税金の基礎

FXは法人化で税金が下がるか。先物取引に係る雑所得20.315%との比較

結論

FXの利益だけで比べると、東京23区の合同会社では利益100万〜3,000万円のどの水準でも、法人税等と均等割の合計が個人の20.315%を上回ります。利益500万円で年20.7万円、1,000万円で年50.8万円、法人のほうが重くなります(役員報酬0円・概算)。

  • 個人の店頭FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」で、所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%の申告分離課税。損失は3年繰越
  • 法人のFX損益は本業の損益と合算され、事業年度末に決済していない建玉もみなし決済して益金・損金に入れる(法人税法61条の5)
  • 法人化で変わるのは税率より損失の扱い。法人なら損失を本業の利益と相殺でき、青色申告なら10年繰り越せる

法人化で税金が下がるという話は、累進税率の所得税・住民税(最大55%)がかかる事業所得を前提にしています。FXの利益はもともと一律20.315%の申告分離課税なので、その前提が成り立ちません。ここでは個人と法人の課税の仕組みの違いと、FXの利益別の税額を順に確認します。

個人のFXは「先物取引に係る雑所得等」で一律20.315%

国税庁のタックスアンサーNo.1521によると、店頭外国為替証拠金取引(店頭FX)の差金決済による利益は「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税になります。税率は所得税15%と住民税5%で、所得税には復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかるため、合計は20.315%です。

この税率は、FXの利益が100万円でも3,000万円でも変わりません。事業所得や給与所得がいくらあっても、FXの利益の税率は上がりません。

損失の扱いには制限があります。

項目個人(店頭FX)
税率20.315%(申告分離)
他の先物取引に係る雑所得等との通算できる
事業所得・給与所得との通算できない
通算しきれない損失翌年以後3年間繰越控除

法人のFXは本業の利益と合算し、期末の建玉も時価で課税

法人には「FXだから分離課税」という仕組みがありません。FXの損益は本業の売上・経費と合算され、その所得に法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税がかかります。

もう1つの違いは課税のタイミングです。法人税法61条の5は、事業年度終了の時に決済されていないデリバティブ取引を決済したものとみなして、利益相当額を益金、損失相当額を損金に入れるとしています。法人税基本通達2-3-37は、「決済されていないもの」を手仕舞いの約定が成立していない取引と説明しています。決算日に含み益のある建玉を持っていれば、決済していなくても課税対象になります。

個人は決済した年に課税されるため、含み益のまま年をまたいで課税を先送りすることができます。法人ではこの調整ができません。

FXの利益別に計算すると、法人のほうが重い

FXの利益だけを法人で得たときの法人税等を、判定ツールの法人税計算で出しました。法人は利益の大小にかかわらず法人住民税均等割(年7万円)がかかるので、これも含めています。

FXの年間利益個人(申告分離)法人(法人税等+均等割)差(法人−個人)
100万円20.3万円(20.3%)35.3万円(35.3%)15.0万円
300万円60.9万円(20.3%)78.1万円(26.0%)17.1万円
500万円101.6万円(20.3%)122.2万円(24.4%)20.7万円
800万円162.5万円(20.3%)191.8万円(24.0%)29.2万円
1,000万円203.2万円(20.3%)253.9万円(25.4%)50.8万円
1,500万円304.7万円(20.3%)421.8万円(28.1%)117.1万円
2,000万円406.3万円(20.3%)589.8万円(29.5%)183.5万円
3,000万円609.5万円(20.3%)925.6万円(30.9%)316.1万円

※ 東京23区・合同会社/2026年(令和8年)分基準。法人はFXの利益のみ・役員報酬0円・その他経費0円の前提で、均等割7.0万円を含む。会社から個人へ引き出すときの税は含まない。個人は所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%(scripts/fx-houjinka.mjs で再生成)

どの利益水準でも、法人の負担が個人の20.315%を下回りません。 所得800万円以下の部分には法人税の軽減税率がありますが、法人事業税・法人住民税を加えると個人の申告分離の税率を超え、800万円を超える部分はさらに税率が上がります。

しかもこの表は、法人に残ったお金にかかる税だけです。生活費として個人へ引き出すには役員報酬・配当・退職金のいずれかを経由し、そこでも所得税・住民税(役員報酬なら社会保険料も)がかかります。

それでもFXの法人化が検討される理由は「損失」と「経費」

税率で比べると不利でも、法人にする理由として挙げられるのは次の2点です。

損失を本業の利益と相殺でき、10年繰り越せる

個人ではFXの損失を事業所得と相殺できず、繰越も3年です。法人ならFXの損失は本業の利益を直接減らし、相殺しきれない分は青色申告を続ける限り欠損金として10年間繰り越せます(国税庁No.5762)。年によって大きく負ける可能性があるトレードを続けるなら、この差は税率の差より大きくなり得ます。繰越年数の比較は欠損金の繰越は法人10年・個人3年にまとめています。

経費と役員報酬で所得を分けられる

法人では取引に使う設備や情報料などを法人の経費にでき、利益から役員報酬を払えば給与所得控除も使えます。ただし役員報酬には社会保険料がかかり、FXの利益が出ない年でも報酬は期首に決めた額で払い続ける必要があります(定期同額給与)。利益が年ごとに大きくぶれるFXとは相性がよくありません。

経費や報酬でどこまで負担が変わるかは個別の条件で大きく動くため、ここでは数値を示しません。

本業がある人は「本業を法人化するか」で考える

フリーランスの本業とは別にFXをしている場合、FXの利益は個人のまま20.315%で、本業の事業所得だけが累進税率の対象です。法人化の損得が大きく動くのは本業のほうです。

株式投資でも同じ構造があり、法人で運用したときの限界税率は法人で株式投資すると税金は20.315%より高いかで本業の利益別に計算しています。FXも同様に、本業の利益が800万円を超える法人に乗せると、上乗せ分には法人税の通常税率がかかります。

本業の売上と経費を判定ツールに入れると、役員報酬の最適額と法人化の損益分岐を確かめられます。FXは個人のまま残すのか、法人に移すのかは、その結果と損失の見込みを合わせて判断する論点です。

まとめ

  • 個人の店頭FXの利益は先物取引に係る雑所得等として、一律20.315%の申告分離課税
  • 法人ではFXの損益は本業と合算され、期末の未決済建玉もみなし決済して課税される
  • FXの利益だけで比べると、東京23区の合同会社では利益100万〜3,000万円のどの水準でも法人のほうが重い(利益1,000万円で年50.8万円の差)
  • 法人化で変わるのは損失の扱い。本業の利益と相殺でき、青色申告なら10年繰り越せる
  • 本業がある人は、一般論の数字ではなく本業の売上と経費で法人化の損得を確かめてください

よくある質問

FXの損失を事業所得と相殺できますか?

個人ではできません。国税庁No.1521のとおり、店頭FXの損失は他の先物取引に係る雑所得等とは通算できますが、事業所得や給与所得とは通算できません。通算しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せます。

法人でFXをすると、年末に持っている建玉にも税金がかかりますか?

かかります。法人税法61条の5により、事業年度終了の時に決済されていない建玉は決済したものとみなして、評価益は益金、評価損は損金に入れます。個人のように決済するまで課税を先送りすることはできません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。