税金の基礎
法人で株式投資すると税金は20.315%より高いか。本業の利益で決まる
結論
東京23区の合同会社で、役員報酬を払った後の本業の利益が600万円以下なら、譲渡益100万円に上乗せされる法人税等は21.3万〜23.2万円(21〜23%)で、個人の20.315%とほぼ同じです。本業の利益が1,200万円を超えると33.6%になり、さらに個人へ引き出すときの税がかかるうえ、NISAは法人では使えません。
- 法人の運用益は本業の利益と合算される。限界税率は本業の利益が800万円を超えるかどうかで21%台から33.6%まで動く
- 持株5%以下の上場株式の配当は20%が益金不算入。ETF以外の株式投資信託の分配金は全額が益金になる
- 住民税の配当割(5%)は個人だけにかかる。法人が受け取る配当から源泉されるのは所得税等15.315%で、法人税から控除される
法人の口座で株や投資信託を運用しても、運用益に特別な税率はありません。本業の利益と合算して、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税がかかります。 本業でどれだけ利益を残しているかで、運用益にかかる税率が変わります。
個人なら上場株式等の譲渡益と配当は20.315%で一律です。NISA口座の中なら非課税です。法人と個人のどちらで運用するのが税の面で重いのかを、判定ツールの法人税計算で比べました。
個人は20.315%で一律、法人は本業の利益と合算
個人の上場株式等の譲渡益は、ほかの所得と分けて課税する申告分離課税です。税率は所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%を合わせた20.315%です。上場株式等の配当も、申告分離課税を選べば同じ20.315%になります。事業所得がいくらあっても、この税率は変わりません。
法人にはこの仕組みがありません。法人税は事業年度の所得全体にかかり、運用益はその一部として合算されます。法人税の税率には、所得800万円までの軽減税率があります。本業の利益で800万円の枠を使い切っていれば、運用益には高いほうの税率がかかります。
住民税の扱いも違います。東京都主税局によれば、配当割と株式等譲渡所得割を納めるのは個人だけです。法人が上場株式の配当を受け取ると、源泉徴収されるのは所得税等15.315%だけです。この源泉分は、所得税額控除で法人税から差し引きます。法人税額より多ければ還付されます。受取利息と同じ仕組みで、申告書の別表六(一)を書かないと戻りません(法人の受取利息と所得税額控除)。
運用益100万円に上乗せされる法人税等
役員報酬を払った後に会社に残る本業の利益ごとに、運用益100万円が加わったときに増える法人税等を計算しました。配当は持株5%以下の上場株式を想定し、20%を益金不算入としています。
| 本業の利益(役員報酬の後) | 譲渡益100万円に上乗せされる法人税等 | 配当100万円(持株5%以下)に上乗せされる法人税等 | 個人(課税口座)の場合 |
|---|---|---|---|
| 0万円 | 21.3万円(21.3%) | 17.1万円(17.1%) | 20.3万円(20.3%) |
| 200万円 | 21.4万円(21.4%) | 17.1万円(17.1%) | 20.3万円(20.3%) |
| 400万円 | 22.8万円(22.8%) | 18.2万円(18.2%) | 20.3万円(20.3%) |
| 600万円 | 23.2万円(23.2%) | 18.5万円(18.5%) | 20.3万円(20.3%) |
| 800万円 | 28.6万円(28.6%) | 21.9万円(21.9%) | 20.3万円(20.3%) |
| 1,200万円 | 33.6万円(33.6%) | 26.9万円(26.9%) | 20.3万円(20.3%) |
| 2,000万円 | 33.6万円(33.6%) | 26.9万円(26.9%) | 20.3万円(20.3%) |
※ 東京23区・合同会社/2026年(令和8年)分基準。配当は20%を益金不算入とし、源泉徴収された所得税等は所得税額控除で差し引かれる前提。法人税等は法人税・地方法人税・法人住民税(法人税割)・法人事業税・特別法人事業税の合計で、均等割は含まない
本業の利益が600万円までなら、譲渡益にかかる法人税等は**21〜23%**で、個人の20.315%と大差ありません。800万円の軽減税率の枠が残っているからです。800万円を超えた部分には法人税の本則税率がかかり、1,200万円以上では33.6%で頭打ちになります。
配当の列が低いのは、20%が益金不算入になるためです。ただし、この扱いを受けられる配当は限られます。
配当の益金不算入は、持株割合と商品で決まる
財務省の説明では、益金不算入の割合は持株比率で3段階に分かれます。
| 持株比率 | 益金不算入の割合 |
|---|---|
| 5%以下 | 20% |
| 5%超〜3分の1以下 | 50% |
| 3分の1超 | 100% |
配当を出す会社の段階で法人税が課されているので、受け取る側でその一部を調整する仕組みです。上場株式を市場で買う場合は、ほぼ全部が5%以下の区分に入ります。財務省は、持株比率の低い株式への投資については、債券投資などほかの投資との選択を歪めないよう20%にとどめていると説明しています。
商品によっては、この20%も使えません。国税庁の別表八(一)の記載要領では、次のものを受取配当等の額に含めないとしています。
- 不動産投資信託(REIT)からの分配
- 証券投資信託の特別分配金、公社債投資信託の分配金
- 外国法人から受ける配当や、外国法人が発行する投資信託の分配金
一方、ETF(外国株価指数連動型を除く)の分配金は、非支配目的株式等として20%の益金不算入を受けられます。財務省の資料には、ETF以外の株式投資信託は全額が益金算入と書かれています。インデックス型の投資信託で積み立てる場合、分配金は全額が法人の所得になります。米国株など外国株の配当も、益金不算入の対象外です。
個人へ引き出すまで含めると、差はさらに開く
法人に残った運用益は、そのままでは個人のお金ではありません。役員報酬・役員退職金・配当のいずれかで個人に移すときに、もう一度税がかかります。当サイトの判定ツールは、会社に残る利益を個人の手取りに換算するとき、この引出コストを20%と置いています(計算の前提)。
判定ツールの最適報酬を払ったうえで、会社に残る利益の上に譲渡益100万円が乗った場合を売上別に並べました。
経費300万円・運用益(譲渡益)100万円
| 売上 | ツールの最適報酬 | 会社に残る本業の利益(税引前) | 運用益の限界税率 | 法人税等を引いた後 | さらに引出コスト20%を引いた後 | 個人(課税口座)で得た場合 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1,200万円 | 月54万円 | 159.5万円 | 21.4% | 78.6万円 | 62.9万円 | 79.7万円 |
| 1,500万円 | 月54万円 | 459.5万円 | 23.2% | 76.8万円 | 61.4万円 | 79.7万円 |
| 2,000万円 | 月90万円 | 492.6万円 | 23.2% | 76.8万円 | 61.5万円 | 79.7万円 |
| 2,500万円 | 月100万円 | 866.6万円 | 33.6% | 66.4万円 | 53.1万円 | 79.7万円 |
| 3,000万円 | 月100万円 | 1,366.6万円 | 33.6% | 66.4万円 | 53.1万円 | 79.7万円 |
※ 東京23区・40歳未満・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準。引出コストは判定ツールと同じ前提値(役員退職金・配当で個人へ移すときの実効負担率20%)
法人税等を引いた段階でも、法人は個人より1万〜13万円少なくなります。引出コストまで含めると、差は17万〜27万円に広がります。個人がNISAの枠内で運用していれば、運用益100万円はそのまま100万円です。
もちろん、会社の資金を役員報酬として引き出してから個人で運用するにも、所得税・住民税・社会保険料がかかります。「会社のお金をどう運用するか」ではなく、**「会社に残す利益をどこまで増やすか」**という役員報酬の決め方の問題として考えるほうが筋が通ります。会社に残す利益の出口の比較は法人に残した利益を退職金で引き出すで扱いました。
損失が出たときは法人のほうが有利
税率では個人が有利になりやすい一方、損失の扱いは法人のほうが広く認められています。
| 項目 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 株の売却損と相殺できるもの | 上場株式等の譲渡益と配当(申告分離を選んだもの)だけ | 本業の利益を含む、その事業年度の所得全体 |
| 相殺しきれない損失の繰越 | 翌年以後3年間 | 欠損金として10年間(中小法人は所得の全額まで) |
個人の上場株式等の譲渡損失は、国税庁のNo.1474のとおり、上場株式等の譲渡益や配当所得とは通算できますが、事業所得とは通算できません。法人では株の売却損が本業の利益を直接減らします。繰越の年数の違いは欠損金の繰越は法人10年・個人3年にまとめています。
ただし、損失を出すことを前提に運用先を決める人はいません。税率の差は毎年確実に出るのに対し、損失の扱いの差は損をした年にしか効きません。 この非対称は押さえておく価値があります。
まとめ
- 法人の運用益は本業の利益と合算される。本業の利益(役員報酬の後)が600万円までなら譲渡益の限界税率は21〜23%で、個人の20.315%とほぼ同じ
- 本業の利益が1,200万円を超えると33.6%。引出コスト20%まで含めると、運用益100万円あたり個人より17万〜27万円少なくなる
- 持株5%以下の上場株式の配当は20%が益金不算入。ETF以外の株式投資信託、REIT、外国株の配当は対象外
- 法人はNISAを使えない。一方で株の売却損を本業の利益と相殺でき、10年繰り越せる
会社に残る利益の額は、役員報酬の決め方でほぼ決まります。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で最適報酬と会社に残る利益を出し、そのうえで運用をどちらで行うかを考えてください。
よくある質問
法人名義でNISA口座は作れますか?
作れません。金融庁の説明では、NISA口座を開設できるのは日本国内に住む18歳以上の人で、1人につき1口座です。法人が上場株式や投資信託を持つ場合は、運用益はすべて法人税等の課税対象になります。
会社のお金で株を買い、社長個人の口座で持つことはできますか?
会社のお金を社長個人の投資に使えば、会社から社長への貸付金か役員給与として扱われます。貸付金なら認定利息の問題が出て、給与なら定期同額給与に当たらず損金になりません。法人で運用するなら、口座も法人名義で開く必要があります。
法人で株の損失が出たら、本業の利益と相殺できますか?
できます。法人の所得は事業の損益と運用の損益を合算して計算するため、株の売却損は本業の利益を減らします。相殺しきれない分は欠損金として繰り越せます。個人の上場株式等の譲渡損失は、上場株式等の譲渡益・配当と通算でき、3年間だけ繰り越せます。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。