税金の基礎
均等割の申告を忘れたら。不申告加算金はなく、1年遅れの延滞金は1,900円
結論
赤字でも、法人税の申告義務がある法人は法人住民税の申告書を出して均等割を納める必要があります(地方税法53条・321条の8)。申告を忘れても法人住民税に不申告加算金の規定はなく、かかるのは延滞金だけです。自分で期限後申告して同じ日に払えば、提出日の翌日から1か月までは低い割合(令和8年は年2.8%)になるため、東京23区の均等割7万円なら6か月遅れで0円、1年遅れで1,900円です。
- 申告しないままだと、都道府県と市町村が均等割を「決定」して納付を求める。督促後も払わなければ差押えの対象になり、未納は納税証明書に載る
- 期限内に申告して納付だけ遅れると、低い割合は納期限の翌日から1か月だけ。均等割7万円で1年遅れなら延滞金6,000円になる
- 重いのは国税側。法人税の期限内申告が2事業年度続けてないと青色申告の承認が取り消され、欠損金の10年繰越が使えなくなる
このテーマの全体像 法人住民税の均等割(赤字でも年7万円)
赤字の一人会社が払う法人住民税は、所得がなくてもかかる均等割(東京23区なら年7万円)だけ、ということがよくあります。税額が小さく、法人税の申告とは別の書類なので、申告を忘れたり後回しにしたりしやすい税です。忘れたときに何がかかるのかを、地方税法の条文と東京都主税局の案内で確認しました。
結論から言うと、法人住民税には不申告加算金の規定がなく、かかるのは延滞金だけです。延滞金は、遅れても自分で申告してすぐ払えば小さく済みます。重いのは、法人税の申告も一緒に遅れたときの国税側の影響です。均等割そのものの仕組みは法人住民税の均等割は赤字でも年7万円で説明しています。
赤字でも申告と納付が必要な理由
地方税法53条(道府県民税)と321条の8(市町村民税)は、法人税の確定申告書を出す義務がある法人に、その提出期限までに、均等割額などを記載した法人住民税の申告書を出し、納付することを求めています。
法人税の申告義務は、赤字でもなくなりません。そのため、法人税が0円の会社でも、法人税と同じ期限(事業年度の終了から2か月)までに法人住民税を申告し、均等割を納めます。法人事業税・特別法人事業税も同じ期限で申告します。
| 地域 | 申告先 |
|---|---|
| 東京23区内だけに事務所がある法人 | 所管の都税事務所(法人事業税・特別法人事業税・法人都民税を1通で) |
| 23区以外 | 都道府県(法人事業税・特別法人事業税・道府県民税)と市町村(市町村民税)の2か所 |
赤字の一人会社では、法人事業税と特別法人事業税は所得がないので0円、法人住民税の法人税割も法人税が0円なので0円です。納めるのは均等割だけですが、申告書は全部出す必要があります。法人税の申告期限の決まり方は法人の確定申告は決算から2か月にまとめています。
法人住民税には不申告加算金がない
地方税法には、申告をしなかった場合の「不申告加算金」が税目ごとに置かれています。法人事業税なら72条の46、たばこ税なら74条の23といった具合です。ところが、法人の道府県民税と市町村民税の節には、加算金の規定がありません。置かれているのは、次の2つです。
- 決定:申告書が出されないときは、都道府県知事・市町村長が調査して均等割額などを決める(55条2項・321条の11第2項)
- 延滞金:納期限の翌日から納付の日まで、延滞金を加算する(64条・326条、決定の場合は321条の12など)
法人事業税には不申告加算金の規定がありますが、加算金は納めるべき事業税額に割合を掛けて計算します。赤字で事業税が0円なら、加算金も0円です。
つまり、均等割だけの会社が申告を忘れた場合に、金額としてかかるのは均等割の延滞金だけです。国税の無申告加算税(法人税・消費税)の計算は法人の期限後申告、無申告加算税はいくら?で扱っています。
延滞金は「どう遅れたか」で割合が変わる
延滞金の割合は、法律では年14.6%、一定の期間は年7.3%です。実際には延滞金特例基準割合で読み替えられ、令和8年は次のとおりです(東京都主税局)。
| 期間 | 令和8年の割合 |
|---|---|
| 低い割合が適用される期間 | 年2.8% |
| それ以降 | 年9.1% |
「低い割合が適用される期間」がいつまでかは、遅れ方で変わります。
- 期限内に申告し、納付だけ遅れた:納期限の翌日から1か月を経過する日まで(64条1項1号)
- 期限後に自分で申告した:申告書を出した日、またはその翌日から1か月を経過する日まで(64条1項2号)
- 申告せず、決定を受けた:決定の通知から1か月後の納期限の、さらに翌日から1か月を経過する日まで(321条の12第2項など)
期限後でも自分で申告して1か月以内に払えば、遅れた期間のすべてに低い割合が適用されます。延滞金は100円未満を切り捨て、全額が1,000円未満なら納める必要はありません。
均等割7万円の延滞金を計算した
3月決算の会社(申告・納付期限は令和8年6月1日)が、東京23区の均等割7万円を遅らせた場合です。
| 遅れ | 自分で期限後申告し、同じ日に納付 | 申告の3か月後に納付 | 期限内に申告したが、納付だけ遅れた |
|---|---|---|---|
| 1か月 | 0円 | 1,300円 | 0円 |
| 3か月 | 0円 | 1,700円 | 1,200円 |
| 6か月 | 0円 | 2,100円 | 2,800円 |
| 1年 | 1,900円 | 3,200円 | 6,000円 |
| 2年 | 3,900円 | 5,100円 | 12,300円 |
※ 延滞金の割合は令和8年(年2.8%・年9.1%)で、令和9年以降も同じと仮定。日数は実日数、延滞金は100円未満切捨て・1,000円未満は0円
自分で期限後申告して同じ日に払えば、6か月遅れでも計算上の延滞金は982円で、1,000円未満なので0円です。1年遅れても1,900円にとどまります。
逆に、期限内に申告しておきながら納付を1年放置すると、1か月を過ぎた分に年9.1%がかかり、延滞金は6,000円になります。延滞金の額だけを見れば、「申告して払わない」より「遅れても申告と同時に払う」ほうが軽いという結果です。
法人税割など、均等割以外の住民税も払う会社なら延滞金は比例して増えます。年20万円を自分で期限後申告して同じ日に払う場合、6か月遅れで2,800円、1年遅れで5,600円です。
本当のコストは延滞金ではない
均等割の延滞金は数千円の世界ですが、申告を放っておくと、それ以外の不利益が積み上がります。
1つ目は、決定と滞納処分です。 申告しなければ、都道府県と市町村が均等割を決定し、納付を求めます。東京都主税局は、督促状を受けても納付がなければ財産の差押えなどの滞納処分を受けることがあり、未納額は納税証明書にも載って、借入や資格の取得・更新に影響することがあると案内しています。融資の審査で納税証明書を出す場面は、一人会社でも珍しくありません。
2つ目は、法人税の青色申告です。 法人住民税の申告を忘れるとき、多くは法人税の申告も一緒に遅れています。国税庁の事務運営指針では、法人税の期限内申告書の提出が2事業年度続けてないと、2事業年度目以後の青色申告の承認が取り消されます。承認を失うと、赤字を10年繰り越す欠損金の繰越控除などが使えなくなります。設立初期の赤字を後の黒字にぶつけるつもりで法人化した会社には、延滞金とは比べものにならない損失です。欠損金の扱いは欠損金の繰越は法人10年・個人3年にまとめています。
3つ目は、手続きの手間です。 事業年度ごとに、法人税・地方法人税・消費税(課税事業者なら)と地方税の申告書を出し直すことになります。
決算の準備が間に合わない場合は、期限を延ばす手続きがあります。法人税の申告期限の延長とは別に、地方税にも延長の申請が必要です。手順は法人の申告期限を1か月延長にあります。事業をしていない休眠中の会社の均等割は、自治体で扱いが割れています(休眠会社の均等割はかからない?)。
均等割だけの年でも、申告を落とさないために
- 期限は法人税と同じ:事業年度終了の日の翌日から2か月。3月決算なら5月末(土日祝日なら翌営業日)
- 申告先は1つか2つ:東京23区は都税事務所の1か所、それ以外は都道府県と市町村の2か所
- 会計ソフトや税理士に任せる場合も確認:法人税の電子申告をしても、地方税の申告(eLTAX)が別に必要な場合がある
- 遅れたら、すぐ自分で申告して同じ日に払う:低い割合(令和8年は年2.8%)で済み、決定を待つより早く終わる
法人化すると、赤字でも均等割の申告と納付が毎年1回必ず来ます。この固定費を含めて法人化が見合うかは、自分の売上と経費で確かめてください。
まとめ
- 赤字でも、法人税の申告義務がある法人は法人住民税を申告して均等割を納める(地方税法53条・321条の8)
- 法人住民税には不申告加算金の規定がない。忘れたときにかかるのは延滞金だけ
- 自分で期限後申告して同じ日に払えば、均等割7万円は6か月遅れで0円、1年遅れで1,900円
- 期限内に申告して払わないままだと、1年で6,000円。延滞金は「申告と同時に払う」ほうが軽い
- 重いのは、決定・差押え・納税証明書への記載と、法人税の2期連続の期限後申告による青色申告の取消し
よくある質問
赤字で法人税が0円でも、法人住民税の申告は必要ですか?
必要です。地方税法は、法人税の確定申告書を出す義務がある法人に、その提出期限までに均等割額などを記載した法人住民税の申告書を出し、納付することを求めています。法人税が0円でも法人税の申告義務はあるので、均等割の申告と納付も必要です。
東京23区の会社は、どこに申告しますか?
東京23区内だけに事務所がある法人は、法人事業税・特別法人事業税・法人都民税(市町村民税相当分を含む)を、所管の都税事務所に1通の申告書で申告します。23区以外では、都道府県と市町村の両方に申告書を出します。
法人事業税も、申告を忘れると加算金がかかりますか?
法人事業税には不申告加算金の規定があります(地方税法72条の46)。ただし加算金は納めるべき事業税額に割合を掛けて計算するので、赤字で事業税が0円なら加算金も0円です。申告書の提出は必要です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。