役員報酬
合同会社の利益配分は出資比率と変えられる。税金はどうなる?
合同会社では、定款に定めれば出資比率と異なる損益分配が可能です。50対50の出資を80対20で配当する例、定款変更、法人税と個人の配当課税を整理します。
合同会社では、出資比率と異なる割合で利益を配分できます。社員AとBが50万円ずつ出資していても、定款に損益分配割合を80対20と定めれば、その割合で配当する設計が可能です。
ただし、配分を変えても会社の法人税は減りません。配当は法人税を計算した後の利益から出し、受け取る個人には配当所得の課税があるからです。「利益の分け方」と「税引前利益の分け方」を混同しないことが重要です。
定款に定めがなければ出資価額で分ける
会社法第622条は、持分会社の損益分配割合について定款の定めがない場合、各社員の出資価額に応じて決めるとしています。合同会社は持分会社の一つなので、この規定が適用されます。
| 条件 | 利益の分配割合 |
|---|---|
| 定款に損益分配割合の定めがない | 出資価額に応じる |
| 定款に割合を定めている | 定款の割合による |
| 利益だけ割合を定め、損失を書いていない | その割合は利益・損失に共通すると推定 |
最後の行は見落としやすい点です。会社法第622条第2項では、利益または損失の片方だけを定めた場合、その割合は両方に共通すると推定します。「利益は80対20だが、損失は50対50のつもりだった」という設計なら、両方を定款で明示する必要があります。
合同会社の定款には社員の氏名・住所と出資の目的・価額などを記載します。損益分配割合は絶対的記載事項ではありませんが、法定割合を変えるなら定款に根拠を置きます。設立後に変える場合、定款に別段の定めがなければ、定款変更は原則として社員全員の同意が必要です。
一人合同会社では社員が一人なので、割合を変える相手がいません。この論点が効くのは、家族や共同経営者など複数の社員がいる合同会社です。
50対50の出資を80対20で配当すると入金額はこう変わる
社員A・Bが各50万円を出資し、税引後利益から合計300万円を配当する例を scripts/godo-kaisha-rieki-haibun.mjs で再計算しました。個人への非上場法人の配当として、支払時に20.42%を源泉徴収する単純例です。
| 分配方法 | Aへの配当 | Aの源泉徴収 | Aの入金額 | Bへの配当 | Bの源泉徴収 | Bの入金額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 出資割合どおり | 150万円 | 30万6,300円 | 119万3,700円 | 150万円 | 30万6,300円 | 119万3,700円 |
| 定款で60:40 | 180万円 | 36万7,560円 | 143万2,440円 | 120万円 | 24万5,040円 | 95万4,960円 |
| 定款で80:20 | 240万円 | 49万80円 | 190万9,920円 | 60万円 | 12万2,520円 | 47万7,480円 |
※ 利益配当総額300万円、社員A・Bの出資額は各50万円、国内居住者への非上場法人の配当を想定。20.42%は源泉徴収時の前払いであり、確定申告後の最終税額ではありません。
80対20へ変えると、Aの配当額は出資割合どおりの場合より90万円増え、Bは90万円減ります。しかし、会社から出る配当総額300万円は変わりません。源泉徴収の合計も61万2,600円で同じです。
ここから分かるのは、損益分配割合は社員間の取り分を変える仕組みであり、会社全体の税引後利益を増やす仕組みではないということです。最終的な個人税額はAとBそれぞれの給与、ほかの所得、所得控除によって変わるため、二人の合計税額まで同じになるとは限りません。
配当しても法人の課税所得は減らない
利益配当は、役員報酬のような会社の費用ではありません。会社が稼いだ利益から法人税等を計算し、その後に残った利益を社員へ分けます。
| 支払い | 法人の損金 | 個人側の所得 |
|---|---|---|
| 定期同額給与などの要件を満たす役員報酬 | 算入できる | 給与所得 |
| 合同会社の利益配当 | 算入できない | 配当所得 |
| 社員から会社への貸付元本の返済 | 算入できない | 原則として所得ではない |
たとえば、法人の配当前所得が1,000万円ある状態で300万円を配当しても、法人税の計算上の所得が700万円へ下がるわけではありません。1,000万円に対する法人税等を計算した後の資金から配当します。
「働いた量が多いAへ多く渡したい」という理由でも、役員報酬と配当を入れ替えて考えることはできません。役員報酬には定期同額給与などの要件があり、配当は出資者としての地位に基づく分配です。役員報酬と配当の比較では、会社と個人を合算した手取りと社会保険料まで試算しています。
個人社員は20.42%源泉徴収され、原則は総合課税
国税庁は、非上場株式等の配当等について、支払時の源泉徴収税率を20.42%と案内しています。地方税の源泉徴収はなく、原則として総合課税です。
20.42%を引かれて入金されたら課税が終わる、という意味ではありません。源泉徴収税額は前払いです。確定申告では給与所得などと合算し、累進税率で所得税を計算します。国内法人からの利益配当で要件を満たす場合は配当控除も関係します。
同じ240万円の配当でも、ほかの所得が少ない人と高い人では最終税額が違います。社員間の割合を税引前の金額だけで決めると、手取り比率は想定からずれることがあります。
また、利益配当には会社法上の分配可能額の制限があります。帳簿上に現金があることと、自由に配当できることは同じではありません。配当後に欠損が生じた場合の社員の責任に関する規定もあるため、計算書類を確定させずに資金だけ移す処理は避けます。
決める順番は報酬、会社に残す資金、最後に利益配分
複数社員の合同会社では、次の順で整理すると役割を混同しにくくなります。
- 各社員が会社で担う職務と役員報酬を決める
- 法人税、納税資金、運転資金を見積もる
- 配当可能な税引後利益を確認する
- 定款の損益分配割合と一致するか確認する
- 源泉徴収と各社員の確定申告を処理する
貢献度の差を毎月の労務対価へ反映するなら役員報酬、出資者として税引後利益を分けるなら利益配当です。両方を一つの割合だけで処理しようとすると、法人税、源泉所得税、社会保険の扱いが混ざります。
法人化の判定段階では、会社に残る利益を誰へどの経路で渡すかまで考える必要があります。当サイトの判定ツールは一人会社を基本モデルにしているため、複数社員へ異なる割合で配当する税額までは計算していません。まず法人化前後の全体差を試算し、共同経営者がいる場合は分配後の各人の税額を追加で確認してください。
まとめ
- 合同会社は、定款に定めれば出資比率と異なる損益分配ができます
- 定款に定めがなければ、各社員の出資価額に応じて分けます
- 利益だけ割合を定めると、損失にも同じ割合が推定されます
- 配分割合を変えても、会社の法人税や配当総額は減りません
- 個人への非上場法人の配当は20.42%源泉徴収され、原則として総合課税です
- 役員報酬と利益配当は、損金・社会保険・個人の所得区分が異なります
よくある質問
合同会社の利益は出資比率と違う割合で配当できますか?
定款に損益分配割合を定めれば可能です。定めがない場合は、各社員の出資価額に応じた割合になります。
利益配分を変えると合同会社の法人税は減りますか?
減りません。利益配当は法人税を計算した後の利益から行うため、社員間の配分割合を変えても会社の課税所得は変わりません。
合同会社から個人社員への配当は確定申告が必要ですか?
非上場法人の配当は原則として総合課税です。支払時に20.42%が源泉徴収されますが、これは最終税額ではないため、申告要否を個別に確認します。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。