役員報酬

役員報酬の源泉徴収はいくらから?令和8年分の境目は10万5,000円

役員報酬の源泉徴収が始まる金額は、令和8年分から社会保険料等控除後10万5,000円に上がりました。よく見る8万8,000円は令和7年分までの数字です。額面ではいくらまでか、実際の保険料で計算しました。

一人社長の会社が社長本人に払う役員報酬にも、源泉徴収の義務があります。その税額が0円で済む境目は、令和8年分から社会保険料等を差し引いた後の金額で10万5,000円です。長く引用されてきた8万8,000円は、令和7年分までの数字でした。額面の役員報酬でいうと、東京・40歳未満・扶養親族等0人なら月12万2,000円までが0円です。

令和8年分の月額表は、8万8,000円から10万5,000円に上がった

源泉徴収税額は「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて求めます。扶養控除等申告書を提出している人に使う甲欄で、税額が0円のままでいられる上限は次のとおりです。

扶養親族等の数令和7年分令和8年分
0人8万8,000円未満10万5,000円未満
1人11万9,000円未満13万7,000円未満
2人15万9,000円未満17万1,000円未満
3人20万5,000円未満21万7,000円未満

いずれも「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」で見た値です。令和8年分の月額表は、令和7年4月30日財務省告示第122号による改正後のもので、この改正名は税額表の欄外に印字されています。国税庁は令和8年分の税額表について、令和7年分以前の給与等の税額を算出する際には使用しないよう注意を付けています。

境目が動いたのは、基礎控除と給与所得控除が引き上げられたためです。控除額そのものの改正は 基礎控除は令和8年分で104万円になった で扱っています。

「扶養親族等の数」は扶養親族の人数とは限らない

月額表の甲欄でいう扶養親族等の数は、源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族の合計数です(令和7年分以前は控除対象扶養親族)。本人が障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に該当する場合は、該当するごとに1人が加算されます。独身で扶養がいない一人社長なら0人です。

甲欄を使えるのは「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人だけで、提出がない場合は乙欄になります。乙欄には0円の帯がなく、10万5,000円未満でも社会保険料等控除後の金額の3.063%が引かれます。扶養控除等申告書は給与の支払を受ける人が支払者に提出する書類です。社長と会社は別の人格なので、社長自身が自分の会社に提出しておくことになります。

額面では月12万2,000円まで(東京・40歳未満・扶養0人)

税額表に当てはめるのは社会保険料等を引いた後の金額なので、額面の役員報酬はもう少し高くても税額は0円のままです。当サイトの計算エンジンで、報酬月額ごとの本人負担分と控除後の金額を出しました。

役員報酬(月額)標準報酬月額(健康保険の等級)社会保険料(本人負担・月)社会保険料等控除後源泉徴収税額(月)
100,000円98,000円(5等級)13,906円86,094円0円
110,000円110,000円(7等級)15,609円94,391円0円
118,000円118,000円(8等級)16,744円101,256円0円
120,000円118,000円(8等級)16,744円103,256円0円
121,000円118,000円(8等級)16,744円104,256円0円
122,000円126,000円(9等級)17,879円104,121円0円
123,000円126,000円(9等級)17,879円105,121円170円
126,000円126,000円(9等級)17,879円108,121円280円
130,000円134,000円(10等級)19,015円110,985円380円
150,000円150,000円(12等級)21,285円128,715円1,300円

※ 東京・40歳未満・扶養親族等0人・協会けんぽ/2026年(令和8年)分基準。税額は令和8年分の月額表の甲欄

表の等級は健康保険の等級です。厚生年金は等級の番号の振り方が違い、健康保険の8等級(11万8,000円)は厚生年金では5等級にあたります。この報酬帯では標準報酬月額の金額そのものは両者で一致しますが、等級表の下限は健康保険が5万8,000円、厚生年金が8万8,000円で別の値です。

8万8,000円という数字が2か所に出てくる

厚生年金の等級表の下限も8万8,000円です。令和7年分までの月額表の0円ラインと金額が一致しますが、この2つはまったく別の制度の数字で、連動していません。厚生年金の下限は令和8年分でも8万8,000円のままで、変わったのは源泉徴収税額表のほうだけです。

報酬を1,000円上げたら、控除後の金額が下がった

表の121,000円と122,000円を見比べてください。報酬を1,000円増やしたのに、社会保険料等控除後の金額は104,256円から104,121円へ135円下がっています。標準報酬月額が8等級(11万8,000円)から9等級(12万6,000円)へ一段飛び、保険料の増え方が報酬の増え方を追い越すためです。等級の刻みそのものは 標準報酬月額の等級表と保険料 にまとめています。

同じ理由で、条件を変えると境目の額面が逆向きに動きます。

条件扶養0人扶養1人扶養2人
東京・40歳未満12万2,000円15万9,000円19万9,000円
東京・40〜64歳(介護保険あり)12万3,000円16万円20万円
新潟(健康保険料率が全国で最も低い)・40歳未満12万2,000円15万9,000円19万8,000円
佐賀(同じく最も高い)・40歳未満12万3,000円16万円20万円

※ 各条件で源泉徴収税額が0円のままでいられる役員報酬(額面)の上限。1,000円刻みで計算

保険料の負担が重い条件のほうが、源泉徴収0円でいられる額面は高くなります。判定に使うのが控除後の金額だからです。介護保険料がかかる40〜64歳と、保険料率が高い佐賀が、東京・40歳未満より上に来るのはそのためです。計算の前提は 計算方法について に置いています。

源泉徴収が0円でも、事務は減らない

税額が0円でも、源泉徴収義務者であることは変わりません。給与の支払を始めた法人は、給与支払事務所等の開設届出書を開設から1か月以内に提出することになっています。

そのうえで、税額が0円でも続く手続きが4つあります。

  • 納付書の提出。 国税庁の令和8年分源泉徴収税額表「納付書の記載のしかた」には、納付すべき税額が生じない場合であっても、所得税徴収高計算書(領収済通知書)は所轄の税務署にe-Taxで送信するか、郵便・信書便で送付するか、提出するようにと明記されています。納期の特例を受けていれば、1月から6月支払分は7月10日、7月から12月支払分は翌年1月20日が期限です。手続きは 源泉所得税の納期の特例 にまとめています
  • 年末調整。 社長1人の会社でも、会社が支払者、社長が受給者として年末調整を行います。詳しくは 一人社長の年末調整 を参照してください
  • 給与支払報告書。 市区町村へは、翌年1月1日現在で給与の支給を受けているすべての受給者について、翌年1月31日までに提出することとされています。金額による免除はありません
  • 源泉徴収票の交付。 提出範囲にかかわらず、すべての受給者に翌年1月31日までに交付します

税務署へ源泉徴収票(法定調書)を提出するかどうかだけは、金額で決まります。年末調整をした法人の役員は、その年の給与等の支払金額が150万円を超える場合が対象です。月12万2,000円なら年146万4,000円なので、提出範囲には入りません。境目は月12万5,000円(年150万円ちょうど)です。ただし年末調整をしなかった役員は50万円超、乙欄の適用者も50万円超が提出範囲になります。

源泉徴収をなくすために報酬を下げると、手取りはいくら減るか

ここまでの数字だけを見ると、役員報酬を月12万2,000円に抑えて源泉徴収を発生させない置き方が合理的に見えます。手取りで確かめると、そうはなりませんでした。

事業所得個人のまま法人化(最適報酬)法人化(月12万2,000円)最適との差個人との差
400万円303.1万円274.5万円(月28万円)264.4万円−48.6万円−48.6万円
600万円427.3万円409.7万円(月42万円)390.0万円−37.6万円−37.6万円
800万円540.7万円536.6万円(月54万円)512.9万円−24.1万円−24.1万円
1,000万円657.1万円662.4万円(月54万円)635.8万円−14.7万円−14.7万円
1,200万円774.2万円787.6万円(月54万円)743.5万円−6.6万円−6.6万円
1,500万円928.2万円972.0万円(月54万円)902.9万円+23.9万円+23.9万円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人に残る額は、退職金・配当で引き出す際のコスト20%を控除した後の金額

事業所得1,000万円では、最適な役員報酬(月54万円)なら法人化のほうが個人のままより6.8万円上に来ます。ところが報酬を月12万2,000円に落とすと、法人化は個人のままを21.2万円下回ります。源泉徴収を避ける置き方をすると、法人化が有利か不利かという判定そのものがひっくり返ります。 事業所得1,200万円・1,500万円でも同じ向きに反転しました。

失われる額は、事業所得1,000万円で年28.0万円、1,500万円で年70.6万円です。これに対して源泉徴収の事務は、納期の特例を使えば納付書が年2回と、年末調整が年1回です。

報酬額を1万円刻みで動かしたときの手取りの全体像は、次の表のとおりです。

売上1,200万円・経費200万円(事業所得1,000万円)の場合

役員報酬手取り合計役員個人の手取り法人に残る額社会保険料(労使計)
月10万円632.5万円102.8万円529.6万円33.4万円
月20万円642.4万円196.3万円446.1万円68.1万円
月30万円650.8万円289.1万円361.6万円102.2万円
月40万円654.8万円378.8万円276.1万円139.6万円
月50万円659.7万円468.6万円191.1万円170.3万円
月54万円 ←最適662.4万円504.8万円157.6万円180.5万円
月60万円653.6万円547.8万円105.8万円200.9万円
月70万円646.8万円625.4万円21.4万円228.6万円
月80万円615.8万円704.8万円-89.0万円238.3万円
月90万円570.0万円784.4万円-214.4万円249.2万円
月100万円519.7万円860.2万円-340.4万円261.3万円

個人事業主のままの手取りは 657.1万円。最適な役員報酬は月54万円で、そのときの手取り合計は 662.4万円。

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人に残る額は、退職金・配当で引き出す際のコスト20%を控除した後の金額

源泉徴収の0円ラインは月12万2,000円、手取りが最大になるのは月54万円。この2つは4倍以上離れています。報酬額の決め方そのものは 役員報酬は月いくらが最適か で扱っています。

なお、この表は経費・自治体・家族構成を固定した概算です。条件が変われば最適額も差額も動きます。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

まとめ

  • 令和8年分の月額表の甲欄は、社会保険料等控除後10万5,000円未満なら税額0円(扶養親族等0人)。令和7年分までの8万8,000円から上がった
  • 額面では月12万2,000円まで(東京・40歳未満・扶養0人)。介護保険がかかる年齢や保険料率の高い都道府県では、控除される額が増えるぶん境目の額面は上がる
  • 標準報酬月額が等級で刻まれているため、報酬を1,000円上げると控除後の金額が下がる帯がある
  • 税額が0円でも、納付書の提出・年末調整・給与支払報告書・源泉徴収票の交付は残る。税務署への源泉徴収票の提出だけは、法人の役員は年150万円超が境目
  • 源泉徴収を避けるために報酬を月12万2,000円に抑えると、事業所得1,000万円で年28.0万円手取りが減り、法人化の判定も個人のまま有利へ反転する

よくある質問

役員報酬が月10万円なら、源泉徴収はしなくていいのですか

令和8年分では、社会保険料等を差し引いた後の金額が10万5,000円未満であれば、月額表の甲欄の税額は0円です。ただし税額が0円でも、所得税徴収高計算書(納付書)は所轄の税務署へ提出することとされています。

「8万8,000円まで源泉徴収なし」という数字はもう使えないのですか

8万8,000円は令和7年分までの月額表の数字です。令和8年分の月額表では、扶養親族等0人の場合で10万5,000円未満に変わっています。

源泉徴収税額が0円なら、源泉徴収票も出さなくていいのですか

年末調整をした法人の役員については、その年の給与等の支払金額が150万円を超える場合に税務署へ提出します。市区町村への給与支払報告書は、金額にかかわらず提出することとされています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。