役員報酬

役員報酬の平均は762万円?小さな会社に絞ると665万円

国税庁の民間給与実態統計調査(令和6年分)の公式Excelを再集計しました。役員の平均給与は761.9万円ですが、資本金2,000万円未満の株式会社では665.0万円。さらに分布を開くと、平均を下回る役員が59.4%以上いることが分かります。

「役員報酬の平均」で出てくる数字の多くは、国税庁の民間給与実態統計調査が出どころです。令和6年分の役員の平均給与は761.9万円。これは公表値そのものです。

ただしこの761.9万円は、役員409万3,220人を1つに均した平均です。当サイトで公式Excelを企業規模別に再集計したところ、資本金2,000万円未満の株式会社では665.0万円まで下がりました。さらに給与階級別の分布を開くと、平均を下回る役員が59.4%以上いることが分かります。平均は、分布の真ん中ではありません。

761.9万円がどの母集団の数字かを先に押さえる

数字を比べる前に、この調査が何を数えているかを確認します。国税庁の用語の解説で定義されているのは次のとおりです。

  • 役員とは、法人の取締役、監査役、理事、監事等をいう
  • 給与とは、1年間の支給総額(給料・手当と賞与の合計であり、給与所得控除前の収入金額)で、通勤手当等の非課税分は含まない。役員の賞与には、企業会計上の役員賞与のほか、税法上役員の賞与と認められるものも含む
  • 企業規模とは、事業所の属する企業の組織および資本金による区分をいう

つまり統計の「役員の給与」は、定期同額給与だけを指す言葉ではありません。毎月の役員報酬に役員賞与を足した年間の収入金額です。事前確定届出給与で賞与を出している会社は、その分も含んだ額でここに数えられます(賞与の扱いは事前確定届出給与と社会保険料の記事で詳しく扱っています)。

そのうえで、企業規模別に平均給与を並べたのが次の表です。第7表(役員)の公式Excelから、男女計の行を機械的に取り出しています。

企業規模役員数平均給与中央値が入る階級年収1,000万円以下
資本金2,000万円未満1,720,393人665.0万円500万円超600万円以下82.4%
2,000万円以上5,000万円未満481,264人906.6万円600万円超700万円以下70.4%
5,000万円以上1億円未満185,006人1,196.9万円900万円超1,000万円以下55.9%
1億円以上10億円未満110,136人1,425.1万円1,000万円超1,500万円以下40.4%
10億円以上114,807人1,665.7万円1,000万円超1,500万円以下43.1%
株式会社計2,611,606人823.2万円500万円超600万円以下74.8%
その他の法人1,481,614人653.8万円400万円超500万円以下83.5%
合計4,093,220人761.9万円500万円超600万円以下78.0%

(国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」第7表より当サイトが集計。中央値が入る階級と累積割合は公表されていない独自集計)

資本金2,000万円未満の株式会社と資本金10億円以上の株式会社では、平均が1,000.7万円離れています。そして資本金2,000万円未満の株式会社の役員172万393人は、役員全体の42.0%にあたります。株式会社の5つの資本金階級のうち、最も人数が多い階級が、平均を最も下に引っ張っている階級でもある、という構造です。

「2,000万円以上」は累積ではなく階級

この表を作るときに1つ引っかかる点があります。公式Excelのシート見出しは「その2 企業規模 資本金2,000万円以上の株式会社」のように書かれており、文字どおり読むと2,000万円以上のすべてを含む累積のように見えます。

しかし第6表の見出しは「株式会社(資本金階級別)」です。実際に5つの区分の役員数を足すと172万393+48万1,264+18万5,006+11万136+11万4,807=261万1,606人となり、公表されている株式会社計にちょうど一致します。さらに株式会社計と「その他の法人」148万1,614人を足すと合計409万3,220人になります。「以上」と書かれていても、隣の区分の上限までを区切った階級として扱うのが正しい読み方です。この検算は集計スクリプトの中に入れてあり、一致しなければ処理が止まるようにしています。

合同会社の役員は「その他の法人」に入る

もう1つ、当サイトが既定にしている合同会社について。国税庁の用語の解説では、「その他の法人」は株式会社を除く法人とされ、有限会社・合名会社・合資会社・合同会社・協業組合・企業組合・相互会社・医療法人・特定非営利活動法人・人格のない社団等・協同組合等・公益法人等・公共法人・外国法人が列挙されています。

つまり資本金階級で細かく分かれているのは株式会社だけで、合同会社は資本金の大小にかかわらず「その他の法人」に一括されます。その平均給与は653.8万円で、資本金2,000万円未満の株式会社(665.0万円)とほぼ同じ水準です。ただしこの区分には医療法人や協同組合、公益法人の理事も入っているので、合同会社の社長の平均としては読めません。合同会社だけを取り出した数字は、この統計には存在しません。

平均を下回る役員が59.4%。分布の山は300万円台にある

平均だけでは分布の形が分かりません。資本金2,000万円未満の株式会社の役員を、給与階級別に開きます。

給与階級役員数構成比累積
100万円以下113,590人6.6%6.6%
100万円超200万円以下184,958人10.8%17.4%
200万円超300万円以下172,451人10.0%27.4%
300万円超400万円以下194,353人11.3%38.7%
400万円超500万円以下176,012人10.2%48.9%
500万円超600万円以下180,555人10.5%59.4%
600万円超700万円以下106,676人6.2%65.6%
700万円超800万円以下118,050人6.9%72.5%
800万円超900万円以下99,247人5.8%78.2%
900万円超1,000万円以下72,172人4.2%82.4%
1,000万円超1,500万円以下175,545人10.2%92.6%
1,500万円超2,000万円以下70,782人4.1%96.7%
2,000万円超2,500万円以下28,669人1.7%98.4%
2,500万円超27,334人1.6%100.0%
1,720,393人100.0%

(同上。構成比と累積は当サイトの独自集計)

読み取れることが3つあります。

1つ目は、平均が分布の真ん中にないことです。 平均665.0万円は「600万円超700万円以下」の階級に入ります。その1つ下の600万円までで累積は59.4%、階級の上限である700万円まで含めると65.6%です。平均を下回る役員は少なくとも59.4%、多く見て65.6%。6割前後が平均未満という分布になっています。

2つ目は、人数の山が平均よりずっと下にあることです。 最も人数が多い階級は「300万円超400万円以下」の19万4,353人(11.3%)で、平均の半分あたりです。年収400万円以下だけで38.7%を占めます。一方、年収1,000万円を超える役員は17.6%、2,000万円を超えるのは3.3%しかいません。上位の少数が平均を押し上げています。

3つ目は、このゆがみが会社の規模によって違うことです。 資本金2,000万円未満の株式会社では、中央値が入る階級(500万円超600万円以下)より平均が入る階級(600万円超700万円以下)のほうが1つ上にあります。ところが資本金1億円以上10億円未満では、平均1,425.1万円も中央値も同じ「1,000万円超1,500万円以下」の階級に収まります。小さな会社ほど、平均という代表値が実態から離れます。「平均を目安にする」という使い方は、小さな会社ほど当てにならないということです。

この統計に入っていない役員がいる

数字を自分に当てはめる前に、母集団から外れているものを確認します。ここは公表資料の「利用上の注意」に書かれていますが、引用されることの少ない部分です。

第7表は「1年を通じて勤務した給与所得者」だけを集計しています。 定義は「各年の1月から12月まで引き続き勤務し、給与の支給を受けた月数が12か月の者」です。ということは、年の途中で法人成りして社長になった人は、その年についてはこの表に入りません。1年未満勤続者として別の表に回ります。法人化した初年度の役員報酬は、この分布のどこにも反映されていない、ということです。法人化のタイミングそのものについては年度途中の法人化の記事で扱っています。

同じ人が複数回数えられることがあります。 利用上の注意(7)には、複数の事業所から給与の支払を受けている個人がそれぞれの事業所で調査対象になる場合、複数の給与所得者として集計されると書かれています。2社の役員を兼ねている人は2人分として入ります。したがって「役員409万3,220人」は延べ人数で、実在の人数ではありません。1社あたりの数字でもありません。役員が3人いる会社は3人分が入るので、一人社長の会社と同じ重みでは扱われていません。

標本調査による推計値です。 令和6年分の母集団は347万5,474事業所、標本は2万7,179事業所で、回答があったのは1万8,999事業所。標本給与所得者は27万8,081人です。回答から得た数値に回答率の逆数を乗じて全体を推計しています。特に従事員1〜9人の第1層は、母集団269万8,736事業所に対して標本6,747事業所・回答3,711事業所、事業所の抽出率は1/400です。一人会社が属する層ほど、少ない標本から拡大推計していることになります。

さらに利用上の注意(3)は、標本事業所の抽出が従事員数等で層別されていて役員・正社員・パートといった雇用形態別では層別していないため、雇用形態別に見た場合の標本事業所数の少ない箇所の精度は低くなると明記しています。役員だけを取り出した数字には、この但し書きが付きます。

抜き取りは2段階です。まず事業所を抽出し、次にその事業所の給与台帳から給与所得者を抽出します。ただし年間給与額が2,000万円を超える者だけは、事業所のなかで全数が抽出されます。上の階級ほど2段目の抜き取りが入らない、という非対称があります。とはいえ事業所そのものは標本なので、どの階級も推計値であることは変わりません。国税庁が公表している標準誤差率は、従事員1〜9人の事業所で所得者数0.75%・給与1.40%です。

7年間の推移:小さな会社の役員報酬は60.0万円増えた

1年分だけでは、水準が高いのか低いのかが分かりません。平成30年分から令和6年分まで、同じ第7表を7年分そろえました。

年分資本金2,000万円未満の株式会社役員全体
平成30年分605.0万円686.9万円81.9万円
令和元年分582.4万円654.5万円72.1万円
令和2年分581.8万円657.1万円75.3万円
令和3年分614.5万円709.8万円95.3万円
令和4年分647.0万円731.0万円84.0万円
令和5年分634.4万円737.0万円102.6万円
令和6年分665.0万円761.9万円96.9万円

(各年分の第7表その1・その8から当サイトが集計)

7年間で、資本金2,000万円未満の株式会社は605.0万円から665.0万円へ60.0万円増えました。同じ期間に役員全体は686.9万円から761.9万円へ75.0万円増えています。伸びた額は小さい会社のほうが少なく、両者の差は81.9万円から96.9万円へ広がりました。「役員報酬の平均が上がっている」という話は、小さな会社にそのまま当てはまりません。

底は令和元年分の582.4万円と令和2年分の581.8万円で、そこから4年で83.2万円戻した形です。なお平成30年分から令和6年分にかけて、資本金2,000万円未満の株式会社の役員数は180万5,768人から172万393人へ4.7%減っています。1人あたりの平均は上がり、人数は減った7年でした。

なお、この調査の公表時期は「調査年分の翌年9月下旬」です。令和7年分は令和8年9月下旬の公表予定で、この記事を書いている時点では令和6年分が最新です。

「平均」と「手取りが最大になる額」は別の問い

ここまでは統計の話です。しかし役員報酬を決めるときに知りたいのは、他社がいくら払っているかではなく、自分の手取りがどうなるかのはずです。この2つは別の問いで、答えも一致しません。

売上1,200万円・経費200万円(事業所得1,000万円)の一人会社について、役員報酬を1万円刻みで総当たりした結果が次の表です。

役員報酬手取り合計役員個人の手取り法人に残る額社会保険料(労使計)
月10万円632.5万円102.8万円529.6万円33.4万円
月20万円642.4万円196.3万円446.1万円68.1万円
月30万円650.8万円289.1万円361.6万円102.2万円
月40万円654.8万円378.8万円276.1万円139.6万円
月50万円659.7万円468.6万円191.1万円170.3万円
月54万円 ←最適662.4万円504.8万円157.6万円180.5万円
月60万円653.6万円547.8万円105.8万円200.9万円
月70万円646.8万円625.4万円21.4万円228.6万円
月80万円615.8万円704.8万円-89.0万円238.3万円
月90万円570.0万円784.4万円-214.4万円249.2万円
月100万円519.7万円860.2万円-340.4万円261.3万円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人に残る額は、退職金・配当で引き出す際のコスト20%を控除した後の金額

個人事業主のままの手取りは657.1万円で、最適な役員報酬は月54万円(年648万円)、そのときの手取り合計は662.4万円です。差は5.3万円になります。

ここで統計の平均665.0万円に合わせるとどうなるか。 年665.0万円は月55万円(年660万円)と月56万円(年672万円)のあいだです。計算エンジンで確かめると、月55万円のときの手取り合計は657.6万円、月56万円では655.8万円でした。月56万円まで上げると、個人事業主のままの657.1万円を下回ります。統計の平均に合わせただけで、法人化して得られる差額5.3万円が消えるどころかマイナスに転じる計算です。

平均に寄せるほど手取りが減るのは、報酬を上げると社会保険料と個人の所得税・住民税が増える一方、会社に残る利益が減っていくためです。しかも月54万円は、報酬月額51万5,000円以上54万5,000円未満という等級(健康保険31等級・厚生年金28等級)の内側にぎりぎり収まる額です。月55万円にすると1つ上の等級へ移り、保険料が一段まとめて上がります。統計の平均665.0万円に合わせようとすると、ちょうどこの切れ目の外側に出ることになります(等級の刻み方は標準報酬月額の記事にまとめました)。

そして最適額は、統計の平均のように1つに決まりません。事業所得を変えて総当たりすると次のようになります。

事業所得最適な役員報酬(月)年額資本金2,000万円未満の株式会社での累積位置
400万円28万円336万円下から27.4%
600万円42万円504万円下から48.9%
800万円54万円648万円下から59.4%
1,000万円54万円648万円下から59.4%
1,200万円54万円648万円下から59.4%
1,500万円54万円648万円下から59.4%
1,800万円90万円1,080万円下から82.4%
2,100万円95万円1,140万円下から82.4%
2,500万円100万円1,200万円下から82.4%
3,000万円100万円1,200万円下から82.4%

(経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。累積位置は統計の階級の上限に達したところで読んでいる)

事業所得800万〜1,500万円の帯では最適額が月54万円で止まります。この帯にいる限り、事業所得が倍近く違っても最適な報酬額は同じです。逆にいえば、統計上の位置は事業所得によって下から27.4%から82.4%まで動くので、平均と自分の最適額が一致するかどうかは、規模しだいということになります。役員報酬の決め方そのものは役員報酬の最適額の記事で扱っています。計算の前提は計算の前提と出典にまとめてあります。

同じ国税庁の統計を使って、会社の何割が赤字なのかを資本金階級別に数え直した記事もあります(「法人の6割が赤字」は本当か)。平均や割合を1つの数字で受け取ると何を見落とすか、という点では同じ話です。

まとめ

  • 令和6年分の役員の平均給与は761.9万円だが、資本金2,000万円未満の株式会社に絞ると665.0万円。この区分の役員172万393人は役員全体の42.0%を占める
  • 分布を開くと、平均665.0万円を下回る役員が59.4%以上。人数の山は「300万円超400万円以下」で、年収400万円以下が38.7%を占める。小さな会社ほど平均と中央値のずれが大きい
  • 第7表は「1年を通じて勤務した給与所得者」に限られるため、年の途中で法人成りした社長は入っていない。延べ人数であり、1社あたりの数字でもない
  • 平成30年分から令和6年分で、資本金2,000万円未満の株式会社は60.0万円増。役員全体の75.0万円増より小さく、差は広がっている
  • 統計の平均665.0万円に報酬を合わせると、事業所得1,000万円の例では手取り合計が662.4万円から655.8万円まで下がり、個人事業主のままを下回る

平均は「他社がいくら払っているか」の目安であって、手取りが最大になる額ではありません。一般論の平均ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

役員報酬の平均を調べるとき、どの統計を見ればいいですか?

国税庁の民間給与実態統計調査です。基幹統計として毎年公表されており、第6表・第7表で役員だけを企業規模別・給与階級別に取り出せます。ただし公表されているのは平均と人数までで、中央値は載っていません。

統計の「役員の給与」は、役員報酬と同じものですか?

完全には同じではありません。統計の「給与」は給料・手当と賞与の合計で、給与所得控除前の収入金額です。役員賞与も含まれる一方、非課税の通勤手当は含まれません。定期同額給与だけを指す言葉ではない点に注意が必要です。

合同会社の役員は、統計のどこに入っていますか?

「その他の法人」です。国税庁の用語の解説では、有限会社・合名会社・合資会社・合同会社・医療法人・協同組合等などが株式会社以外としてここにまとめられています。資本金階級で分かれているのは株式会社だけです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。