設立の手続き

建築物清掃業の登録は法人成りで取り直すか選べる。任意登録と表示の制限

結論

建築物衛生法12条の2の登録は、清掃などの事業を営んでいる者が営業所ごとに受けることが「できる」任意の登録で、承継の規定はありません。法人成りでは、会社が「登録建築物清掃業」と表示したいなら会社として登録を受け直し、個人は廃止を30日以内に届け出ます。登録がなくても清掃業そのものは営めますが、登録を受けずに登録業者の表示やこれに類似する表示をすると10万円以下の過料の対象です(12条の10・18条)。

  • 登録は8つの事業区分ごと・営業所ごとに都道府県知事が行い、有効期間は6年(12条の2)。宮城県の建築物清掃業の申請手数料は35,200円
  • 清掃作業の監督者は、ビルクリーニング技能検定1級の合格者または建築物環境衛生管理技術者の免状を持つ者で、所定の講習・再講習の修了から6年以内の者(施行規則25条)
  • 東京23区・40〜59歳・請負業(第1種5%)の試算で、損益分岐は2年目以降1,243万円、登録を取り直す場合の初年度1,376万円

ビルクリーニングの事業者が持つ「登録建築物清掃業」の登録は、法人成りで会社へ移りません。ただし、ほかの多くの許認可と違って、この登録は受けなくても営業できる任意の登録です。

だから法人成りでは、「取り直さないと営業できない」ではなく「会社で取り直すかどうか」を判断することになります。この記事では、条文で登録の性質と表示の制限を確認し、取り直す場合の要件と手数料、損益分岐を計算エンジンで出します。

登録は「受けることができる」任意の制度

建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)12条の2は、次の事業を営んでいる者が、事業の区分に従い営業所ごとに、都道府県知事の登録を受けることができると定めています。

号事業の区分登録業者の表示
1号建築物における清掃登録建築物清掃業
2号空気環境の測定登録建築物空気環境測定業
3号空気調和用ダクトの清掃登録建築物空気調和用ダクト清掃業
4号飲料水の水質検査登録建築物飲料水水質検査業
5号飲料水の貯水槽の清掃登録建築物飲料水貯水槽清掃業
6号排水管の清掃登録建築物排水管清掃業
7号ねずみ等の防除登録建築物ねずみ昆虫等防除業
8号建築物の衛生的環境の総合的管理登録建築物環境衛生総合管理業

登録の有効期間は6年です(12条の2第4項)。登録業者は、営業所について上の表の名称を表示できます(12条の3)。

制限されるのは、営業ではなく表示

12条の10は、「何人も」登録を受けないで、その事業の営業所について登録業者の表示またはこれに類似する表示をしてはならないと定めています。違反は10万円以下の過料の対象です(18条3号)。

つまり登録の効果は、表示を使えることにあります。登録がなくても清掃業そのものは営めます。法人成りで会社が登録を受け直さない場合、会社のホームページ、名刺、見積書、営業所の看板に「登録建築物清掃業」やそれに類似する表示を使うことはできません。

承継の規定はなく、取り直すなら会社で新規登録

12条の2の登録は、事業を営んでいる者が営業所ごとに受けるもので、法律にも施行規則にも登録を引き継ぐ規定がありません。施行規則33条の変更の届出の対象は、登録業者の氏名・名称・住所、営業所の名称・所在地・責任者、主要な機械器具、監督者などの変更です。

個人から会社へは、登録を受けた者そのものが替わります。会社が登録業者の表示を続けたいなら、会社として新たに登録を受けるのが条文の構造に沿った整理です。個人は、登録に係る事業を廃止した日から30日以内に廃止を届け出ます(施行規則33条)。宮城県は、廃止届とあわせて登録証明書の返納を求めています。届出の扱いは都道府県等によって案内が異なることがあるので、営業所を管轄する窓口に確認しておくと確実です。

取り直すかの判断材料

登録の要否は、取引先との関係で決まります。

  • 取引先との契約や入札の参加資格で、登録業者であることを条件にしている案件があるか
  • 会社の営業資料やホームページで、登録業者であることを打ち出しているか
  • 登録の手数料と、監督者の講習・研修の手間に見合うか

取引先が登録を条件にしている場合は、会社の登録が出るまで、その案件の契約は個人の登録業者として続けることになります。

取り直す場合の要件と手数料

建築物清掃業(1号)の登録基準は施行規則25条にあります。

基準内容
機械器具真空掃除機と床みがき機を有すること
清掃作業の監督者ビルクリーニングの技能検定1級の合格者、または建築物環境衛生管理技術者の免状を持つ者で、厚生労働大臣の登録を受けた講習(または再講習)の修了から6年を経過しない者
従事者の研修清掃作業に従事するすべての者が受講できる研修を、定期的に行うこと
作業の方法清掃作業と機械器具の維持管理の方法が、厚生労働大臣の定める基準に適合すること

監督者の資格と講習の修了は本人のものなので、社長本人が監督者だったなら会社でも監督者になれます。

申請手数料は都道府県等の条例で決まり、たとえば宮城県の建築物清掃業の新規・更新の申請手数料は35,200円です。個人の登録の残り期間は会社に引き継がれず、会社の登録は新たに6年が始まります。

請負業の個人事業税と損益分岐

ビル清掃の請負は、個人事業税の請負業(第1種事業・税率5%)です(地方税法72条の2第8項)。事業主控除290万円を超えた所得に課税され、法人化するとかからなくなります。代わりに役員報酬に社会保険料がかかります。

清掃スタッフの人件費・資材・機材などの経費を年2,000万円と置き、会社で登録を取り直す前提(手数料35,200円)で、事業所得ごとに個人のままと法人化の差を計算しました。

事業所得(売上−経費)最適な役員報酬2年目以降初年度(設立費用・登録手数料込み)
600万円月42万円−34.0万円−47.5万円
800万円月45万円−18.9万円−32.4万円
1,000万円月45万円−10.0万円−23.5万円
1,200万円月54万円−4.3万円−17.8万円
1,500万円月54万円+26.1万円+12.6万円
2,000万円月90万円+65.8万円+52.3万円

※ 当サイトの計算エンジン(node scripts/houjinnari-kyoninka-table.mjs --expenses 2000 --business type1 --age 40to64 --fee 35200 --note '請負業(第1種・5%)' で再生成)で算出。経費2,000万円、東京都・東京23区、単身・40〜59歳、青色申告(電子申告65万円控除)、インボイス登録済み、合同会社。法人の税理士報酬35.0万円・個人15.0万円。役員報酬は手取り最大となる額を総当たりで選択。個人事業税は請負業(第1種・5%)。初年度は合同会社の設立費用10.0万円と許認可の取り直し費用35,200円を差し引いた額。2026年(令和8年)分基準の概算

損益分岐となる事業所得(青色申告特別控除の前)は、2年目以降が1,243万円、登録を取り直す場合の初年度が1,376万円です。登録を取り直さない場合の初年度は、設立費用だけの1,341万円です。

ビル清掃はスタッフを多く雇う業種で、法人化すると要件を満たす従業員はすべて社会保険の対象になります。個人で常時5人以上を使用している清掃業の事業所は、個人のときから社会保険の適用事業所です(厚生年金保険法6条1項1号ト「焼却、清掃又はと殺の事業」)。その場合、法人化で新たに増えるのは主に社長本人の保険料です。自分の売上と経費で判定ツールに入れて確かめてください。計算の前提は計算方法に、設立の手順と実費は会社設立を自分でやる手順にまとめています。

まとめ

  • 建築物衛生法12条の2の登録は任意で、受けなくても清掃業は営める。制限されるのは登録業者の表示(違反は10万円以下の過料)
  • 承継の規定はなく、法人成りで会社が表示を続けたいなら会社で新規登録を受け、個人は30日以内に廃止を届け出る
  • 取り直すかは、取引先の契約・入札の条件と、手数料・監督者の講習の手間で判断する
  • 監督者はビルクリーニング技能検定1級または建築物環境衛生管理技術者で、講習の修了から6年以内。社長本人の資格を使える
  • 東京23区・40〜59歳の試算で、損益分岐は2年目以降1,243万円、登録を取り直す場合の初年度1,376万円

よくある質問

登録を受けないと、ビルの清掃を請け負えないのですか。

請け負えます。建築物衛生法12条の2は、事業を営んでいる者が登録を受けることが「できる」と定めており、登録を営業の条件にしていません。登録がない事業者に禁じられているのは、登録建築物清掃業などの表示やこれに類似する表示をすることです(12条の10)。

個人の登録証明書を、会社の名前に書き換えてもらえますか。

施行規則33条の変更の届出は、登録業者の氏名・名称・住所、営業所、機械器具、監督者などの変更を対象にしています。個人から会社へは登録を受けた者そのものが替わるので、会社として新たに登録を受けるのが条文の構造に沿った整理です。届出の扱いは営業所を管轄する都道府県等に確認してください。

個人の登録を廃止するときの手続きは?

登録に係る事業を廃止したときは、その日から30日以内に届け出ます(施行規則33条)。宮城県は廃止届とあわせて登録証明書の返納を求めています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。