役員報酬
役員の在宅勤務手当は定額だと給与。通信費は実費精算
一人社長の在宅勤務手当は、月5,000円の渡切りなら給与課税です。通信費と電気代を国税庁FAQの簡便式で計算し、非課税の実費精算にする記録を整理します。
役員へ毎月同額の「在宅勤務手当」を払っても、自動的に非課税にはなりません。国税庁は、使わなかった金銭を返す必要がない渡切りの手当を給与として課税し、在宅勤務に通常必要な費用の実費相当額を精算する支給は給与課税しないと分けています。
一人会社でも線引きは同じです。会社と社長の財布が実質同じに見えても、領収書や計算根拠なしに毎月5,000円を動かす方法と、業務使用分だけを精算する方法は税務上別です。
定額5,000円の渡切りは給与
非課税になるかは「在宅勤務手当」という名前ではなく、支給後の扱いで決まります。
| 支払い方 | 役員の課税 |
|---|---|
| 毎月5,000円。使途確認なし、余りの返還なし | 給与課税 |
| 領収書を提出し、会社用品を立替精算 | 原則として給与課税なし |
| 通信費・電気代の業務分を合理的に按分して精算 | 原則として給与課税なし |
| 仮払金1万円のうち実費3,500円、残額を返還 | 実費3,500円は原則非課税 |
| 仮払金の残額を返さない | 超過分は給与課税 |
給与になると源泉徴収の対象です。定期同額給与として適切に扱う必要もあり、単に福利厚生費や通信費へ仕訳すれば済む話ではありません。
通信費は「月額×在宅日数÷月の日数×1/2」
国税庁FAQは、インターネットの基本使用料やデータ通信料について、合理的な計算の一例を示しています。
業務使用額 = 1か月の通信費 × 在宅勤務日数 ÷ その月の日数 × 1/2
1/2は、24時間から睡眠8時間を除いた16時間のうち、法定労働時間8時間を業務に使うという考え方です。実態に即した、より精緻な計算を使うこともできます。
月1万円、30日の月に20日在宅勤務なら、node scripts/zaitaku-kinmu-teate.mjs の結果は次のとおりです。
| 費目 | 月額 | 計算 | 業務使用額 |
|---|---|---|---|
| 通信費 | 10,000円 | 20日÷30日×1/2 | 3,334円 |
| 電気料金 | 12,000円 | 仕事部屋10㎡÷自宅50㎡×20日÷30日×1/2 | 800円 |
| 合計 | — | — | 4,134円 |
定額5,000円を渡す場合との差は866円ですが、重要なのは金額の大小ではありません。4,134円は請求額・勤務日・床面積から再現でき、5,000円は使途を問わない給与という違いです。
通話料は明細、基本料は按分する
電話料金は一括して同じ式へ入れるのではなく、内訳を分けます。業務通話を通話明細で確認できるなら、その料金は実額を精算できます。基本使用料やデータ通信料は私用分を含むため、簡便式などで合理的に按分します。
端末本体の購入代金、補償料、音楽や動画のサブスクリプションなど、業務使用と認められない費用まで会社が負担すると給与課税の対象になります。会社専用回線を契約し、会社が直接払う方法なら区分は明確です。
電気料金には床面積の割合も掛ける
電気料金の簡便式は通信費より一段多く、業務に使う部屋の床面積を加えます。
業務使用額 = 電気料金 × 仕事部屋の床面積 ÷ 自宅床面積 × 在宅勤務日数 ÷ 月の日数 × 1/2
例では自宅50㎡のうち10㎡を仕事部屋としているため、まず20%へ按分します。リビングの一角を使う場合に、部屋全体を専用スペースとして扱うのは説明が難しくなります。図面や面積のメモを残してください。
一人会社で残す記録
実費精算を継続するなら、最低限次を月ごとに保存します。
- 在宅勤務日と勤務内容が分かる記録
- 通信会社・電力会社の請求書
- 業務通話の明細
- 自宅と仕事部屋の床面積の根拠
- 按分式と1円未満の処理方法
- 会社から役員への精算日・振込記録
精算規程には対象費目、計算方法、必要書類、仮払残額の返還を書きます。毎月の金額が結果として近くなっても、定額を無条件で支給する規程にはしません。
会社の物品は「支給」より「貸与」
パソコンや机を会社が所有したまま役員へ貸与し、業務で使わなくなったら返却するなら、原則として給与課税はありません。所有権を役員へ移す支給は現物給与になり得ます。
領収書を会社名義で保存し、固定資産台帳や備品台帳へ登録し、私物との境界を明確にします。これは役員の食事補助のような一律の非課税限度額ではなく、実費と業務使用割合で決める制度です。
まとめ
- 使い切らなくても返還不要の定額在宅勤務手当は給与課税
- 通信費は、月額×在宅勤務日数÷月の日数×1/2が簡便計算の一例
- 電気料金は、さらに仕事部屋と自宅の床面積割合を掛ける
- 月1万円の通信費、電気代1万2,000円の例では業務使用額は合計4,134円
- 一人会社でも請求書、勤務日、按分表、精算記録を毎月残す
よくある質問
役員へ毎月5,000円の在宅勤務手当を払えば非課税ですか?
使わなかった額を返さなくてよい渡切りの手当は給与として課税します。名称や金額ではなく、実費を精算して余りを返す仕組みかで分かれます。
自宅のインターネット代を全額会社負担にできますか?
私用を含む契約なら、明細や合理的な按分で業務使用部分を計算します。国税庁FAQは在宅勤務日数と2分の1を使う簡便式を示しています。
役員だけの一人会社でも実費精算できますか?
できます。ただし、勤務日、請求書、計算表、精算記録を残し、会社の規程に沿って同じ方法を継続することが重要です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。