社会保険
福岡市の国民健康保険料(令和8年度)。個人事業主の法人化の分岐点は1,277万円
結論
福岡市の令和8年度の国民健康保険料は、単身・40歳未満・事業所得600万円で年56万1,999円で、収録63市区の中で富山市(56万1,837円)に次いで2番目に安い水準です。事業所得1,000万円でも那覇市に次いで2番目に安くなります。所得割の合計が9.00%と低く、東京23区との差は事業所得872万円で最大の年15.8万円になります。同じ福岡県の北九州市とは、事業所得600万円で年17.8万円の差があります。単身・40歳未満なら、法人化の損益分岐は売上−経費1,277万円です。
- 医療分の所得割は5.58%と低く、単身・40歳未満で医療分が上限に届くのは事業所得1,175万円。収録63市区で最も遅い
- 単身の法人化の損益分岐は1,277万円で東京23区より11万円高い。協会けんぽ福岡支部の料率10.11%による
- 配偶者(無収入)がいる場合の分岐は1,066万円で、ほかの多くの市の1,016万円より50万円高い。国保が安いぶん個人のままの負担が軽い
このテーマの全体像 国民健康保険料の自治体別比較
福岡市の国保は、当サイトが実データを持つ63市区の中で最も安い部類です。単身・40歳未満で比べると、事業所得600万円では富山市(56万1,837円)に次いで2番目(差は162円)、1,000万円では那覇市に次いで2番目、300万円では市川市・富山市に次いで3番目に安くなります。同じ福岡県の北九州市は63市区で10番目に高いので、県内の2つの政令市で正反対の位置にあります。
以下は、福岡市の令和8年度の公表料率を当サイトの計算エンジンに入れた結果です。市区ごとの比較は国民健康保険料が高い市・安い市を比較にあります。
令和8年度の料率
| 区分 | 所得割 | 均等割(1人) | 平等割(1世帯) | 賦課限度額 |
|---|---|---|---|---|
| 医療分(基礎分) | 5.58% | 19,807円 | 18,664円 | 67万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 3.14% | 10,441円 | 9,838円 | 26万円 |
| 介護分(40〜64歳) | 2.61% | 10,160円 | 7,751円 | 17万円 |
| 子育て支援金分 | 0.28% | 1,039円 | 911円 | 3万円 |
※ 福岡市 国民健康保険料の計算方法。子育て支援金分は「子ども・子育て支援金分」(福岡市の表記は子ども分)。均等割1,039円のうち72円は18歳以上の加入者の分
40歳未満の3区分を合わせると、所得割9.00%、均等割は大人1人31,287円、平等割は1世帯29,413円です。東京23区(所得割10.58%・均等割67,073円・平等割なし)と比べて、所得割は1.58ポイント低く、均等割と平等割の合計も単身なら6万円台で東京より安くなります。
特徴は、医療分の所得割が5.58%と際立って低く、後期高齢者支援金分は3.14%と高いことです。医療分の所得割は東京23区(7.51%)より約2ポイント低い一方、支援金分は東京23区(2.80%)より高くなっています。
所得割を掛けるのは、前年の総所得金額等から基礎控除43万円を引いた額です。個人事業主なら青色申告特別控除を引いた後の事業所得が出発点になります。
単身・事業所得600万円で年56.2万円
旧ただし書所得は600万円−43万円=557万円です。
| 区分 | 所得割 | 均等割 | 平等割 | 小計 |
|---|---|---|---|---|
| 医療分 | 310,806円 | 19,807円 | 18,664円 | 349,277円 |
| 後期高齢者支援金分 | 174,897円 | 10,441円 | 9,838円 | 195,176円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 15,596円 | 1,039円 | 911円 | 17,546円 |
| 合計 | 561,999円 |
年56万1,999円です。国民年金(年21万5,040円)を足すと77万7,039円になります。東京23区の同条件(65万6,379円)より年9万4,380円安く、収録63市区で最も高い大阪市・堺市(80万7,963円)とは24.6万円の差です。
40〜64歳になると介護分が加わり、72万5,287円になります。
所得が上がるほど差が開き、872万円で最大
| 事業所得 | 福岡市 | 北九州市 | 東京23区 | 東京23区との差 |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 11.2万円 | 14.1万円 | 12.7万円 | −1.5万円 |
| 300万円 | 29.2万円 | 38.0万円 | 33.9万円 | −4.7万円 |
| 500万円 | 47.2万円 | 62.0万円 | 55.1万円 | −7.9万円 |
| 600万円 | 56.2万円 | 74.0万円 | 65.6万円 | −9.4万円 |
| 700万円 | 65.2万円 | 86.0万円 | 76.2万円 | −11.0万円 |
| 800万円 | 74.2万円 | 95.3万円 | 86.8万円 | −12.6万円 |
| 900万円 | 80.3万円 | 95.6万円 | 95.3万円 | −15.0万円 |
| 1,000万円 | 86.1万円 | 95.9万円 | 95.8万円 | −9.6万円 |
| 1,100万円 | 91.8万円 | 96.0万円 | 96.0万円 | −4.2万円 |
※ 単身・40歳未満・青色申告特別控除後の事業所得/2026年(令和8年)分 基準
東京23区との差は所得が上がるほど広がり、事業所得872万円で年15.8万円と最大になります。872万円は、東京23区の医療分が上限の67万円に届く所得です。そこから東京23区は頭打ちに近づき、福岡市は医療分がまだ伸びるので、差は縮み始めます。
北九州市との差はもっと大きく、事業所得600万円で17.8万円、800万円で21.1万円です。福岡県内で引っ越すだけで、保険料が年20万円変わる計算です。北九州市の所得割は合計11.99%で、福岡市より約3ポイント高くなっています。
隣の佐賀市は所得割の合計12.10%・平等割41,900円と高く、事業所得600万円なら福岡市より19.5万円高くなります(佐賀市の国民健康保険税)。
上限に届くのは単身で1,175万円。医療分は収録63市区で最も遅い
単身・40歳未満で区分ごとに上限に届く所得は次のとおりです。
- 後期高齢者支援金分(26万円):事業所得807万円
- 医療分(67万円):1,175万円
- 全区分の合計(96万円):1,175万円
医療分の所得割5.58%は収録63市区で最も低く、医療分が上限に届くのも63市区の中で最も遅くなります(全区分の合計96万円に届く所得では、徳島市・福井市・那覇市・佐賀市・市川市・松山市・水戸市がさらに遅くなります)。東京23区は909万円で医療分と支援金分の両方が上限になるので、266万円遅い計算です。40〜64歳も上限の年113万円に届くのは1,175万円、夫婦と子2人の世帯では1,069万円です。
家族が増えても1人3万円ほど。中学生以下の2人目は半額
| 世帯 | 事業所得300万円 | 500万円 | 700万円 | 1,000万円 |
|---|---|---|---|---|
| 単身・40歳未満 | 29.2万円 | 47.2万円 | 65.2万円 | 86.1万円 |
| 夫婦・40歳未満 | 32.3万円 | 50.3万円 | 68.3万円 | 88.2万円 |
| 夫婦+子2人(小学生) | 36.9万円 | 54.9万円 | 72.9万円 | 90.7万円 |
| 単身・40〜64歳 | 37.7万円 | 60.9万円 | 82.2万円 | 103.1万円 |
※ 福岡市・青色申告特別控除後の事業所得/2026年(令和8年)分 基準。夫婦+子2人は多子世帯の減免(第2子の均等割の半額)を入れて計算。介護分は本人のみで計算
無収入の配偶者が加わると、事業所得500万円で年3.1万円増えます(東京23区は6.7万円)。子どもは小学生なら1人3.0万円、未就学児なら均等割が5割軽減されて1.5万円です。
福岡市には、中学生以下の子が2人以上いる世帯の均等割を減らす減免もあります。中学生以下の第2子は均等割の半額、第3子以降は全額が減免され、該当する世帯は申請も要りません。小学生2人なら、2人目の医療分と支援金分の均等割の半分、年1万5,124円が減ります。
均等割が小さく平等割で世帯に広く薄くかける形なので、家族が多い世帯ほど東京23区との差がさらに開きます。夫婦と子2人(小学生)・事業所得500万円なら年54.9万円で、東京23区(74.8万円)より19.9万円安くなります。
配偶者がいると、法人化の分岐点は50万円上がる
| 条件 | 損益分岐(売上−経費) |
|---|---|
| 東京23区・協会けんぽ東京支部(単身) | 1,266万円 |
| 福岡市の国保のみ(協会けんぽは東京支部・単身) | 1,266万円 |
| 福岡市・協会けんぽ福岡支部(単身) | 1,277万円 |
| 福岡市・配偶者(無収入)あり | 1,066万円 |
| 福岡市・単身・40〜64歳 | 1,255万円 |
※ 40歳未満(注記以外)・経費200万円・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社。損益分岐は青色申告特別控除の前の金額/2026年(令和8年)分 基準
単身の場合、国保の部分だけを福岡市に置き換えても分岐点は1,266万円で東京23区と変わりません。分岐点の付近(青色申告特別控除後で1,200万円前後)では、福岡市の国保もすでに上限の96万円に届いているからです。11万円上がるのは、協会けんぽ福岡支部の健康保険料率(令和8年度10.11%)が東京支部(9.85%)より高いことによります。法人住民税の均等割も、福岡県の森林環境税が上乗せされて年71,000円です。
違いが出るのは配偶者がいる場合です。ほかの多くの市では配偶者ありの分岐点が1,016万円になるのに対し、福岡市は1,066万円でした。事業所得1,000万円前後では、福岡市の国保はまだ上限に届いていません。個人のままでいる負担が軽いので、法人化して国保をやめる効果がそのぶん小さくなります。
配偶者がいると分岐点が下がる仕組みは配偶者がいると法人化の分岐点は250万円下がるで説明しています。
まとめ
- 福岡市の令和8年度の国保は、所得割9.00%・均等割31,287円・平等割29,413円(40歳未満)
- 単身・事業所得600万円で年56万1,999円。収録63市区で富山市に次いで2番目に安く(1,000万円では那覇市に次いで2番目)、東京23区より9.4万円安い
- 東京23区との差は事業所得872万円で最大の15.8万円。北九州市とは600万円で17.8万円違う
- 医療分の所得割が5.58%と低く、医療分が上限に届くのは単身で1,175万円と収録63市区で最も遅い
- 法人化の分岐点は単身1,277万円、配偶者ありは1,066万円で他市より50万円高い
国保が安い市では、家族がいる人ほど「法人化すれば社会保険が安くなる」という前提が崩れます。家族構成を入れて、自分の売上と経費で確かめてください。
よくある質問
福岡市の国保は区によって違いますか?
違いません。料率は市内7区で共通です。福岡県内でも市町村が変わると料率は変わり、たとえば北九州市は福岡市より大幅に高くなります。
子ども・子育て支援金分の均等割はいくらですか?
1人1,039円で、このうち72円は18歳以上の加入者にかかる分です。これとは別に平等割が1世帯911円かかります。18歳の年度末までの子どもは均等割が軽減されます。
国保が安いなら、福岡市では法人化しないほうがよいのですか?
単身なら分岐点付近で国保はすでに上限に達しているので、国保の安さはほとんど効きません。効くのは配偶者や子どもがいて、事業所得が1,000万円前後の場合です。この帯では個人のままの負担が軽いぶん、法人化の分岐点が上がります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。