税金の基礎

事業継続力強化計画の特別償却16%、一人会社で減る税は年5万〜19万円

結論

事業継続力強化計画の認定を受けた青色申告の中小企業が、計画に載せた防災設備を令和9年3月31日までに取得すると、取得価額の16%を特別償却できます。500万円の設備なら80万円の上乗せで、最適な役員報酬を取る一人会社では取得年の法人の税が約5万〜19万円減る計算です(東京23区・概算)。総額は変わらず、償却の前倒しです。

  • 対象は機械装置100万円以上・器具備品30万円以上・建物附属設備60万円以上。令和7年4月1日以後の取得は16%(それ前は18%)
  • 計画の認定(経済産業大臣)が前提。補助金で取得した設備には使えない
  • 役員報酬で利益を出し切る一人会社は法人の課税所得が小さく、同じ80万円でも個人事業主のほうが減る額が大きい

この制度は「中小企業防災・減災投資促進税制」と呼ばれ、令和元年7月16日以後の取得から使えるようになりました。税法上の名前は「特定事業継続力強化設備等の特別償却」(租税特別措置法44条の2)です。自然災害などに備えた設備投資を後押しする目的で、事業継続力強化計画の認定と結び付いているのが、ほかの設備投資減税との違いです。

以下、国税庁の資料で要件を確認したうえで、一人会社と個人事業主で取得年の税がいくら動くかを計算エンジンで出します。

使える人と設備:認定・青色・金額の3条件

国税庁「特別償却の付表の記載項目等一覧表」と措置法通達から、要件を整理します。

要件内容
誰が青色申告をする中小企業者(個人は中小事業者)
前提事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画について、中小企業等経営強化法56条1項・58条1項の経済産業大臣の認定を受けている
何を認定計画に記載された特定事業継続力強化設備等
金額機械装置:1台100万円以上/器具備品:1台30万円以上/建物附属設備:60万円以上
除外補助金等をもって取得したもの

金額要件は「1台または1基」で見ます。複数台を合算して100万円を超えても、1台ずつが基準を下回れば対象になりません。

補助金の除外も見落とされがちです。付表の記載要領には「補助金等受領有」の場合は適用がないと明記されています。防災設備は自治体の補助金と組み合わせて買うことが多いため、補助金を使った設備は、この特別償却とは両立しないと考えておく必要があります。補助金側の処理は補助金100万円で増える負担で扱っています。

償却率は16%。期限は令和9年3月31日

特別償却率は取得の時期で変わります。

取得等をした日特別償却率
令和7年4月1日以後16%
令和7年4月1日前18%

制度の期限は、令和7年度税制改正で2年延長され、令和9年3月31日までの取得が対象です。同じ改正で、感染症対策の設備(サーモグラフィ装置)が対象から外されました。いま新たに計画を立てる人にとっては、防災・減災の設備だけが対象と考えてよい状態です。

令和8年度税制改正の大綱には「器具備品の取得価額要件を40万円以上(現行:30万円以上)に引き上げる」と書かれています。国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」(令和8年5月27日現在)にはこの項目の記載がなく、当サイトでは適用開始時期を確認できていません。30万円台の器具備品を計画に入れる場合は、取得時点の要件を確認してください。

税額控除の選択肢はありません。法人は特別償却に代えて特別償却準備金を積み立てる方法も選べます(適用額明細書の記載の手引で、措置法52条の3の対象として区分コードが設けられています)。

16%の意味:総額は増えず、取得年に寄せるだけ

特別償却は、普通償却に上乗せして初年度に多く償却できる仕組みです。500万円の設備なら、16%の80万円を取得した年の損金(必要経費)に追加できます。

ただし償却できる総額は取得価額の500万円で変わりません。取得年に80万円を前倒しした分、後ろの年の償却が80万円減ります。税の総額を減らす制度ではなく、納税の時期を後ろへずらす制度です。この性質は中小企業投資促進税制の30%と7%で詳しく比較しました。

一人会社と個人事業主で、取得年に減る額を計算

取得価額500万円の設備を期首に取得し、特別償却80万円を上乗せしたときに、取得年の税負担がいくら減るかを計算エンジンで出しました。普通償却分は両ケースで同額なので差には出ません。

取得価額500万円・特別償却16%(80万円)で取得年に減る額

事業所得(青色申告特別控除前)法人:減る税(最適報酬月額)個人:減る税・保険料
600万円51,700円(42万円)366,040円
800万円126,700円(54万円)352,340円
1,000万円171,100円(54万円)322,988円
1,200万円178,000円(54万円)364,903円
1,500万円185,500円(54万円)389,500円
2,000万円185,300円(90万円)389,600円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人は設備投資を織り込まない最適役員報酬で固定し、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税の合計の減少額。個人は所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険料の合計の減少額 ※ 計算エンジンは繰越欠損金を持たないため、法人の課税所得を超える損金は切り捨てている ※ scripts/jigyo-keizokuryoku-tokubetsu-shokyaku.mjs で再計算できる

法人の数字が小さい理由

一人会社が手取り最大の役員報酬を取ると、利益の多くは報酬として個人へ移り、法人に残る課税所得は小さくなります。事業所得600万円では、80万円の特別償却が法人の課税所得をほぼ使い切ってしまい、減る税は5万1,700円にとどまります。所得が増えて法人に利益が残るほど、効果は18万円台で頭打ちになります。法人の税率(軽減税率15%の部分を中心とした実効税率)が、80万円にかかる上限だからです。

個人事業主は事情が逆です。80万円の必要経費は所得税・住民税に加えて個人事業税と国民健康保険料も下げるため、取得年に減る額は32万〜39万円と、同じ設備でも法人の2倍前後になります。

ただしこれは「取得年」だけの比較です。前倒しした80万円は翌年以降の償却から差し引かれるので、耐用年数を通じた総額はどちらも大きく変わりません。効くのは資金繰りの時期であって、法人化の判断そのものを動かすほどの差ではありません。

計画の認定が先。順番を間違えると使えない

この制度で最もつまずきやすいのは手続きの順番です。対象は「認定を受けた計画に記載された設備」なので、次の順で進める必要があります。

  1. 事業継続力強化計画を作り、導入する設備を記載する
  2. 経済産業大臣(窓口は経済産業局)の認定を受ける
  3. 計画に記載した設備を取得し、事業の用に供する
  4. 申告で特別償却の付表と適用額明細書を添付する

設備を先に買ってから計画を出しても、その設備は計画に基づく取得になりません。決算期の直前に駆け込みで計画を作るより、設備の見積りを取る段階で計画作りを始めるほうが安全です。

申告時には、付表の「認定等年月日」欄に経済産業大臣の認定日を、「その他参考となる事項」欄に計画の区分と補助金受領の有無を記載します。認定書の写しは手元に保管しておきます。

法人化と組み合わせるときの注意

個人事業主の時期に認定を受けた計画で、法人化後に設備を買う場合は、計画の主体が誰かが問題になります。認定を受けたのは個人の事業者なので、法人が取得する設備が「認定を受けた法人の計画」に記載されているかは別途確認が必要です。法人化の前後で大きな防災投資を予定している場合は、計画の変更手続きを含めて取得の時期を決めることになります。

また、法人では特別償却準備金の方式も選べるため、決算書の見え方を整えたい場合に選択肢が増えます。どちらを使うかは、金融機関向けの決算書の利益をどう見せたいかにも関わる判断です。

まとめ

  • 事業継続力強化計画(連携計画を含む)の認定を受けた青色申告の中小企業が、計画記載の防災設備を令和9年3月31日までに取得すると特別償却できる
  • 償却率は令和7年4月1日以後の取得で16%(それ前は18%)。税額控除はない
  • 金額要件は機械装置100万円・器具備品30万円・建物附属設備60万円以上。補助金で取得した設備は対象外。器具備品は令和8年度大綱で40万円以上への引上げが示されている
  • 500万円の設備で取得年に減る額は、最適報酬の一人会社で約5万〜19万円、個人事業主で約32万〜39万円(東京23区の概算)。総額は変わらず時期の前倒し

ここに出した数字は、経費200万円・東京23区・独身・40歳未満という前提の概算です。計算の前提は計算の考え方にまとめました。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

事業継続力強化計画の特別償却に税額控除はありますか?

ありません。この制度は特別償却(または特別償却準備金の積立て)だけです。税額控除を選べる中小企業投資促進税制や中小企業経営強化税制とは、同じ資産で重ねて使えるかを個別に確認する必要があります。

計画の認定前に買った発電機にも使えますか?

対象は認定を受けた事業継続力強化計画に記載された設備です。計画にない設備や、補助金等で取得した設備には適用されません。購入の前に、計画の記載と認定の時期を確認してください。

個人事業主でも使えますか?

使えます。令和7年度の大綱では、法人税と同様に所得税についても適用期限を2年延長するとされています。青色申告であることと、計画の認定を受けていることが前提です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。