法人化の判断

52歳の夫と62歳の妻の法人化試算事例。年上の妻だと配偶者の効果は6分の1になる

結論

仙台市・52歳の設備設計者(年商1,300万円・経費200万円、無収入の62歳の妻)は、法人化で3期目以降年2.7万円の不利でほぼ互角、損益分岐は事業所得1,183万円です。同じ条件で妻が60歳未満なら年11.6万円の有利、損益分岐は846万円でした。妻が60歳以上だと国民年金がもともとないため、法人化で消えるのは国保の均等割などに限られ、配偶者がいることで下がる損益分岐は単身(1,254万円)から71万円だけです。

  • 配偶者による法人化の効果の多くは、配偶者の国民年金(年21.5万円)が第3号被保険者になって消えること。60歳以上の配偶者にはこの効果がない
  • 妻が年下なら単身より損益分岐が408万円下がるが、妻が60歳以上だと71万円しか下がらない。配偶者の効果は約6分の1になる
  • 60歳以上の配偶者も、年収180万円未満などの要件を満たせば健康保険の被扶養者になれる。国保の均等割は法人化で消える

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

「配偶者がいると法人化が有利になる」という説明は、多くの場合、配偶者が60歳未満であることを前提にしています。有利になる理由の中心が、配偶者の国民年金が第3号被保険者になって消えることだからです。配偶者が年上で60歳を過ぎていると、この効果はありません。

このケースの条件

項目内容
職種建築設備の設計者(空調・衛生設備の設計を設計事務所から受託)
年齢・家族52歳・妻62歳(無収入。年金は受け取っていない前提)
住所仙台市
年商(税抜)1,300万円
経費200万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種設計監督者業として5%で計算

事業所得(売上−経費)は1,100万円です。

個人事業主のまま:国民年金は本人の分だけ

項目妻62歳(このケース)妻が60歳未満だったら
国民健康保険(2人・介護分を含む)113.0万円113.0万円
国民年金21.5万円(本人)43.0万円(本人+妻)
所得税132.0万円126.9万円
住民税86.0万円83.8万円
個人事業税40.5万円40.5万円
手取り707.1万円692.8万円

※ 仙台市・52歳・無収入の妻・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準

妻は62歳なので国民年金を払っていません。国民年金は本人の21.5万円だけです。

法人化した場合:法人側の数字は妻の年齢で変わらない

項目金額
役員報酬(月51万円・年額)612.0万円
社会保険料・本人負担(介護保険料を含む)90.8万円
所得税・住民税(配偶者控除あり)39.9万円
個人に入る手取り481.4万円
法人税等(均等割7万円を含む)91.4万円
会社に残る額303.7万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)724.3万円

※ 合同会社・宮城県(協会けんぽ)・3期目以降/2026年(令和8年)分基準

法人化すると、妻は健康保険の被扶養者になります。妻が60歳未満なら国民年金の第3号被保険者にもなりますが、62歳の妻はもともと国民年金を払う年齢ではありません。

妻62歳(このケース)妻が60歳未満単身
3期目以降の実質差額−2.7万円+11.6万円−9.9万円
損益分岐(事業所得)1,183万円846万円1,254万円

※ 税理士報酬の増加20万円を引いた額。仙台市・52歳・年商1,300万円・経費200万円/2026年(令和8年)分基準

配偶者の効果のうち、大半は国民年金だった

損益分岐を単身と比べると、配偶者の効果の中身が分かります。

単身からの損益分岐の下がり幅
妻が60歳未満408万円
妻が60歳以上(このケース)71万円

妻が60歳未満なら、配偶者がいるだけで損益分岐は408万円下がります。妻が60歳以上だと71万円です。配偶者の効果の約6分の5は、妻の国民年金が消えることから来ていたことになります。残る71万円分は、法人化で妻の国保の均等割がなくなる効果と、配偶者控除の効き方の差です。

売上を変えても、妻の年齢による差は年12万〜15万円で続きます。

年商(経費200万円)妻60歳未満妻62歳単身
900万円−10.6万円−25.5万円−23.8万円
1,100万円−0.2万円−15.2万円−10.9万円
1,300万円+11.6万円−2.7万円−9.9万円
1,500万円+24.0万円+11.9万円+4.7万円
1,700万円+44.3万円+32.2万円+25.0万円

※ 3期目以降の実質差額/2026年(令和8年)分基準

年商900万〜1,100万円では、妻62歳のほうが単身より不利に出ます。妻に国民年金がないと、配偶者控除が税率の高い個人のままで大きく効く分が、法人化で消える国保の均等割を上回るためです。

妻が年金を受け取り始めたら、被扶養者の要件を確かめる

このケースは、妻が年金を受け取っていない前提です。60歳以上の人が健康保険の被扶養者になるには、年金を含む年間の収入が180万円未満であることなどが条件です。妻が受け取る年金が多ければ被扶養者になれず、国保に残ります。その場合、法人化で妻の国保がなくなる効果も消え、損益分岐は単身に近づきます。

配偶者がいる場合の法人化の事例は、妻が60歳未満の京都・Webマーケターの試算事例や、社長が60代前半の61歳の夫と56歳の妻の試算事例にあります。家族の条件で損益分岐がどう動くかは個人事業主の法人化の目安にまとめています。

まとめ

  • 仙台市・52歳・年商1,300万円の設備設計者と62歳の妻は、法人化で年2.7万円の不利でほぼ互角
  • 妻が60歳以上だと国民年金がもともとなく、損益分岐は1,183万円。妻が60歳未満なら846万円
  • 配偶者による損益分岐の下がり幅は、妻60歳未満で408万円、60歳以上で71万円。効果の大半は妻の国民年金
  • 妻が年金を受け取り、収入が180万円以上になると被扶養者になれず、効果はさらに小さくなる

判定ツールでは配偶者の年齢(60歳未満か)を指定できます。年上の配偶者がいる人は、その欄を変えて確かめてください。

よくある質問

妻が年金を受け取っていても、健康保険の被扶養者になれますか?

60歳以上の人は、年金を含む年間の収入が180万円未満で、社長の収入の2分の1未満などの要件を満たせば被扶養者になれます。年金の額が大きいと被扶養者になれず、妻は国保に残ります。その場合は、法人化で妻の国保が消える効果もなくなります。

妻が60歳未満のときに法人化していたら、60歳以降はどうなりますか?

妻が60歳になると第3号被保険者ではなくなりますが、もともと60歳以上は国民年金を払う年齢ではないので、負担は増えません。法人化の有利が「妻の国民年金が消える分」だけ縮み、この記事の数字に近づきます。

夫婦の年齢差が大きいと、ほかにも違いはありますか?

夫が65歳になると、60歳未満の妻は第3号被保険者から外れます。夫が年上の夫婦では、この時点で法人化の効果が切れることがあります。この記事のように妻が年上なら、その問題は起きません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。