役員報酬

少人数私募債で社長に利息を払う。20%分離課税は2016年に終わった

結論

同族会社が発行した社債の利子で、同族会社の判定の基礎となる株主とその親族等が受け取るものは、平成28年1月1日以後は総合課税です(国税庁 No.1310)。かつての20.315%の源泉分離課税は使えません。売上1,200万円・経費200万円・役員報酬月40万円の会社で、社長に年96万円を社債利子で払うと、法人・社長・社会保険の負担は合計で3.1万円減り、同じ96万円を役員報酬の増額で払うと9.4万円増えました。差は社会保険料がかかるかどうかです。

  • 令和3年4月からは資産管理会社を挟んだ形、令和8年4月からは同族会社の保証付きで引き受けた他社の社債の利子も総合課税に加わった(国税庁 No.1310)
  • これらの利子は住民税の利子割(5%)の課税対象から除かれ、総合課税の所得割で課税される(東京都主税局)
  • 利子の支払時には会社が所得税・復興特別所得税15.315%を源泉徴収し、社長は確定申告で総合課税として精算する

一人社長が会社に資金を入れる方法は、出資・貸付(役員借入金)・社債の3つがあります。このうち社債は、以前は「少人数私募債」として、社長が受け取る利息を20%で分離課税にできる方法として紹介されてきました。

この扱いは、平成28年(2016年)に終わっています。いまは社長が受け取る社債の利子は給与などと合算する総合課税です。それでも、役員報酬を上げて同じ額を払う場合と比べると、社会保険料の分だけ差が残ります。この記事では、課税の変遷を一次情報で確認し、その差を計算エンジンで出します。

2016年から総合課税、2021年と2026年に範囲が広がった

国税庁 No.1310 によると、利子所得は原則として15.315%(ほかに地方税5%)の源泉分離課税です。ただし、特定公社債以外の公社債の利子のうち、次のものは総合課税の対象です。

適用開始総合課税になる利子
平成28年1月1日以後同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の判定の基礎となる一定の株主とその親族等が受けるもの
令和3年4月1日以後同族会社が発行した社債の利子で、判定の基礎となる株主である法人と特殊の関係のある個人(発行済株式等の50%超の保有関係がある個人等)とその親族等が受けるもの
令和8年4月1日以後同族会社の役員等が受ける、その同族会社以外の法人が発行した社債の利子で、実質的にその同族会社から受けると認められるもの

1行目が一人社長の直接の引受け、2行目が資産管理会社などを間に挟んだ形、3行目が他社の社債を自社の保証付きで引き受ける形です。分離課税で受け取る道を、段階的に塞いできた経緯が読み取れます。

令和8年4月からの3行目は、他社の社債の債務について同族会社が保証するなど、契約の内容や状況からみて、役員等が社債の債務不履行で実質的に損失を受けないと認められる場合を指しています。

住民税の利子割もかからない

東京都主税局は、同族会社の判定の基礎となった株主(個人)等が平成28年1月1日以後に支払を受けるべき社債の利子を、住民税の利子割(5%)の課税対象から除かれるものとして挙げています。総合課税なので、住民税は給与などと合算した所得割(10%)でかかります。

支払の時点では、会社が所得税・復興特別所得税15.315%を源泉徴収します。社長は確定申告で、利子を他の所得と合算して税額を計算し、源泉徴収された額を差し引きます。

役員借入金の利息と、課税は同じになった

社長が会社にお金を貸して利息を受け取る場合(役員借入金)、その利息は雑所得として総合課税です。社債の利子が総合課税になったいま、社長個人の税額は、社債でも借入金でも同じ計算になります。

違いは手続きの側に残ります。

項目社債(少人数私募債)役員借入金
社長の所得区分利子所得(総合課税)雑所得(総合課税)
支払時の源泉徴収15.315%なし
住民税の利子割かからないかからない
会社の側社債の発行手続きが必要金銭消費貸借契約で足りる

役員借入金の利息の扱いと、利率の決め方は役員借入金300万円を返しても税金0円。利息3万円だけ雑所得で整理しています。税の面だけを見れば、社債を発行する手間をかける理由は、2016年以前と比べて大きく減っています。

役員報酬で払うより、社会保険料の分だけ負担が軽い

では、社長に払うお金を、利息で払うのと役員報酬で払うのとでは何が違うのか。計算エンジンで、売上1,200万円・経費200万円・役員報酬月40万円の会社が、社長に年96万円を追加で払う2通りを比べました。

払い方法人の税の増減社会保険料の増減(労使計)社長の所得税の増減社長の住民税の増減負担の増減の合計
社債利子・借入金利息で年96万円−21.0万円+0.0万円+8.3万円+9.6万円−3.1万円
役員報酬を月8万円上げる−23.3万円+20.7万円+5.3万円+6.7万円+9.4万円

※ 東京23区・40歳未満・独身・インボイス登録済み・合同会社・2026年(令和8年)分基準。当サイトの計算エンジン(scripts/shoninzu-shibosai-shacho.mjs)で計算 ※ 増減は、追加で96万円を払わない場合(役員報酬月40万円のまま)との差。法人の税は法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税の合計 ※ 利子は総合課税・住民税の利子割なしとして計算。支払時の源泉徴収14.7万円は、確定申告で所得税額から差し引かれるため、年間の負担には影響しない

表から読めること

利息で払うと、法人の税が21.0万円減り、社長の所得税と住民税が合わせて17.9万円増えて、全体では3.1万円軽くなります。役員報酬で払うと、法人の税は23.3万円減りますが、社会保険料が労使合計で20.7万円増えるため、全体では9.4万円重くなります。

差の12.5万円は、ほぼ社会保険料です。利息は社会保険の報酬に含まれないからです。

社長の所得税・住民税の増え方は、利息のほうが大きくなっています。給与なら給与所得控除が差し引かれ、社会保険料控除も増えますが、利子所得や雑所得にはどちらもないためです。

社会保険料が増えないことの裏側

報酬で払えば、保険料は増えますが、標準報酬月額が上がって将来の厚生年金や傷病手当金も増えます。利息で払えば、その分は増えません。報酬額ごとの保険料と給付の関係は標準報酬月額の等級表(令和8年度)で確認できます。

利息を払う前提として、会社が社長から資金を借りている(または社債を発行している)必要があります。利息を払いたいから借りる、という順番では説明がつきません。会社の資金需要と、その借入れに見合う利率かどうかが問われます。

一人会社で社債を出すときの注意

  • 社債の発行は、会社法の手続きに沿って行う。募集事項の決定や社債原簿の作成が必要になる
  • 利息の支払時に15.315%を源泉徴収し、翌月10日までに納付する
  • 社長は利子を確定申告に含める。源泉徴収された額は、確定申告で差し引く
  • 利率は、会社の資金調達の状況や市場金利から説明できる水準にする

まとめ

  • 同族会社の社債の利子で、判定の基礎となる株主とその親族等が受けるものは、2016年1月1日以後は総合課税。20.315%の分離課税は使えない
  • 2021年4月からは資産管理会社などを挟んだ形、2026年4月からは同族会社の保証付きで他社の社債を引き受ける形も総合課税に加わった
  • 住民税の利子割の対象からも除かれ、所得割(10%)で課税される。支払時の源泉徴収は15.315%
  • 社長個人の税額は、社債の利子でも役員借入金の利息でも同じ計算になった
  • 年96万円を払う場合、利息なら全体の負担は3.1万円減り、役員報酬の増額なら9.4万円増える。差は社会保険料

社長にお金を戻す方法を比べる前に、まず自分の売上と経費で、最適な役員報酬と法人に残る利益を確かめてください。そのうえで、残る利益をどの形で受け取るかを考える順番です。

よくある質問

少人数私募債なら、社長の利息は20%で済むのではないのですか?

平成27年までは、社債の利子は源泉分離課税で、20.315%の源泉徴収で課税が終わっていました。平成28年1月1日以後は、同族会社の判定の基礎となる株主とその親族等が受ける社債の利子は総合課税になり、給与などと合算して累進税率で課税されます(国税庁 No.1310)。

社債の利子を受け取っても、20万円以下なら確定申告は不要ですか?

国税庁の「確定申告が必要な方」では、同族会社の役員やその親族などが、その同族会社から給与のほかに貸付金の利子などを受けた場合を申告が必要なケースとして挙げています。社債の利子が20万円以下の不要の扱いに当たるかは、受け取る前に税務署か専門家に確認してください。総合課税の所得である点は変わりません。

知人の会社の社債を引き受け、自分の会社が保証した場合はどうなりますか?

令和8年4月1日以後に同族会社の役員等が受ける、その同族会社以外の法人が発行した社債の利子で、同族会社による保証の契約などからみて実質的にその同族会社から受けると認められるものは、総合課税の対象になりました(国税庁 No.1310)。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。