法人化の判断
59歳で法人化を迷う技術顧問の試算事例。60歳の誕生日で有利と不利が入れ替わる
結論
福岡市・単身の技術顧問(年商1,500万円・経費200万円)は、59歳なら法人化で3期目以降年4.6万円有利ですが、61歳では年7.5万円の不利、66歳では年9.8万円の不利になります。法人側の数字は59歳と61歳で同じで、変わるのは個人のままの負担だけです。国民年金(年21.5万円)は60歳になると払わなくなり、損益分岐は事業所得1,255万円から1,374万円へ119万円上がります。
- 国民年金の第1号被保険者は20歳以上60歳未満。個人事業主は60歳で国民年金の保険料がなくなり、法人化で「消える負担」が年21.5万円小さくなる
- 介護保険の第2号被保険者は64歳まで続くので、60〜64歳は国保の介護分と健康保険の介護保険料が両方残る。65歳でどちらも外れる
- 59歳で法人化すると、1年目は有利でも60歳からは不利側に入る。法人化は数年単位で続く判断なので、60歳以降の数字で確かめる必要がある
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
ほかの試算事例 法人化の試算事例35人を1つの表で比較。損益分岐を動かすのは家族・年齢・業種
この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。
59歳で法人化を考えている人には、他の年代にない注意点があります。1年後に60歳になると、個人事業主の国民年金の保険料がなくなるからです。法人化の損得は「個人のままの負担」と「法人の負担」の差で決まるので、個人側の負担が下がれば、法人化の分は悪くなります。このケースでは、60歳の誕生日をまたいで結論の符号が変わりました。
このケースの条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 職種 | 技術顧問(元メーカーの生産技術者。製造業数社と顧問契約) |
| 年齢・家族 | 59歳・単身(同じ条件で61歳・66歳も計算) |
| 住所 | 福岡市 |
| 年商(税抜) | 1,500万円 |
| 経費 | 200万円 |
| 申告 | 青色申告(e-Tax・65万円控除) |
| インボイス | 登録済み |
| 個人事業税の業種 | コンサルタント業(第3種・5%) |
事業所得(売上−経費)は1,300万円です。
個人事業主のまま:60歳で手取りが12万円増える
| 項目 | 59歳 | 61歳 | 66歳 |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険 | 113.0万円 | 113.0万円 | 96.0万円 |
| 国民年金 | 21.5万円 | 0万円 | 0万円 |
| 所得税 | 193.0万円 | 200.3万円 | 206.0万円 |
| 住民税 | 106.0万円 | 108.2万円 | 109.8万円 |
| 個人事業税 | 50.5万円 | 50.5万円 | 50.5万円 |
| 手取り | 816.0万円 | 828.0万円 | 837.6万円 |
※ 福岡市・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準
60歳で国民年金の21.5万円がなくなります。社会保険料控除が減るぶん所得税・住民税は9.5万円増えますが、差し引きで手取りは12.0万円増えます。61歳の国保は59歳と同じ113.0万円です。介護保険の第2号被保険者は64歳まで続き、国保の介護分も残るからです。66歳では介護分が外れ、国保は96.0万円になります。
法人化した場合:59歳と61歳で数字は同じ
| 項目 | 59歳・61歳 | 66歳 |
|---|---|---|
| 役員報酬(月54万円・年額) | 648.0万円 | 648.0万円 |
| 社会保険料・本人負担 | 96.2万円 | 91.1万円 |
| 個人に入る手取り | 500.0万円 | 504.1万円 |
| 会社に残る額 | 425.7万円 | 429.7万円 |
| 手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上) | 840.6万円 | 847.8万円 |
※ 合同会社・福岡県(協会けんぽ)・3期目以降/2026年(令和8年)分基準
役員の社会保険は年齢で国民年金が関係しないので、59歳と61歳で法人側の数字は同じです。66歳になると、健康保険の介護保険料(1.62%)が外れて少し軽くなります。
| 実質差額(3期目以降) | 59歳 | 61歳 | 66歳 |
|---|---|---|---|
| 手取りの差(法人−個人) | +24.6万円 | +12.5万円 | +10.2万円 |
| 税理士報酬の増加 | −20.0万円 | −20.0万円 | −20.0万円 |
| 実質差額 | +4.6万円 | −7.5万円 | −9.8万円 |
| 損益分岐(事業所得) | 1,255万円 | 1,374万円 | 1,397万円 |
59歳では法人化がわずかに有利ですが、61歳では不利に転じます。損益分岐は119万円上がりました。
売上が違っても、60歳で差額は12万円前後縮む
売上を変えて、年齢ごとの実質差額を並べました。
| 年商(経費200万円) | 59歳 | 61歳 | 66歳 |
|---|---|---|---|
| 1,200万円 | −19.9万円 | −34.2万円 | −39.1万円 |
| 1,400万円 | −6.7万円 | −18.9万円 | −21.2万円 |
| 1,600万円 | +14.8万円 | +2.7万円 | +0.4万円 |
| 1,800万円 | +34.6万円 | +22.6万円 | +19.8万円 |
| 2,000万円 | +43.6万円 | +31.5万円 | +33.1万円 |
※ 3期目以降の実質差額。福岡市・単身・コンサルタント業(5%)/2026年(令和8年)分基準
どの売上でも、59歳から61歳で12万円前後、法人化の分が悪くなります。国民年金21.5万円から、それで減っていた税金の分を引いた額です。60歳から65歳への変化は小さく、国保と健康保険の介護分がそろって外れるので、多くの売上でさらに数万円悪くなる程度です。
一般に出回る「法人化の目安」は、国民年金を払っている年代の数字です。60歳以上の人がそのまま使うと、法人化を早く判断しすぎます。目安の成り立ちは個人事業主の法人化の目安で整理しています。
59歳で法人化するなら、60歳以降の数字で決める
法人化は、一度すると数年は続ける判断です。59歳で法人化すれば、有利なのは最初の1年だけで、2年目からは61歳の数字(年7.5万円の不利)で進みます。設立費用や1期目の負担を考えると、このケースでは59歳で急いで法人化する理由はありません。
ただし単年の手取りに出てこない戻りもあります。60〜64歳の間も厚生年金の保険料を払い、その分は老齢厚生年金に上乗せされます。報酬比例部分は「平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数」で、標準報酬月額53万円で1年加入すると年3.5万円、5年なら年17.4万円が生涯にわたって上乗せされます。個人のままでも60歳以降は国民年金に任意加入して年金を増やす方法があり、その比較は60歳以降の国民年金、任意加入と法人化で扱っています。65歳を過ぎた人の事例は66歳のコンサルタントの試算事例にあります。
まとめ
- 福岡市・年商1,500万円の技術顧問は、59歳なら法人化で年4.6万円有利、61歳では年7.5万円の不利
- 60歳で国民年金(年21.5万円)がなくなり、個人のままの手取りが12.0万円増える。法人側の数字は変わらない
- 損益分岐は59歳1,255万円、61歳1,374万円、66歳1,397万円
- 介護保険の第2号は64歳まで続くので、60〜64歳は介護分が個人・法人の両方に残る
- 59歳で法人化を考える人は、翌年からの60歳以降の数字で判断する
判定ツールの年齢区分には「60〜64歳」があります。60歳を過ぎた人は、その区分で自分の売上と経費を確かめてください。
よくある質問
60歳以降も国民年金に任意加入している場合はどうなりますか?
任意加入して保険料を払っていれば、個人のままの負担は59歳のときに近くなり、法人化の結論は59歳の数字に寄ります。任意加入と法人化(厚生年金)のどちらで年金を増やすかは、別の記事で比べています。
60歳を過ぎてから法人化しても、厚生年金に入りますか?
70歳未満の役員が報酬を受け取っていれば、厚生年金に入ります。60〜64歳の間も保険料を払い、その分は将来の老齢厚生年金に上乗せされます。
年の途中で60歳になる年はどう考えればよいですか?
国民年金は60歳になる月の前月分まで払います。その年は国民年金を払う月と払わない月が混ざるので、59歳の数字と61歳の数字の間になります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。