法人化の判断
法人化すれば補助金・助成金がもらえる?一人社長は増えない理由
結論
法人化しただけで受けられる補助金・助成金は増えません。小規模事業者持続化補助金は個人事業主も会社も補助対象で、上限は通常50万円と同じです。雇用関係助成金は雇用保険適用事業所の事業主であることが共通の要件で、従業員のいない一人社長の会社や、同居の配偶者だけを雇う会社は当てはまりません。一般社団法人を選ぶと、持続化補助金の対象から外れます。
- 持続化補助金(第20回・商工会議所地区)の補助対象者には個人事業主と会社の両方が含まれ、補助上限は通常50万円・補助率2/3で同じ
- 賃金引上げ特例(上限150万円上乗せ)の従業員に、代表者・役員・専従者は含まれない。一人社長の会社や家族だけの会社では使えない
- 雇用関係助成金は「雇用保険適用事業所の事業主であること」が共通要件。受け取った補助金50万円の手取りも、売上1,200万円なら個人30.7万円・法人31.5万円とほぼ同じ
法人化を勧める話の中には、「会社にすれば補助金や助成金が使える」という一言が入っていることがあります。個人事業主のままでは申請できない制度があるかのような言い方です。
実際には、個人事業主が法人化するときに気にされる代表的な制度で、法人化によって受けられる額が増えるものはほとんどありません。むしろ、会社の形によっては対象から外れることがあります。
持続化補助金は、個人事業主も会社も同じ条件
小規模な事業者が使いやすい補助金の一つが、小規模事業者持続化補助金です。商工会議所地区と商工会地区で事務局と公募が分かれています。ここでは商工会議所地区の事務局が公開している第20回の公募要領(第8版)を見ます。補助対象になりうる者は次のとおりです。
| 補助対象になりうる者 | 補助対象にならない者(抜粋) |
|---|---|
| 会社および会社に準ずる営利法人(株式会社・合同会社・合名会社・合資会社・特例有限会社など) | 一般社団法人・公益社団法人 |
| 個人事業主(商工業者であること) | 一般財団法人・公益財団法人 |
| 一定の要件を満たした特定非営利活動法人 | 医療法人・宗教法人・学校法人など |
| 申請時点で開業していない創業予定者 |
出典:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>公募要領 第20回(第8版)
補助の中身も、個人事業主と会社で違いはありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限 | 50万円(インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円、両方で200万円を上乗せ) |
| 補助率 | 3分の2(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は4分の3) |
| 小規模事業者の範囲 | 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下 |
| 第20回の申請受付 | 2026年11月5日〜12月15日17時 |
出典:同上
個人事業主のまま申請しても、会社にしてから申請しても、上限と補助率は同じです。法人化は持続化補助金の申請資格を広げもしなければ、上限を上げもしません。
一般社団法人にすると、対象から外れる
注意が必要なのは法人の形です。公募要領は一般社団法人を「補助対象にならない者」に挙げています。節税目的で一般社団法人を選ぶ話もありますが、税の面では合同会社と同じで、持続化補助金まで失うことになります(一般社団法人で法人化しても節税にならない?)。
上乗せの「賃金引上げ特例」は、従業員がいないと使えない
持続化補助金の上限を大きく引き上げるのが賃金引上げ特例(150万円上乗せ)です。公募要領は、2027年4月1日から補助事業の実施期限までの期間と前年同月の12か月を比べ、従業員1人あたりの給与支給総額が年平均3.0%以上増えた事業者を対象にしています。
この「従業員」について、公募要領は「非常勤を含む。代表者、役員及び専従者は含めない」としています。
| 会社の形 | 賃金引上げ特例の「従業員」 | 特例を使えるか |
|---|---|---|
| 社長1人だけの会社 | いない | 使えない |
| 配偶者を役員にした会社 | いない(役員は含めない) | 使えない |
| 個人事業で配偶者を青色事業専従者にしている | いない(専従者は含めない) | 使えない |
| 他人の従業員を雇っている | いる | 要件を満たせば使える |
一人社長の会社や、家族を役員・専従者にしているだけの事業では、法人か個人かにかかわらず賃金引上げ特例は使えません。
インボイス特例(50万円上乗せ)は、2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間に一度でも免税事業者だった事業者、または2023年10月1日以降に創業した事業者が、適格請求書発行事業者の登録を受けた場合が対象です。法人成りした会社がどちらに当たるかは会社ごとの経緯によるので、申請前に事務局に確認してください。
雇用関係助成金は、雇用保険の適用事業所が前提
キャリアアップ助成金などの雇用関係助成金は、厚生労働省が所管する、従業員を雇う事業主向けの助成金です。厚生労働省の資料は、各助成金に共通の要件の1つ目に「雇用保険適用事業所の事業主であること」を挙げています。
雇用保険の適用事業所になるのは、雇用保険の被保険者になる労働者を雇っている事業所です。社長は労働者ではないので、従業員のいない一人社長の会社は雇用保険の適用事業所にならず、雇用関係助成金の対象外です。
同居の配偶者を従業員にしても同じです。同居の親族は原則として雇用保険の労働者にならず、例外は他人の従業員も雇っている場合に限られます(配偶者だけを雇う一人会社に労災・雇用保険はない)。
雇用関係助成金が使えるようになるのは、法人化したときではなく、他人の従業員を雇って雇用保険の適用事業所になったときです。個人事業主でも、従業員を雇って雇用保険に加入していれば対象になり得ます。
「法人化と助成金」をセットで勧誘されたら
厚生労働省は、厚生労働省から委託を受けたと装って助成金の申請や無料査定を勧誘する事業者がいるとして注意を呼びかけています。厚生労働省や労働局が、特定の事業者に助成金の勧誘を委託することはありません。
コンサルタントや代理人が不正を行った場合でも、不正受給を問われるのは事業主です。厚生労働省は、不正受給があれば返還に加えて事業主名が原則公表され、5年間助成金を受けられなくなるとしています。
受け取った補助金の手取りも、法人化でほとんど変わらない
補助金は受け取った年の所得になり、税金がかかります。持続化補助金の上限50万円を経費に充てた場合、手元にいくら残るかを計算エンジンで出すと次のとおりです。
| 売上 | 個人のまま:手元に残る額 | 法人化後:手元に残る額 | 差 |
|---|---|---|---|
| 800万円 | 28.6万円 | 31.4万円 | 2.8万円 |
| 1,200万円 | 30.7万円 | 31.5万円 | 0.8万円 |
| 1,600万円 | 25.7万円 | 30.8万円 | 5.1万円 |
| 2,000万円 | 25.7万円 | 30.7万円 | 5.1万円 |
※ 補助金50万円を受け取ったときの手取りの増加。経費200万円、東京23区・40歳未満・単身・インボイス登録済み・青色申告(e-Tax)・合同会社。法人の役員報酬は補助金なしの最適額に固定し、法人の手取りは社長個人と法人に残る利益(引き出すときのコストを控除後)の合計。固定資産に充てる場合の圧縮記帳などは考慮していない/2026年(令和8年)分基準。スクリプト:scripts/houjinka-hojokin-joseikin.mjs
差は多くても年5万円程度で、一度きりの補助金です。法人化の損得は毎年の税金と社会保険料の差で決まり、補助金の扱いで結論が変わることはまずありません。補助金の税の扱い(固定資産に充てる場合の圧縮記帳・総収入金額不算入)は補助金100万円で増える負担は個人42.8万円・法人37.1万円で詳しく計算しています。
補助金や助成金を理由に法人化を考えている場合は、まず補助金を抜きにして、自分の売上と経費で法人化の差額を確かめてください。
まとめ
- 持続化補助金は個人事業主も会社も補助対象で、上限(通常50万円)と補助率(2/3)は同じ。法人化で増えない
- 一般社団法人は持続化補助金の対象外。法人の形によっては使えなくなる
- 賃金引上げ特例の従業員に代表者・役員・専従者は含まれず、一人社長や家族だけの事業では使えない
- 雇用関係助成金は雇用保険適用事業所であることが前提。一人社長の会社や、同居の配偶者だけを雇う会社は対象外
- 補助金50万円の手取りは個人でも法人でもほぼ同じ(売上1,200万円で30.7万円と31.5万円)
よくある質問
持続化補助金の第20回はいつ申請できますか?
商工会議所地区の事務局によると、第20回は申請受付が2026年11月5日から12月15日17時まで、事業支援計画書(様式4)の発行の受付締切が12月4日です。予定は変更される場合があります。
開業届を出したばかりでも持続化補助金に申請できますか?
公募要領は、申請時点で開業していない創業予定者を対象外としています。すでに開業届を出していても、開業届上の開業日が申請日より後の場合は対象外です。
助成金を代わりに申請すると勧誘されました。任せても大丈夫ですか?
厚生労働省は、代理人やコンサルタントが不正を行った場合でも事業主が不正受給を問われ、返還のほか事業主名の公表や5年間助成金を受けられなくなるとしています。厚生労働省や労働局が特定の事業者に助成金の勧誘を委託することはないとも注意しています。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。