税金の基礎
試験研究費の税額控除、個人事業主も法人と同じ12%
結論
試験研究費(研究開発費)の税額控除には、法人向けの中小企業技術基盤強化税制(措法42条の4)と、個人事業主向けの措法10条の2つの制度があります。中小事業者に該当すれば、控除率はどちらも12%が基本で、前年までより試験研究費が増えた割合(増減試験研究費割合)が一定以上なら最大17%まで上がります。控除の上限は、法人が調整前法人税額の25%、個人事業主が調整前事業所得税額の25%で、試験研究費割合が10%を超えるとどちらも最大35%まで拡大されます。
- 対象になる試験研究費は、製品の製造・技術の改良・考案・発明のための試験研究や、対価を得て提供する新サービス開発のための一定の費用
- 増減試験研究費割合=(当期の試験研究費-比較試験研究費)÷比較試験研究費。比較試験研究費は過去3年間の試験研究費の平均額
- 控除率・上限の割合は法人・個人事業主で共通だが、絶対額は法人税額・所得税額という各自の税額の規模で決まる
研究開発費の税額控除と聞くと、法人だけの制度だと思われがちです。しかし個人事業主にも同じ仕組みがあり、中小事業者に該当すれば、法人と同じ控除率で試験研究費の一部を所得税額から控除できます。
法人向けと個人事業主向け、2つの制度が並んでいる
法人の研究開発税制は、中小企業技術基盤強化税制(租税特別措置法42条の4)です。青色申告書を提出する中小企業者等が試験研究費を支出した場合、その一定割合を法人税額から控除できます。
個人事業主にも並行する制度があります。租税特別措置法10条が定める、試験研究を行った場合の所得税額の特別控除です。青色申告書を提出する個人が対象で、中小事業者向けの特例も設けられています。法人化しないと使えない制度ではありません。
控除率は中小事業者なら12%が基本
控除率の決まり方は、法人向け・個人事業主向けのどちらも同じ考え方です。中小事業者に該当する場合、控除率は12%が基本になります。
前年までより試験研究費が増えている場合は、控除率が上乗せされます。この判定に使うのが増減試験研究費割合です。
増減試験研究費割合 = (当期の試験研究費 − 比較試験研究費) ÷ 比較試験研究費
比較試験研究費は、過去3年間の試験研究費の平均額です。増減試験研究費割合が一定の水準を超えると、控除率は12%から段階的に上がり、**最大17%**まで達します。試験研究費が前年までより減っていても、中小事業者であれば12%の基本控除率自体はなくなりません。
対象になる試験研究費の範囲
税額控除の対象になるのは、すべての研究開発費ではありません。製品の製造や技術の改良・考案・発明のための試験研究、または対価を得て提供する新サービスの開発のための試験研究に必要な、一定の費用に限られます。人件費を含める場合は、その業務にどれだけ専従しているかといった要件も関わります。単に「新しいことを試した」という理由だけで、支出のすべてが対象になるわけではありません。
控除の上限は「調整前税額の25%」で共通
控除には上限があります。法人は調整前法人税額の25%、個人事業主は調整前事業所得税額の25%です。試験研究費割合(試験研究費の額を平均売上金額で割った割合)が10%を超える場合は、この上限がさらに拡大され、最大で35%まで広がります。
この25%・35%という割合そのものは、法人と個人事業主で共通です。ただし、実際に使える金額(控除額)は、その割合を掛ける元の税額の大きさで決まります。法人の調整前法人税額と、個人事業主の調整前事業所得税額は、同じ事業規模でも金額が大きく違うことがあります。
中小企業投資促進税制と経営強化税制で計算したとおり、一人会社が最適な役員報酬を取ると、その分だけ法人税額は小さくなります。控除率や上限の割合が同じでも、法人税額そのものが小さければ、使える枠も小さくなります。この構造は投資促進税制と同じで、研究開発税制も例外ではありません。研究開発費が多い事業者は、法人化の前後でどちらの税額を基準にどれだけの枠が残るか、自分の数字で確認する必要があります。
繰越はできない
中小企業投資促進税制や中小企業経営強化税制の税額控除には1年間の繰越がありますが、研究開発税制にはこの繰越がありません。その事業年度(個人事業主ならその年)の上限を超えて控除しきれなかった分は、その年のうちに切り捨てられます。研究開発費が年によって偏る事業者は、この違いを踏まえて資金計画を立てる必要があります。
まとめ
- 研究開発税制には法人向け(中小企業技術基盤強化税制、措法42条の4)と個人事業主向け(措法10条)の2つの制度があり、法人化しなくても使える
- 中小事業者なら控除率は12%が基本。増減試験研究費割合が一定以上なら最大17%まで上がる
- 対象になる試験研究費は、製品・技術の改良や新サービス開発のための一定の費用に限られる
- 控除の上限は調整前法人税額・調整前事業所得税額の25%(試験研究費割合10%超で最大35%)で、割合自体は法人・個人事業主で共通
- 使える絶対額は各自の税額の規模で決まり、最適な役員報酬を取ると法人税額が縮む分、枠も縮む
- この制度には繰越がなく、控除しきれなかった分はその年のうちに切り捨てられる
よくある質問
研究開発税制は法人しか使えませんか?
個人事業主も使えます。租税特別措置法10条に個人事業主向けの規定があり、青色申告書を提出する中小事業者であれば、法人向けの中小企業技術基盤強化税制とほぼ同じ控除率が適用されます。
試験研究費が前年より減っても控除は受けられますか?
中小事業者に該当する場合は、増減試験研究費割合にかかわらず12%の控除率が基本として適用されます。増えている場合に控除率が上乗せされる仕組みで、減っていることを理由に控除自体がなくなるわけではありません。
控除しきれなかった分は繰り越せますか?
この制度に翌年以降への繰越はありません。その事業年度(個人事業主はその年)の調整前法人税額・調整前事業所得税額の枠を超えた分は、その年のうちに使い切れなければ切り捨てられます。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。