法人化の判断
47歳コンサルの法人化試算事例。名古屋・年商1,800万円で年35万円有利
結論
名古屋市・47歳・独身の経営コンサルタント(年商1,800万円・経費200万円)は、個人のままの手取りが969.9万円、法人化して役員報酬を月54万円にすると1,025.3万円です。税理士報酬の差を引いても3期目以降は年35.4万円有利です。ただし個人に入るのは500.4万円で、656.0万円は会社に残ります。
- 毎月50万円以上を個人の手取りで受け取りたいなら、役員報酬は月85万円が最適になり、有利な幅は年24.3万円に縮む
- 40歳以上なので国保に介護分17万円(上限)がかかる。法人化後は介護保険料が報酬に1.62%かかるが、差はむしろ年2.7万円広がる
- 損益分岐は事業所得1,247万円。このケース(1,600万円)は353万円上にあり、売上が1割落ちても年17.6万円有利が残る
このテーマの全体像 個人事業主の法人化の目安と損益分岐点
ほかの試算事例 法人化の試算事例35人を1つの表で比較。損益分岐を動かすのは家族・年齢・業種
この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。
40代・年商1,800万円は、法人化の相談で「迷わず法人化」と言われやすい層です。計算しても、たしかに法人化が有利になります。ただ、その有利さは会社にお金を残すことと引き換えに出ています。この事例ではそこを数字で分解します。
このケースの条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 職種 | 経営コンサルタント(中小企業と顧問契約・スポットの案件) |
| 年齢・家族 | 47歳・独身 |
| 住所 | 名古屋市 |
| 年商(税抜) | 1,800万円 |
| 経費 | 200万円 |
| 申告 | 青色申告(e-Tax・65万円控除) |
| インボイス | 登録済み |
| 個人事業税の業種 | コンサルタント業(第3種・5%) |
事業所得(売上−経費)は1,600万円です。
個人事業主のまま:手取りは969.9万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 事業所得(売上−経費) | 1,600.0万円 |
| 国民健康保険(介護分を含む) | 113.0万円 |
| 国民年金 | 21.5万円 |
| 所得税(復興特別所得税を含む) | 294.1万円 |
| 住民税 | 136.0万円 |
| 個人事業税 | 65.5万円 |
| 手取り | 969.9万円 |
※ 名古屋市・47歳・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・コンサルタント業5%/2026年(令和8年)分基準
国民健康保険は4つの区分すべてが賦課限度額に達しています。医療分67万円、後期高齢者支援金分26万円、介護分17万円、子ども・子育て支援金分3万円で、合計113.0万円です。
負担がいちばん重いのは所得税です。課税所得が900万円を超え、超えた部分には33%の税率がかかっています。
法人化した場合:手取り合計は1,025.3万円
役員報酬を月5万〜100万円まで1万円刻みで試すと、手取り合計が最大になったのは月54万円でした。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員報酬(年額) | 648.0万円 |
| 社会保険料・本人負担(介護保険料を含む) | 95.7万円 |
| 所得税 | 18.1万円 |
| 住民税 | 33.8万円 |
| 個人に入る手取り | 500.4万円 |
| 社会保険料・会社負担(子ども・子育て拠出金を含む) | 97.9万円 |
| 法人の利益(税引前) | 854.1万円 |
| 法人税等 | 198.0万円 |
| 会社に残る額 | 656.0万円 |
| 手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上) | 1,025.3万円 |
※ 合同会社・愛知県(協会けんぽ)・役員報酬は手取り合計が最大になる額/2026年(令和8年)分基準
法人の利益854.1万円のうち、800万円までは法人税の軽減税率15%が適用されます。法人税等198.0万円には、名古屋市で年7.1万円の均等割が含まれます。愛知県の超過課税の上乗せで、標準の7万円より少し高くなっています。
| 1期目 | 2期目 | 3期目以降 | |
|---|---|---|---|
| 手取りの差(法人−個人) | +55.4万円 | +55.4万円 | +55.4万円 |
| 設立費用(合同会社) | −10.0万円 | — | — |
| 税理士報酬の増加 | −20.0万円 | −20.0万円 | −20.0万円 |
| 実質差額 | +25.4万円 | +35.4万円 | +35.4万円 |
1期目から法人化が有利です。判定ツールの区分でも「法人化が有利」に入ります。
有利さの正体は、会社に残すお金
個人のままなら969.9万円がすべて手元に入ります。法人化すると、個人に入るのは500.4万円です。月にすると約41.7万円です。残りの656.0万円は会社の預金として残ります。
この試算は、会社に残るお金を2割引いて手取りに数えています。会社のお金を個人に移すときは配当や役員退職金を経由し、税金がかかるからです。それでも法人化が上回るのは、会社に残した部分の税率が、個人の所得税33%の帯より低いためです。
個人の手取りを増やすと、差は縮む
月41.7万円では生活が回らない人もいます。個人に入る手取りの下限を決めて、その条件を満たす中で最適な役員報酬を探し直しました。
| 個人の手取りの下限(月額) | 最適な役員報酬 | 個人に入る手取り(年) | 会社に残る額 | 実質差額(3期目以降) |
|---|---|---|---|---|
| 下限なし | 月54万円 | 500.4万円 | 656.0万円 | +35.4万円 |
| 月50万円 | 月85万円 | 738.9万円 | 344.0万円 | +24.3万円 |
| 月60万円 | 月85万円 | 738.9万円 | 344.0万円 | +24.3万円 |
| 月70万円 | 月100万円 | 853.5万円 | 194.7万円 | +19.4万円 |
※ 年商1,800万円・経費200万円・名古屋市・47歳・コンサルタント業5%/2026年(令和8年)分基準
個人に月70万円を入れても、法人化は年19.4万円有利です。このケースの所得なら、生活費をどう取っても逆転はしません。報酬の上げ方と差の関係は役員報酬の決め方でも扱っています。
47歳という年齢の意味
会社に残したお金を、もっとも軽い税負担で受け取る方法は、引退時の役員退職金です。退職所得は、勤続年数に応じた退職所得控除を引いた残りの2分の1に課税されます。47歳で会社を作れば、65歳の引退まで18年の勤続年数を積めます。
逆に言えば、会社に残したお金を数年で取り崩す予定なら、この試算の「2割引き」より重い負担になることがあります。
40歳以上の介護保険料は、法人化で不利にならない
40〜64歳は介護保険の第2号被保険者です。個人では国保の介護分、法人では健康保険と一緒に介護保険料を納めます。
同じ条件で40歳未満だった場合と比べると、3期目以降の差は+32.7万円でした。47歳のほうが年2.7万円有利です。個人側の国保介護分は上限の17万円に達していますが、法人側の介護保険料は、役員報酬月54万円に1.62%をかける分だけ(労使で折半)で済むためです。40歳を境にした違いは40歳で法人化すると介護保険料はどうなるかで詳しく扱っています。
何が変われば結論が変わるか
| 年商 | 事業所得 | 実質差額(3期目以降) |
|---|---|---|
| 1,620万円(−10%) | 1,420万円 | +17.6万円 |
| 1,800万円(このケース) | 1,600万円 | +35.4万円 |
| 1,980万円(+10%) | 1,780万円 | +42.8万円 |
損益分岐は事業所得1,247万円です。このケースは353万円上にあり、売上が1割落ちても有利が残ります。年商がもう少し大きく、役員報酬を月54万円より上げる帯に入ったケースは年商2,400万円のITコンサルの試算事例で扱っています。法人化の判断全体は個人事業主の法人化の目安にまとめています。
まとめ
- 名古屋市・47歳・年商1,800万円のコンサルタントは、個人のまま969.9万円、法人化で1,025.3万円。3期目以降は年35.4万円有利
- ただし個人に入るのは500.4万円で、656.0万円は会社に残る。有利さは会社に残す前提で出ている
- 個人の手取りを月50万円以上にすると最適報酬は月85万円になり、有利な幅は年24.3万円に縮む
- 40歳以上でも法人化の不利は増えない。国保の介護分が上限17万円に達しているため
- 損益分岐は事業所得1,247万円。売上が1割落ちても逆転しない
生活費に必要な額は人によって違います。判定ツールの詳細設定にある「毎月必要な生活費(手取り)」を入れて、自分の条件で確かめてください。
よくある質問
会社に残る656万円は、いつどうやって受け取るのですか?
代表的なのは、引退するときの役員退職金と配当です。役員退職金は退職所得として、勤続年数に応じた控除を引いた残りの2分の1に課税されるため、毎年の報酬で受け取るより税負担が軽くなりやすい仕組みです。
役員報酬を月54万円より上げると損になりますか?
手取り合計は減りますが、法人化しないよりは多く残ります。このケースで月85万円にすると手取り合計は1,014.2万円、月100万円でも1,009.3万円で、個人のままの969.9万円を上回ります。
経営コンサルタントは個人事業税がかかりますか?
コンサルタント業は個人事業税の法定業種(第3種事業)に入っており、税率は5%です。このケースでは事業主控除290万円を引いた残りにかかり、年65.5万円でした。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。