役員報酬

役員借入金300万円を返しても税金0円。利息3万円だけ雑所得

役員借入金300万円の元本を月10万円ずつ返す場合と、年1%の利息3万円を払う場合を比較。会社の経費、社長の雑所得、確定申告、無利息、債務免除まで解説します。

会社の口座残高が足りず、社長が個人口座から300万円を入金した。このとき会社側で使う勘定科目が「役員借入金」です。

会社に利益が出たあと、社長へ月10万円ずつ返すとします。年間120万円が社長の口座へ移りますが、実在する貸付金の元本返済なら、会社の経費は0円、社長の課税所得も0円です。

一方、残高300万円に年1%の利息3万円を払えば、会社では原則として支払利息、社長では非営業用貸金の利子として雑所得になります。元本と利息を同じ「社長への支払い」として処理すると、会社と個人の申告を両方誤ります。

役員借入金は「社長が会社へ貸したお金」

名前が分かりにくいのは、会社から見て仕訳するからです。

勘定科目お金の向き会社の貸借対照表
役員借入金社長→会社負債
役員貸付金会社→社長資産

社長が会社へ300万円を振り込んだとき、会社の仕訳は次の形です。

借方:普通預金300万円/貸方:役員借入金300万円

この時点で会社の現金は増えますが、売上や利益は増えません。同額の返済義務である負債が増えるためです。社長側でも、現金300万円が会社に対する貸付金へ形を変えただけです。

反対の役員貸付金には、会社が社長個人へ資金を渡すことによる認定利息の問題があります。役員貸付金の認定利息は年0.9%で扱っているのは会社→社長の方向です。この記事の役員借入金とは逆です。

元本120万円を返しても損益は0円

月10万円、年間120万円の元本を返したときの会社の仕訳は次のとおりです。

借方:役員借入金120万円/貸方:普通預金120万円

借入金という負債と現金が同額減ります。損益計算書の経費は通らないため、会社の課税所得は減りません。

社長も、自分が貸した元本120万円を回収しただけです。120万円の給与や配当を受け取ったのではないため、所得税の対象になりません。社会保険の標準報酬月額にも通常は含めません。

会社から社長への支払い会社の現金減少会社の損益法人税等への影響社長の課税所得
元本返済120万円0円0円0円
年1%の利息3万円3万円の費用約6,900円減3万円増

元本返済は税金を減らしませんが、社長個人へ会社資金を戻す正規の経路です。役員報酬のような給与課税も、配当のような配当課税もないため、役員借入金残高が実在するなら、返済余力と運転資金を確認しながら計画的に返せます。

ただし「役員借入金」という帳簿残高があれば何でも非課税で引き出せるわけではありません。最初の入金がなかった、個人経費と会社経費を混同して作った残高、過去の現金勘定のずれを合わせただけ、といった場合は債務の実在性を説明できません。

利息3万円は会社の費用、社長の雑所得

元本300万円が1年間変わらず、年1%の利息を年末に払う単純例では、利息は3万円です。

会社が事業資金として借り、合理的な契約に基づき適正な利息を払うなら、3万円は原則として支払利息になります。費用計上前の所得500万円、東京23区の小規模法人として当サイトの2026年分計算エンジンで概算すると、法人税等は約6,900円減りました。

社長側では、国税庁No.1500が例示する「非営業用貸金の利子」として、通常はその他の雑所得になります。銀行預金の利子のような源泉分離課税ではなく、給与所得などと合算する総合課税です。

役員報酬が年600万円の社長について、同じ計算エンジンで所得税・復興特別所得税と住民税を概算すると、利息3万円による個人税の増加は約6,000円でした。

利息3万円の効果金額
会社の法人税等約6,900円減
社長の所得税・住民税約6,000円増
社長の税引後利息約2万4,000円

会社と社長を合計すると税効果は小さく見えますが、法人と個人は別の納税者です。会社だけで3万円を経費にして、社長が雑所得の申告を忘れることはできません。計算はscripts/yakuin-kariirekin-hensai-risoku.mjsで再現できます。

返済で残高が毎月減る契約なら、300万円×1%をそのまま使わず、各月の残高と日数に応じて利息を計算します。元本返済分と利息分を振込記録や返済表で分けます。

同族会社の役員は「20万円以下なら申告不要」に注意

給与所得者は、給与以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告が不要になる場合があります。しかし、一人社長が自分の同族会社から利息を受け取る場合、この一般的な説明だけで申告不要と判断してはいけません。

国税庁の「確定申告が必要な方」は、同族会社の役員やその親族などが、その同族会社から給与のほかに貸付金の利子、店舗・工場の賃貸料、機械・器具の使用料などを受けた場合を、申告が必要なケースとして挙げています。

したがって利息が3万円でも、「20万円以下だから何もしない」と処理しません。会社が支払った利息の年間合計を集計し、社長の確定申告へ雑所得として反映します。

ここで想定しているのは、日本の居住者である社長個人への通常の非営業用貸金利子です。社長が非居住者になった場合は、貸付金利子の源泉徴収や租税条約、支払調書が問題になります。国外転居がある年は同じ処理を続けず、支払前に確認してください。

無利息にするか、利息を付けるか

社長が会社へ貸す役員借入金は、無利息契約にする例も多くあります。会社が社長へ貸す役員貸付金と違い、会社が通常取るべき利息を放棄して社長へ利益を与える方向ではありません。

無利息なら会社に支払利息はなく、社長にも受取利息・雑所得はありません。会社の資金繰りを支援する目的と契約内容を明記し、残高だけを長年放置しないよう返済方針を決めます。

利息を付けるなら、次を契約書に記載します。

  • 貸付元本と入金日
  • 資金使途
  • 利率と利息の計算期間
  • 元本・利息の支払日
  • 返済方法と期限
  • 繰上返済、遅延時の扱い

高い利率を設定すれば、会社の利益を自由に社長へ移せるわけではありません。会社の調達状況、市場金利、担保、返済順位などから合理性を説明できない過大な利息は、全額が会社の損金として認められない、役員への経済的利益と見られる、といった論点が生じます。

資本金とは返し方が違う

社長が会社へ300万円を出す方法には、貸付けのほかに資本金として出資する方法があります。

比較役員借入金資本金
貸借対照表負債純資産
会社から返す方法契約に基づく元本返済自由な元本返済はできず、減資等の手続きが必要
返済時の会社経費ならない通常の費用ではない
利息契約により有無を決めるなし。利益還元は配当など
財務指標負債が増える自己資本が増える

役員借入金は登記せず機動的に入金・返済できますが、貸借対照表の負債です。残高が大きいと自己資本比率を下げ、返済によって会社の現金も減ります。資本金は返済期限のある債務ではありませんが、社長が必要なときに単純返済で取り戻せません。

設立時に全額を資本金へ入れるか、一部を役員借入金にするかは、返済可能性、必要運転資金、金融機関への説明、資本金額で変わる税制を並べて決めます。資本金1,000万円で消費税と均等割が変わるも確認してください。

借入金を消すための債権放棄は返済ではない

会社に返済余力がないからと、社長が役員借入金を放棄する場合があります。これは元本返済ではありません。会社は返済義務を免れる経済的利益を得るため、原則として債務免除益を益金に算入します。

たとえば300万円を放棄すれば、会社の負債は300万円減りますが、同額の債務免除益が生じます。繰越欠損金と相殺できる場合はあっても、単に借入金を消す仕訳ではありません。社長個人の貸付金損失も、給与などから自由に差し引けるとは限りません。

債権を資本金等へ振り替えるデット・エクイティ・スワップも、単純な科目振替ではありません。債権の評価、増資の会社法手続き、登記、資本金増加による税務を確認します。

欠損金と債務免除益を相殺する計画なら、法人の欠損金は10年、個人は3年の申告要件も先に確認してください。

返済前に照合する5つの資料

役員借入金を返す前に、残高の根拠を次の資料で確かめます。

  1. 金銭消費貸借契約書または取締役決定書
  2. 社長個人口座から会社口座への入金記録
  3. 会社が立替経費を計上した場合の領収書・精算書
  4. 総勘定元帳と返済開始前の残高確認書
  5. 元本と利息を区分した返済予定表

社長が会社経費を個人カードで立て替え、その精算を役員借入金へまとめる場合は、経費の領収書と事業関連性も必要です。私的支出まで借入金残高へ入れて返すと、元本返済ではなく役員への給与や貸付けと判断される可能性があります。

返済額は税引後利益ではなく、現金残高から出ていきます。法人税、消費税、社会保険料、買掛金、給与の支払予定を資金繰り表へ入れ、最低運転資金を残して返します。

まとめ

  • 役員借入金は社長が会社へ貸した資金で、会社の負債
  • 元本を年間120万円返しても、会社の経費0円、社長の課税所得0円
  • 元本300万円に年1%の利息を払うと、3万円は会社の支払利息、社長の雑所得
  • 所得500万円の法人では法人税等が約6,900円減り、役員報酬年600万円の社長では所得税・住民税が約6,000円増える試算
  • 同族会社の役員が自社から貸付金利子を受ける場合、20万円以下でも確定申告が必要となる規定に注意する
  • 無利息契約も選択肢だが、契約、入金記録、残高、返済方針を残す
  • 債権放棄は返済ではなく、会社に原則として債務免除益が生じる

役員借入金は、役員報酬を増やさず社長へ資金を戻せる便利な負債です。ただし非課税なのは、実在する元本を返しているからです。元本と利息を分け、最初の入金から最後の返済まで証拠がつながる状態にしてください。

よくある質問

役員借入金の元本を社長へ返すと、社長に所得税がかかりますか?

実在する貸付金の元本を契約どおり返すだけなら、社長に新しい所得は生じません。会社でも借入金という負債が減るだけで、返済額は経費になりません。資金を貸した証拠、契約書、残高、返済記録を保存します。

会社から受け取った役員借入金の利息は何所得ですか?

社長が貸金業を営むのではなく、自分の会社へ資金を貸した通常の例では、受取利息は非営業用貸金の利子として雑所得になります。給与など他の所得と合算する総合課税です。同族会社の役員が自社から利息を受け取る場合は、20万円以下でも確定申告が必要となる規定に注意してください。

社長から会社への貸付けは無利息でもよいですか?

会社が社長へ貸す役員貸付金とは違い、社長が会社を無利息で支援する通常の役員借入金について、会社が必ず社長へ認定利息を払う制度ではありません。ただし契約・返済条件を明確にし、会社から社長へ不自然に高い利息を移す場合は、適正額や役員給与等の論点を個別に確認します。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。