法人化の判断

売上が伸びているエンジニアの法人化試算事例。何年目に法人化するのが得か

結論

川崎市・30歳・独身のエンジニアが、年商を900万→1,200万→1,500万→1,800万→1,800万円と伸ばす5年間では、年商1,500万円の3年目に法人化すると5年間の合計がいちばん多く、個人のままより65.7万円多くなります。1年目に法人化すると27.8万円、5年目まで待つと23.7万円の上積みにとどまります。

  • 損益分岐は事業所得1,269万円(経費150万円なら年商1,419万円前後)。この線を超える年から法人化すると、合計がもっとも大きくなる
  • 1年早く法人化すると、損益分岐に届かない年の不利(年商1,200万円で年14.1万円)を払うことになる
  • 1年遅れると、届いている年の有利(年商1,800万円で年33.7万円)を取り逃がす。早すぎるより遅すぎるほうが失う額が大きくなりやすい

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

売上が伸びている人の悩みは「法人化するか」ではなく「いつするか」です。判定ツールは1年分の条件で答えを出しますが、ここでは5年間の売上の伸びを置いて、何年目に法人化すると合計がいちばん多くなるかを比べます。

このケースの条件

項目内容
職種フリーランスのWebエンジニア(スタートアップの開発を受託)
年齢・家族30歳・独身
住所川崎市
経費毎年150万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種請負業として5%で計算

売上は次のように伸びる想定です。

年1年目2年目3年目4年目5年目
年商900万円1,200万円1,500万円1,800万円1,800万円
事業所得(売上−経費)750万円1,050万円1,350万円1,650万円1,650万円

年商ごとの、個人と法人の手取り

まず、それぞれの年商で1年分を比べます。

年商個人のままの手取り法人化の手取り合計最適な役員報酬会社に残る額実質差額(2期目以降)
900万円508.6万円504.8万円月54万円0.3万円−23.8万円
1,200万円687.6万円693.5万円月54万円236.2万円−14.1万円
1,500万円851.2万円879.5万円月54万円468.7万円+8.3万円
1,800万円1,005.1万円1,058.8万円月54万円692.8万円+33.7万円

※ 経費150万円・川崎市・30歳・独身・個人事業税5%・青色申告(e-Tax)・合同会社・神奈川県(協会けんぽ)。実質差額は税理士報酬の差20万円を引いた額。法人化の手取り合計は会社に残る額を2割引いて計上/2026年(令和8年)分基準

損益分岐は事業所得1,269万円で、年商にすると1,419万円前後です。3年目の年商1,500万円で初めて超えます。

最適な役員報酬はどの年も月54万円で、個人に入る手取りは504.6万円で変わりません。売上が増えた分は会社に残る額として積み上がっていきます。月54万円で止まる理由は役員報酬の決め方で扱っています。

何年目に法人化すると、5年間の合計が多いか

法人化した年から5年目までの実質差額を足し、法人化した年に設立費用10万円を引きました。

法人化する年法人化した年の年商5年間の合計(個人のままとの差)
1年目900万円+27.8万円
2年目1,200万円+51.6万円
3年目1,500万円+65.7万円
4年目1,800万円+57.4万円
5年目1,800万円+23.7万円
法人化しない—0円

※ 上の表の年商ごとの実質差額を年ごとに足し、法人化した年に設立費用10万円を引いた。インボイス登録済みのため新設法人の消費税免税はない

損益分岐を超える3年目に法人化すると、合計がもっとも多くなります。理屈は単純で、損益分岐より下の年は法人のほうが不利、上の年は有利だからです。

早すぎると、届かない年の不利を払う

1年早く2年目に法人化すると、年商1,200万円の年を法人で過ごすことになり、その年に14.1万円の不利を払います。3年目と比べて合計は14.1万円少なくなります。1年目から法人化すると、さらに23.8万円が加わります。

遅すぎると、届いた年の有利を逃す

1年遅く4年目に法人化すると、年商1,500万円の年の有利8.3万円を取り逃がします。5年目まで待つと、年商1,800万円の年の33.7万円も逃し、合計は23.7万円まで下がります。

伸びが続く局面では、遅れるほど逃す額が大きくなります。売上が損益分岐を大きく超えるほど、1年あたりの有利が大きくなるためです。

「来年は超えそう」という年の考え方

現実には、何年目に年商がいくらになるかは事前に分かりません。判断の材料になるのは次の3つです。

材料確かめ方
今年の事業所得の着地見込み10月ごろに、年末までの売上と経費の見込みを出す
来年の契約の見通し継続案件の単価と期間。案件の切れ目があれば売上は1割前後落ちる
損益分岐との距離判定ツールに来年の見込みを入れて、損益分岐を何万円上回るか

損益分岐をわずかに超える程度なら、売上が少し落ちるだけで不利に戻ります。このケースの3年目(事業所得1,350万円)は分岐を81万円上回るだけで、有利は年8.3万円です。法人化を決めるのは、4年目以降も超え続ける見通しが立つときです。

年の途中で法人化する場合の決算期の決め方は法人化のタイミングと決算期の決め方にまとめています。法人化した年は、前年の個人事業の住民税と法人の社会保険料が重なって資金繰りが苦しくなりやすい点も、法人成り1年目の資金繰りで確かめておくと安全です。

まとめ

  • 川崎市・独身のエンジニアが年商900万円から1,800万円へ伸ばす5年間では、損益分岐を超える3年目(年商1,500万円)の法人化で合計がもっとも多く、+65.7万円
  • 1年目に法人化すると+27.8万円、5年目まで待つと+23.7万円
  • 損益分岐は事業所得1,269万円(年商1,419万円前後)。超えない年は法人のほうが不利
  • 伸びが続く局面では、早すぎるより遅すぎるほうが逃す額が大きくなりやすい
  • 分岐をわずかに超えた年は、売上が少し落ちるだけで不利に戻る。翌年以降も超え続ける見通しで決める

来年の売上見込みを判定ツールに入れて、損益分岐からどれだけ離れているかを確かめてください。法人化の判断全体は個人事業主の法人化の目安にまとめています。

よくある質問

売上が損益分岐を超えそうな年は、年の初めに法人化すべきですか?

この試算は1年単位で比べているので、年の途中で法人化した場合は、その年の個人と法人の期間で按分した差になります。ただし所得税の累進や国保の上限は1年単位で効くため、按分どおりにはなりません。年の途中で法人化した年の扱いと決算期の決め方は別に考える必要があります。

売上の見込みが外れたらどうなりますか?

法人化した後に売上が損益分岐を下回ると、その年は個人のままより不利になります。このケースで年商1,200万円に戻ると、年14.1万円の不利です。社会保険料と均等割・税理士報酬は売上が落ちても下がりにくい費用です。

法人化した年は、手元のお金が一時的に減ると聞きました。

法人化した年も、前年の個人事業の所得にかかる住民税や個人事業税、所得税の確定申告の納付が来ます。そこに法人の社会保険料の支払いが重なるため、1年目は資金繰りが苦しくなりやすい時期です。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。