法人化の判断

年商3,000万円のネットショップ、法人化の試算事例。粗利800万円なら不利

結論

神戸市のネットショップ(年商3,000万円・経費2,200万円、39歳・独身)は、個人のままの手取りが539.7万円、法人化(役員報酬月54万円)で535.2万円です。税理士報酬の差を含めると3期目以降は年24.5万円の不利です。経費率を保ったまま年商が伸びると、逆転するのは年商5,000万円前後です。

  • 法人化の損得を決めるのは年商ではなく、売上から経費を引いた事業所得。このケースは800万円で、損益分岐の1,279万円に届かない
  • 物販は仕入れが売上に比例するため、年商が1割増えても利益は80万円しか増えない。年商4,000万円でも年15.1万円の不利
  • 仕入れ・送料など経費が固定のまま売上だけ1割落ちると、差は年49.8万円の不利に広がる

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

「年商3,000万円」と聞くと、法人化していないのが不思議に思えます。ただ、この数字は仕入れを引く前の売上です。物販の個人事業主は、年商が大きくても法人化の損益分岐に届いていないことが珍しくありません。

このケースの条件

項目内容
職種ネットショップ(アパレル雑貨を仕入れて自社サイトとモールで販売)
年齢・家族39歳・独身
住所神戸市
年商(税抜)3,000万円
経費2,200万円(仕入れ1,700万円前後、送料・モール手数料・広告・倉庫など)
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種物品販売業(第1種・5%)

経費率は73%です。事業所得(売上−経費)は800万円になります。

個人事業主のまま:手取りは539.7万円

項目金額
事業所得(売上−経費)800.0万円
国民健康保険81.4万円
国民年金21.5万円
所得税(復興特別所得税を含む)72.7万円
住民税59.1万円
個人事業税25.5万円
手取り539.7万円

※ 神戸市・39歳・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・物品販売業5%/2026年(令和8年)分基準

税金と社会保険料は合わせて260.3万円です。年商から見ると1割に満たない額ですが、事業所得に対しては3分の1です。

法人化した場合:手取り合計は535.2万円

役員報酬を月5万〜100万円まで試すと、手取り合計が最大になったのは月54万円でした。

項目金額
役員報酬(年額)648.0万円
社会保険料・本人負担91.1万円
所得税18.6万円
住民税34.3万円
個人に入る手取り504.1万円
社会保険料・会社負担(子ども・子育て拠出金を含む)93.4万円
法人の利益(税引前)58.6万円
法人税等(均等割を含む)19.7万円
会社に残る額38.9万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)535.2万円

※ 合同会社・兵庫県(協会けんぽ)・役員報酬は手取り合計が最大になる額/2026年(令和8年)分基準

社会保険料は個人の102.9万円から、労使合計184.5万円へ81.6万円増えます。税金は個人の157.3万円から法人化で72.6万円へ84.7万円減ります。ほぼ相殺し、会社に残る額の評価の差で手取りは4.5万円少なくなります。

兵庫県は県民緑税の上乗せがあるため、法人住民税の均等割は標準の7万円より少し高くなります。

1期目2期目3期目以降
手取りの差(法人−個人)−4.5万円−4.5万円−4.5万円
設立費用(合同会社)−10.0万円——
税理士報酬の増加−20.0万円−20.0万円−20.0万円
実質差額−34.5万円−24.5万円−24.5万円

判定ツールの区分は「個人のまま有利」です。

年商が伸びたら逆転するか

物販は、売上が伸びれば仕入れも増えます。経費率73%を保ったまま年商を伸ばしたときの差を出しました。

年商経費事業所得実質差額(3期目以降)
2,700万円1,980万円720万円−30.2万円
3,000万円(このケース)2,200万円800万円−24.5万円
3,300万円2,420万円880万円−19.9万円
4,000万円2,933万円1,067万円−15.1万円
5,000万円3,667万円1,333万円+5.5万円

※ 神戸市・39歳・独身・物品販売業5%・青色申告(e-Tax)。経費率を73%に保って計算

年商を1,000万円伸ばしても、事業所得は267万円しか増えません。逆転は年商5,000万円前後で、損益分岐の事業所得1,279万円を超えたところです。同じ損益分岐でも、経費の少ないエンジニアなら年商1,400万円台で届きます(東京のWebエンジニアの試算事例)。

経費が固定のまま売上が落ちると

逆に、家賃・倉庫・人件費のような固定的な経費が大きい事業では、売上が落ちたとき利益が一気に減ります。経費2,200万円のまま売上だけを動かすと次のようになります。

年商事業所得実質差額(3期目以降)
2,700万円(−10%)500万円−49.8万円
3,000万円(このケース)800万円−24.5万円
3,300万円(+10%)1,100万円−14.6万円

売上が1割落ちる年には、法人化の不利が2倍に広がります。法人化すると社会保険料は役員報酬で決まり、均等割と税理士報酬は赤字でもかかります。利益の振れ幅が大きい事業ほど、法人の固定費が重く効きます。売上が年ごとに動く場合の考え方は売上に波がある人の法人化にまとめています。

物販で法人化を考えるきっかけ

数字のうえでは不利でも、物販では次のような理由で法人化を検討することがあります。

  • 卸やメーカーの取引口座の開設、モールの出店審査で法人格を求められる
  • 在庫を抱えるための借入れを、法人として受けたい
  • 人を雇って事業を大きくする予定がある

こうした理由がある場合、年24.5万円の不利を取引上の費用として受け入れるかの判断になります。法人化の判断全体は個人事業主の法人化の目安で整理しています。

まとめ

  • 神戸市・年商3,000万円・経費2,200万円のネットショップは、個人のまま539.7万円、法人化で535.2万円
  • 3期目以降も年24.5万円の不利。事業所得800万円は損益分岐の1,279万円から遠い
  • 経費率73%のまま伸ばすと、逆転は年商5,000万円前後
  • 経費が固定のまま売上が1割落ちると、不利は年49.8万円に広がる
  • 判定を決めるのは年商ではなく、売上から経費を引いた利益

判定ツールには年商と経費を分けて入れます。自分の粗利で確かめてください。

よくある質問

年商が3,000万円あるのに、税理士から法人化を勧められないのはなぜですか?

法人化で下がるのは所得税・住民税・個人事業税で、どれも利益にかかる税金です。年商が大きくても利益が800万円なら、下がる税金より社会保険料と法人の固定費の増加のほうが大きくなります。

消費税はこの比較に入っていますか?

個人のときも法人化した後も課税事業者なので、消費税の納税額は両方で同じとして計算しています。インボイス登録済みのため、新設法人の免税は使えません。簡易課税を選ぶかどうかは個人・法人どちらでも同じ条件で選べます。

取引先や仕入れ先から法人を求められた場合は?

卸の口座開設やモールの出店条件などで法人格が必要になることがあります。その場合の年24.5万円の不利は、取引のための費用として考えることになります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。