら時価での譲渡が問題になります。資産の移し方は法人成りの資産引継ぎにまとめています。

飛行許可・承認は、会社名義で申請し直す

人口集中地区の上空、夜間、目視外、人や物件から30メートル未満の飛行などは「特定飛行」で、国土交通大臣の許可や承認が要ります(132条の85・132条の86)。業務で飛ばす個人事業主の多くは、1年単位の包括申請でこれを取っているはずです。

許可・承認は申請者に対して出ます。航空局の審査要領は、申請書の1行目に「無人航空機を飛行させようとする者」の氏名・住所を書かせ、申請書の様式には「法人の場合は代表者の氏名」の欄があります。会社も申請者になれるということです。

「変更申請」に申請者の変更は入っていない

審査要領は、許可の取得後に内容を一部変える「変更申請」を認めています。ただし対象は次の4つに限られています。

  • 無人航空機の登録記号
  • 機体認証書番号、または機体の機能・性能
  • 飛行させる者の技能証明書番号、または飛行経歴・知識・能力
  • 安全を確保するための体制

**申請者そのものが個人から会社に替わる場合は、この4つに入っていません。**審査要領は「申請内容に変更が生じた場合には、改めて申請を行わせる」としています(3-4)。会社として受注した業務で特定飛行をするなら、会社名義で申請するのが筋です。

許可期間の切れ目を、設立日に合わせる

許可・承認の期間は原則3か月以内で、変更なく継続して飛ばすことが明らかなら1年が限度です(審査要領3-3)。申請は飛行開始予定日の10開庁日前までに出します。

個人の許可がまだ残っている時期に会社を設立するなら、次の順番が空白を作りません。

  1. 会社を設立し、機体の所有者(または使用者)変更を15日以内に届け出る
  2. 届出が原簿に反映された登録記号で、会社名義の許可・承認を申請する(10開庁日前まで)
  3. 会社の許可書が出るまでの特定飛行は、個人で受けた契約・個人の許可の範囲で行う
  4. 会社の許可書が出てから、会社で受注した特定飛行を始める

審査要領は第三者賠償責任保険の加入状況も申請書に書かせます。個人名義の保険のままだと、会社の業務中の事故が補償の対象になるかが問題になるので、保険の契約者も会社に切り替えておく必要があります。

技能証明は社長個人の資格のまま

一等・二等無人航空機操縦士の技能証明は、操縦する人に対して与えられる国家資格です(132条の42)。会社の許認可ではないので、法人成りで名義を移す手続きはありません。社長が会社の業務として飛ばす場合も、そのまま使えます。

会社で許可・承認を申請するときは、「飛行させる者」として社長の技能証明書番号や飛行経歴を記載します。将来、従業員や外注の操縦者を加えるときは、その人の分を変更申請で足します。

空撮は個人事業税の写真業。法人化で消える税と増える保険料

空撮を中心とする事業は、地方税法72条の2第8項の写真業(第1種事業・税率5%)に当たる前提で試算しました。点検や測量の補助を請け負う形なら請負業(同じく第1種・5%)です。どちらも事業主控除290万円を超えた所得に課税され、法人化すると個人事業税はかからなくなります。代わりに役員報酬に社会保険料がかかります。

機体の償却、保険料、交通費、ソフトウェアなどの経費を年200万円と置き、事業所得ごとに個人のままと法人化の差を計算しました。

事業所得(売上−経費)最適な役員報酬2年目以降初年度(設立費用込み)
600万円月42万円−37.6万円−47.6万円
800万円月54万円−24.1万円−34.1万円
1,000万円月54万円−14.7万円−24.7万円
1,200万円月54万円−6.6万円−16.6万円
1,500万円月54万円+23.9万円+13.9万円
2,000万円月90万円+67.3万円+57.3万円

※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 200 --business type1 --age under40 --note '写真業(第1種・5%)' で再生成)で算出。経費200万円、東京都・東京23区、単身・40歳未満、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は写真業(第1種・5%)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算

損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)は、2年目以降が1,266万円、初年度が1,364万円です。機体登録の届出に手数料はかからず、飛行許可・承認の申請にも手数料の定めはないので、ドローン固有の手続き費用は分岐点をほとんど動かしません。動かすのは、所得の水準と経費の大きさです。

ドローン業務は機体の買い替えで経費が年ごとに大きく振れます。分岐点の近くにいる場合は、1年の数字ではなく複数年の平均で見るほうが判断がぶれません。自分の売上と経費で判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法に、設立そのものの手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。撮影業の源泉徴収の変わり方はカメラマンの法人化で扱いました。

まとめ

  • ドローンの許認可は、機体登録・飛行許可承認・技能証明の3つで、法人成りでの扱いがそれぞれ違う
  • 機体登録は新規のやり直しではなく、変更後の所有者(会社)が15日以内に届け出る。手数料の定めはない
  • 飛行許可・承認の「変更申請」に申請者の変更は含まれない。会社で特定飛行をするなら会社名義で申請する
  • 技能証明は社長個人の資格のまま使える。無線局の免許は電波法の承継手続きが別に要る
  • 東京23区・経費200万円の試算で、損益分岐は2年目以降1,266万円、初年度1,364万円

よくある質問

法人成りでドローンの登録記号は変わりますか。

航空法は、所有者が変わったときを新規登録ではなく登録事項の変更の届出(132条の8)として扱っています。届出は変更後の所有者が15日以内に行い、怠ると30万円以下の過料の対象です(161条4号)。

社長個人が持っている一等・二等無人航空機操縦士の技能証明は、会社へ移す手続きが要りますか。

技能証明は操縦する人に対して与えられる資格で、会社の許認可ではありません。社長が会社の業務として飛ばしても、資格そのものの名義を変える手続きはありません。会社で飛行許可・承認を申請するときに、飛行させる者として技能証明書番号を記載します。

個人の機体を会社に売らず、社長個人の持ち物のまま会社の仕事に使ってもよいですか。

航空法上は所有者と使用者を別に登録でき(132条の4第1項5号・7号)、使用者が変わったときも15日以内の届出が要ります。税務上は、会社が機体を借りるなら賃借料の取り決め、買い取るなら時価での譲渡が論点になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。