税金の基礎
税金の滞納は消費税が52%。天引きの税と自分で納める税で24倍の差
結論
令和7年度の新規発生滞納額9,935億円のうち52.1%(5,172億円)は消費税です。ただし徴収決定済額に対する滞納発生割合で見ると、最も高いのは申告所得税の4.18%で、消費税1.95%、法人税0.62%、源泉所得税0.17%と続きます。同じ所得税でも、自分で申告して納める分は、天引きされる分の約24倍の割合で滞っています。
- 消費税の新規発生滞納額は令和4年度3,630億円から令和7年度5,172億円へ42%増えたが、令和7年度は前年度比97.6%で4年ぶりに減った
- 年度末の滞納残高が増えたのは申告所得税(+137億円)と法人税(+62億円)。消費税は整理済額5,234億円が新規発生5,172億円を上回り63億円減った
- 売上1,200万円・経費200万円なら、納める税と保険料450.9万円の全額を自分で納めるのが個人事業。法人化すると、まとめて納める分は170.4万円(42.0%)になる
国税庁が毎年8月に公表している「租税滞納状況の概要」を、税目別に開くと順位が2つ出てきます。金額で最も大きいのは消費税で、令和7年度の新規発生滞納額9,935億円のうち5,172億円(52.1%)を占めます。一方、課税された額に対する滞りやすさで最も高いのは申告所得税です。
公表資料に載っているのは実額だけで、税目別の滞納発生割合は表になっていません。そこを計算したうえで、法人化すると納め方がどう入れ替わるかを判定ツールの計算エンジンで出しました。
消費税は新規発生滞納額の52%。ただし滞りやすさの順位は違う
まず用語を分けます。国税庁のいう徴収決定済額は、申告などにより課税されたものの額です。新規発生滞納額は、そのうち納期限までに納付されず督促状が発付されたものです。そして滞納発生割合は、後者を前者で割った値と定義されています。人数ではなく金額どうしの比です。
令和7年度の主要税目別に、この割合まで出すと次のようになります。
令和7年度の税目別の滞納状況(単位:億円)
| 税目 | 徴収決定済額 | 新規発生滞納額 | 新規発生の構成比 | 滞納発生割合 |
|---|---|---|---|---|
| 源泉所得税 | 232,541 | 397 | 4.0% | 0.17% |
| 申告所得税 | 51,322 | 2,146 | 21.6% | 4.18% |
| 法人税 | 233,180 | 1,456 | 14.7% | 0.62% |
| 相続税 | 40,631 | 613 | 6.2% | 1.51% |
| 消費税 | 265,657 | 5,172 | 52.1% | 1.95% |
| その他税目 | 74,618 | 152 | 1.5% | 0.20% |
| 全税目合計 | 897,949 | 9,935 | 100.0% | 1.11% |
※ 国税庁「令和7年度租税滞納状況の概要」(令和8年8月)の主要税目別の表から、当サイトが構成比と滞納発生割合を計算 ※ 滞納発生割合=新規発生滞納額÷徴収決定済額。徴収決定済額は申告などにより課税されたものの額 ※ 地方消費税は国税の滞納状況から除かれている(公表資料では外書)
構成比では消費税が過半数です。しかし滞納発生割合は1.95%で、申告所得税の4.18%の半分以下です。消費税が金額で目立つのは、課税された額そのものが26兆5,657億円と大きいためで、1円あたりで最も滞っているのは消費税ではありません。
全税目の滞納発生割合1.11%という数字も、国税庁は「徴収決定済額のうち約98.9%が滞納となることなく納付された」と言い換えています。滞納は全体としては例外的な事象です。
同じ所得税で24倍の差。違うのは納め方だけ
この表でいちばん開いているのは、**源泉所得税0.17%と申告所得税4.18%**の間です。差は約24倍あります。どちらも所得税で、税率も控除も同じ法律で決まっています。違うのは納め方だけです。
- 源泉所得税は、給与や報酬を支払う側が支払いのたびに差し引いて、原則として翌月10日までに納めます。納税者本人の手元を通りません
- 申告所得税は、納税者が自分で1年分を計算し、翌年3月15日までに自分で納めます
つまり、手元を通った資金から後で納める形にした瞬間に、滞る割合が一桁上がります。法人税の0.62%も、決算のあとに会社が自分で納める税としては低い値ですが、これは分母の徴収決定済額に大企業の巨額の法人税が含まれるためで、1社あたりの傾向を示すものではありません。
国税庁側の対策も、この構図に沿っています。公表資料では、納期限前のはがきや電話による納付指導、キャッシュレス納付の推進、そして将来納付が見込まれる国税をe-Taxに登録した口座から指定日に前もって納められる「予納ダイレクト」の呼び掛けが並びます。いずれも「納税資金を手元に置いたままにしない」ことを狙った手段です。
消費税の滞納は4年で42%増えたが、令和7年度に初めて減った
年度をさかのぼると、消費税の動きだけが目立ちます。
新規発生滞納額の推移(単位:億円)
| 税目 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 | 令和7年度 | 令和4→7年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 申告所得税 | 1,756 | 1,669 | 1,937 | 2,146 | +22% |
| 源泉所得税 | 397 | 381 | 406 | 397 | +0% |
| 法人税 | 956 | 1,001 | 1,627 | 1,456 | +52% |
| 相続税 | 367 | 464 | 491 | 613 | +67% |
| 消費税 | 3,630 | 4,383 | 5,298 | 5,172 | +42% |
| その他税目 | 90 | 99 | 166 | 152 | +69% |
| 全税目合計 | 7,196 | 7,997 | 9,925 | 9,935 | +38% |
| うち消費税の構成比 | 50.4% | 54.8% | 53.4% | 52.1% | − |
※ 国税庁「租税滞納状況の概要」各年度版より。構成比は当サイトの計算
消費税の新規発生滞納額は、令和5年度が前年度比120.7%、令和6年度が120.9%と2年続けて2割増えました。インボイス制度が始まったのは令和5年10月で、免税事業者だった人が課税事業者になった時期と重なります。ただし国税庁は増減の理由を資料で説明していないため、原因を制度に結び付けることはできません。
そして令和7年度は前年度比97.6%で、4年ぶりに減りました。同じ年に申告所得税は110.8%、相続税は124.8%と増えています。滞納が増えているのは消費税だけ、という読み方は令和7年度には当てはまりません。
積み上がっているのは消費税ではなく申告所得税
滞納は発生した年だけでは判断できません。翌年度以降に徴収されれば残高は減ります。国税庁は過去の実績として、発生した年度中に約3分の2、翌年度中にさらに約2分の1を整理していると説明しています。
そこで、新規発生と整理済を並べて残高の増減を見ます。
令和7年度の新規発生・整理済・残高(単位:億円)
| 税目 | 新規発生 | 整理済 | 年度末残高 | 前年度末からの増減 |
|---|---|---|---|---|
| 申告所得税 | 2,146 | 2,009 | 2,845 | +137 |
| 源泉所得税 | 397 | 423 | 1,104 | −25 |
| 法人税 | 1,456 | 1,394 | 1,380 | +62 |
| 相続税 | 613 | 605 | 506 | +7 |
| 消費税 | 5,172 | 5,234 | 3,893 | −63 |
| 全税目合計 | 9,935 | 9,802 | 9,847 | +133 |
※ 年度末残高=前年度末残高+新規発生滞納額−整理済額
整理済額が新規発生を上回ったのは、消費税と源泉所得税の2つだけです。消費税は残高が63億円減りました。逆に申告所得税は137億円増え、年度末残高2,845億円は消費税の3,893億円に次ぐ規模になっています。
つまり、消費税の滞納は発生も多いが解消も速い。申告所得税の滞納は発生が増え、解消が追いついていない。金額の大きさで目立つ税目と、積み上がっている税目は同じではありません。
法人化すると、まとめて納める分が100%から42%に下がる
ここまでの構図を自分の側に当てると、法人化は「納め方」を大きく組み替える手続きです。判定ツールの計算エンジンで、売上1,200万円・経費200万円の1年分を納め方で分けました。
売上1,200万円・経費200万円のとき、1年間に納める税と保険料
| 個人事業(事業所得935.0万円) | 法人(役員報酬月54万円) | |
|---|---|---|
| 申告してまとめて納める分 | 450.9万円 | 170.4万円 |
| 毎月納める(天引きされる)分 | 0.0万円 | 235.8万円 |
| 合計 | 450.9万円 | 406.2万円 |
| まとめて納める分の割合 | 100.0% | 42.0% |
内訳
| 区分 | 項目 | 金額 | 納め方 |
|---|---|---|---|
| 個人事業 | 所得税(復興特別所得税を含む) | 112.6万円 | 予定納税2回+確定申告 |
| 個人事業 | 住民税 | 77.7万円 | 普通徴収で年4回 |
| 個人事業 | 個人事業税 | 35.5万円 | 年2回 |
| 個人事業 | 消費税 | 108.0万円 | 確定申告1回(中間申告が入る年もある) |
| 個人事業 | 国民健康保険料 | 95.6万円 | 自治体の納期に分割 |
| 個人事業 | 国民年金保険料 | 21.5万円 | 毎月または前納 |
| 法人(まとめて) | 法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税 | 62.4万円 | 決算日から2か月以内に1回 |
| 法人(まとめて) | 消費税 | 108.0万円 | 決算日から2か月以内に1回 |
| 法人(毎月) | 社長の所得税(源泉徴収) | 18.6万円 | 毎月の給与から天引き+年末調整 |
| 法人(毎月) | 社長の住民税(特別徴収) | 34.4万円 | 毎月の給与から天引き |
| 法人(毎月) | 社会保険料(本人分+会社負担分) | 182.8万円 | 毎月納付 |
※ 東京23区(特別区統一保険料率)・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 社会保険料は本人分と会社負担分(子ども・子育て拠出金を含む)の合計。会社負担分は会社の経費 ※ 当サイトの計算エンジンで算出(scripts/sozei-taino-zeimoku.mjs)
個人事業では450.9万円の全額が「自分で計算して自分で納める」側にあります。法人化すると、社長個人の所得税18.6万円と住民税34.4万円は毎月の給与から天引きされる側へ移り、社会保険料182.8万円も毎月納付になります。自分で申告してまとめて納めるのは法人税等62.4万円と消費税108.0万円の**170.4万円で、全体の42.0%**です。
ただし、まとめて納める分が減るだけではありません。法人には振替納税の制度がなく、納付の期限は決算日から2か月以内に集まります。この点は振替納税は法人にない。法人成りで納税日が52日早まるで扱っています。個人事業の最後の確定申告と法人の初回決算が重なる時期の資金の動きは法人成り1年目の資金繰り、法人化した年の6月に個人事業の住民税が届く点は法人化した年に届く住民税は個人事業の額にまとめました。
消費税は、2期目から中間申告が始まって前払いの形に変わります。回数と金額の境目は消費税の中間申告はいくらから?のとおりです。源泉所得税を年2回にまとめる納期の特例を選ぶと、天引きした分を半年ためてから納めることになり、この記事の構図とは逆向きに働きます(一人会社の源泉所得税は年2回にできる)。
納め方が変わっても、有利不利は別に決まる
納付が分散して1回あたりが軽くなることは、法人化の判断材料にはなりません。納める総額を決めるのは所得の水準です。
| 事業所得 | 個人のまま | 法人化(最適報酬) | 最適な役員報酬 | 実質差額(年) | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 303.1万円 | 274.5万円 | 月28万円 | −48.6万円 | 個人のまま有利 |
| 600万円 | 427.3万円 | 409.7万円 | 月42万円 | −37.6万円 | 個人のまま有利 |
| 800万円 | 540.7万円 | 536.6万円 | 月54万円 | −24.1万円 | 個人のまま有利 |
| 1,000万円 | 657.1万円 | 662.4万円 | 月54万円 | −14.7万円 | ほぼ互角 |
| 1,200万円 | 774.2万円 | 787.6万円 | 月54万円 | −6.6万円 | ほぼ互角 |
| 1,500万円 | 928.2万円 | 972.0万円 | 月54万円 | +23.9万円 | 法人化が有利 |
| 1,800万円 | 1082.1万円 | 1149.1万円 | 月90万円 | +47.0万円 | 法人化が有利 |
| 2,100万円 | 1232.0万円 | 1332.6万円 | 月95万円 | +80.6万円 | 法人化が有利 |
| 2,500万円 | 1395.0万円 | 1551.1万円 | 月100万円 | +136.1万円 | 法人化が有利 |
| 3,000万円 | 1599.6万円 | 1816.8万円 | 月100万円 | +197.2万円 | 法人化が有利 |
※ 経費200万円・東京23区(特別区統一保険料率)・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 実質差額は税理士報酬の差(年20万円)と法人住民税の均等割を差し引いた後の金額
先ほどの売上1,200万円は事業所得935.0万円にあたり、この表では実質差額がまだマイナスの帯です。納め方が整理されても、手取りでは個人事業のほうが上にいます。逆に事業所得1,500万円を超えると、納め方の話とは無関係に差額がプラスへ振れます。目安の考え方は法人化の目安は「所得800万円」?、計算の前提は計算の考え方にまとめています。
この統計から読み取れないことも、はっきりさせておきます。滞納発生割合は金額どうしの比なので、滞納した人の割合ではありません。申告所得税には事業所得者以外の申告納税者も含まれ、事業者だけの数字ではありません。源泉所得税の徴収決定済額は給与などから差し引かれた全体の額で、納付義務を負うのは支払う側の事業者です。
納期限までに納付できなかった場合の延滞税と、分割に切り替える手続きは法人税・消費税が払えないときの換価の猶予にあります。ここは制度の話なので、統計の傾向とは切り離して読んでください。
まとめ
- 令和7年度の新規発生滞納額9,935億円のうち52.1%は消費税。ただし課税された額に対する滞納発生割合は1.95%で、申告所得税の4.18%の半分以下
- 同じ所得税でも、天引きされる源泉所得税は0.17%、自分で納める申告所得税は4.18%。差は約24倍あり、違うのは納め方だけ
- 消費税の新規発生滞納額は令和4年度から4年で42%増えたが、令和7年度は前年度比97.6%で減少。増えているのは申告所得税(110.8%)と相続税(124.8%)
- 整理済額が新規発生を上回ったのは消費税と源泉所得税だけ。年度末残高が増えたのは申告所得税と法人税
- 売上1,200万円・経費200万円なら、自分で申告してまとめて納める分は個人事業で100.0%、法人で42.0%。ただし総額と有利不利は所得の水準で決まる
納め方が変わることと、手取りが増えることは別の話です。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。
よくある質問
滞納発生割合は「滞納した人の割合」ですか?
違います。国税庁の定義は、徴収決定済額(申告などにより課税されたものの額)に占める新規発生滞納額の割合で、金額どうしの比です。1件あたりの滞納額は税目によって違うため、人数の割合には置き換えられません。
消費税の数字に地方消費税は入っていますか?
入っていません。公表資料は国税の滞納状況を示すものなので、地方消費税は全税目合計欄と消費税欄の外書として別に示されています。この記事の数値も外書を含みません。
法人化すれば納税が楽になりますか?
納める時期と回数は変わります。ただし納める総額は所得の水準で決まるため、納め方の違いは法人化が有利かどうかの判断材料にはなりません。判定は手取りの差額で行ってください。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。