設立の手続き
会社設立の登録免許税が半額に。法人成りは開業5年未満が条件
結論
市区町村の特定創業支援等事業を受けて証明書を得ると、会社設立の登録免許税が半額になり、資本金857万円以下の合同会社は6万円から3万円、2,142万円以下の株式会社は15万円から7.5万円になります。個人事業主の法人成りでも使えますが、個人事業の開業日から5年未満に限られます。租税特別措置法80条3項の期限は、令和9年3月31日までの登記です。
- 軽減後は資本金×0.35%(合同会社は最低3万円、株式会社は最低7.5万円)。通常は0.7%(最低6万円・15万円)
- 法人成りの場合は、開業届の開業日から5年未満であることが条件。個人事業を続けたまま別に会社を作る「2社目」は対象外
- 特定創業支援等事業は原則4回以上・1か月以上の支援で、経営・財務・人材育成・販路開拓をすべて学ぶもの。設立登記の前に証明書が要る
会社を設立するときの法定費用で最も大きいのは、法務局に納める登録免許税です。合同会社なら6万円、株式会社なら15万円が最低額として決まっています。
この登録免許税を半額にする制度があります。市区町村が実施する特定創業支援等事業(創業塾など)を受け、その証明書を持って設立登記をすると、税額が半分になります。法人成りを考えている個人事業主にも使えますが、開業からの年数に条件があります。
登録免許税は資本金の0.35%。最低額は3万円と7.5万円
租税特別措置法80条3項は、特定創業支援等事業による支援を受けた個人が株式会社または合同会社を設立した場合、設立登記の登録免許税を資本金の0.35%(通常の半分)としています。最低額も半分になり、株式会社は7万5千円、合同会社は3万円です。
資本金別に並べると次のとおりです。
| 資本金 | 合同会社(通常) | 合同会社(軽減) | 株式会社(通常) | 株式会社(軽減) |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 60,000円 | 30,000円 | 150,000円 | 75,000円 |
| 300万円 | 60,000円 | 30,000円 | 150,000円 | 75,000円 |
| 500万円 | 60,000円 | 30,000円 | 150,000円 | 75,000円 |
| 1,000万円 | 70,000円 | 35,000円 | 150,000円 | 75,000円 |
| 2,000万円 | 140,000円 | 70,000円 | 150,000円 | 75,000円 |
| 3,000万円 | 210,000円 | 105,000円 | 210,000円 | 105,000円 |
※ 通常は登録免許税法別表第一(資本金×0.7%、合同会社の最低6万円・株式会社の最低15万円)、軽減は租税特別措置法80条3項。スクリプト:scripts/tokutei-sogyo-shien-tourokumenkyozei.mjs
資本金に比例する部分が最低額を超えるのは、合同会社で約857万円超、株式会社で約2,142万円超です。一人社長の会社の資本金はたいていこれより小さいので、軽減額は合同会社で3万円、株式会社で7.5万円の定額と考えて差し支えありません。
資本金をいくらにするかで変わるのは登録免許税だけではありません。1,000万円以上にすると設立初年度から消費税の免税が使えなくなるなど、別の線があります(資本金1,000万円の壁)。
法人成りは、開業届の開業日から5年未満が条件
特定創業支援等事業の証明書を受けられるのは、産業競争力強化法2条の「創業者」です。中小企業庁のガイドラインは、個人事業主から法人成りする場合を明示的に対象に含め、その条件を個人事業の開始後5年未満としています。
中小企業庁のQ&A集も、登録免許税の軽減の対象外として「創業5年を経過した個人事業主」を挙げています。横浜市は、開業から5年未満かどうかを「開業届の開業日」で判断すると説明しています。
| 状況 | 証明書の対象か |
|---|---|
| まだ事業を始めていない個人が会社を作る | 対象 |
| 個人事業を始めて5年未満で、その事業を法人成りする | 対象 |
| 個人事業を始めて5年以上たってから法人成りする | 対象外 |
| 個人事業を続けたまま、別に会社を作る(2社目) | 対象外 |
| 個人事業をいったん廃業し、別の事業で会社を作る | 対象(横浜市・中小企業庁の事例) |
| 合同会社から株式会社への組織変更 | 対象外 |
出典:中小企業庁「創業支援等事業計画のガイドライン」「同Q&A集」、横浜市・世田谷区の証明書ページ
売上が伸びてから法人化を考える場合、その時点で開業から5年を過ぎていることがあります。5年の線を越えると、この軽減は使えなくなります。開業届を出した日を確認しておく価値があります。
なお、市区町村ごとに独自の条件もあります。世田谷区は区の特定創業支援等事業を2年以内に受けたこと、横浜市は市内で事業を行うか市内に住んでいることを条件にしています。
証明書は「4回以上・1か月以上」の支援を受けてから
特定創業支援等事業は、単発のセミナーではありません。中小企業庁のガイドラインは、経営・財務・人材育成・販路開拓の4つの知識をすべて身につける継続的な支援と定義し、原則として4回以上・1か月以上をかけて行うものとしています。代表的なのは創業塾や、継続して行う個別相談です。
証明書を受けるまでの流れは次のとおりです。
- 市区町村の創業支援のページで、特定創業支援等事業に当たる講座や相談を探す
- 4回以上・1か月以上の支援を受け、修了する
- 市区町村に証明書の発行を申請する(横浜市は5営業日程度、世田谷区は通常1週間ほど)
- 証明書を添えて設立登記を申請する
登録免許税の軽減を受けるには、会社法上の発起人で、かつ会社の代表者になる個人が証明を受ける必要があります。配偶者が講座に通っても、代表になる本人の証明にはなりません。
設立日から逆算すると、最低でも1か月半ほど前には支援を受け始める必要があります。設立日をいつにするかで法人成りの月の保険料が変わる話は、法人成りの月の保険料は国保か社保かで扱っています。
期限は令和9年3月31日までの登記
租税特別措置法80条3項は、この軽減を「令和九年三月三十一日までの間に登記を受けるもの」に限っています。中小企業庁のQ&A集は、証明書に有効期限を設けている理由として、この適用期限を挙げています。
2026年9月時点で、この期限の延長は決まっていません。延長されるかどうかは今後の税制改正で決まるため、ここでは期限どおりに扱います。令和9年4月以降の設立を考えている場合は、年末の税制改正の内容を確認してください。
判定ツールの初年度差額に、3万円か7.5万円を足す
当サイトの判定ツールは、初年度の実質差額から設立費用を差し引いています。既定の設立費用は合同会社10万円、株式会社25万円で、登録免許税の軽減は入っていません。軽減を使える人は、その分だけ初年度の差額が良くなります。
| 売上 | 形態 | 初年度の実質差額(通常) | 軽減を使った場合 | 2年目以降の差額 |
|---|---|---|---|---|
| 1,200万円 | 合同会社 | −24.7万円 | −21.7万円 | −14.7万円 |
| 1,200万円 | 株式会社 | −39.7万円 | −32.2万円 | −14.7万円 |
| 1,400万円 | 合同会社 | −16.6万円 | −13.6万円 | −6.6万円 |
| 1,400万円 | 株式会社 | −31.6万円 | −24.1万円 | −6.6万円 |
| 1,600万円 | 合同会社 | +3.7万円 | +6.7万円 | +13.7万円 |
| 1,600万円 | 株式会社 | −11.3万円 | −3.8万円 | +13.7万円 |
| 2,000万円 | 合同会社 | +37.0万円 | +40.0万円 | +47.0万円 |
| 2,000万円 | 株式会社 | +22.0万円 | +29.5万円 | +47.0万円 |
※ 経費200万円、資本金100万円、東京23区・40歳未満・単身・インボイス登録済み・青色申告(e-Tax)、最適役員報酬。実質差額は税理士報酬の差と設立費用を差し引いた後/2026年(令和8年)分基準
表から分かることは2つです。
1つ目は、軽減が効くのは初年度だけということです。軽減額は一度きりの3万円か7.5万円で、2年目以降の差額には関係しません。この表の範囲では、軽減の有無で初年度の差額の符号が入れ替わる行もありません。
2つ目は、合同会社と株式会社の設立費用の差が縮まることです。当サイトの前提では通常15万円の差が、軽減を使うと10.5万円になります。売上1,600万円の株式会社は、初年度の差額が−11.3万円から−3.8万円まで縮みます。株式会社を選ぶ理由がほかにある人にとっては、差が小さくなるぶん選びやすくなります。合同会社と株式会社の違いは合同会社と株式会社、設立費用の差は約15万円にまとめています。
登録免許税のほかに受けられる優遇
証明書は、登録免許税以外の優遇の条件にもなっています。中小企業庁の資料が挙げているのは次のものです。
- 信用保証協会の創業関連保証:事業開始の6か月前から利用の対象になる(通常は2か月前)
- 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金:特別利率(基本金利から0.40%引下げ)
- 小規模事業者持続化補助金の創業型:申請の対象になる
持続化補助金そのものは、個人事業主も会社も同じ条件で申請できます(法人化すれば補助金・助成金がもらえる?)。ただし、いずれも法人成りする個人事業主がそのまま使えるとは限りません。たとえば創業関連保証は、事業開始から5年未満の者などを対象にしています。個別の要件はそれぞれの実施機関で確認してください。
法人化の費用は、登録免許税の3万円・7.5万円より、毎年の税金と社会保険料の差のほうがはるかに大きく効きます。軽減を使えるかどうかを確かめたうえで、自分の売上と経費で毎年の差額を出してみてください。
まとめ
- 特定創業支援等事業の証明書があれば、設立登記の登録免許税が半額(合同会社3万円・株式会社7.5万円から)
- 法人成りは個人事業の開業日から5年未満が条件。個人事業を続けたまま作る2社目は対象外
- 支援は原則4回以上・1か月以上。代表者になる本人が受け、設立登記の前に証明書を取る
- 期限は令和9年3月31日までの登記。延長は2026年9月時点で決まっていない
- 軽減が効くのは初年度だけ。合同会社と株式会社の設立費用の差は15万円から10.5万円に縮む
よくある質問
会社を設立した後に証明書をもらっても、登録免許税は戻りますか?
軽減は設立登記を受けるときの税額に対するものなので、設立登記の申請の時点で証明書が必要です。中小企業庁のガイドラインは、創業者が証明書を持って法務局へ申請すると特例措置を受けられるとしています。
証明書の発行にはどれくらいかかりますか?
市区町村によって違います。横浜市は申請書の受領後5営業日程度、世田谷区は通常1週間ほどとしています。横浜市の発行手数料は無料です。
特定創業支援等事業はどこで受けられますか?
産業競争力強化法の認定を受けた市区町村が、自ら、または商工会議所・金融機関などと連携して実施しています。創業塾やセミナー、継続的な個別相談などの形があり、有料のものもあります。住んでいる、または事業を行う市区町村の創業支援のページで確認できます。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。