設立の手続き
休眠会社を買って法人化すると安い?登記費用は1万〜13万円、繰越欠損金は使えない
結論
休眠中の株式会社(資本金1億円以下)を買い取って法人化すると、登録免許税は役員の変更だけなら1万円、商号と目的の変更(同時申請で3万円)と管轄外への本店移転(6万円)まで加えると10万円、みなし解散後の継続(3万円)が要ると13万円です。新しく設立する場合の株式会社15万円・合同会社6万円より安くなることはありますが、買取代金がかかり、休眠中の繰越欠損金は法人税法57条の2により事業を始めると使えなくなります。休眠中の均等割の未納や申告漏れも会社に残ります。
- 法人税法57条の2:支配日の直前に事業を営んでいない法人の株式の50%超を取得し、5年以内に事業を始めると、それまでの繰越欠損金は使えない
- 役員変更の登録免許税は資本金1億円以下なら1件1万円、商号・目的などの変更は1件3万円、本店移転は1か所3万円(登録免許税法 別表第一 24号)
- 最後の登記から12年たった株式会社はみなし解散の対象。継続できるのは3年以内で、継続の登記は3万円
このテーマの全体像 会社設立の手続き(自分でやる手順と届出)
法人化するとき、会社を新しく作る代わりに、使われていない会社(休眠会社)を買い取って使う方法が紹介されることがあります。「設立費用がかからない」「設立年が古い会社になる」といった理由です。ここでは登記費用を新設と比べたうえで、税金の面で引き継ぐもの・引き継げないものを条文で確認します。
登録免許税:新設と買取りの比較
登録免許税法の別表第一(第24号)で、会社の登記にかかる税額を確認できます。資本金1億円以下の株式会社を前提に、新設と、休眠会社を買い取った後の登記を並べました。
| 手続き | 登録免許税 | 根拠(別表第一 第24号(一)) |
|---|---|---|
| 株式会社の設立 | 資本金×0.7%(最低15万円) | イ |
| 合同会社の設立 | 資本金×0.7%(最低6万円) | ハ |
| 取締役・代表取締役の変更(資本金1億円以下) | 1件1万円 | カ |
| 商号・目的などの変更(同時に申請すれば1件) | 1件3万円 | ツ |
| 本店の移転 | 1か所3万円(管轄外なら旧・新で6万円) | ヲ |
| 会社の継続(みなし解散後) | 1件3万円 | ソ |
これを組み合わせると、休眠会社を買い取った場合の登録免許税は次のようになります。
| ケース | 必要な登記 | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 役員を入れ替えるだけ | 役員変更 | 1万円 |
| 役員と商号・目的を変える | 役員変更+商号・目的の変更 | 4万円 |
| さらに管轄外へ本店を移す | +本店移転(2か所分) | 10万円 |
| みなし解散後の会社を継続して使う | +会社の継続 | 13万円 |
新しく設立する場合は、株式会社なら登録免許税15万円に定款認証の手数料(資本金に応じて1万5,000円〜5万円)が加わり、合同会社なら6万円です(合同会社と株式会社の設立費用)。登記費用だけなら休眠会社のほうが安くなる場合がありますが、ここに会社の買取代金が加わります。
繰越欠損金は使えない(法人税法57条の2)
休眠会社に過去の赤字(繰越欠損金)が残っていても、それを法人化後の黒字と相殺することは原則としてできません。
法人税法57条の2は、ある者が法人の株式の50%超を取得して「特定支配関係」を持った場合に、その法人(欠損等法人)が支配日から5年以内に一定の事由に当てはまると、それまでに生じた欠損金の繰越控除を適用しないと定めています。事由の1つ目が、支配日の直前に事業を営んでいない法人が、支配日以後に事業を開始することです。休眠会社を買い取って事業を始めるのは、まさにこの場合です。
法人化した会社の繰越欠損金は、法人化してから生じた赤字について10年使えます(欠損金の繰越は法人10年・個人3年)。買い取った会社の過去の赤字は、その対象にならないと考えておく必要があります。
休眠中の税金と手続きの漏れは会社に残る
会社を買い取ると、株主が替わるだけで会社そのものは同じです。休眠中に生じた義務も会社に残ります。
- 均等割。休眠中の均等割の扱いは自治体によって異なり、課税されている場合があります(休眠会社の均等割はかからないか)。申告・納付が漏れていれば、延滞金とともに会社が払うことになります(均等割の申告を忘れたら)
- みなし解散。最後の登記から12年たった株式会社は、法務大臣の公告などを経て職権で解散の登記がされます。継続できるのは解散したとみなされた日から3年以内です(会社法472条・473条、休眠会社のみなし解散)
- 役員の任期。株式会社の取締役には任期があり、変更登記を怠っていると過料の対象になります(役員変更登記の期限)
買う前に、登記事項証明書、過去の申告書、納税証明書で、これらを確かめる必要があります。
消費税は「新設法人」の扱いにならない
新しく設立した会社は、基準期間(2期前)がないため、資本金1,000万円未満などの条件を満たせば設立1〜2期の消費税が免税になります(新設法人の「2期免税」が崩れる条件)。休眠会社は新設法人ではないので、その会社の基準期間・特定期間の売上で判定します。休眠会社がインボイスの登録をしたまま残っていれば、課税事業者のままです。
法人化の手段としてどう見るか
休眠会社の買取りで安くなるのは、登記費用の一部にすぎません。買取代金、引き継ぐ義務の調査、使えない繰越欠損金を考えると、法人化のコストを大きく下げる手段にはなりにくいと言えます。一人の個人事業主が法人化するなら、合同会社を新しく作れば登録免許税6万円で済みます(会社設立を自分でする手順と費用)。
どちらの方法でも、法人化して手取りが増えるかどうかは事業所得で決まります。自分の売上と経費で確かめてから、会社の作り方を選んでください。
まとめ
- 休眠会社を買い取った後の登録免許税は、役員変更だけなら1万円、商号・目的・管轄外の本店移転・会社の継続まで含めると13万円
- 新設は株式会社15万円+定款認証、合同会社6万円。休眠会社はこれに買取代金が加わる
- 休眠会社の繰越欠損金は、法人税法57条の2により事業を始めると使えない
- 休眠中の均等割の未納、みなし解散、役員の任期切れは会社に残る。買う前に書類で確認する
- 消費税は新設法人の免税ではなく、その会社の基準期間で判定する
よくある質問
休眠会社を買えば設立より安く法人化できますか。
登録免許税だけを比べると、役員変更だけなら1万円で、株式会社の設立(最低15万円)より安くなります。ただし会社の買取代金がかかり、商号・目的・本店を変えればその分の登記費用も加わります。休眠中の税金や債務を引き継ぐ点もあわせて比べる必要があります。
休眠会社の繰越欠損金は使えますか。
原則として使えません。法人税法57条の2は、事業を営んでいない法人の株式の50%超を取得した日から5年以内に事業を開始した場合、それより前に生じた欠損金の繰越控除を適用しないと定めています。
休眠会社でも均等割はかかっていましたか。
休眠中の均等割の扱いは自治体によって異なり、課税されている場合もあります。申告や納付が漏れていれば、買い取った後の会社が延滞金を含めて払うことになります。買う前に、納税証明書や過去の申告書で確認が必要です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。