法人化の判断

小さい会社の手元資金は月商3.0か月分。25年で2倍、自己資本比率は22.9%

結論

財務省の法人企業統計(2025年度)では、資本金1千万円未満の会社221.3万社の現金・預金は1社あたり1,942万円、月商(売上高÷12)の3.0か月分でした。金融機関からの借入金は月商の4.2か月分、金融機関以外からの借入金は2.2か月分、純資産÷資産合計(自己資本比率)は22.9%です。2000年度は現金・預金が1.4か月分、自己資本比率9.7%で、手元資金と自己資本は25年で2倍以上に厚くなりました。

  • 一人社長の会社が1期目の決算後2か月以内にまとめて払う法人税等と消費税は、売上1,200万円で170.4万円、月商の1.7か月分(計算エンジン)
  • 資本金1千万円未満の会社は、金融機関以外からの借入金が月商の2.2か月分と、資本金の大きい会社(0.6〜1.5か月分)より厚い
  • 2020〜2021年度は金融機関借入金と現金・預金が同時に増え、借入金は月商の6.2か月分まで上がった。その後は4.2か月分に戻っている

法人化すると、税の払い方が変わります。個人の所得税や住民税、国民健康保険料は前年の所得をもとに後から何回かに分けて来ますが、会社の法人税・消費税は決算から2か月以内に1年分をまとめて払います。そのとき手元にどれだけお金を残しておけばよいか。実際の小さな会社がどれだけ現金を持っているかを、財務省の法人企業統計で確かめます。

小さい会社は月商3.0か月分の現金・預金を持つ

法人企業統計の時系列データから、2025年度の資本金階級別の値を出しました。現金・預金と借入金は、月商(売上高÷12)の何か月分にあたるかで並べています。

資本金1社あたり売上高(月)1社あたり現金・預金現金・預金(月商の何か月分)金融機関借入金(月商の何か月分)金融機関以外からの借入金(月商の何か月分)純資産÷資産合計
1千万円未満648万円1,942万円3.0か月4.2か月2.2か月22.9%
1千万〜2千万円2,847万円9,321万円3.3か月4.1か月1.5か月41.9%
2千万〜5千万円8,197万円24,162万円2.9か月2.4か月0.6か月47.0%
5千万〜1億円23,047万円57,862万円2.5か月2.7か月0.9か月45.6%
全規模4,628万円10,170万円2.2か月3.2か月1.4か月41.8%

※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データ(年次別・金融業、保険業以外の業種・原数値)から当サイトが計算。借入金は流動負債(短期)と固定負債(長期)の合計。月商は売上高÷12

資本金1千万円未満の会社は、現金・預金を月商の3.0か月分持っていました。全規模の2.2か月分より厚く、資本金の大きい会社と比べても遜色ありません。

一方で、自己資本比率(純資産÷資産合計)は22.9%と、資本金1千万円以上の階級(41.9〜47.0%)の半分程度です。手元の現金は持っていても、その多くは借入で支えられています。純資産の中身(残してきた利益=利益剰余金)の推移は小さい会社の内部留保で集計しています。金融機関からの借入金は月商の4.2か月分、金融機関以外からの借入金は2.2か月分で、合わせると現金・預金の2倍あります。

金融機関以外からの借入金が、資本金の大きい会社(0.6〜1.5か月分)より厚いのも小さな会社の特徴です。統計では内訳が分かれていませんが、小さな会社では社長が会社にお金を貸している例が多く、その分がここに入っていると考えられます。社長からの借入金の返し方や利息の扱いは役員借入金の返済と利息で扱っています。

25年で手元資金は2倍、自己資本比率は2.4倍に

資本金1千万円未満に絞って推移を見ると、小さな会社の財務は大きく変わっていました。

年度現金・預金(月商の何か月分)金融機関借入金(月商の何か月分)金融機関以外からの借入金(月商の何か月分)純資産÷資産合計
2000年度1.4か月3.5か月1.6か月9.7%
2005年度1.4か月3.3か月1.9か月10.1%
2010年度1.8か月4.7か月2.4か月5.7%
2015年度2.2か月4.4か月2.6か月13.9%
2019年度2.3か月4.7か月2.2か月17.1%
2020年度3.2か月5.6か月2.7か月17.9%
2021年度3.4か月6.2か月2.9か月16.8%
2023年度2.8か月4.5か月2.1か月20.3%
2024年度2.7か月4.4か月2.5か月21.3%
2025年度3.0か月4.2か月2.2か月22.9%

※ 財務省「法人企業統計調査」時系列データから当サイトが計算

現金・預金は2000年度の月商1.4か月分から3.0か月分へ2倍以上になり、自己資本比率は9.7%から22.9%へ上がりました。2010年度の5.7%を底に、おおむね上がり続けています。資本金1千万円未満の会社の役員給与で見たとおり、小さな会社が利益を役員給与で使い切らず会社に残すようになった時期と重なります。

2020〜2021年度は、金融機関借入金が月商の5.6〜6.2か月分に増え、同時に現金・預金も3.2〜3.4か月分に増えました。借りたお金を現金のまま手元に置いていた動きで、その後は借入金が4.2か月分まで戻っています。

1期目の決算後に、月商1.3〜2.1か月分の税が来る

この「月商の何か月分」という物差しで、法人化した会社が最初に直面する支払いを見ておきます。法人税と消費税は、1期目には中間申告がありません。1期目の決算が終わってから2か月以内に、1年分をまとめて納めることになります。

売上(税抜)月商法人税・住民税・事業税消費税(インボイス登録済み・原則課税)合計月商の何か月分
1,000万円83.3万円19.7万円88.0万円107.7万円1.3か月
1,200万円100.0万円62.4万円108.0万円170.4万円1.7か月
1,500万円125.0万円129.0万円138.0万円267.0万円2.1か月
2,000万円166.7万円136.7万円188.0万円324.7万円1.9か月

※ 計算エンジン。経費200万円・東京23区・40歳未満・単身・合同会社・最適報酬。法人税等には均等割を含む

売上1,200万円の一人会社なら、1期目の決算後に170.4万円、月商の1.7か月分をまとめて払います。統計上の小さな会社が持っている現金・預金(3.0か月分)の半分以上にあたります。インボイス登録済みなら消費税はその6割以上を占め、売上を受け取った時点で預かっている税を1年間使わずに残しておけるかが問われます。

さらに法人成りした年は、個人事業の最後の年の所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険料が後払いで重なります。その重なり方は法人成り1年目の資金繰りで月ごとに計算しています。

手元資金の目安をどう決めるか

統計の月商3.0か月分は、多くの業種・規模の会社の合計から出た比で、1社ごとの適正額ではありません。一人会社が自分の目安を決めるときは、次を足し合わせるのが現実的です。

  • 決算後2か月以内にまとめて払う法人税等と消費税(上の表で月商の1.3〜2.1か月分)
  • 毎月の役員報酬と社会保険料、家賃などの固定費
  • 法人成りした年は、個人事業の後払い分

法人化するかどうかの判断そのものは、資金繰りではなく手取りの差で決まります。法人化の目安の全体像は法人化の目安は所得いくらかにまとめています。

まとめ

  • 資本金1千万円未満の会社の現金・預金は月商の3.0か月分、金融機関借入金は4.2か月分、金融機関以外からの借入金は2.2か月分(2025年度)
  • 自己資本比率は22.9%で、資本金1千万円以上の会社(41.9〜47.0%)の半分程度
  • 2000年度から現金・預金は月商1.4か月分→3.0か月分、自己資本比率は9.7%→22.9%に上がった
  • 2020〜2021年度は借入金と現金・預金が同時に増え、その後は借入金が月商4.2か月分に戻った
  • 一人会社が1期目の決算後にまとめて払う法人税等と消費税は、売上1,200万円で170.4万円(月商1.7か月分)

自分の売上と経費で、法人化した場合の税と手取りを判定ツールで確かめてください。

よくある質問

「月商の何か月分」は、どう計算していますか。

現金・預金や借入金の年度末の残高を、その年度の売上高を12で割った額で割っています。どちらも法人企業統計の推計値の合計どうしの比で、1社ごとの値の平均ではありません。

金融機関以外からの借入金には何が入りますか。

法人企業統計では借入金を金融機関借入金とその他の借入金に分けています。その他の借入金は金融機関以外からの借入金で、小さな会社では社長などの役員や関係会社からの借入が含まれると考えられますが、統計では内訳が分かれていません。

法人化した最初の年は、税の支払いがない期間がありますか。

法人税と消費税は、1期目は中間申告がありません。1期目の決算が終わってから2か月以内に、1年分をまとめて納めます。2期目からは前期の税額に応じて中間申告が必要になります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。