税金の基礎

国外財産調書は5,000万円超。国外取引所の暗号資産は対象外

結論

国外財産調書は、居住者(非永住者を除く)が12月31日に価額の合計5,000万円超の国外財産を持つ場合に、翌年6月30日までに提出する書類です。海外の銀行の営業所に預けた預金は国外財産ですが、国外の暗号資産取引所に置いた暗号資産や国外のマーケットプレイスで買ったNFTは、持ち主の住所で所在を判定するため居住者には国外財産になりません。調書を出していれば国外財産に関する申告漏れの加算税が5%軽減され、出していなければ5%加重されます。

  • 判定は12月31日の価額で、外貨建ての財産は取引金融機関のその日の電信買相場(TTB)で円に換算する(国税庁 国外財産調書制度FAQ 問18)
  • 有価証券は口座が開設された金融商品取引業者の営業所の所在で判定する。外国株でも国内の証券会社の口座で管理していれば国内の財産になる
  • 正当な理由なく期限までに出さない、または偽りの記載をした場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になる(国税庁 No.7456)

海外の取引先から外貨で入金を受け、そのまま海外の口座に置いておく。為替のタイミングを待つうちに残高が膨らむ人は少なくありません。国外財産の合計が5,000万円を超えると、確定申告とは別に「国外財産調書」を出す義務が生じます。

調書そのものに税金はかかりませんが、出しているかどうかで、国外財産に関する申告漏れの加算税が変わります。この記事では、何が「国外にある財産」に当たるかを国税庁のFAQで確認し、加算税の差を表にします。

対象は「12月31日に国外財産5,000万円超」の居住者

国税庁 No.7456 によると、国外財産調書を提出するのは、その年の12月31日に価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を持つ居住者(非永住者を除く)です。提出期限は翌年の6月30日で、「国外財産調書合計表」を添付します。

項目内容
対象者居住者(非永住者を除く)。居住者かどうかは12月31日の現況で判定
基準12月31日の国外財産の価額の合計が5,000万円超
提出期限翌年6月30日
価額12月31日の時価または見積価額。借入金は差し引かない
外貨の換算取引金融機関の12月31日の最終の電信買相場(TTB)など

非永住者は、日本国籍がなく過去10年以内に国内に住所・居所があった期間が合計5年以下の居住者です(国税庁 No.2010)。この人たちは国外財産調書の対象外です。

「国外にある」かどうかは、財産の種類ごとに決まる

国税庁の国外財産調書制度FAQ(問6)によると、財産が国外にあるかどうかは、原則として相続税法10条の所在の定めで判定します。海外と取引のある個人事業主に関係が深いものを抜き出すと次のとおりです。

財産所在の判定例
金融機関の預金預金を受け入れた営業所の所在海外の銀行の支店に開いた口座は国外
株式・社債発行法人の本店の所在。ただし証券会社の口座で管理しているものは口座を開いた営業所の所在外国株でも国内の証券会社の口座なら国内
貸付金債権債務者の住所・本店の所在海外の取引先への貸付は国外
著作権(目的物が発行されているもの)発行する営業所の所在海外の出版社から発行された著作物の権利は国外
暗号資産・NFT持ち主の住所の所在居住者なら国外取引所に置いていても国内

FAQは、有価証券等の所在を「国内の口座で管理しているか、国外の口座で管理しているか」で整理しています。日本の法人の株式でも、国外の証券会社の口座で管理していれば国外財産です。

国外取引所の暗号資産は、国外財産にならない

FAQの問36・問37は、国外の暗号資産取引所に置いた暗号資産と、国外のマーケットプレイスで買ったNFTについて、どちらも持ち主の住所で所在を判定する財産だとしています。国外財産調書を出すのは居住者なので、居住者が国外の取引所に置いた暗号資産は国外財産調書の対象になりません。

「海外の取引所に置けば国外財産」という理解は逆です。ただし、財産債務調書のほうは国内外を問わず財産を数えるので、こちらの基準に当たる人は暗号資産も記載します。財産債務調書の基準は財産債務調書は法人化で外れるか。所得2,000万円と自社株の数え方で整理しています。

海外の決済サービスの残高は、個別に確認が要る

海外の取引先からの入金に使う決済サービスや送金サービスの残高が、相続税法10条のどの財産に当たるかは、FAQに直接の記載がありません。銀行の預金と同じ扱いになるとは限らないため、残高が大きくなっている場合は、サービスの契約主体と残高の法的な性質を確認したうえで判断する必要があります。

出せば加算税が軽く、出さなければ重くなる

国税庁 No.7456 によると、国外財産調書には次の加算税の特例があります。

  • 期限内に提出された調書に記載がある国外財産について、所得税・相続税の申告漏れがあった場合、過少申告加算税等が5%軽減される
  • 期限内に提出がない、または記載すべき国外財産の記載がない場合、その国外財産に関する所得税・相続税の申告漏れについて過少申告加算税等が5%加重される
  • 調査等で国外財産の取得・運用・処分に関する書類の提示を求められ、指定された期限(求められた日から60日以内)までに出さなかった場合は、軽減が適用されず、加重は10%になる

調査で国外財産に関する申告漏れを指摘された場合の過少申告加算税を、調書の状況別に計算しました。

調書の状況加算税の割合追加の所得税20.0万円追加の所得税50.0万円追加の所得税100.0万円
調書を期限内に提出し、記載あり5%1.0万円2.5万円5.0万円
国外財産と関係のない申告漏れ(通常)10%2.0万円5.0万円10.0万円
調書の提出なし・記載なし15%3.0万円7.5万円15.0万円
提出なし等に加え、求められた書類を期限までに提示しない20%4.0万円10.0万円20.0万円

※ 調査で指摘された後の過少申告加算税(通常10%、国税通則法65条1項)に、国外財産調書の軽減・加重を当てはめた。期限内申告税額が追加の所得税以上で、50万円超部分の5%上乗せがかからない場合。当サイトのスクリプト(scripts/kokugai-zaisan-chosho-kasanzei.mjs)で計算 ※ 延滞税、住民税、国保などの増加は含まない

同じ100万円の申告漏れでも、調書を出していれば加算税は5.0万円、出していなければ15.0万円、さらに書類を出さなければ20.0万円です。差は最大で4倍です。修正申告の時期による加算税の違いは確定申告の誤りに気づいたら。修正申告の加算税は調査通知の前後で0%・5%・10%で計算しています。

罰則もある

正当な理由がなく期限までに提出しなかった場合や、偽りの記載をして提出した場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処されることがあります(国税庁 No.7456)。期限までに提出しなかった場合については、情状により刑を免除できるとされています。

法人化すると、会社名義の口座は個人の調書から外れる

国外財産調書は個人の制度です。個人事業主が事業用に開いた海外口座は本人の財産なので、残高は本人の国外財産として数えます。法人化して、会社名義で海外の口座を開き直せば、その残高は会社の財産になり、社長個人の国外財産調書には入りません。

その代わり、海外の取引から生じる所得は会社の益金になり、外国で課された税は法人の外国税額控除で調整します。個人と法人で控除の枠が違う点は外国で引かれた税は取り戻せるか。外国税額控除の枠は個人と法人で違うで計算しています。調書の手間を理由に法人化を決めるのではなく、まず手取りの差を自分の売上と経費で確かめてください。

まとめ

  • 国外財産調書は、12月31日に国外財産の合計が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)が、翌年6月30日までに提出する
  • 海外の銀行の営業所に預けた預金は国外財産。有価証券は口座を開いた証券会社の営業所の所在で判定する
  • 国外取引所の暗号資産や国外のマーケットプレイスで買ったNFTは、持ち主の住所で判定するため、居住者には国外財産にならない
  • 調書を出していれば国外財産に関する申告漏れの加算税が5%軽減、出していなければ5%加重(書類を提示しなければ10%加重)
  • 会社名義の口座は社長個人の調書から外れるが、所得は会社の益金になる

海外からの入金が大きくなってきたら、残高の置き場所と名義を決める前に、個人のままと法人化した場合の手取りの差を自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

海外の銀行口座の残高が年の途中で5,000万円を超えましたが、年末には下回っていました。提出は必要ですか?

提出義務はその年の12月31日に持っている国外財産の価額の合計で判定します(国税庁 No.7456)。年の途中で超えていても、12月31日に5,000万円以下なら、その年分の提出義務はありません。

財産債務調書も出しています。国外財産調書も別に必要ですか?

国外財産の合計が5,000万円を超えていれば、国外財産調書も必要です。そのうえで、国外財産調書に記載した国外財産については、財産債務調書には価額以外の事項の記載を要しないとされています(国税庁FAQ)。

国外財産を借入金で買った場合、借入金を差し引いて5,000万円を判定できますか?

できません。国税庁FAQは、国外財産の価額は12月31日の時価または見積価額で、借入金で取得した場合でも借入金元本を差し引くことはできないとしています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。