法人化の判断
NPO法人で法人化できる?本業が収益事業なら税は合同会社と同じ
結論
NPO法人も、請負業や物品販売業など34業種の収益事業の所得には普通法人と同じ法人税がかかり、東京都の均等割の免除も収益事業を行う法人には使えません。そのうえ利益を分配できず、内部留保は個人に戻りません。売上1,500万円(経費200万円・東京23区・単身)では、合同会社の手取り849.1万円に対し、NPO法人で報酬を目いっぱい取っても828.2万円です。
- NPO法人は法人税法上の公益法人等とみなされ、収益事業の所得だけに課税。税率は普通法人と同じ扱い(NPO法70条1項)
- 東京都の均等割免除は「収益事業を行わない」NPO法人が4月30日までに申請した場合だけ。収益事業があれば免除なし
- 報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下(2条2項1号ロ)。役員は理事3人以上・監事1人以上、社員は10人以上が必要
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
NPO法人を考える人が気にするのは、「非営利なら税金が安いのでは」という点です。ただし、税が安くなるのは収益事業をしていない部分だけです。個人事業の本業をそのままNPO法人に移すと、税は合同会社とほぼ同じになります。違いが出るのは、利益をどこに残せるかです。
NPO法人の税は「収益事業かどうか」で決まる
特定非営利活動促進法(NPO法)70条1項は、NPO法人を法人税法上の公益法人等とみなすと定めています。公益法人等は、収益事業から生じた所得にだけ法人税がかかります。
同じ条文は、法人税率の規定(法人税法66条)の適用では「普通法人(特定非営利活動法人を含む。)」と読み替えるとしています。つまり、収益事業の所得には普通法人と同じ税率がかかります。
収益事業は、法人税法施行令5条が定める34の事業です。国税庁の資料には、物品販売業・請負業・出版業・技芸教授業・無体財産権の提供等などが並びます。業種の一覧と、フリーランスの仕事がどれに当たり得るかは、同じ構造を持つ一般社団法人の記事で整理しています。
東京都主税局の案内も、収益事業の有無で扱いを分けています。
| 収益事業を行っていない | 収益事業を行っている | |
|---|---|---|
| 法人税 | 非課税 | 課税 |
| 法人事業税・特別法人事業税 | 非課税 | 課税 |
| 法人都民税(法人税割) | 発生しない | 課税 |
| 法人都民税(均等割) | 課税(条例で免除あり) | 課税(免除措置なし) |
| 申告 | 4月30日までに均等割申告書 | 事業年度終了の日から2か月以内 |
出典:東京都主税局「NPO法人のみなさまへ 法人都民税均等割の免除についてのご案内」
均等割の免除は、収益事業がないことが条件
東京都は、収益事業を行わないNPO法人が4月30日までに均等割申告書と免除申請書を出せば、均等割を免除します。決算期にかかわらず期限は4月30日で、出し遅れると免除されません。特別区のみに事務所がある場合の均等割は年7万円です。
この免除は都税だけです。都内の市町村に事務所があれば、市町村民税の均等割の免除は各市町村が決めるとされています。いずれにしても、本業が収益事業なら免除の対象外です。赤字でも毎年かかる均等割の仕組みは法人住民税の均等割は赤字でも7万円で扱っています。
そもそも本業を「主たる目的」にできない
NPO法2条2項は、NPO法人を「特定非営利活動を行うことを主たる目的」とする団体と定義しています。特定非営利活動は、別表に掲げる活動で、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与するものです。
本業以外の事業は「その他の事業」として行えます(5条1項)。ただし特定非営利活動に支障がない限りで、利益が出たら特定非営利活動の事業のために使わなければなりません。会計も区分します(5条2項)。
所轄庁は、申請が2条2項の団体に当たると認めるときに設立を認証します(12条1項2号)。個人事業の受託開発やデザイン制作を主たる事業にした定款は、この要件と正面からぶつかります。
役員と社員の要件が、一人で経営する形と合わない
NPO法の組織の要件のうち、個人事業の法人成りで重いものを並べます。
| 要件 | 条文 | 一人で経営する場合の意味 |
|---|---|---|
| 理事3人以上・監事1人以上 | 15条 | 最低でも自分以外に3人の役員が要る |
| 報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下 | 2条2項1号ロ | 役員4人なら報酬を受けられるのは1人 |
| 各役員の配偶者・3親等内の親族は1人まで、本人と親族の合計は役員総数の3分の1以下 | 21条 | 夫婦で役員になるなら役員6人以上 |
| 社員10人以上 | 12条1項4号 | 設立申請に10人以上の社員の名簿が要る |
報酬を受けられる役員が1人に限られるため、合同会社のように夫婦それぞれに役員報酬を払って所得を分ける形は、役員の人数を相当増やさない限り取れません。合同会社での夫婦の報酬配分は夫婦の役員報酬の配分で計算しています。
設立までの期間も合同会社と違います。所轄庁は申請を受理した日から2週間、定款などを公衆の縦覧に供し(10条2項)、その期間を過ぎた日から2か月以内(条例でより短くできる)に認証・不認証を決めます(12条2項)。登記はその後です。
利益は個人に戻らない。売上別の手取り
税の計算が合同会社と同じでも、手元に残る額は変わります。NPO法人は営利を目的としない団体で、利益を社員に分配できません。解散時の残余財産も、定款で定めるなら他のNPO法人・国・地方公共団体・公益法人などから選ぶ必要があります(11条3項、32条)。
判定ツールの合同会社の手取りは、役員報酬の手取りに、内部留保を引き出しコストを差し引いた価値で足しています。NPO法人ではこの内部留保が個人に戻らないので、個人の手取りだけで比べます。NPO法人側の報酬は、法人の税(均等割を含む)を払える範囲で個人の手取りが最大になる額を探しました。
| 売上 | 個人のまま | 合同会社(最適報酬・月額) | 合同会社のうち個人の手取り | 内部留保 | NPO法人(報酬・月額) | NPO法人の個人の手取り |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 800万円 | 427.3万円 | 409.7万円(42.0万円) | 399.9万円 | 12.2万円 | 42.0万円 | 399.9万円 |
| 1,000万円 | 540.7万円 | 536.6万円(54.0万円) | 504.8万円 | 39.8万円 | 57.0万円 | 525.2万円 |
| 1,200万円 | 657.1万円 | 662.4万円(54.0万円) | 504.8万円 | 197.1万円 | 72.0万円 | 641.3万円 |
| 1,500万円 | 825.5万円 | 849.1万円(54.0万円) | 504.8万円 | 430.4万円 | 96.0万円 | 828.2万円 |
| 2,000万円 | 1,082.1万円 | 1,149.1万円(90.0万円) | 784.4万円 | 455.9万円 | 100.0万円 | 860.2万円 |
※ 経費200万円、東京23区・40歳未満・単身・インボイス登録済み・青色申告(e-Tax)。本業が収益事業で、税・社会保険は合同会社と同じ計算。合同会社の手取りは内部留保を引出しコスト控除後の価値で含む。NPO法人の報酬は月100万円までで探索。設立費用・税理士報酬は含まない/2026年(令和8年)分基準。スクリプト:scripts/npo-houjin-houjinka.mjs
NPO法人では、利益を法人に残すほど個人の取り分が減るため、報酬を高くして利益をほぼ使い切る形が最大になります。それでも売上1,200万〜1,500万円では個人のままを下回り、2,000万円では合同会社より288.9万円少なくなります。合同会社が有利になるのは、報酬を月54万円前後に抑えて所得税の高い税率帯を避け、残りを法人の税率で留保できるからです。NPO法人ではこの留保が使えません。
売上2,000万円の行は、探索上限の月100万円でも内部留保が残る帯です。報酬をさらに上げても、所得税・住民税の税率が上がるだけで差は縮まりにくい構造です。
NPO法人が向くのは、本業と別の公益活動
NPO法人が税の面で意味を持つのは、収益事業に当たらない特定非営利活動を主に行い、東京都なら均等割の免除まで受けられる団体です。個人事業の本業を移す器としては、税は合同会社と同じで、報酬・人数・利益の使い道に制約が加わります。
本業は合同会社か株式会社で法人化し、地域活動などを別にNPO法人で行う、という切り分けもあり得ます。どちらの器が合うかは事業の中身で変わるため、収益事業の該当性は所管の税務署に、組織の設計は専門家に確かめる価値があります。法人化そのものの損得は、まず自分の売上と経費で合同会社として試算してみてください。
まとめ
- NPO法人は公益法人等とみなされ、収益事業(34業種)の所得には普通法人と同じ税率で法人税がかかる
- 東京都の均等割免除は、収益事業を行わないNPO法人が4月30日までに申請した場合だけ
- 報酬を受ける役員は3分の1以下、理事3人・監事1人・社員10人以上が必要で、夫婦で報酬を分ける形は取りにくい
- 利益は分配できず内部留保は個人に戻らないため、売上1,500万円では手取りが合同会社より20.9万円少ない
よくある質問
NPO法人なら法人税はかかりませんか?
収益事業(法人税法施行令5条の34業種)を行わなければ法人税はかかりませんが、収益事業の所得には普通法人と同じ税率で法人税がかかります。均等割は収益事業がなくても課税され、東京都では申請により免除されます。
NPO法人の理事長は役員報酬を受け取れますか?
受け取れます。ただし報酬を受ける役員は役員総数の3分の1以下でなければならず、最低人数(理事3人・監事1人)なら報酬を受けられる役員は1人です。
夫婦でNPO法人の役員になれますか?
なれますが、各役員の配偶者・3親等内の親族は1人まで、本人と親族を合わせて役員総数の3分の1以下という制限があります(NPO法21条)。夫婦2人を役員にするには役員が6人以上必要です。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。