税金の基礎
法人化すると相続税評価は下がるのか。いま見直し中
結論
法人化すると、事業用資産の集合体ではなく「株式」(合同会社なら持分)という1つの財産が相続・贈与の対象になります。合同会社の持分も、財産評価基本通達194により株式に準じて評価されます。会社の規模(大・中・小)に応じて類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式のいずれかが使われ、会計検査院の令和5年度決算検査報告によれば、類似業種比準価額は純資産価額の中央値の約27%にとどまります。ただし国税庁は2026年4月に有識者会議を立ち上げ、この評価方法の見直しを検討しています。
- 合同会社などの持分会社への出資は、財産評価基本通達194により、株式会社の「取引相場のない株式」の評価方法に準じて評価される
- 評価方法は会社の規模で決まる。大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は両方式の併用が原則(国税庁タックスアンサーNo.4638)
- 会計検査院の令和5年度決算検査報告では、類似業種比準価額は純資産価額の中央値の27.2%。国税庁は2026年4月20日に有識者会議を設置し、評価方法の見直しを検討している
個人事業主が持つ事業用資産は、不動産や機械など資産ごとに相続税評価されます。法人化すると、この個別の資産の集まりが「株式」(合同会社なら持分)という1つの財産に置き換わります。評価の単位が変わることで、相続税の計算そのものが変わります。
合同会社の持分も、株式に準じて評価される
会社法575条1項が定める持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)に対する出資の価額は、財産評価基本通達194により、取引相場のない株式の評価方法に準じて計算します。当サイトが既定にしている合同会社も、この通達の対象です。株式会社でなくても、社員の持分は株式と同じ考え方で評価されます。
個人事業のままなら、事業で使っている不動産・機械・車などは、それぞれ財産評価基本通達の個別のルール(不動産なら路線価や固定資産税評価額をもとにした評価)で評価します。法人化すると、これらの資産は会社の中に入り、相続の対象は「会社の株式(持分)」という1つの財産にまとまります。法人成りの資産引継ぎで扱った売買・賃貸・現物出資のいずれで資産を移しても、その後の相続時にはこの評価方法が適用されます。
評価方法は会社の規模で決まる
取引相場のない株式は、株式を取得した株主が同族株主等かどうかで評価方式が分かれます。経営支配力を持つ同族株主等が取得する場合は原則的評価方式、単に配当を期待するだけの少数株主が取得する場合は特例的な配当還元方式(年間配当を10%の還元率で割り戻す方法)です。一人社長の会社では、社長自身が同族株主等に当たるのが通常です。
原則的評価方式では、会社を総資産価額・従業員数・取引金額で大会社・中会社・小会社に区分し、区分ごとに評価方法が決まります。
| 会社の規模 | 評価方法 |
|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 |
| 小会社 | 純資産価額方式 |
| 中会社 | 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 |
類似業種比準方式は、事業内容が似た上場会社の株価をもとに、評価する会社の1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(簿価)の3つで比準して評価します。純資産価額方式は、会社の資産・負債を相続税評価に洗い替えて、その差額から評価する方法です。
類似業種比準価額は、純資産価額より低く出る傾向がある
会計検査院の令和5年度決算検査報告は、取引相場のない株式を対象にした検証結果を示しています。類似業種比準価額の中央値は、純資産価額の中央値の**27.2%**にとどまり、両方式の間に大きなかい離があると指摘しました。会社の規模が大きく、類似業種比準方式の適用割合が高くなるほど、この差は広がる傾向があります。
つまり、会社の実態としての資産価値(純資産価額)に比べ、実際の株式評価額(類似業種比準価額を使う場合)が相対的に低く算定されやすいということです。この点は、法人化を単年の手取りだけでなく長期的な視点で考える材料の一つになります。
この評価方法は、いま見直しが議論されている
ここで重要な留意点があります。国税庁は2026年4月20日、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第1回会合を開きました。会計検査院の指摘を踏まえ、類似業種比準価額と純資産価額のかい離の実態や、配当還元方式の還元率(10%、昭和39年の通達制定時の金利水準を参考に設定されたまま見直されていない)を含めて、評価制度の見直しを検討しています。
この記事で扱った評価方法は、2026年9月時点で現に効力を持つルールです。 ただし見直しの議論が始まっている以上、将来の申告で同じ結果になるとは限りません。相続対策として法人化を考える場合は、現時点の制度をそのまま将来にも当てはめず、時期が近づいた段階で最新の制度を確認してください。
まとめ
- 法人化すると、事業用資産の集まりが「株式」(合同会社なら持分)という1つの財産に置き換わる
- 合同会社の持分も、財産評価基本通達194により取引相場のない株式の評価方法に準じて評価される
- 会社の規模で評価方法が決まる。大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は併用
- 会計検査院の報告では、類似業種比準価額は純資産価額の中央値の27.2%にとどまり、会社規模が大きいほどかい離が広がる傾向がある
- 国税庁は2026年4月から評価方法の見直しを議論しており、現在の評価方法が将来も同じとは限らない
よくある質問
合同会社の持分も、株式会社と同じ方法で評価されますか?
同じ考え方に準じます。財産評価基本通達194は、持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)に対する出資の価額を、取引相場のない株式の評価方法に準じて計算すると定めています。
法人化すれば相続税を減らせますか?
会社の規模や資産構成によって結論が変わり、個別の判断は税理士法に触れるため当サイトでは行いません。会計検査院の報告では類似業種比準価額が純資産価額より低く出る傾向が示されていますが、この評価方法自体が2026年から見直しの議論に入っています。将来の申告に使う数字として断定的に扱わないでください。
評価方法はいつ変わりますか?
2026年9月時点では確定していません。国税庁は2026年4月20日に有識者会議の第1回会合を開き、実態把握と見直しの方向性の検討を始めた段階です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。