役員報酬

設立1期目の役員報酬はいつまでに決める?設立から3か月、賞与の届出は2か月

結論

設立1期目の役員報酬は、設立日(1期目の開始日)から3か月を経過する日までに決めれば、定期同額給与として損金になります(法人税法施行令69条1項1号イ)。10月1日設立なら12月31日、10月15日設立なら翌年1月14日が期限です。役員賞与を出す場合の事前確定届出給与の届出は、設立の日以後2か月を経過する日までです(同条4項1号)。

  • 期限は設立日を1日目として数える。1月31日設立なら、3か月の期限は4月30日、2か月の期限は3月30日
  • 3か月を過ぎてからの増額は、役員の地位の変更などの臨時改定事由がなければ増額分が損金にならない
  • 源泉所得税・住民税・社会保険料を引いた手取りが毎月同じなら、額面が違っても同額とみなされる(施行令69条2項)

法人を設立して最初に迷うのが、自分への役員報酬をいつ、いくらに決めるかです。個人事業のときは事業の利益がそのまま自分の所得でしたが、法人では事前に決めた額を毎月同じように払うのでなければ、報酬が法人の経費(損金)になりません。

その「事前に決める」の期限は、1期目だけ少し特殊です。法人税法施行令の条文から確認します。

期限は、1期目の開始日(設立日)から3か月

役員報酬を損金にする基本の形は定期同額給与です。1か月以下の一定の期間ごとに、各支給時期に同じ額を払う給与をいいます(法人税法34条1項1号)。

そのうえで、法人税法施行令69条1項1号イは、額を改定しても定期同額給与のままでいられる時期を「当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から三月を経過する日まで」としています。新しく設立した法人の1期目は、設立日が事業年度の開始日です。したがって、設立日から3か月を経過する日までに報酬の額を決めれば、その後同額で払う限り定期同額給与になります。

役員賞与を出したい場合は、あらかじめ支給時期と金額を税務署に届け出る事前確定届出給与を使います。その届出期限は通常「株主総会等の決議の日から1か月を経過する日(職務執行の開始から4か月以内)」ですが、新たに設立した法人がその設立の時に始まる職務について定めた場合は、設立の日以後2か月を経過する日です(施行令69条4項1号)。

設立日ごとの期限日

期間は、事業年度が設立日の午前零時から始まるので設立日を1日目として数え、最後の月の応当日の前日に満了します。応当日がない月(2月30日など)はその月の末日です(国税通則法10条1項)。

設立日(1期目の開始日)定期同額給与を決める・改定できる期限(3月経過日)事前確定届出給与の届出期限(2月経過日)
2026年10月1日2026年12月31日2026年11月30日
2026年10月15日2027年1月14日2026年12月14日
2026年11月30日2027年2月28日2027年1月29日
2027年1月4日2027年4月3日2027年3月3日
2027年1月31日2027年4月30日2027年3月30日
2027年3月1日2027年5月31日2027年4月30日
2027年4月1日2027年6月30日2027年5月31日

※ 法人税法施行令69条1項1号イ・4項1号、国税通則法10条1項。当サイトで計算(scripts/setsuritsu-yakuin-hoshu-kigen.mjs)

届出の期限が日曜日・祝日などにあたる場合は翌日が期限になります(国税通則法10条2項)。一方で、3か月の期限は届出の期限ではなく「いつまでに改定したか」の基準なので、休日でも後ろにずれるとは限りません。余裕をもって決議しておくのが確実です。

事前確定届出給与と社会保険料の関係は事前確定届出給与で社会保険料は下がる?で計算しています。

3か月を過ぎてから増額すると、増えた分が損金にならない

3か月を経過する日より後に報酬を変えられるのは、次の2つの場合に限られます(施行令69条1項1号ロ・ハ)。

  • 臨時改定事由:役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更、その他これらに類するやむを得ない事情
  • 業績悪化改定事由:経営の状況が著しく悪化したことなどによる減額

一人会社で「思ったより売上が伸びたから上げたい」は、どちらにも当たりません。期中に増額した場合、増額した部分は損金になりません。増額分がいくらの税負担になるかは役員報酬を期中に増やすと、増額分120万円が損金にならないで計算しています。

逆に言えば、1期目は3か月の間に、その期の報酬を見きわめる時間があるということでもあります。設立直後の数週間で売上の見込みを確かめてから額を決めても、期限には間に合います。

手取りが同じなら、額面が違っても同額とみなされる

定期同額給与の「同額」は、額面だけで判定されるわけではありません。施行令69条2項は、各支給時期の支給額から源泉所得税・特別徴収の住民税・社会保険料などを差し引いた金額(手取り)が同額であれば、支給額は同額であるものとみなすとしています。

法人成りした年は、6月から住民税の特別徴収が始まったり、社会保険料の等級が変わったりして、同じ額面でも手取りが動きます。額面を同額にしていればもちろん問題ありませんが、手取りを固定する払い方も条文上認められている、ということです。手取りと額面の関係は役員報酬の手取り早見表にまとめています。

なお、設立した月の途中から払う初回の報酬を日割りにした場合の扱いは、国税庁の一次情報で確認できなかったため、この記事では扱いません。

1期目の報酬はいくらにするか

額を決める材料は、2期目以降と同じです。個人の手取りと会社に残る利益の合計が最大になる額を探し、そこから生活費や会社の資金繰りで調整します。売上1,200万円・経費200万円・東京23区・40歳未満・単身なら、当サイトの計算では月54万円前後です(役員報酬はいくらが最適か)。

1期目に特有の事情が3つあります。

  1. 1期目が12か月より短いことが多い。設立月と決算月の関係で、1期目は数か月で終わることがあります。事業年度が1年未満なら、法人税の軽減税率が適用される年800万円の枠も月数で按分されます(法人税法66条4項)。決算月の決め方は法人の決算月の決め方で扱っています
  2. 設立した年は個人事業の所得と役員報酬が同じ年に並ぶ。個人としての所得税は暦年で計算するので、1期目の報酬の額は、個人事業の最後の年の確定申告にも影響します(法人成りした年の確定申告)
  3. 報酬を払わない間は社会保険料がかからない。報酬0円の期間は、国民健康保険・国民年金のままになる点に注意が必要です(役員報酬0円なら社会保険はかからない)

自分の売上と経費で最適な報酬の目安をシミュレーターで確かめ、設立から3か月の期限までに決議しておくのが、1期目の進め方になります。

まとめ

  • 設立1期目の役員報酬は、設立日から3か月を経過する日までに決めれば定期同額給与として損金になる(施行令69条1項1号イ)
  • 役員賞与を出すなら、事前確定届出給与の届出期限は設立の日以後2か月を経過する日(同条4項1号)
  • 期限は設立日を1日目として数え、応当日の前日に満了する。1月31日設立なら3か月の期限は4月30日
  • 3か月を過ぎた増額は、臨時改定事由がなければ増額分が損金にならない
  • 手取りが毎月同じなら、額面が違っても同額とみなされる(同条2項)

よくある質問

設立してすぐ役員報酬を払わないといけませんか

払い始める時期に決まりはありません。1期目の開始日から3か月を経過する日までに定めた額を、その後の各支給時期に同額で払えば定期同額給与になります。報酬を払っていない間は、社会保険料もかからない扱いになります。

1期目の途中で売上が伸びたら報酬を上げられますか

3か月を経過する日より後の増額は、役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更などの臨時改定事由がない限り、定期同額給与の改定として扱われず、増額した部分が損金になりません。売上の見込みが立たない場合でも、3か月以内に決めた額を2期目の期首まで続けることになります。

事前確定届出給与の届出を忘れたらどうなりますか

届出期限までに届出がないと、その賞与は損金になりません。ただし、届出がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認める場合は、期限内に届出があったものとして扱われることがあります(施行令69条7項)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。