法人化の判断

都道府県別の法人化率。東京47.5%、沖縄27.1%。差の大半は農業の多さ

結論

令和2年国勢調査で、役員÷(役員+雇人のある業主+雇人のない業主)で計算した法人化率は、全国39.3%、最も高い東京都47.5%、最も低い沖縄県27.1%でした。下位は秋田・高知・和歌山・佐賀など農林漁業で独立して働く人が多い県で、法人化率と農林漁業の割合の相関係数は−0.84です。農林漁業を除くと全国43.4%、東京都47.9%・沖縄県31.9%で、協会けんぽの健康保険料率との相関は−0.05とほぼありません。

  • 建設業だけで比べると北海道59.1%・宮城県55.4%が東京都54.2%を上回る。地方でも、会社と取引する業種では法人化が進んでいる
  • 情報通信業は全国56.1%で、どの県でも全産業より高い。富山県62.6%が最高
  • 協会けんぽの料率差で動く損益分岐点は1,237万〜1,296万円。法人化率の地域差は保険料率ではなく、産業の構成で説明される

職業別の法人化率では、独立して働く人のうち会社の役員として働く人の割合が、職業によって3%から67%まで違うことを確かめました。では、住んでいる地域で違いはあるのか。国勢調査は都道府県別にも従業上の地位を集計しているので、同じ物差しで47都道府県を並べられます。

東京都47.5%から沖縄県27.1%まで、20ポイントの差

法人化率は、職業別の記事と同じく次の式で計算しました。

法人化率 = 役員 ÷(役員 + 雇人のある業主 + 雇人のない業主)

都道府県別の第2表は、雇人のない業主に家庭内職者を含んでいます。そのため全国の値は39.3%で、職業別の表(39.7%)とわずかに違います。

順位都道府県全産業農林漁業を除く建設業情報通信業独立して働く人に占める農林漁業
1東京都47.5%47.9%54.2%59.0%1.1%
2神奈川県45.5%46.7%52.2%58.7%3.1%
3埼玉県42.8%45.1%48.2%56.1%5.6%
4千葉県42.7%46.2%51.2%58.4%8.7%
5愛知県42.5%45.2%48.9%53.0%6.7%
6広島県42.3%45.9%52.1%51.8%9.3%
7大阪府41.8%42.4%41.8%51.6%1.8%
8北海道41.8%46.7%59.1%53.3%15.7%
9宮城県40.2%45.8%55.4%55.3%14.3%
10富山県40.0%43.4%47.1%62.6%10.1%
…
38鹿児島県31.3%38.8%48.6%43.0%24.7%
39長崎県31.1%37.8%41.3%53.5%20.1%
40岩手県30.4%40.8%51.0%47.1%29.1%
41宮崎県30.0%37.1%43.9%57.7%24.2%
42青森県29.9%41.2%53.1%53.7%30.0%
43佐賀県29.2%37.5%40.4%45.2%24.0%
44秋田県28.3%37.1%46.8%51.0%27.9%
45高知県27.7%36.5%44.8%45.2%26.6%
46和歌山県27.4%34.5%35.7%47.6%21.9%
47沖縄県27.1%31.9%38.7%46.3%16.4%
—全国39.3%43.4%48.2%56.1%11.1%

※ 総務省統計局「令和2年国勢調査」第2表(e-Stat)から当サイトが計算。常住地ベースの15歳以上就業者。農林漁業は産業大分類の「農業,林業」と「漁業」。「独立して働く人」は役員と業主の合計

上位は東京都と周辺の3県、愛知県、大阪府など大都市圏が占めます。下位10県のうち9県は、独立して働く人の2割以上が農林漁業です。

下位の県は、農林漁業で独立して働く人が多い

農業や漁業は、個人の農家・漁業者として営むのが基本の産業です。全国でも農林漁業の法人化率は6.0%にとどまり、この産業の割合が高い県ほど全体の法人化率が下がります。47都道府県で、全産業の法人化率と「独立して働く人に占める農林漁業の割合」の相関係数を計算すると**−0.84**で、強い負の相関があります。

農林漁業を除いて計算し直すと、全国は43.4%、東京都47.9%、沖縄県31.9%です。全産業で20.4ポイントあった差は、16.0ポイントに縮みます。青森県は29.9%から41.2%、岩手県は30.4%から40.8%と、11ポイント前後も上がります。

建設業だけなら、北海道と宮城県が東京都を上回る

産業の構成をそろえるため、1つの産業の中で比べます。独立して働く人が多い建設業では、全国48.2%に対し、北海道59.1%、宮城県55.4%、東京都54.2%の順で、地方の県が東京都を上回ります。

建設業は、元請けとの取引や公共工事の入札、建設業許可などで法人格が求められやすい業種です(建設業許可の個人業者の推移)。地域の公共工事の比重が大きい県では、会社として工事を受ける人が多くなると考えられます。

情報通信業は全国56.1%で、どの都道府県でも全産業の率を上回ります。富山県62.6%、東京都59.0%、神奈川県58.7%が上位です。発注元が会社である業種では、地方でも会社を選ぶ人が多いことが分かります。

協会けんぽの保険料率とは、ほとんど相関しない

法人化すると社長も協会けんぽ(または健康保険組合)に入るので、都道府県ごとに違う健康保険料率は、法人化の損得に影響します。当サイトの計算エンジンで、国民健康保険料を全国平均(概算)に固定し、協会けんぽの支部だけを変えて損益分岐点を出しました。

都道府県協会けんぽ健康保険料率損益分岐となる事業所得法人化率(農林漁業を除く)
佐賀県10.55%1,296万円37.5%
北海道10.28%1,284万円46.7%
徳島県10.24%1,283万円42.0%
福島県9.50%1,249万円45.5%
沖縄県9.44%1,247万円31.9%
新潟県9.21%1,237万円43.5%

※ 協会けんぽの料率は令和8年度。損益分岐点は国保を全国平均(概算)・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社・経費200万円/2026年(令和8年)分基準。法人化率は令和2年国勢調査

保険料率が最も低い新潟県と最も高い佐賀県で、損益分岐点の差は59万円です。しかし法人化率との関係を見ると、料率が高い北海道の法人化率(農林漁業を除く46.7%)は全国より高く、料率が低い沖縄県は全国で最も低くなっています。47都道府県で計算した相関係数は、健康保険料率と法人化率で**−0.05**、損益分岐点と法人化率で−0.04です。

協会けんぽの料率は年度ごとに変わり、国勢調査は2020年時点の数字なので、時点の違いはあります。それでも、地域の法人化率の差は保険料率では説明できず、産業の構成と取引先の性質で決まっていると見るのが自然です。料率差が損益分岐点を動かす仕組みは協会けんぽの料率差と法人化の分岐点で、47支部すべてを試算しています。

政令市で比べても、国保の高さとは関係がない

国民健康保険料は市区町村ごとに違い、協会けんぽの料率差より大きく開くことがあります。国勢調査の第2表には政令指定都市と東京都特別区部の行もあるので、そのうち当サイトが国保の料率を持っている21市区(東京23区と政令指定都市20市)で、法人化率と国保・損益分岐点を並べました。当サイトが料率を収録している63市区のうち、残る42市は第2表に行がないため表に入れていません。

市法人化率(農林漁業を除く)国保(事業所得600万円・単身)損益分岐となる事業所得
千葉市50.0%64.9万円1,260万円
東京23区49.8%65.6万円1,266万円
横浜市49.6%68.5万円1,272万円
さいたま市49.5%65.2万円1,257万円
札幌市49.1%71.0万円1,284万円
名古屋市48.3%71.8万円1,270万円
広島市47.7%70.2万円1,262万円
仙台市47.5%70.2万円1,277万円
川崎市47.2%69.9万円1,269万円
岡山市47.1%70.3万円1,274万円
新潟市44.4%65.2万円1,237万円
熊本市44.2%60.3万円1,276万円
相模原市43.7%61.4万円1,269万円
福岡市43.5%56.2万円1,277万円
大阪市43.1%80.8万円1,283万円
北九州市43.0%74.0万円1,277万円
浜松市42.9%61.8万円1,255万円
堺市42.2%80.8万円1,283万円
神戸市41.8%67.1万円1,279万円
京都市40.5%67.2万円1,266万円
静岡市39.9%60.4万円1,255万円

※ 法人化率は令和2年国勢調査 第2表(常住地、農林漁業を除く)。国保は令和8年度の料率で、青色申告特別控除後の事業所得600万円・40歳未満・単身。損益分岐点は40歳未満・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社・経費200万円/2026年(令和8年)分基準。scripts/kokusei-chosa-hojinka-ritsu-seireishi.mjs で再生成

この21市区では、国保は大阪市・堺市の80.8万円から福岡市の56.2万円まで24.6万円の差がありますが、法人化率との相関係数は0.07です。損益分岐点は1,237万〜1,284万円の47万円の幅に収まり、法人化率との相関は−0.02でした。

損益分岐点の幅が国保の差より小さいのは、分岐点のあたりの所得ではこの21市区のどこでも国保が賦課限度額に届き、市による違いが小さくなるためです。47万円の幅の大半は、本店を置く都道府県の協会けんぽの料率の違いから来ています(国保の自治体差は法人化の分岐点をほとんど動かさない)。市の中で見ても、法人化率は保険料の高さではなく、産業の構成で決まっているようです。東京23区の区ごとの差は東京23区の法人化率で計算しています。

地域の率ではなく、住んでいる自治体と業種で計算する

自分の県の法人化率が高くても低くても、それは法人化したほうが得かどうかとは関係がありません。損得を決めるのは、住んでいる市区町村の国民健康保険料、本店を置く都道府県の協会けんぽの料率、業種ごとの個人事業税、そして何より事業所得の大きさです。

国保は同じ所得でも市区町村で年20万円以上違うことがあり、協会けんぽの料率差よりも影響が大きくなる場合があります。判定ツールでは、主要な市区の国保と47支部の料率を選んで計算できます。所得別の判断の目安は法人化の目安となる所得に、計算の前提は計算方法にまとめています。

まとめ

  • 令和2年国勢調査の法人化率(役員÷(役員+業主))は全国39.3%、東京都47.5%、沖縄県27.1%
  • 下位の県は農林漁業で独立して働く人が多い。法人化率と農林漁業の割合の相関係数は−0.84。農林漁業を除くと差は20.4ポイントから16.0ポイントに縮む
  • 建設業だけなら北海道59.1%・宮城県55.4%が東京都54.2%を上回る。情報通信業はどの県でも全産業より高い
  • 協会けんぽの料率差で損益分岐点は59万円動くが、法人化率との相関係数は−0.05でほぼ無関係
  • 地域の率ではなく、住んでいる自治体の国保・本店の支部・業種・事業所得で、自分の手取りを比べる

よくある質問

都道府県別の法人化率は、事業所の所在地で数えていますか。

違います。国勢調査の第2表は常住地(住んでいる場所)で集計しています。東京都に会社を登記していても、社長が神奈川県に住んでいれば神奈川県の役員として数えられます。

地方では法人化しないほうが得ですか。

地域だけで決まるものではありません。協会けんぽの保険料率の違いで動く損益分岐点の幅は60万円ほどで、国民健康保険料は市区町村ごとにさらに違います。住んでいる自治体の国保と、本店の所在地の協会けんぽ支部で計算する必要があります。

法人化率が低い県では、法人の手続きや税理士を探すのに不利ですか。

この統計からは分かりません。法人化率は独立して働く人に占める会社の役員の割合で、税理士の数や手続きのしやすさを表す数字ではありません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。