法人化の判断

会社役員の平均所得は642万円、自営業主は324万円。20年変わらない2倍の差

結論

令和6年国民生活基礎調査では、2023年の有業者1人当たり平均所得は会社・団体等の役員642.4万円、自営業主324.1万円で、役員は自営業主の1.98倍でした。2003年(667.9万円と312.0万円・2.14倍)からの20年間、2008年を除いてほぼ2倍で推移しています。所得から税・社会保険料などを引いた可処分所得の割合は、役員の世帯が74.7%、自営業者の世帯が72.7%で、所得の低い自営業者の世帯のほうが差し引かれる割合が大きくなっています。

  • 所得金額階級の分布では、中央値の階級は役員500万〜600万円、自営業主200万〜250万円。1,000万円以上は役員16.3%、自営業主4.1%
  • 役員は一人社長を含む全ての会社の役員。差は法人化の効果ではなく、会社を作る人と作らない人の事業規模の差を映している
  • 計算エンジンでは事業所得1,000万円・単身の税と社会保険料の割合は個人35.4%、法人化34.4%。法人化で縮むのは1ポイント程度

会社の役員と個人事業主の所得を、同じ調査の中で比べられる統計は多くありません。厚生労働省の国民生活基礎調査は、毎年の所得を「勤めか自営かの別」に集計していて、その中に「会社・団体等の役員」と「自営業主」が並んでいます。ここでの役員は会社の規模を問わないので、一人社長も含まれます。

2023年は役員642.4万円、自営業主324.1万円

令和6年調査の第19表には、有業者1人当たりの平均所得が2003年から並んでいます。主な年を抜き出しました。

所得の年会社・団体等の役員自営業主正規の職員・従業員役員÷自営業主
2003年667.9万円312.0万円450.6万円2.14倍
2008年540.5万円378.4万円439.5万円1.43倍
2013年634.6万円321.3万円427.9万円1.98倍
2014年733.6万円329.6万円442.8万円2.23倍
2018年672.1万円336.6万円448.5万円2.00倍
2020年733.4万円374.0万円456.1万円1.96倍
2021年687.6万円347.4万円463.1万円1.98倍
2022年678.7万円340.8万円469.7万円1.99倍
2023年642.4万円324.1万円481.1万円1.98倍

※ 厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」第19表(e-Stat)から当サイトが抜粋。2019年の所得は公表なし(令和2年調査は中止)

役員の平均所得は自営業主のほぼ2倍で、この関係は20年間ほとんど動いていません。例外は2008年の1.43倍で、役員の所得が540.5万円まで下がった年です。

役員の平均は年によって100万円近く上下します。所得を調べる所得票は令和6年調査で4,901世帯の回答で、役員はその一部にすぎません。単年の増減は振れとして見るのが安全です。2020年の733.4万円から2023年の642.4万円への下落も、傾向と言い切れる大きさではありません。

一方で、正規の職員・従業員の平均所得は2013年の427.9万円から2023年の481.1万円へ、ほぼ毎年上がっています。自営業主の324.1万円は、正規の職員・従業員の3分の2ほどです。

中央値で比べると、役員500万円台・自営業主200万円台

平均は一部の高所得者に引っ張られます。第92表の所得金額階級別の人数から、分布の形を計算しました。

区分中央値が入る階級所得なし300万円未満(所得あり)600万円以上1,000万円以上
会社・団体等の役員500万〜600万円6.4%18.7%44.2%16.3%
自営業主200万〜250万円8.4%52.4%12.2%4.1%

※ 厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」第92表(e-Stat)から当サイトが計算。表に人数の単位の表示がないため割合のみを示す。中央値は「所得なし」を最も低い階級として数えた

自営業主の半分以上は、所得が300万円未満です。役員は600万円以上が44.2%で、1,000万円以上も16.3%います。

総務省の就業構造基本調査でも、雇人のない業主の収益の中央値は150万〜199万円の階級、会社などの役員は400万〜499万円の階級で、同じような差が出ています(一人で働く業主と会社役員の所得分布)。調査の方法が違っても、役員と自営業主の所得の差は2倍前後で一致します。

なお、2つの調査で「所得」の中身は同じではありません。国民生活基礎調査の用語の説明では、自営業主の事業所得は事業の収入から仕入原価や必要経費(税金・社会保険料を除く)を引いた額、役員の雇用者所得は税金や社会保険料を含む給料・賞与の合計です。どちらも税・社会保険料を引く前の額です。

可処分所得の割合は、自営業者の世帯のほうが低い

第37表は、世帯を業態で分けて、所得と可処分所得を並べています。可処分所得は、所得から所得税・住民税・社会保険料・固定資産税・自動車税等を差し引いた手取りに相当する額です(2022年調査の用語の説明)。

世帯業態平均所得平均可処分所得差(税・社会保険料など)所得に対する差の割合平均世帯人員
総数536.0万円415.6万円120.4万円22.5%2.20人
会社・団体等の役員の世帯1,012.3万円756.6万円255.7万円25.3%2.62人
一般常雇者世帯689.4万円535.9万円153.5万円22.3%2.51人
自営業者世帯591.5万円430.0万円161.5万円27.3%2.55人

※ 厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」第37表(e-Stat)から当サイトが計算。所得は2023年1年間

自営業者の世帯は平均所得が591.5万円で、役員の世帯の6割弱です。それなのに、所得から差し引かれる割合は**27.3%**で、役員の世帯の25.3%より2ポイント高くなっています。所得税は累進課税なので、普通は所得の高い世帯ほど差し引かれる割合は大きくなるはずです。

逆転の理由として考えられるのは、国民健康保険と国民年金の仕組みです。国民年金は所得に関係なく1人月17,920円(令和8年度)の定額で、配偶者も第1号被保険者なら2人分かかります。国保にも世帯員の人数ごとにかかる均等割があります。所得の低い世帯ほど、定額部分の重さが割合として効いてきます。

この統計の可処分所得は、所得票で調べた課税等の状況をもとにしています。統計局が国保を1人当たりの平均額で推計している全国家計構造調査(職業別の税・社会保険料の統計の読み方)とは、この点が違います。

2倍の差は、法人化の効果ではない

「役員の所得は自営業主の2倍」という数字を見ると、会社にすれば所得が増えるように見えます。しかし統計の差は、会社を作った人と作っていない人の違いを映していて、同じ人が法人化したときの変化ではありません。

当サイトの計算エンジンで、同じ事業所得の人が個人のままでいる場合と、法人化して手取りが最大になる役員報酬を取る場合を比べました。

事業所得(青色申告特別控除前)家族個人のまま:手取り個人のまま:税・社会保険料の割合法人化:手取り法人化:税・社会保険料の割合
600万円単身417.8万円30.4%403.7万円32.7%
600万円配偶者あり406.9万円32.2%409.0万円31.8%
1,000万円単身645.8万円35.4%655.8万円34.4%
1,000万円配偶者あり639.5万円36.0%662.5万円33.7%

※ 経費200万円・東京23区・40〜59歳・配偶者は収入なし・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。法人化の手取りは税理士報酬を引く前、法人に残る額を含む。税・社会保険料の割合は(事業所得−手取り)÷事業所得で、法人化側は会社負担の社会保険料と法人の税を含む

事業所得1,000万円・単身でも、法人化で税・社会保険料の割合が下がるのは1ポイント程度です。事業所得600万円・単身では、法人化のほうが2.3ポイント重くなります。

統計の役員の所得が高いのは、もともと所得の大きい事業ほど会社にしやすく、続けやすいからと考えるのが自然です。所得がいくらから法人化で手取りが増えるかは、法人化の目安となる所得で条件別にまとめています。計算の前提は計算方法にあります。

まとめ

  • 2023年の有業者1人当たり平均所得は、会社・団体等の役員642.4万円、自営業主324.1万円で1.98倍。2003年から2008年を除きほぼ2倍で推移
  • 中央値の階級は役員500万〜600万円、自営業主200万〜250万円。自営業主の52.4%は所得300万円未満
  • 所得から税・社会保険料などを引かれる割合は、役員の世帯25.3%に対し自営業者の世帯27.3%。所得の低い自営業者の世帯のほうが重い
  • 役員の所得の高さは法人化の効果ではない。計算エンジンでは事業所得1,000万円・単身で税・社会保険料の割合は1ポイントしか下がらない
  • 統計の平均ではなく、自分の売上と経費で個人と法人の手取りを比べることが判断の材料になる

よくある質問

国民生活基礎調査の「会社・団体等の役員」に一人社長は入りますか。

入ります。調査は仕事を勤めか自営かの別で分類していて、会社・団体等の役員は会社の規模を問いません。従業員5人以上の会社の役員だけを法人経営者とする総務省の家計調査・全国家計構造調査とは区分が違います。

自営業主の所得は売上ですか。

売上ではありません。用語の説明では、事業所得は事業による収入から仕入原価や必要経費(税金・社会保険料を除く)を差し引いた金額です。確定申告の青色申告特別控除の前の額に近い考え方です。

役員の所得は自営業主の2倍なので、法人化すると所得が2倍になりますか。

なりません。統計の差は、すでに規模の大きい事業を会社にしている人と、個人で小さく事業をしている人の違いを映しています。計算エンジンで同じ事業所得を比べると、法人化による手取りの差は事業所得1,000万円・単身で年10.0万円(税理士報酬を引く前)です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。