税金の基礎
事業所税は一人会社にかかるか。免税点1,000㎡・100人の中身
結論
一人会社に事業所税はかかりません。課税されるのは、床面積の合計が1,000㎡(約302.5坪)を超えるか、役員を含む従業者数が100人を超える場合で、自宅や小さな事務所で営む一人会社はどちらにも遠く届かないためです。ただし免税点を1㎡でも超えると全体に課税され、1,001㎡なら資産割は60万600円になります。
- 課税団体は東京23区・政令指定都市20市・人口30万人以上の市など77団体(令和8年3月31日現在)。それ以外の市町村では床面積や人数にかかわらずかからない
- 税率は資産割が床面積1㎡につき600円、従業者割が給与総額の0.25%。役員も従業者に含み、役員報酬も給与総額に入る
- 東京23区では、免税点以下でも床面積800㎡超・従業者80人超になると「免税点以下申告」が必要
「法人化すると事業所税もかかるのか」という疑問には、先に答えを出しておきます。一人会社にはかかりません。個人事業主のままでも、法人化しても同じです。
それでもこの記事を書くのは、事業所税が免税点を超えた瞬間に全体へ課税されるという、ほかの税にはあまりない構造を持っているからです。従業員を雇って会社を大きくしていく途中で、いつ、どのくらいの金額が乗ってくるのか。東京都主税局の手引で確かめた内容を、数字で整理します。
課税するのは77団体だけ。それ以外の市町村にはない
事業所税は、市が都市環境の整備に充てるために課す目的税です。総務省の説明によると、課税団体は人口30万人以上の都市等に限られています。東京都主税局の手引には、令和8年3月31日現在の77団体が載っています。
| 区分 | 団体 |
|---|---|
| 東京都 | 特別区の存する区域(23区) |
| 政令指定都市(20市) | 札幌・仙台・新潟・千葉・さいたま・横浜・川崎・相模原・静岡・浜松・名古屋・京都・大阪・堺・神戸・岡山・広島・北九州・福岡・熊本 |
| 首都圏の既成市街地を有する市(3市) | 川口・武蔵野・三鷹 |
| 近畿圏の既成都市区域を有する市(5市) | 守口・東大阪・尼崎・西宮・芦屋 |
| 人口30万人以上で政令指定の市(48市) | 旭川、秋田、郡山、いわき、宇都宮、前橋、高崎、川越、所沢、越谷、市川、船橋、松戸、柏、八王子、町田、横須賀、藤沢、富山、金沢、長野、岐阜、豊橋、岡崎、一宮、春日井、豊田、四日市、大津、豊中、吹田、高槻、枚方、姫路、明石、奈良、和歌山、倉敷、福山、高松、松山、高知、久留米、長崎、大分、宮崎、鹿児島、那覇 |
※ 東京都主税局「事業所税の手引」(令和8年3月現在)の「事業所税の課税団体」より
この77団体の外に事務所があるなら、規模にかかわらず事業所税はかかりません。東京都でも23区の外、たとえば立川市や府中市は課税団体に入っていません(武蔵野市・三鷹市・八王子市・町田市は入っています)。
税額は2つ。床面積の資産割と、給与総額の従業者割
事業所税は2本立てです。
| 資産割 | 従業者割 | |
|---|---|---|
| 課税標準 | 事業所床面積 | 従業者給与総額 |
| 税率 | 1㎡につき600円 | 0.25% |
| 免税点 | 合計床面積1,000㎡以下 | 合計従業者数100人以下 |
| 申告納付期限 | 法人:事業年度終了後2か月以内(延長なし) 個人:翌年3月15日 | 同左 |
免税点の判定は資産割と従業者割でそれぞれ別に行い、基準日は課税標準の算定期間(法人は事業年度、個人は原則1月1日〜12月31日)の末日です。東京23区なら23区内のすべての事業所等を合計します。
従業者割は「人数で判定して、給与の総額に課税する」という仕組みです。免税点を判定するのは人数、税額を決めるのは給与の総額で、ものさしが違います。
一人会社が免税点に届かない理由
1,000㎡は約302.5坪です。1人あたり10㎡で計算しても100人分の広さで、自宅の一室やレンタルオフィスで営む一人会社とは桁が違います。
| 事業所床面積(共用部分の按分を含む) | 坪換算 | 資産割 | 東京23区での申告 |
|---|---|---|---|
| 30㎡ | 9.1坪 | 0円 | 不要 |
| 100㎡ | 30.3坪 | 0円 | 不要 |
| 300㎡ | 90.8坪 | 0円 | 不要 |
| 800㎡ | 242.0坪 | 0円 | 不要 |
| 801㎡ | 242.3坪 | 0円 | 免税点以下申告 |
| 1,000㎡ | 302.5坪 | 0円 | 免税点以下申告 |
| 1,001㎡ | 302.8坪 | 600,600円 | 納付申告 |
| 1,500㎡ | 453.8坪 | 900,000円 | 納付申告 |
| 3,000㎡ | 907.5坪 | 1,800,000円 | 納付申告 |
※ 計算は scripts/jigyoshozei-menzeiten.mjs で再現できます
貸しビルに入る場合、事業所床面積には専用部分だけでなく、廊下・階段・エレベーターなどの共用部分のうち自分の専用部分に対応する分も含めます。手引はこの按分計算の方法を示していますが、それでも数十㎡の事務所が1,000㎡を超えることはありません。
従業者のほうも同じです。役員1人の会社は従業者1人で、100人の免税点までは99人の余裕があります。当サイトの判定ツールは一人会社を前提にしているため、事業所税を0円として計算しています。
免税点は「控除」ではない。超えると全体に課税される
ここが事業所税のいちばんの特徴です。所得税の基礎控除や、個人事業税の事業主控除290万円は、その額を差し引いた残りに課税します。事業所税の免税点は違います。免税点を超えたら、床面積全体・給与総額全体が課税標準になります。
上の表で、1,000㎡では0円、1,001㎡では60万600円です。増えた1㎡に600円がかかるのではなく、1,001㎡すべてに600円がかかります。
従業者割はもっと大きく跳びます。
| 従業者数(役員を含む) | 従業者給与総額 | 従業者割 | 東京23区での申告 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 648万円 | 0円 | 不要 |
| 10人 | 5,000万円 | 0円 | 不要 |
| 80人 | 4.00億円 | 0円 | 不要 |
| 100人 | 5.00億円 | 0円 | 免税点以下申告 |
| 101人 | 5.05億円 | 1,262,500円 | 納付申告 |
| 150人 | 7.50億円 | 1,875,000円 | 納付申告 |
※ 1人は役員報酬月54万円の一人会社。2人以上は全員の平均を年500万円と置いた例。東京23区で申告が必要になる人数の線は東京都の条例による
101人目を雇った事業年度の末日に、給与総額5.05億円の0.25%、126万円余りが乗ります。給与総額が1億円増えるごとに25万円という比率なので、100人規模の会社にとっては無視できない固定費です。
判定は事業年度の末日の人数で行うので、末日だけ人数が減っていれば免税になるように見えます。ただし手引は、年度中の各月末の従業者数で最大が最小の2倍を超える事業所等については、各月末の人数の平均を末日の人数とみなすと定めています。
役員は必ず数える。パートは所定労働時間で分かれる
「従業者」の範囲も手引に書かれています。一人会社から従業員を増やしていく段階で関係してくるのはここです。
| 区分 | 免税点の従業者数 | 従業者給与総額 |
|---|---|---|
| 役員(無給を除く) | 含める | 役員報酬・役員賞与を含める |
| 65歳以上の高齢者・障害者(役員を除く) | 含めない | 含めない |
| 役員である高齢者・障害者 | 含める | 含める |
| 所定労働時間が正規従業者の4分の3未満の人 | 含めない | 100人を超えたら含める |
| 算定期間を通じて一度も課税区域内に出勤しない在宅勤務者 | 含めない | 含めない |
※ 東京都主税局「事業所税の手引」のよくあるお問い合わせQ12・Q13・Q18による
社長本人は、65歳以上でも障害者でも従業者に数えられます。 役員報酬も従業者給与総額に入ります。一方でパートタイマーは、所定労働時間が正規の4分の3未満なら人数には数えません。ただし人数が100人を超えて課税されることになったら、その年のパート・アルバイトの給与も全額が給与総額に入ります。
この境目は、社会保険の加入義務(週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上)と似た線です。従業員を雇い始めたときに何が変わるかは一人社長がはじめて従業員を雇う記事にまとめています。
個人事業と法人を同じ建物でやると、合算して判定される
法人化の文脈で1つだけ注意したいのが「みなし共同事業」です。手引によると、事業者が親族や同族会社などの特殊関係者を持ち、その事業が同一家屋で行われている場合、免税点の判定はその特殊関係者の事業を合算して行います。事業を別法人に分けて免税点の下に収めることを防ぐための規定です。
個人事業を続けながら同じ自宅で法人も営む形(いわゆる二刀流)は、形の上ではこれに当たり得ます。ただ、合算しても1,000㎡・100人に届く規模ではないので、一人会社で実際に効くことはほぼありません。事業を分けて何かの基準を下回ろうとする発想そのものが、事業所税では通らないことを知っておけば十分です。
まとめ
- 事業所税を課すのは東京23区・政令指定都市など77団体だけ。それ以外の市町村ではかからない
- 資産割は床面積1㎡600円(免税点1,000㎡)、従業者割は給与総額の0.25%(免税点100人)。個人事業主も法人も同じ
- 一人会社は床面積も人数も免税点に遠く届かず、事業所税は0円。判定ツールも0円で計算している
- 免税点は控除ではなく、超えると全体に課税される。1,001㎡なら60万600円、101人・給与総額5.05億円なら126万円余り
- 役員は高齢者・障害者でも従業者に数え、役員報酬も給与総額に入る
一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。一人会社の段階で毎年かかる固定費は、事業所税ではなく法人住民税の均等割7万円のほうです。
よくある質問
個人事業主にも事業所税はかかりますか。
かかります。納税義務者は事業所等で事業を行う法人または個人で、個人は翌年3月15日までに申告納付します。免税点も法人と同じ床面積1,000㎡・従業者100人です。
自宅の一室を事務所にしている場合、床面積はどう数えますか。
事業所床面積は事業所等として使う部分の延べ面積です。住居部分は含みません。いずれにしても免税点は1,000㎡なので、自宅の一部を使う規模で課税されることは考えにくい面積です。
事業所税は判定ツールの計算に入っていますか。
入っていません。一人会社を前提にしたシミュレーターでは、床面積も従業者数も免税点に届かないため0円として扱っています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。