法人化の判断

東京23区の法人化率。港区64.3%から中野区44.1%まで、国保が同じでも20ポイント差

結論

令和2年国勢調査(常住地)で、役員÷(役員+業主)で計算した法人化率は、特別区部全体で49.9%でした。区別では港区64.3%、千代田区63.5%、中央区62.1%、渋谷区55.2%が高く、中野区44.1%、足立区44.7%、板橋区・葛飾区44.9%が低く、最大で20.2ポイントの差があります。23区は国民健康保険料が特別区統一保険料率で、協会けんぽの支部も同じ東京なので、計算エンジンの損益分岐点はどの区でも事業所得1,266万円です。差は保険料ではなく、住んでいる人の仕事や所得の違いから生まれています。

  • 同じ情報通信業でも、港区75.1%・中野区53.5%と21.6ポイントの差がある。業種の構成をそろえても区の差は残る
  • 独立して働く人に占める情報通信業・学術研究専門技術サービス業の割合と法人化率の相関は0.49にとどまる。杉並区・中野区は割合が高いのに法人化率は低い
  • 23区はどの区に住んでも、法人化の判定に使う国保・社会保険の条件は同じ。住む区で法人化の損得は変わらない

都道府県別の法人化率では、東京都が47.5%で全国1位でした。では、東京23区の中ではどうか。23区は国民健康保険料を特別区統一保険料率で計算し、協会けんぽの支部もすべて東京なので、法人化の損得を決める保険料の条件が同じです。区ごとの法人化率に差があれば、それは保険料以外の理由によるものだと言えます。

港区64.3%、中野区44.1%。最大20.2ポイントの差

国勢調査の区市町村別の表(常住地)から、法人化率=役員÷(役員+雇人のある業主+雇人のない業主)を計算しました。この表の雇人のない業主は家庭内職者を含みません。

順位区役員+業主法人化率情報通信業不動産業学術研究・専門・技術サービス業独立して働く人に占める情報通信+学術専門
1港区24,590人64.3%75.1%75.7%49.8%32.3%
2千代田区7,290人63.5%73.1%73.0%42.8%30.0%
3中央区16,747人62.1%71.7%74.4%46.0%32.2%
4渋谷区24,030人55.2%65.0%66.8%42.2%33.9%
5台東区18,412人54.4%58.0%58.6%37.4%18.2%
6文京区18,972人54.1%64.1%61.5%33.5%29.4%
7江東区30,869人52.8%63.3%62.1%40.7%24.2%
8品川区28,804人52.7%62.9%58.8%41.0%26.5%
9目黒区24,654人51.7%62.0%59.5%39.1%31.8%
10大田区46,646人51.6%60.0%56.5%37.6%19.1%
11新宿区23,473人51.1%61.0%60.3%37.1%29.0%
12墨田区18,854人50.1%59.2%55.4%34.0%17.0%
13世田谷区76,112人50.0%59.7%57.8%36.8%31.4%
14江戸川区39,255人48.3%57.3%60.4%34.0%14.6%
15豊島区20,593人47.5%56.6%54.4%34.2%26.2%
16荒川区14,616人47.0%57.8%54.0%32.4%17.5%
17杉並区42,330人45.5%55.3%56.2%31.2%32.4%
18北区19,315人45.3%53.9%52.2%32.7%21.2%
19練馬区48,499人45.1%54.5%57.2%29.2%25.9%
20葛飾区26,578人44.9%54.8%51.4%31.6%14.1%
21板橋区31,369人44.9%55.1%54.6%30.3%20.0%
22足立区38,676人44.7%55.8%54.3%32.1%13.3%
23中野区22,891人44.1%53.5%52.6%28.9%29.3%
—特別区部663,575人49.9%59.9%59.0%36.3%24.8%
—全国7,915,546人39.6%54.7%59.6%32.8%10.6%

※ 総務省統計局「令和2年国勢調査」表5-3(e-Stat、常住地)から当サイトが計算。産業別の法人化率はその産業で働く役員÷(役員+業主)

都心3区(港区・千代田区・中央区)は6割を超え、全国(39.6%)より20ポイント以上高くなっています。最も低い中野区でも44.1%で、全国平均を上回ります。23区全体では49.9%で、独立して働く人のほぼ半分が会社の役員です。

同じ業種でも、区によって20ポイント違う

区の差は、住んでいる人の業種の違いだけでは説明できません。情報通信業だけで比べても、港区75.1%・千代田区73.1%に対し、中野区53.5%・北区53.9%と、21.6ポイントの差があります。不動産業(港区75.7%・葛飾区51.4%)、学術研究・専門・技術サービス業(港区49.8%・中野区28.9%)も同じ形です。

独立して働く人のうち、法人化率が高い情報通信業と学術研究・専門・技術サービス業の割合を区ごとに出し、全産業の法人化率との相関係数を計算すると0.49でした。杉並区(32.4%)や中野区(29.3%)は、この2つの業種の割合が港区並みに高いのに、法人化率は23区で下位です。一方、全産業の法人化率と不動産業だけの法人化率の相関は0.94と高く、どの業種でも「法人化率の高い区は高い」傾向があります。

国勢調査には所得の項目がないため、理由は確かめられません。ただ、同じ業種の中でも区によって率が揃って違うことから、都心の区には所得の大きい事業者や、すでに会社を経営している人が多く住んでいると考えるのが自然です。

23区では、法人化の損益分岐点はどの区でも同じ

当サイトの計算エンジンで、23区に住む人の損益分岐点を出すと、どの区でも事業所得1,266万円です(40歳未満・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社・経費200万円、2026年分基準)。

23区の国民健康保険料は、各区が共通の基準で定める特別区統一保険料率で計算されます(東京23区の国民健康保険料の計算方法)。法人化後の協会けんぽの保険料率も、本店が23区内なら東京支部の率です。法人化で消える負担と増える負担の計算条件が区によって変わらないため、分岐点も同じになります。

港区の法人化率が高いのは、港区に住むと法人化が得になるからではありません。区ごとの差は、住んでいる人の仕事の規模や所得の違いを映したものです。

住む区ではなく、自分の所得で判断する

都道府県、政令市、23区と、どの単位で見ても、法人化率の差は保険料の高さとはほとんど関係がありませんでした。法人化の損得を決めるのは、事業所得と家族構成、年齢です。

判定ツールでは東京23区を選んで計算できます。所得別の判断の目安は法人化の目安となる所得に、計算の前提は計算方法にまとめています。

まとめ

  • 令和2年国勢調査で、東京23区(特別区部)の法人化率は49.9%。港区64.3%・千代田区63.5%・中央区62.1%が高く、中野区44.1%が最も低い
  • 同じ情報通信業でも港区75.1%・中野区53.5%と差があり、業種の構成をそろえても区の差は残る
  • 情報通信・学術専門の割合と法人化率の相関は0.49。区ごとの差は業種だけでなく、住む人の事業規模や所得の違いによるとみられる
  • 23区は国保の料率も協会けんぽの支部も同じで、損益分岐点はどの区でも事業所得1,266万円
  • 住む区で法人化の損得は変わらない。自分の所得と家族の条件で計算する

よくある質問

区ごとの法人化率は、会社の所在地で数えていますか。

違います。国勢調査は住んでいる場所(常住地)で集計していて、港区に会社を登記していても、社長が世田谷区に住んでいれば世田谷区の役員として数えられます。

23区内で引っ越すと、国民健康保険料は変わりますか。

23区の国民健康保険料は特別区統一保険料率で計算されるため、基本的には変わりません。ただし保険料の減免や独自の助成は区ごとに違う場合があります。

港区に住めば法人化が有利になりますか。

なりません。法人化の損得を決める国保・協会けんぽ・税の条件は23区で同じで、計算上の損益分岐点はどの区でも事業所得1,266万円(40歳未満・単身)です。区ごとの法人化率の差は、住んでいる人の仕事や所得の違いを映したものです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。