法人化の判断
一般社団法人で法人化しても節税にならない?税は合同会社と同じ
結論
一般社団法人は、非営利型の要件を満たさなければ法人税法上の普通法人となり、全ての所得に合同会社・株式会社と同じ法人税がかかります。非営利型でも課税されるのは収益事業に限られますが、請負業・物品販売業など34業種が含まれ、フリーランスの本業の多くが当てはまります。そのうえ剰余金の分配ができず、役員は小規模企業共済に入れません。
- 非営利型法人は収益事業(34業種)の所得だけに課税。それ以外の一般社団法人は普通法人で、全所得に課税される(国税庁)
- 一般社団法人は社員に剰余金を分配できない(一般法人法11条2項・35条3項)。利益を個人に移す道は役員報酬などに限られる
- 一般社団法人の役員は、普通法人型でも小規模企業共済に加入できない。最適役員報酬が月54万円なら、掛金84万円の控除で減るはずの税は年17.0万円
「一般社団法人で法人化すると節税になる」という話を見かけることがあります。一般社団法人には「非営利型」という区分があり、非営利型の法人は収益事業にしか法人税がかからない、という制度があるためです。
ただし、この制度がフリーランスや個人事業主の本業にそのまま効くことは多くありません。税金の面で合同会社や株式会社より有利になる場面は限られ、逆に使えなくなるものがいくつかあります。
一般社団法人の税金は2種類。多くは普通法人と同じ
国税庁の資料「一般社団法人・一般財団法人と法人税」は、公益認定を受けていない一般社団法人を2つに分けています。
| 区分 | 法人税法上の扱い | 課税される所得 |
|---|---|---|
| 非営利型法人の要件を満たすもの | 公益法人等 | 収益事業から生じた所得だけ |
| それ以外(非営利型法人以外の法人) | 普通法人 | 全ての所得 |
出典:国税庁「一般社団法人・一般財団法人と法人税」
非営利型の要件を満たさない一般社団法人は、法人税法上は株式会社・合同会社と同じ普通法人です。法人税の税率、法人住民税の均等割、役員報酬の損金算入、社会保険の加入義務は変わりません。当サイトの判定ツールが合同会社として出す税額が、そのまま当てはまります。
非営利型になる要件は、1人で経営する形と相性が悪い
非営利型法人には2つの類型があります。国税庁の資料にある要件のうち、個人事業主の法人成りにとって重いものを抜き出すと次のとおりです。
| 類型 | 主な要件 |
|---|---|
| 非営利性が徹底された法人 | 剰余金の分配を行わないことを定款に定める/解散時の残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定める/理事とその親族等である理事の合計が、理事の総数の3分の1以下 |
| 共益的活動を目的とする法人 | 会員に共通する利益を図る活動が目的/会費の定めがある/主たる事業として収益事業を行っていない/理事とその親族等である理事の合計が、理事の総数の3分の1以下 |
出典:国税庁「一般社団法人・一般財団法人と法人税」(法人税法2条9号の2、法人税法施行令3条)
どちらの類型にも、理事とその親族等が理事の総数の3分の1以下という要件があります。自分1人が理事なら、自分だけで理事の全員です。夫婦で理事になっても同じです。非営利型にするには、親族以外の理事を少なくとも2人入れる必要があります。
さらに非営利性が徹底された法人は、解散したときの残余財産を国や公益的な団体に贈与すると定款に定めなければなりません。法人に貯めた利益は、最終的に自分のもとへ戻らない設計です。
国税庁は、非営利型の要件を一つでも満たさなくなった法人は、特段の手続なしに普通法人になるとしています。
非営利型でも、本業の多くは「収益事業」で課税される
非営利型になれたとしても、課税されないのは収益事業以外の所得だけです。収益事業は法人税法施行令5条が定める34の事業で、継続して事業場を設けて行うものを指します。
| 番号 | 事業 | 番号 | 事業 |
|---|---|---|---|
| 1 | 物品販売業 | 12 | 出版業 |
| 3 | 金銭貸付業 | 13 | 写真業 |
| 5 | 不動産貸付業 | 17 | 周旋業 |
| 6 | 製造業 | 18 | 代理業 |
| 8 | 運送業 | 29 | 医療保健業 |
| 10 | 請負業 | 30 | 技芸教授業 |
| 11 | 印刷業 | 33 | 無体財産権の提供等を行う事業 |
出典:国税庁「一般社団法人・一般財団法人と法人税」の34業種から抜粋
受託開発、デザインの制作、原稿の執筆代行など、フリーランスの仕事の多くは請負業に当たり得ます。物販は物品販売業、教室やレッスンは技芸教授業、著作物の使用料は無体財産権の提供等に当たり得ます。個々の事業がどれに当たるかは内容で判断されます。本業が34業種に入る限り、非営利型でも本業の利益には法人税がかかります。
一般社団法人が非課税の恩恵を受けやすいのは、会費で運営する業界団体や、収益事業に当たらない公益的な活動を主にする団体です。個人事業の延長としての法人化とは、そもそも想定している形が違います。
税が同じなら、違いは「使えないもの」に出る
普通法人型の一般社団法人は、税の計算が合同会社と同じです。それでも比べる価値があるのは、一般社団法人には使えないものが3つあるからです。
1. 利益を配当で受け取れない
一般法人法11条2項は、社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めは効力を持たないとしています。35条3項は、社員総会が剰余金を分配する決議をすることもできないとしています。
合同会社や株式会社なら、法人に残した利益を配当で受け取る道があります。一般社団法人では、利益を個人に移す手段が役員報酬や退職金などに限られます。配当と役員報酬の比較は役員報酬と配当、どちらで受け取るかで扱っています。
2. 役員は小規模企業共済に入れない
中小機構は、一般社団法人の役員は「直接営利を目的としない法人の役員であるため」小規模企業共済の加入資格がないとしています。これは非営利型か普通法人型かを問いません。個人事業で加入していた共済を、法人成り後に通算して続けることもできず、個人事業の廃業として共済金を請求することになります。
合同会社や株式会社の役員なら、小規模企業共済に入り続けられます。掛金を月7万円(年84万円)にした場合、所得控除で減る税を計算エンジンの最適役員報酬で出すと次のとおりです。
| 売上 | 最適な役員報酬(月額) | 共済の掛金84万円で減る税(年) | 20年の累計 |
|---|---|---|---|
| 1,200万円 | 54.0万円 | 17.0万円 | 339.6万円 |
| 1,400万円 | 54.0万円 | 17.0万円 | 339.6万円 |
| 1,600万円 | 54.0万円 | 17.0万円 | 339.6万円 |
| 2,000万円 | 90.0万円 | 25.7万円 | 513.0万円 |
| 2,500万円 | 100.0万円 | 28.1万円 | 562.4万円 |
※ 経費200万円、東京23区・40歳未満・単身・インボイス登録済み・青色申告(e-Tax)。所得税(復興特別所得税を含む)と住民税所得割の、控除の前後の差。役員報酬は共済に入らない場合の最適額に固定し、20年の累計は単純な年数倍/2026年(令和8年)分基準。スクリプト:scripts/ippan-shadan-houjinka.mjs
一般社団法人を選ぶと、売上1,400万円の一人社長で年17.0万円、20年で約340万円の節税の手段を失う計算です。共済の仕組みと法人成り後の通算の条件は、小規模企業共済は法人成り後も継続できるで整理しています。
3. 設立時の社員は複数が前提
一般法人法10条1項は、一般社団法人を設立するには「社員になろうとする者」が共同して定款を作成するとしています。発起人1人で設立できる株式会社、社員1人で設立できる合同会社と違い、複数の設立時社員を前提にした手続きです。法務局の定款記載例も、設立時社員が複数名で記名押印する形になっています。設立後に社員が1人になっても法人は続きますが、社員が欠けると解散します(148条4号)。
設立費用も合同会社より高い
設立時にかかる法定費用を並べると、一般社団法人は合同会社より5万円高くなります。
| 合同会社 | 株式会社 | 一般社団法人 | |
|---|---|---|---|
| 登録免許税 | 6万円 | 15万円 | 6万円 |
| 定款認証の手数料 | 不要 | 1万5,000円〜5万円 | 5万円 |
| 設立時の人数 | 社員1人で可 | 発起人1人で可 | 設立時社員が共同して定款を作成 |
出典:法務局の設立登記申請書記載例、日本公証人連合会。株式会社の定款認証手数料は資本金などの条件で変わる
日本公証人連合会は、一般社団法人の定款認証の手数料を公証人手数料令35条により5万円としています。合同会社は定款認証が要りません。合同会社と株式会社の費用の違いは合同会社と株式会社、設立費用の差は約15万円にまとめています。
法人化の判断そのものは、合同会社で試算すればよい
普通法人型の一般社団法人の税金は合同会社と同じなので、法人化するかどうかの判断は合同会社で試算した結果がそのまま使えます。そのうえで一般社団法人を選ぶと、設立費用が5万円増え、配当と小規模企業共済が使えなくなります。小規模事業者持続化補助金も、公募要領で一般社団法人は補助対象外とされています(法人化すれば補助金・助成金がもらえる?)。
一般社団法人を選ぶ理由があるとすれば、税ではなく、業界団体や資格認定の運営など、営利を目的としない形であること自体に意味がある事業です。個人事業の法人成りで税の有利不利を比べるなら、まず自分の売上と経費で合同会社として試算してみてください。
まとめ
- 非営利型の要件を満たさない一般社団法人は普通法人で、税金は合同会社・株式会社と同じ
- 非営利型にするには、親族以外の理事を入れて親族等を3分の1以下にするなどの要件がある
- 非営利型でも、請負業・物品販売業など34業種の収益事業には法人税がかかる
- 一般社団法人は剰余金を分配できず、役員は小規模企業共済にも入れない(売上1,400万円で年17.0万円の節税を失う)
- 設立時社員が共同して定款を作る手続きで、定款認証5万円が必要。合同会社より設立費用が5万円高い
よくある質問
一般社団法人は1人で設立できますか?
一般法人法10条1項は、社員になろうとする者(設立時社員)が「共同して」定款を作成するとしており、複数の設立時社員を前提にしています。設立後に社員が1人になっても存続しますが、社員が欠けると解散します(148条4号)。
非営利型の一般社団法人にすれば、法人税はかかりませんか?
収益事業から生じた所得には法人税がかかります。国税庁が挙げる34業種には物品販売業・請負業・出版業・技芸教授業・無体財産権の提供等を行う事業などが含まれ、継続して事業場を設けて行えば課税対象です。
一般社団法人でも社会保険に入る必要がありますか?
一般社団法人も法人なので、役員報酬を受け取る代表理事は健康保険・厚生年金の対象になります。この点は株式会社・合同会社と変わりません。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。