インボイス・消費税

個別対応方式と一括比例配分方式、どちらを選ぶか。2年継続の縛りと損得の境目

結論

課税売上割合が95%未満か課税売上高が5億円超なら、個別対応方式か一括比例配分方式を選びます。一括比例配分方式を選ぶと2年間以上続けないと個別対応方式に戻れません。課税売上割合90.91%の例では、非課税売上にだけ対応する仕入の税額が18万円を下回ると個別対応方式、上回ると一括比例配分方式の控除額が大きくなりました。

  • 課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上なら、仕入税額は全額控除。どちらの方式も選ぶ必要がない
  • 一括比例配分方式は、2年間以上継続して適用した後でなければ個別対応方式に変更できない(国税庁 No.6401)
  • 課税売上割合に準ずる割合は個別対応方式でだけ使える。一括比例配分方式では使えない

小さな会社でこの選択が問題になるのは、ほぼ「非課税売上が混ざったとき」です。居住用の家賃収入、土地の売却、貸付金の利息などが入って課税売上割合が95%を切ると、仕入にかかった消費税を全額は引けなくなります。そのとき、どの方式で計算するかを選ぶことになります。

全額控除できなくなる2つの条件

国税庁の説明では、仕入控除税額の計算は次の2つに分かれます。

条件仕入控除税額の計算
課税売上高5億円以下 かつ 課税売上割合95%以上課税仕入れ等の税額を全額控除
課税売上高5億円超 または 課税売上割合95%未満個別対応方式か一括比例配分方式で、課税売上に対応する部分だけ控除

年商が数千万円規模の法人なら、5億円の条件には当たりません。問題は課税売上割合だけです。

課税売上割合は、課税期間中の課税売上高(税抜・輸出免税売上を含む)を、総売上高(課税売上・輸出免税売上・非課税売上の合計)で割った割合です。有価証券や貸付金・売掛金などの譲渡は、譲渡対価の**5%**だけを分母に入れます。株式を売ったら割合が大きく崩れる、ということにはならないよう調整されています。

つまり、本業がすべて課税取引でも、居住用マンションの家賃や土地の売却代金が大きいと、それだけで95%を切ります。

2つの方式の計算式

個別対応方式

課税仕入れ等を3つに区分します。

  • イ:課税売上げにのみ要するもの
  • ロ:非課税売上げにのみ要するもの
  • ハ:両方に共通して要するもの

仕入控除税額 = イの税額 + ハの税額 × 課税売上割合

ロの税額は1円も控除されません。区分を正しく付けておく帳簿の手間がかかる代わりに、課税売上のための仕入は全額引けます。

一括比例配分方式

仕入控除税額 = 課税仕入れ等の税額の合計 × 課税売上割合

区分は要りません。その代わり、課税売上のための仕入にも課税売上割合が掛かります。逆に、非課税売上のための仕入にも割合ぶんの控除が付きます。

どちらが有利か:数値例

課税売上4,000万円・非課税売上400万円(課税売上割合 90.91%)の法人で、仕入の税額の内訳だけを変えて計算しました(金額は万円、税額は国・地方合計)。

イ 課税売上のみハ 共通ロ 非課税売上のみ個別対応方式一括比例配分方式差(個別−一括)
180500225.5209.1+16.4
1505030195.5209.1−13.6
1005080145.5209.1−63.6

※ 課税売上割合 4,000÷4,400 で計算。国税庁 No.6401 の計算式を node で計算した値。

2行目・3行目のように、非課税売上のための仕入(ロ)があると、一括比例配分方式のほうが控除額が大きくなることがあります。2つの式を引き算すると、境目は次のとおりです。

ロの税額 < イの税額 ×(1−課税売上割合)÷ 課税売上割合 のとき、個別対応方式が有利

1行目の条件(イ180万円)なら境目はロ=18万円です。課税売上割合が95%に近いほど右辺は小さくなり、少しでも非課税売上向けの仕入があると一括比例配分方式に傾きます。割合が低いほど、課税売上向けの仕入を全額引ける個別対応方式の価値が上がります。

一括比例配分方式の「2年継続」の縛り

国税庁の説明では、一括比例配分方式を選んだ場合、2年間以上継続して適用した後でなければ個別対応方式に変更できません。

この縛りは片方向です。個別対応方式から一括比例配分方式への変更については、同様の継続要件は示されていません。

判断で効いてくるのは、翌年に大きな課税仕入が予定されている場合です。例えば、今年は非課税売上向けの仕入が多くて一括比例配分方式が有利でも、来年に本業用の設備投資が入るなら、来年は個別対応方式のほうが控除が大きくなる可能性があります。一括比例配分方式を選んだ年から2年は戻れないので、その年だけの損得でなく、翌年の仕入計画まで並べて比べる必要があります。

課税売上割合に準ずる割合も使えない

個別対応方式では、税務署長の承認を受けて「課税売上割合に準ずる割合」(従業員数比など、実態に合う割合)を使えます。一括比例配分方式ではこれが使えません。土地の売却のような一時的な非課税売上で割合が下がった年は、個別対応方式でしか救済の余地がないということです。

簡易課税・2割特例ならこの計算は不要

2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間で終わります。

簡易課税は課税売上高にみなし仕入率を掛けて仕入控除税額を出す制度で、仕入の区分や課税売上割合による按分を行いません。簡易課税の選択状況については簡易課税の選択割合の記事で集計しています。

逆に、一般課税で設備投資の還付を狙う新設法人は、課税売上割合の影響を直接受けます。課税売上割合100%の前提での還付額は新設法人の消費税還付の記事で計算しています。非課税売上がある場合は、その還付額が課税売上割合(個別対応方式ならハの部分)に応じて小さくなります。

法人化そのものの損得は消費税だけでは決まりません。インボイス登録の有無を含めた全体の差は、自分の売上と経費で判定ツールにかけて確かめてください。

まとめ

  • 課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上なら全額控除。どちらの方式も関係しない
  • 課税売上割合が95%を切る典型は、居住用家賃・土地売却・貸付金利息などの非課税売上
  • 個別対応方式は課税売上向けの仕入を全額控除、一括比例配分方式はすべての仕入に割合を掛ける
  • 非課税売上向けの仕入が多いと一括比例配分方式が有利になることがあるが、選ぶと2年間は個別対応方式に戻れない
  • 課税売上割合に準ずる割合は個別対応方式でしか使えない

よくある質問

課税売上割合が95%以上でも、個別対応方式を使う必要はありますか

課税売上高が5億円以下なら不要で、課税仕入れ等の税額を全額控除します。課税売上高が5億円を超える場合は、課税売上割合が95%以上でも個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。

個別対応方式を選んだ翌年に一括比例配分方式へ変えられますか

国税庁の説明で2年間の継続適用が求められているのは一括比例配分方式から個別対応方式への変更です。個別対応方式から一括比例配分方式への変更には、この縛りは示されていません。

簡易課税を選んでいる場合も、この選択は関係しますか

簡易課税は課税売上高にみなし仕入率を掛けて仕入控除税額を計算する制度で、個別対応方式・一括比例配分方式の計算は行いません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。