設立の手続き

法人の受取利息と所得税額控除。別表六(一)を書かないと戻らない

結論

法人が受け取る預金利息には所得税等15.315%が源泉徴収され、別表六(一)に記載すれば法人税額から全額を控除でき、控除しきれない額は還付されます。受取利息が年10万円(源泉税15,315円)の一人会社では、記載するかどうかで手元に残る額が12,115円、法人税額がゼロの年なら15,315円変わります。

  • 法人が受け取る利子に引かれるのは所得税等15.315%だけ。個人の預貯金利子に付く利子割5%は、平成28年1月1日以後、法人には課されない
  • 控除の要件は確定申告書への別表六(一)の記載。控除しきれない額は還付されるので、法人税額がゼロの年でも戻る
  • 売上1,200万円・経費200万円の一人会社では、役員報酬を月80万円にすると法人税額がゼロになり、源泉税は全額が還付になる

法人の通帳に入る預金利息は、すでに税金が引かれた後の金額です。引かれているのは所得税と復興特別所得税で、合わせて15.315%。この分は法人税の申告で法人税額から差し引けますが、差し引けるのは申告書に別表六(一)を付けた場合だけです。

金額は小さく見えます。しかし戻し方を間違えると、戻る割合が100%から2割前後まで落ちます。法人税額がゼロの年なら、戻る額は0円になります。この記事では、その差が実際に何円になるのかを計算エンジンで出し、別表六(一)のどの欄に何を書くことになるのかを国税庁の記載要領から整理します。

法人の利息は15.315%引かれた金額で入金されている

国税庁の令和8年版「源泉徴収のあらまし」は、内国法人に支払う利子所得について、支払者は「その利子等に対し、15.315%の税率により源泉徴収を行うことになっています」としています。内訳は所得税15%と復興特別所得税です。復興特別所得税は、源泉徴収すべき所得税の額に2.1%を乗じて計算され、平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に生じる所得が対象です。15%×102.1%=15.315%という合計税率になります。

ここで個人事業主だったときとの違いが出ます。

受け取る人所得税・復興特別所得税地方税(利子割)合計その後の扱い
個人(預貯金の利子)15.315%5%20.315%源泉分離課税で完結。確定申告はできない
法人(預貯金の利子)15.315%なし15.315%利息は益金に入り、法人税の計算対象になる

東京都主税局は、都民税利子割の納税義務者を「金融機関などを通じて利子等の支払を受ける個人」とし、「平成28年1月1日以後、法人に対して支払われた利子等については、利子割課税の対象外となりました」としています。税率は利子等の額の5%です。つまり法人の側に残るのは所得税等15.315%の1本だけで、法人都民税の側で利子割を精算する話は残っていません。

個人のときは源泉徴収だけで課税関係が終わっていました。法人では終わりません。受け取った利息は益金に入って法人税の対象になり、先に引かれた15.315%は別のルート、つまり法人税額からの控除で精算します。個人の「引かれて終わり」から、法人の「引かれた分を申告で取り戻す」へ、仕組みが入れ替わります。

別表六(一)を書かないと控除できない

国税庁 No.5760「所得税額控除」は、控除の対象を「法人が支払を受ける利子等、配当等、給付補てん金、賞金などについて、所得税法、租税特別措置法または復興財源確保法の規定により源泉徴収される所得税および復興特別所得税の額」としています。そして、控除を受けるためには「確定申告書等において控除を受けようとする金額およびその計算に関する明細書(別表6(1))の記載が必要」としています。

つまり、利息を雑収入に計上して決算書を作るだけでは足りません。別表六(一)の記載が控除の要件です。国税庁の「別表六(一)の記載の仕方」(令和8年4月1日以後終了事業年度等分)も、この明細書は法人税法第68条(所得税額の控除)の規定の適用を受ける場合に記載するもので、復興特別所得税の額を所得税の額とみなして適用する場合を含む、としています。

預金利息を書く場所は、別表六(一)の上段1行目です。欄の名称は「公社債及び預貯金の利子、合同運用信託、公社債投資信託及び公社債等運用投資信託(特定公社債等運用投資信託を除きます。)の収益の分配並びに特定公社債等運用投資信託の受益権及び特定目的信託の社債的受益権に係る剰余金の配当1」と長いのですが、一人会社が普通預金と定期預金の利息を書くのはこの行です。横に3つの欄が並びます。

書く内容
収入金額①当期中に支払を受ける金額。所得税および復興特別所得税込みの金額
①について課される所得税額②①に対して源泉徴収された所得税等の額
②のうち控除を受ける所得税額③②のうち、今期の控除の対象にする額

実務でつまずくのは「収入金額①」です。令和7年版「法人税のあらましと申告の手引」の別表六(一)の留意点は、収入金額①に記載するのは「所得税及び復興特別所得税込みの金額」であり、利子等については「当期末までにその利払期の到来しているもの」に限る、としています。通帳に記録されるのは源泉徴収後の入金額なので、その数字をそのまま雑収入にしていると、①にも②にも書く数字が手元にありません。

同じ手引にはチェックポイントとして、「①について課される所得税額②」欄の金額は「おおむね『収入金額①』欄の金額の15.315%相当額ですか」という確認が置かれています。国税庁自身が15.315%を目安として示しているので、入金額しか記録がない場合は、この関係から利息の総額と源泉税額に分けられるかを確認することになります。

法人税額がゼロでも、還付の形で戻る

No.5760 は、控除しきれない場合について「その控除しきれなかった金額は還付されます」としています。税額控除には、控除しきれない分が切り捨てになるものと、還付されるものがあります。所得税額控除は後者です。

これが一人会社にとって効く理由は、法人税額の出方にあります。売上1,200万円・経費200万円の会社で、役員報酬を月10万円から月100万円まで動かしたときの手取りを、計算エンジンで総当たりで出したものが次の表です。

売上1,200万円・経費200万円(事業所得1,000万円)の場合

役員報酬手取り合計役員個人の手取り法人に残る額社会保険料(労使計)
月10万円632.5万円102.8万円529.6万円33.4万円
月20万円642.4万円196.3万円446.1万円68.1万円
月30万円650.8万円289.1万円361.6万円102.2万円
月40万円654.8万円378.8万円276.1万円139.6万円
月50万円659.7万円468.6万円191.1万円170.3万円
月54万円 ←最適662.4万円504.8万円157.6万円180.5万円
月60万円653.6万円547.8万円105.8万円200.9万円
月70万円646.8万円625.4万円21.4万円228.6万円
月80万円615.8万円704.8万円-89.0万円238.3万円
月90万円570.0万円784.4万円-214.4万円249.2万円
月100万円519.7万円860.2万円-340.4万円261.3万円

個人事業主のままの手取りは 657.1万円。最適な役員報酬は月54万円で、そのときの手取り合計は 662.4万円。

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社/2026年(令和8年)分基準 ※ 法人に残る額は、退職金・配当で引き出す際のコスト20%を控除した後の金額

同じ条件で、法人側の税額だけを取り出すと次のようになります。所得税額控除の相手は法人税額なので、見るべきはいちばん右ではなく「法人税額」の列です。

役員報酬法人の課税所得法人税額法人税等の合計
月10万円8,133,000円1,230,800円2,008,400円
月30万円5,570,000円835,500円1,355,600円
月50万円2,984,000円447,600円737,800円
月54万円(最適)2,476,000円371,400円624,100円
月60万円1,689,000円253,300円447,800円
月70万円409,000円61,300円161,200円
月80万円0円0円70,000円
月90万円0円0円70,000円
月100万円0円0円70,000円

※ 上の表と同じ条件。法人税等の合計は法人税・地方法人税・法人住民税(法人税割・均等割)・法人事業税・特別法人事業税の合計

読み取れることが2つあります。

1つは、役員報酬を月80万円に上げた時点で法人税額がゼロになり、以後どれだけ上げても法人税等は均等割の7万円だけになることです。この帯では所得税額控除の受け皿がありません。差し引く相手の法人税額が0円なので、源泉徴収された所得税等は控除ではなく還付として戻ります。法人所得をゼロ近辺に寄せる報酬設計は一人会社では珍しくないので、還付のケースに当たる会社は少なくありません。均等割が赤字でも消えない理由は法人住民税の均等割にまとめています。

もう1つは、手取りが最大になる月54万円では法人税額が371,400円残っていることです。法人税をゼロにする設計(月80万円)と手取りが最大になる設計(月54万円)は一致せず、この条件では手取り合計が46.6万円違います。法人税額をゼロに寄せること自体が目的になると手取りが落ちるという関係は、役員報酬の最適額の側の論点です。

なお、還付されるのは申告書を出した場合です。法人税額がゼロだから申告しなくてよい、という判断をすると、還付も受けられません。期限後申告になったときの加算税は法人の期限後申告で扱っています。

控除を受けるか、損金のままにするかで戻る額が変わる

No.5760 には、もう1つ重要な一文があります。「この所得税等の控除を受けた所得税等の額は、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されません」。損金不算入になるのは控除を受けた額です。裏返すと、控除を受けなかった源泉税は、支払った税金として費用に残ります。

そこで2つのルートが並びます。

  • ルートA:別表六(一)に記載して法人税額から控除する。源泉税は損金にならない
  • ルートB:記載せず、源泉税を費用のまま置いておく

ルートBでも税金がまったく戻らないわけではありません。費用が増えれば課税所得が減るので、その分だけ法人税等が軽くなります。ただし軽くなるのは税率分だけです。受取利息が年10万円(源泉徴収された所得税等は15,315円)だった場合を、上の最適報酬(月54万円)の会社で計算すると次のようになります。

ルートA(別表六(一)に記載)ルートB(記載しない)
法人の課税所得2,571,000円2,556,000円
法人税額(所得税額控除前)385,600円383,400円
法人税等の合計(同)645,200円642,000円
源泉税15,315円の戻り全額を法人税額から控除法人税等が3,200円軽くなるだけ
手元に残る額2,049,420円2,037,305円

※ 上の表と同じ条件(売上1,200万円・経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・合同会社)に、受取利息10万円を加えて計算 ※ 手元に残る額は、受取利息を含む税引前利益から、源泉徴収された15,315円と法人税等を差し引いた後の金額。ルートAでは源泉税がそのまま法人税額から引かれるため、二重に引かれることはない

差は12,115円です。源泉徴収された15,315円のうち79%が、別表六(一)を書くかどうかで動きます。ルートBで戻ってくるのは3,200円、率にして21%です。

そして、法人税額がゼロの年(表の月80万円以上)では差がさらに開きます。ルートAなら15,315円が全額還付されます。ルートBでは課税所得がもともとゼロなので、費用が増えても減る税金がありません。差額は15,315円、つまり源泉税の全額です。赤字の年ほど、別表六(一)を書いたかどうかの差がそのまま残ります。

金額の絶対値は小さいと感じるかもしれません。ただしこれは毎期発生し、法人税額の計算過程そのものに関わる部分です。自分で決算申告をする場合の作業量については法人の決算申告を自分でやるで扱っています。計算エンジンが使っている税率や前提は計算の前提にまとめてあります。

配当がある場合は元本の所有期間で按分する

余剰資金を上場株式や投資信託で運用している会社では、利子とは扱いが変わります。No.5760 は、利子等や賞金などに係る所得税等の額は全額が控除の対象になる一方、配当等については「元本の所有期間に対応する部分の額のみが所得税額控除の対象になる」としています。

按分の方法は2つあり、事業年度ごとにいずれかを選択できます。

  • 個別法:元本の銘柄ごと、所有期間の月数ごとに計算する
  • 銘柄別簡便法:元本を「株式および出資」と「集団投資信託の受益権」に区分し、さらに配当等の計算期間が1年を超えるものと1年以下のものに区分して計算する。元本の増加分について所得税額の2分の1を控除する簡便計算法です

配当の源泉徴収税率は区分で分かれます。令和8年版「源泉徴収のあらまし」の第8では、上場株式等の配当等(特定株式投資信託の収益の分配を含み、公募証券投資信託の収益の分配などを除く)が15.315%、それら以外の配当等、たとえば非上場会社からの配当が20.42%です。同じ15.315%という数字が利子にも上場株式等の配当にも出てきますが、根拠となる区分は別です。20.42%は非上場の配当等の税率で、利子には出てきません。

期末をまたぐ配当の扱いにも注意が要ります。前掲の手引は、収入金額①に含めるのは、利子等については当期末までに利払期の到来しているもの、配当等については「その支払のために通常要する期間内に支払を受けることが見込まれるもの」に限ると整理しています。

消費税では非課税売上として区分する

受取利息は法人税だけの論点ではありません。国税庁 No.6201 は、非課税となる取引として「預貯金や貸付金の利子、信用保証料、合同運用信託や公社債投資信託の信託報酬、保険料、保険料に類する共済掛金など」を挙げています。受取利息は消費税の非課税売上です。

会計ソフトで雑収入として1行入れるときに課税売上にしてしまうと、課税売上割合がずれます。もっとも、割合が動いても仕入税額控除の結論まで変わるのは限られた場合です。No.6401 は、「課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95パーセント以上の場合」は課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除するとしています。売上1,200万円・受取利息10万円の会社なら、課税売上割合は計算上99.2%で、95%の線を下回りません。

つまり一人会社の規模では、利息の区分を間違えても仕入税額控除の方法までは変わらないことが多いということです。それでも、非課税売上に区分しておかないと、申告書に書く課税売上高そのものが実際と合わなくなります。

まとめ

  • 法人が受け取る預金利息には所得税等15.315%が源泉徴収される。個人の預貯金利子に付く利子割5%は、平成28年1月1日以後、法人には課されない
  • 控除を受けるには、確定申告書に別表六(一)を付け、所得税等込みの収入金額と源泉徴収された所得税額を記載する必要がある
  • 控除しきれない額は還付される。法人税額がゼロの年でも、源泉徴収された所得税等は戻る
  • 受取利息が年10万円(源泉税15,315円)の会社では、記載するかどうかで手元が12,115円、法人税額がゼロの年なら15,315円変わる
  • 配当がある場合は元本の所有期間で按分する。上場株式等の配当等は15.315%、それ以外の配当等は20.42%で、税率の根拠となる区分が違う

ここで出した金額は、売上1,200万円・経費200万円・東京23区という1つの条件での概算です。法人税額がいくら残るかは売上と経費と役員報酬で変わり、そこが還付になるか控除になるかの分かれ目になります。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

預金利息が年に数百円しかない場合も、別表六(一)を書く必要がありますか。

国税庁 No.5760 は、控除を受けるためには確定申告書等において控除を受けようとする金額および別表六(一)の記載が必要としています。金額の大小による例外は示されていないため、記載しなければ金額が小さくても控除は受けられません。

法人税額がゼロの年は、別表六(一)を書いても意味がないのでしょうか。

No.5760 は、控除しきれなかった金額は還付されるとしています。法人税額がゼロでも、源泉徴収された所得税等は還付の形で戻ります。ただし法人住民税の均等割は別に発生します。

受取利息は消費税の課税売上になりますか。

預貯金や貸付金の利子は消費税の非課税取引です。課税売上として処理すると課税売上割合の計算がずれるため、非課税売上として区分します。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。