法人化の判断

合同会社は9年で3.3倍に増えた。国税庁統計で株式会社と比較

国税庁の会社標本調査を9年度分さかのぼって再集計すると、合同会社は6万5,937社から21万4,712社へ3.3倍になりました。同じ期間の株式会社は6.7%増です。資本金100万円以下の帯では4社に1社が合同会社という水準まで来ています。

「合同会社が増えている」という話をよく見かけます。実際どの程度なのかを、国税庁の会社標本調査を9年度分さかのぼって数え直しました。

合同会社は6万5,937社から21万4,712社へ、3.3倍になっていました。 同じ期間の株式会社は6.7%増です。伸び方がまるで違います。

ただしこれは件数の話であって、合同会社を選ぶ理由にはなりません。理由のほうは後半で扱います。

9年度分の推移

国税庁の会社標本調査は、各年度に申告のあった法人を集計した統計です。第11表に組織区分(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・その他)の内訳があります。

年度分合同会社株式会社法人数計合同会社の割合
201665,937社2,507,395社2,658,480社2.5%
201782,745社2,523,470社2,692,230社3.1%
201898,440社2,539,808社2,723,542社3.6%
2019112,976社2,545,100社2,743,716社4.1%
2020133,890社2,568,109社2,788,737社4.8%
2021159,773社2,595,362社2,846,682社5.6%
2022184,501社2,676,118社2,897,282社6.4%
2023202,400社2,642,193社2,939,162社6.9%
2024214,712社2,674,552社2,981,629社7.2%

※ 国税庁「会社標本調査」第11表(その1・単体法人)の「計」行を年度ごとに集計。標本調査による推計値 ※ 通算法人は含まない

割合は2.5%から7.2%へ、ほぼ3倍になりました。 途中で減った年はありません。9年間一貫して増えています。

一方の株式会社は、9年間で250万7,395社から267万4,552社へ16万7,157社の増加にとどまります。合同会社の増加分14万8,775社と、ほぼ同じ規模です。法人数全体の伸びの半分近くを合同会社が作っている計算になります。

資本金100万円以下では4社に1社

もっと差がはっきり出るのが、資本金の小さい帯です。同じ第11表を資本金100万円以下の階級で見ます。

年度分合同会社この階級の法人数計合同会社の割合
201646,381社341,585社13.6%
201982,706社455,435社18.2%
2022135,810社593,477社22.9%
2024154,265社684,650社22.5%

※ 同じく第11表(その1)。資本金階級100万円以下の行

この帯では4社に1社が合同会社です。 全体の7.2%に対し、22.5%。一人会社や小さい会社ほど合同会社を選んでいることが、統計の側からも確認できます。

なお2023年度分の23.2%から2024年度分は22.5%へわずかに下がっていますが、社数自体は14万7,895社から15万4,265社へ増えています。分母のこの階級全体が増えたため割合が下がったもので、合同会社が減ったわけではありません。

この階級は当サイトの読者と重なります。赤字法人の割合を資本金階級別に見た法人の6割が赤字は本当?でも、同じ第11表を別の切り口で使っています。

件数は選ぶ理由にならない

ここからが本題です。増えているから選ぶ、というのは判断の順序が逆です。

この統計が示しているのは「小さい会社ほど合同会社を選ぶ傾向が強まっている」という事実だけで、その選択が有利かどうかは何も語っていません。

税負担で見ると、当サイトの計算エンジンでは合同会社と株式会社で差がつきません

法人形態損益分岐となる事業所得事業所得1,000万円のときの手取り合計
合同会社1,266万円662.4万円
株式会社1,266万円662.4万円

※ 経費200万円・東京23区・40歳未満・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み/2026年(令和8年)分基準

法人税・法人住民税・法人事業税の計算は形態で変わりません。役員報酬の扱いも同じです。差が出るのは税ではなく、設立費用と毎年の手続き費用のほうです。

  • 設立費用:合同会社は登録免許税6万円、株式会社は15万円に定款認証が加わる
  • 決算公告:株式会社は義務、合同会社は義務なし
  • 役員の任期:株式会社は任期満了ごとに重任登記が必要、合同会社は不要

金額の比較は合同会社と株式会社の費用に、決算公告の実額は株式会社の決算公告は義務にまとめました。増えている理由は、おそらくこの費用差です。

合名会社・合資会社は減っている

同じ持分会社でも、合名会社と合資会社はまったく逆の動きをしています。令和6年度分の第11表では、合名会社2,985社、合資会社1万915社です。合同会社の21万4,712社とは桁が2つ違います。

持分会社という同じ枠でありながら差がついたのは、社員(出資者)の責任の違いによります。合名会社は全社員が無限責任、合資会社は無限責任社員と有限責任社員の組み合わせで、いずれも会社の債務を個人が負う社員が必要です。合同会社は全社員が有限責任です。

一人で会社を作るとき、無限責任を選ぶ理由はほとんどありません。合同会社が平成18年の会社法施行で導入されてから増え続け、旧来の持分会社が置き換わってきたという流れです。

なお特例有限会社は、会社法施行時に既存の有限会社が移行したもので、新設できません。時間とともに減る一方の区分です。

増えているぶん、限界も知られてきた

件数が増えると、向かない場面も見えてきます。合同会社で実務上ひっかかるのは次のような点です。

代表者の呼称。 合同会社の代表者は法律上「代表社員」で、「代表取締役」ではありません。定款で「社長」などの肩書を使うことはできますが、登記事項証明書には代表社員と記載されます。取引先の与信審査や、様式が株式会社を前提にしている手続きで説明が要ることがあります。

上場できない。 合同会社は株式を発行しないため、株式公開の道がありません。将来的に外部資本を入れる想定があるなら、あとで株式会社へ組織変更することになり、そのときは登記費用と官報公告が別途かかります。

社員の持分の扱い。 会社法585条1項は「社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない」と定めています。ただし同条4項で定款に別段の定めを置くことは認められています。一人会社なら問題になりませんが、あとから共同経営者を入れるなら定款の設計が要ります。

逆に言えば、一人で始めて当面ひとりのままなら、これらはほぼ効きません。 資本金100万円以下の帯で4社に1社まで来ているのは、この条件に当てはまる会社が多いからだと読めます。

この統計で言えないこと

数字の性格を押さえておきます。

1つ目は、これが設立件数ではないこと。 会社標本調査は各年度に申告のあった法人数、つまりある時点で存在している数(ストック)です。その年に何社設立されたか(フロー)ではありません。設立登記の件数は法務省の登記統計で別に公表されています。増加分14万8,775社は「9年間の設立数」ではなく、設立から解散を差し引いた純増です。

2つ目は、標本調査であること。 会社標本調査は全数調査ではなく、標本から母集団を推計しています。令和6年度分の標本法人数は241万7,580社、標本法人割合は全法人で80.6%です。他の税務統計と数字が一致しないのは、この推計方法の違いによります。

3つ目は、業種や規模の内訳が組織区分と交差していないこと。 第11表は資本金階級別に組織区分を出していますが、業種別との掛け合わせはありません。「どの業種で合同会社が多いか」はこの表からは分かりません。

まとめ

  • 国税庁の会社標本調査で、合同会社は2016年度分6万5,937社から2024年度分21万4,712社へ3.3倍。9年間一貫して増えている
  • 同じ期間の株式会社は6.7%増。法人数全体の伸びの半分近くを合同会社が作っている
  • 全体に占める割合は2.5%→7.2%。資本金100万円以下の帯に限ると22.5%で4社に1社
  • ただし件数は選ぶ理由にならない。税負担では合同会社と株式会社に差がつかず、分岐点はどちらも1,266万円
  • 差が出るのは設立費用・決算公告・役員の任期といった手続き費用のほう
  • この数字はストックであってフローではない。標本調査による推計値でもある

形態そのものより、自分の売上と経費で分岐点のどちら側にいるかが先です。条件を入れて確かめてください。

よくある質問

合同会社は本当に増えているのですか?

増えています。国税庁の会社標本調査で法人数を見ると、平成28年度分の6万5,937社から令和6年度分の21万4,712社へ、9年度で3.3倍になりました。同じ期間の株式会社は250万7,395社から267万4,552社で6.7%増です。

合同会社は全体の何%ですか?

令和6年度分で法人数計298万1,629社のうち21万4,712社、7.2%です。ただし資本金100万円以下の帯に限ると22.5%で、この規模では4社に1社が合同会社になっています。

増えているから合同会社を選ぶべきですか?

件数は選択の理由になりません。この統計が示しているのは小さい会社ほど合同会社を選ぶ傾向が強まっていることだけです。判定に効くのは設立費用と毎年の固定費で、当サイトの試算では税負担そのものに差はつきませんでした。

この数字は設立件数ですか?

いいえ。会社標本調査は各年度に申告のあった法人数を集計したもの(ストック)で、その年に設立された件数(フロー)ではありません。設立登記の件数は法務省の登記統計で別に公表されています。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。