法人化の判断
小さい会社は10年で42.3万社増えた。増加の4割は専門サービスと不動産業
結論
財務省の法人企業統計では、資本金1千万円未満の会社は2013〜2015年度平均の172.9万社から2023〜2025年度平均の215.2万社へ、42.3万社(24%)増えました。増えた分の22.7%がコンサルタントや設計などの専門・技術サービス業(+9.6万社)、20.2%が不動産業(+8.5万社)、15.5%が建設業(+6.6万社)です。増加率では医療・福祉業の+71%、専門・技術サービス業の+67%、情報通信業の+51%が大きく、製造業(−8%)と小売業(−2%)は減りました。
- 増えた業種の多くは1社あたり従業員が少ない。不動産業は0.7人、情報通信業2.0人、専門・技術サービス業2.6人で、一人会社に近い形
- 不動産業の増加は、不動産を個人ではなく会社で持つ資産管理会社の形と重なる。1社あたり役員1.44人・従業員0.7人
- 同じ期間に労働力調査の自営業主は546万人(2015年)から499万人(2025年)に減っており、会社の増加と逆の動きになっている
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
会社の数は、ここ10年でどの業種で増えたのか。設立登記の件数は法務省の統計で分かりますが、業種までは分かりません。財務省の法人企業統計は、推計のもとにしている法人の数(母集団)を資本金階級・業種別に持っており、小さな会社がどの業種で増えたかを年度ごとに比べられます。法人化を考えている自分の業種が、全体の流れの中でどこにいるのかを確かめます。
資本金1千万円未満の会社は42.3万社増えた
法人企業統計の時系列データから、資本金1千万円未満の会社の数を業種別に取り出し、2013〜2015年度と2023〜2025年度のそれぞれ3年度平均で比べました。増えた数の多い順に並べています。
| 業種 | 2013〜2015年度 | 2023〜2025年度 | 増減 | 増減率 | 増加分に占める割合 | 1社あたり役員数 | 1社あたり従業員数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 全産業 | 172.9万社 | 215.2万社 | +42.3万社 | +24% | 100% | 1.51人 | 4.3人 |
| その他の学術研究、専門・技術サービス業 | 14.4万社 | 24.0万社 | +9.6万社 | +67% | 22.7% | 1.33人 | 2.6人 |
| 不動産業 | 19.4万社 | 28.0万社 | +8.5万社 | +44% | 20.2% | 1.44人 | 0.7人 |
| 建設業 | 29.5万社 | 36.0万社 | +6.6万社 | +22% | 15.5% | 1.78人 | 3.4人 |
| 情報通信業 | 6.8万社 | 10.3万社 | +3.5万社 | +51% | 8.2% | 1.28人 | 2.0人 |
| 医療、福祉業 | 3.9万社 | 6.6万社 | +2.7万社 | +71% | 6.4% | 1.40人 | 12.5人 |
| 生活関連サービス業 | 7.1万社 | 9.8万社 | +2.7万社 | +38% | 6.4% | 1.46人 | 8.9人 |
| 飲食サービス業 | 10.0万社 | 11.9万社 | +1.9万社 | +19% | 4.5% | 1.32人 | 6.2人 |
| 卸売業 | 12.2万社 | 13.9万社 | +1.7万社 | +14% | 4.0% | 1.47人 | 2.4人 |
| その他のサービス業 | 9.4万社 | 10.9万社 | +1.5万社 | +16% | 3.6% | 1.61人 | 5.3人 |
| 農業、林業 | 1.8万社 | 2.8万社 | +1.0万社 | +58% | 2.4% | 1.83人 | 3.8人 |
| 陸運業 | 3.1万社 | 3.8万社 | +0.7万社 | +24% | 1.7% | 1.75人 | 11.5人 |
| 教育、学習支援業 | 1.6万社 | 2.3万社 | +0.7万社 | +46% | 1.7% | 1.07人 | 6.1人 |
| 広告業 | 2.3万社 | 2.9万社 | +0.6万社 | +26% | 1.4% | 1.17人 | 1.4人 |
| 職業紹介・労働者派遣業 | 1.2万社 | 1.3万社 | +0.2万社 | +15% | 0.4% | 1.18人 | 10.1人 |
| 小売業 | 25.9万社 | 25.3万社 | −0.6万社 | −2% | −1.4% | 1.55人 | 6.1人 |
| 製造業 | 18.7万社 | 17.1万社 | −1.6万社 | −8% | −3.7% | 1.69人 | 5.3人 |
※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データ(年次別・金融業、保険業以外の業種・原数値)の母集団(年度末の法人数)から当サイトが計算。1社あたり役員数・従業員数は2023〜2025年度の合計÷社数の合計。掲げた業種の合計は全産業と一致しない(ほかの業種がある)
全体では10年で42.3万社、24%増えました。増えた分の22.7%が専門・技術サービス業、20.2%が不動産業で、この2業種で4割を超えます。建設業(15.5%)、情報通信業(8.2%)が続きます。
増えたのは、人を雇わない業種
増えた業種には共通点があります。1社あたりの従業員数が少ないことです。
- 不動産業:従業員0.7人
- 広告業:1.4人
- 情報通信業:2.0人
- 専門・技術サービス業:2.6人
社長1人、あるいは社長と家族だけで回る仕事です。反対に、従業員を多く抱える製造業(5.3人)と小売業(6.1人)は、会社の数が減っています。業種別の役員給与の水準は業種別に見た小さい会社の役員給与で並べています。
同じ時期に、総務省の労働力調査では自営業主が2015年の546万人から2025年の499万人に減っています(自営業主と会社役員の推移)。自営業主が減り、人を雇わない小さな会社が増えた。2つの統計を合わせると、一人で事業をする人が、個人ではなく会社を器に選ぶ流れが見えてきます。
不動産業:資産管理会社の増加と重なる
不動産業で増えた8.5万社の多くは、賃貸用の不動産を個人ではなく会社で持つ形と考えられます。1社あたり従業員0.7人、役員1.44人という数字は、家族を役員にして家賃収入を管理する資産管理会社の姿と重なります。
不動産所得は、個人だと所得が増えるほど累進税率がかかる一方、会社に移すと法人税の税率と、家族への役員報酬の分散が使えます。ただし会社で持つ形にも、管理料だけを会社に払う方式、物件ごと会社に移す方式などがあり、税と手間が大きく違います(不動産管理会社の方式)。
専門・技術サービス業と情報通信業:一人会社の増加
専門・技術サービス業にはコンサルタント、デザイナー、設計事務所、翻訳などが、情報通信業にはソフトウェア開発やWeb制作などが入ります。フリーランスとして始めた人が法人成りする代表的な業種で、それぞれ+67%、+51%と大きく増えました。
これらの業種は売上に対する経費が少なく、事業所得が売上に近くなりやすいため、法人化の損益分岐点に早く届く傾向があります。ただし、職種によって分岐点は大きく違います(ライター・エンジニア・デザイナーで法人化の分岐点は932万円違う)。
医療・福祉業:+71%で増加率は最大
増加率が最も大きかったのは医療・福祉業の+71%でした。この業種の会社は1社あたり従業員12.5人と多く、訪問介護や障害福祉サービスのように、法人でなければ事業の指定を受けられないサービスが含まれます(訪問介護は法人でないと開業できない)。この業種の増加は、税の損得より制度の要件で法人を選ぶ動きと考えられます。
業種の流れは、自分の判断材料の1つにすぎない
同業の会社が増えていても、自分にとって法人化が得かどうかは別の問題です。法人化の目安と、税以外の理由も含めた判断の全体像は法人化の目安は所得いくらかにまとめています。
まとめ
- 資本金1千万円未満の会社は、2013〜2015年度平均の172.9万社から2023〜2025年度平均の215.2万社へ42.3万社(24%)増えた
- 増加分の22.7%が専門・技術サービス業(+9.6万社)、20.2%が不動産業(+8.5万社)、15.5%が建設業(+6.6万社)
- 増加率は医療・福祉業+71%、専門・技術サービス業+67%、情報通信業+51%が大きく、製造業−8%・小売業−2%は減少
- 増えた業種は1社あたり従業員が少なく(不動産業0.7人、情報通信業2.0人)、一人会社に近い形
- 同じ期間に自営業主は減っており、一人で事業をする人が会社を選ぶ流れと読める
自分の業種と売上・経費で、法人化した場合の手取りの差を判定ツールで確かめてください。
よくある質問
法人企業統計の「母集団」とは、何の数ですか。
推計のもとにしている法人の数で、年度末時点の営利法人等の数です。標本の回答を母集団の数に合わせて拡大して推計値を出しています。ここでは、その法人の数そのものを比べています。
3年度の平均で比べているのはなぜですか。
業種別の値は年度ごとに振れがあるため、2013〜2015年度と2023〜2025年度のそれぞれ3年度分を平均して比べています。単年度どうしで比べると、増減の大きさが変わることがあります。
増えた会社は、個人事業主が法人成りしたものですか。
統計からは分かりません。新しく事業を始めるときに最初から会社を作った人、個人事業から法人成りした人、資産管理のために会社を作った人などが混ざっています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。