法人化の判断

診療所は2017年に医療法人が個人を逆転。歯科はまだ7割が個人(医療施設調査)

結論

厚生労働省の医療施設調査では、一般診療所の開設者は2002年に個人52,326・医療法人27,108でしたが、2017年に医療法人41,927が個人41,892を上回り、2024年は個人38,719・医療法人47,711です。個人と医療法人を合わせた中で個人の割合は65.9%から44.8%へ下がりました。歯科診療所は医療法人が7,499から17,053へ増えたものの、2024年でも個人が48,667と74.1%を占めています。

  • 一般診療所は22年で個人が13,607減り、医療法人が20,603増えた。総数は94,819から105,207へ増えている
  • 歯科診療所の個人の割合は22年で14.3ポイントの低下にとどまり、一般診療所(21.1ポイント)より緩やか
  • 医療法人化すると保険医療機関の指定は取り直しになり、社会保険診療の概算経費の特例も法人側の別の規定になる

開業医や歯科医が医療法人化を考えるとき、周りの診療所がどれだけ法人になっているかは気になる数字です。厚生労働省の医療施設調査には、開設者別の診療所数の年次推移があります。個人と医療法人に絞って、22年分を並べました。

一般診療所:2017年に医療法人が個人を上回った

医療施設調査の統計表3から、一般診療所の開設者が個人か医療法人かを取り出しました。

年総数個人医療法人個人÷(個人+医療法人)総数に占める個人
2002年94,81952,32627,10865.9%55.2%
2005年97,44250,69330,94162.1%52.0%
2008年99,08348,06734,85858.0%48.5%
2011年99,54746,22736,85955.6%46.4%
2014年100,46143,86339,45552.6%43.7%
2017年101,47141,89241,92750.0%41.3%
2020年102,61240,31044,21947.7%39.3%
2023年104,89439,20846,71745.6%37.4%
2024年105,20738,71947,71144.8%36.8%

※ 厚生労働省「令和6年 医療施設(動態)調査」統計表3(各年10月1日現在)。開設者別の合計=総数を全年で検算。元データは data/official/iryo-shisetsu-r06/、表は scripts/shinryojo-kojin-iryo-houjin.mjs で再生成できる

2017年に医療法人(41,927)が個人(41,892)をわずか35上回り、その後は差が開いています。2002年から2024年の22年間で、個人の診療所は13,607減り、医療法人の診療所は20,603増えました。総数は増えているので、個人の減少は閉院だけでなく、個人の診療所が医療法人に切り替わった分も含んでいると読めます(この表だけでは、新規開業と切り替えを分けることはできません)。

歯科診療所:医療法人は2.3倍、それでも個人が7割強

同じ表の歯科診療所です。

年総数個人医療法人個人÷(個人+医療法人)総数に占める個人
2002年65,07356,9347,49988.4%87.5%
2005年66,73257,1108,97186.4%85.6%
2008年67,77956,95510,19784.8%84.0%
2011年68,15656,48111,07483.6%82.9%
2014年68,59255,58812,39381.8%81.0%
2017年68,60954,13313,87179.6%78.9%
2020年67,87452,10315,16177.5%76.8%
2023年66,81849,52216,67774.8%74.1%
2024年66,37848,66717,05374.1%73.3%

歯科の医療法人は22年で7,499から17,053へ2.3倍になりましたが、個人の割合は88.4%から74.1%への低下にとどまります。一般診療所の21.1ポイント低下に対し、歯科は14.3ポイントです。歯科診療所の総数は2017年をピークに減っており、個人の歯科医院の閉院が数の減少の中心になっています。

なぜ医療法人化が進むのか、進まないのか

この統計は理由までは示しません。そのうえで、個人と医療法人で扱いが変わる点を挙げると、判断の材料は他の業種の法人化と共通しています。

  • 所得が高いほど法人化の効果が大きい。個人の所得税・住民税は最高55%の累進で、法人は所得800万円以下の部分の軽減税率がある。院長の役員報酬と法人に残す利益に分けると、税率の高い帯を避けられる(法人化の目安は所得いくらからか)
  • 社会保険診療報酬の概算経費の特例は、個人は租税特別措置法26条、医療法人は67条で別に定められている(開業医の概算経費は医療法人化で消えるのか)
  • 保険医療機関の指定は取り直しになり、遡及指定の手続きが要る(医療法人化で保険医療機関の指定は取り直し)
  • 医療法人は医療法54条で剰余金の配当が禁止されており、法人に残した利益は役員報酬や退職金で取り出すことになる

一般診療所と歯科で進み方が違う理由を、この統計から特定することはできません。ただ、法人化の損得が所得の大きさで決まる点はどの業種でも同じです。医療法人化を検討するなら、まず自分の診療所の所得で、個人のままと法人化した場合の手取りの差を確かめるのが出発点になります。当サイトの判定ツールは一般の事業向けの計算で、医療法人特有の概算経費などは反映していないため、結果は目安として使ってください。

まとめ

  • 一般診療所は2017年に医療法人(41,927)が個人(41,892)を上回り、2024年は医療法人47,711・個人38,719
  • 22年で一般診療所の個人は13,607減、医療法人は20,603増。個人の割合は65.9%→44.8%
  • 歯科診療所の医療法人は2.3倍に増えたが、2024年でも個人が74.1%
  • 医療法人化では、保険医療機関の指定の取り直しと概算経費の規定の違いに注意する
  • 損得を決めるのは所得の大きさ。自分の診療所の所得で手取りを比べる

よくある質問

開業医の何割が医療法人ですか。

医療施設調査(2024年10月1日現在)では、一般診療所105,207のうち医療法人の開設が47,711(45.3%)、個人が38,719(36.8%)です。残りは国・自治体・社会福祉法人などの開設です。

歯科医院は医療法人が少ないのですか。

2024年の歯科診療所66,378のうち、個人の開設が48,667(73.3%)、医療法人が17,053(25.7%)です。医療法人は22年で2.3倍に増えましたが、まだ個人が多数派です。

医療法人にすると何が変わりますか。

保険医療機関の指定を医療法人として取り直し、院長は役員報酬を受け取る形になります。社会保険診療報酬の概算経費の特例は、個人は租税特別措置法26条、医療法人は67条で、要件と計算が別に定められています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。