設立の手続き
測量業者の登録は法人成りで引き継げない。測量士本人なら1万5,500円、会社は9万円
結論
測量法には測量業者登録の承継規定がなく、個人の登録は廃業の届出で消除されます(55条の9・55条の10)。会社は新規に国土交通大臣の登録を受け、登録免許税9万円を納めます。測量士本人の個人登録なら登録手数料1万5,500円で済んでいたため、法人成りで登録の費用は上がります。東京23区・経費400万円の試算では損益分岐は2年目以降1,243万円、初年度1,430万円です。
- 登録免許税は1件9万円だが、測量士として登録された個人が受ける登録は除かれ、登録手数料1万5,500円(電子申請1万5,100円)になる。会社にこの扱いはない
- 営業所ごとに測量士1人以上が必要。ただし役員が測量士で、その営業所で主に業務を行うなら置かなくてよい(55条の13)
- 登録の消除前に結んだ請負契約の測量は、消除後も続けられる(55条の11)。注文者への通知が要り、注文者は30日以内なら解除できる
このテーマの全体像 会社設立の手続き(自分でやる手順と届出)
測量業者の登録は、個人の名前で受けた登録が会社へ移らない型の許認可です。この業種で固有なのは、個人の測量士が自分で受ける登録は登録免許税がかからず、会社になると9万円かかるという費用の差と、登録が消除された後も、それまでに結んだ請負契約の測量は続けられるという切替えの規定です。前者で取り直しの費用が決まり、後者で切替えの段取りが決まります。
登録が要るのは、測量を「請け負う」営業
測量法10条の2は、測量業を「基本測量、公共測量又は基本測量及び公共測量以外の測量を請け負う営業」と定めています。55条1項は、測量業を営もうとする者に測量業者としての登録を求め、55条の14は登録のない者が測量業を営むことを禁じています。
対象は、国土地理院の基本測量、国や自治体が費用を負担する公共測量、それらの測量成果を使って行う測量です(4条〜6条)。建物に関する測量など、高い精度を要しない局地的な測量で政令に定めるものは5条・6条の定義から外れます。
59条は、委託など名義を問わず、報酬を得て測量の完成を目的とする契約を請負契約とみなし、その営業を測量業とみなしています。業務委託契約の形で受けていても、測量の完成を約束して報酬を得るなら登録の対象になります。
無登録で測量業を営むと1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(61条の2第1号)。法人の代表者や従業者が会社の業務でこれをすると、会社にも罰金が科されます(65条)。
承継の規定はなく、廃業の届出で登録は消除される
測量法には、事業譲渡・相続・合併のいずれについても登録の地位を引き継がせる条文がありません。55条の9第1項は、個人の測量業者が死亡したとき、法人が合併や破産で解散したとき、測量業を廃止したときに、30日以内の届出を求めるだけです。届出があると、国土交通大臣は登録簿から登録を消除します(55条の10第1項1号)。
個人から会社へ事業を移すのは、55条の9第1項5号の「測量業を廃止した場合」に当たります。個人の登録は消除され、会社は55条1項の登録を新規に受けることになります。55条の7の変更登録は、商号・営業所・役員などが変わったときの手続きで、登録を受けた者そのものが入れ替わる場面には使えません。
廃業の届出を怠ると10万円以下の過料です(66条1号)。また、届出がないまま廃業の事実が判明すると、登録は取り消されます(57条1項2号)。
消除前の請負契約は、消除後も続けられる
55条の11は、登録が消除された後でも、消除される前に締結された請負契約に係る測量は引き続き実施できると定めています。法人成りの切替えでいえば、個人の名義で受けた案件を、個人の廃業届を出した後に個人として最後まで仕上げることができます。
ただし条件が2つあります。
- 消除の後、遅滞なく注文者にその旨を通知する(怠ると30万円以下の罰金。63条の2第8号)
- 注文者は、通知を受けた日(または消除を知った日)から30日以内に限り、請負契約を解除できる
公共測量の案件は工期が年度をまたぐことがあります。継続中の案件がある時期に個人の廃業届を出すと、発注者ごとに通知が要り、解除の余地も生まれることは押さえておくべき点です。継続案件が少ない時期に切り替えるほうが、通知の手間も解除のリスクも小さくなります。
登録の費用:測量士本人の個人登録は9万円がかからない
登録免許税法別表第一 第152号(一)は、測量業者の登録に1件9万円の登録免許税を課しています。ただし括弧書きで、更新の登録と、測量法49条1項により登録された測量士が受ける登録を除いています。
除かれた側は、測量法55条の4第2項により登録手数料を納めます。その額は測量法施行令8条で1万5,500円、電子申請なら1万5,100円です。
| 登録を受ける者 | 新規登録の費用 | 根拠 |
|---|---|---|
| 測量士として登録された個人 | 登録手数料 1万5,500円(電子1万5,100円) | 測量法55条の4第2項・施行令8条 |
| 測量士でない個人 | 登録免許税 9万円 | 登録免許税法別表第一 第152号(一) |
| 会社(合同会社・株式会社) | 登録免許税 9万円 | 同上 |
| 更新(5年ごと・誰でも) | 登録手数料 1万5,500円(電子1万5,100円) | 測量法55条2項・55条の4第2項・施行令8条 |
測量士の登録(49条)は人に対する資格の登録で、会社が受けることはできません。社長が測量士でも、登録を受けるのは会社なので、法人成りでは軽い扱いが外れて9万円になります。個人で測量士として開業した人ほど、この差に気づきにくい構造です。
会社で登録を受けるときに変わる点
営業所ごとの測量士は、社長が兼ねられる
55条の13第1項は、測量業者に営業所ごとに測量士を1人以上置くことを求めています。同条第2項は、法人の役員のうちいずれかが測量士で、その人が主として業務を行う営業所にはこの義務を適用しないと定めています。
一人会社で社長が測量士なら、本店の営業所について別に測量士を雇う必要はありません。営業所を増やすと、社長が主に業務を行わない営業所には測量士が1人以上要ります。営業所は本店・支店のほか、常時、測量の請負契約を締結する事務所です(55条の2第2号・施行令7条)。
添付書類は「直前2年の実績」と「直前1年の財務」
55条の3は、登録申請書に、営業経歴書と法人の場合は定款、直前2年の各事業年度の測量実施金額、直前1年の事業年度の財務に関する書類、使用人数と営業所ごとの測量士・測量士補の人数などの添付を求めています。
設立したばかりの会社には、事業年度の実績も決算書もありません。条文は書類の種類を定めるだけで、設立直後の会社で何を代わりに出すかは書いていないため、申請前に管轄の地方整備局へ確認するのが確実です(国土交通大臣の権限は地方整備局長に委任できる。59条の2)。
役員全員が登録拒否事由の審査を受ける
55条の6第1項6号は、役員のうちに破産して復権を得ない者、登録を取り消されて2年を経過しない者、無登録営業で刑に処せられて2年を経過しない者、暴力団員等に当たる者がいる法人の登録を拒否します。個人の時代は本人だけでしたが、家族を役員にすると、その家族も審査の対象になります。登録後に役員が入れ替わったときは、変更登録の申請が要ります(55条の7)。
毎事業年度、3か月以内に書類を出す
55条の8は、毎事業年度終了の日から3か月以内に、その事業年度の営業経歴書と財務に関する書類を国土交通大臣へ出すことを求めています。正当な理由なく怠ると30万円以下の罰金の対象です(63条の2第6号)。会社の決算期を決めると、この提出期限も決まります。
下請に回す相手も登録が要る
56条の3は、測量業者が請け負った測量(基本測量・公共測量・それ以外の測量)を、測量業者以外の者に請け負わせることを禁じています。個人の測量士仲間に一部を外注している場合、相手が登録を受けていなければ、会社として外注できないことになります。56条の2は一括下請負も、注文者の書面による承諾がない限り禁じています。
法人成りで会社が元請になると、外注先の登録の有無を確認する場面が増えます。外注費と給与の区別といった税務の論点は外注費か給与かの判定で扱っています。
登録免許税9万円を乗せた損益分岐
測量機器・GNSS受信機の償却やリース、車両、外注、事務所費を年400万円と置き、事業所得ごとに個人のままと法人化を比べました。初年度は設立費用10万円と登録免許税9万円の計19万円を差し引いています。
| 事業所得(売上−経費) | 最適な役員報酬 | 2年目以降 | 初年度(設立費用・登録免許税込み) |
|---|---|---|---|
| 600万円 | 月42万円 | −34.0万円 | −53.0万円 |
| 800万円 | 月45万円 | −18.9万円 | −37.9万円 |
| 1,000万円 | 月45万円 | −10.0万円 | −29.0万円 |
| 1,200万円 | 月54万円 | −4.3万円 | −23.3万円 |
| 1,500万円 | 月54万円 | +26.1万円 | +7.1万円 |
| 2,000万円 | 月90万円 | +65.8万円 | +46.8万円 |
※ 当サイトの計算エンジン(scripts/sokuryogyo-houjinnari.mjs で再生成)で算出。経費400万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は測量士業(第3種・5%)。2026年(令和8年)分基準の概算
損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)は、2年目以降が1,243万円、設立費用と登録免許税を含む初年度が1,430万円です。
個人事業税は、地方税法72条の2第10項21号と地方税法施行令14条3号により、測量士業が第3種事業(税率5%)に挙がっています。個人のままだと事業主控除290万円を超えた部分に5%がかかり、法人化するとこの負担がなくなるため、損益分岐を押し下げる側に効いています。
個人の測量士登録で払っていた1万5,500円との差は約7万5,000円で、損益分岐を大きく動かす額ではありません。判断を左右するのは、事業所得が1,200万円台を超えるかどうかです。自分の売上と機材費の実額で、判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法にまとめています。
ほかの業種の許認可が法人成りで引き継げるかは、法人成りの許認可の引継ぎで一覧にしています。個人事業税の業種ごとの税率は個人事業税の業種別の税額にまとめています。
まとめ
- 測量業者の登録は承継できない。廃業の届出(30日以内)で個人の登録は消除され、会社が新規に登録を受ける
- 測量士本人の個人登録は手数料1万5,500円だったが、会社の新規登録は登録免許税9万円。更新はどちらも1万5,500円(電子1万5,100円)
- 営業所ごとの測量士は、役員が測量士でその営業所で主に業務を行うなら不要。営業所を増やすと別に要る
- 消除前に結んだ請負契約は消除後も続けられるが、注文者への通知が要り、注文者は30日以内なら解除できる。継続案件の少ない時期に切り替えると扱いやすい
- 東京23区・経費400万円の試算で、損益分岐は2年目以降1,243万円、初年度1,430万円
よくある質問
会社の登録が下りるまで、個人の登録で受注を続けてよいですか。
個人の登録で受注できるのは個人の事業としてです。会社の名義で請け負うには会社の登録が要り、登録のない者が測量業を営むと1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(55条の14・61条の2)。会社の登録が下りるまでは個人の名義で受注し、個人の廃業届は会社の登録の後に出す順番にすると空白を作りません。
一人会社で、社長の私が測量士なら別に測量士を雇う必要はありますか。
55条の13第2項により、役員のうちいずれかが測量士で、その人が主として業務を行う営業所には、別に測量士を置く必要はありません。ただし営業所を2か所にすると、社長がいないほうの営業所には測量士を1人以上置くことになります。
5年後の更新でも9万円かかりますか。
登録免許税は新規の登録だけにかかり、更新の登録は除かれています(登録免許税法別表第一 第152号)。更新は登録手数料1万5,500円、電子申請なら1万5,100円です(測量法55条の4第2項・施行令8条)。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。