法人化の判断

年商2,400万円のITコンサル、役員報酬の試算事例。最適は月54万でなく月95万

結論

さいたま市・42歳・独身のITコンサルタント(年商2,400万円・経費300万円)は、役員報酬を月95万円にすると手取り合計が1,322.3万円で最大になり、個人のまま(1,223.7万円)より税理士報酬の差を引いても年78.7万円有利です。よく最適とされる月54万円では1,292.1万円で、30.2万円少なくなります。

  • 月65万円を超えると厚生年金保険料が上限で止まり、報酬を上げても保険料は健康保険の分しか増えない
  • 月95万円のとき法人の利益は821.5万円。法人税の軽減税率15%が使える800万円前後に収まる
  • 月54万円に固定すると会社に988.8万円が残り、軽減税率の枠を超えた部分に23.2%がかかる

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

一人社長の役員報酬は「月54万円前後が最適」とよく言われます。当サイトの計算でも、事業所得800万〜1,650万円の広い帯で月54万円が選ばれます。ただ、その帯を抜けると最適額は一気に跳びます。このケースはその外側です。

このケースの条件

項目内容
職種ITコンサルタント(企業のシステム導入・DX支援を準委任で受託)
年齢・家族42歳・独身
住所さいたま市
年商(税抜)2,400万円
経費300万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種コンサルタント業(第3種・5%)

事業所得(売上−経費)は2,100万円です。

個人事業主のまま:所得税と住民税で651万円

項目金額
事業所得(売上−経費)2,100.0万円
国民健康保険税(介護分を含む)113.0万円
国民年金21.5万円
所得税(復興特別所得税を含む)465.3万円
住民税186.0万円
個人事業税90.5万円
手取り1,223.7万円

※ さいたま市・42歳・独身・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み・コンサルタント業5%/2026年(令和8年)分基準

課税所得は1,800万円を超え、超えた部分には所得税40%がかかっています。住民税10%と合わせると、稼いだ1万円のうち半分が税金になる帯です。国保は上限の113.0万円で止まっています。

役員報酬を総当たりした結果

合同会社を作り、役員報酬を月5万〜100万円まで1万円刻みで試しました。代表的な額を抜き出します。

役員報酬(月額)個人に入る手取り会社に残る額社会保険料(健保・厚年の労使計)手取り合計
30万円286.9万円1,208.1万円107.4万円1,253.4万円
54万円501.1万円988.8万円189.7万円1,292.1万円
65万円580.4万円886.5万円232.6万円1,289.6万円
80万円700.0万円760.6万円251.9万円1,308.5万円
95万円(最適)816.9万円631.8万円271.3万円1,322.3万円
100万円854.5万円583.0万円278.2万円1,321.0万円

※ 合同会社・埼玉県(協会けんぽ)・42歳。手取り合計は会社に残る額を2割引いて計上/2026年(令和8年)分基準

月54万円のところに小さな山があり、そこから一度下がって、月80万円以降でもう一度上がります。最大は月95万円です。

月65万円を超えると、厚生年金保険料が止まる

厚生年金保険料は、標準報酬月額65万円が上限です。報酬がそれ以上になっても、厚生年金保険料は増えません。上の表で、月65万円から月95万円まで報酬を30万円上げても、社会保険料は38.7万円しか増えていません。増えたのは健康保険料(介護保険料を含む)の分だけです。上限の見直しについては厚生年金の上限は75万円へで扱っています。

法人の利益は800万円前後に収める

もう1つの力は法人税です。中小法人の法人税は、所得800万円までが軽減税率15%、それを超える部分が23.2%です。

月54万円に固定すると、会社の利益が大きく残り、800万円を超えた部分に23.2%がかかります。月95万円にすると法人の利益は821.5万円で、軽減税率の枠にほぼ収まります。

個人の所得税率と法人の税率を比べながら、利益を個人と法人に振り分けた結果が月95万円です。最適額の考え方は役員報酬の決め方で、所得帯ごとにまとめています。

月95万円のときの内訳

項目金額
役員報酬(年額)1,140.0万円
社会保険料・本人負担135.7万円
所得税110.5万円
住民税76.9万円
個人に入る手取り816.9万円
社会保険料・会社負担(子ども・子育て拠出金を含む)138.5万円
法人の利益(税引前)821.5万円
法人税等(均等割7万円を含む)189.8万円
会社に残る額631.8万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)1,322.3万円
1期目2期目3期目以降
手取りの差(法人−個人)+98.7万円+98.7万円+98.7万円
設立費用(合同会社)−10.0万円——
税理士報酬の増加−20.0万円−20.0万円−20.0万円
実質差額+68.7万円+78.7万円+78.7万円

個人に入る手取りは816.9万円で、個人のままの1,223.7万円より少なくなります。そのかわり会社に631.8万円が残ります。法人化の有利さは、会社に残したお金を将来どう受け取るかに依存しています。

月54万円で決めてしまうと、年30万円の差

役員報酬手取り合計個人のままとの実質差額
月54万円1,292.1万円+48.4万円
月95万円1,322.3万円+78.7万円

※ 実質差額は3期目以降。税理士報酬の差20万円を引いた額

どちらも法人化は有利です。ただ、一般論の月54万円で決めると、毎年30.2万円を取り逃がします。所得が年によって動く人は、決算の見込みが立った時点で翌期の報酬を見直す余地があります。

売上が上下すると

年商事業所得実質差額(3期目以降)
2,160万円(−10%)1,860万円+52.8万円
2,400万円(このケース)2,100万円+78.7万円
2,640万円(+10%)2,340万円+106.3万円

損益分岐は事業所得1,234万円です。このケースは大きく上回っていて、売上が1割落ちても結論は変わりません。月54万円の帯にいる40代のケースは名古屋のコンサルタントの試算事例で扱っています。

まとめ

  • さいたま市・年商2,400万円・42歳のITコンサルタントは、役員報酬月95万円で手取り合計1,322.3万円が最大
  • 個人のまま(1,223.7万円)より、3期目以降は年78.7万円有利
  • 月65万円を超えると厚生年金保険料が上限で止まり、報酬を上げる余地が生まれる
  • 月95万円で法人の利益が821.5万円になり、軽減税率15%の枠にほぼ収まる
  • 一般論の月54万円で決めると毎年30.2万円を取り逃がす

最適な役員報酬は所得で変わります。判定ツールは月5万〜100万円を総当たりするので、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

役員報酬を月95万円にすると、年の途中で変えられますか?

役員報酬は、事業年度開始から3か月以内に決めた額を毎月同じ額で支払うと損金になります(定期同額給与)。年の途中で上げ下げすると、差額が損金にならないことがあります。決めるときに1年分の見込みを立てる必要があります。

月95万円と月100万円で差が小さいのはなぜですか?

手取り合計は月95万円で1,322.3万円、月100万円で1,321.0万円で、差は1.3万円です。最適額の周辺では手取り合計がなだらかに変わるので、生活費や会社に残したい額に合わせて数万円の幅で動かしても大きな差は出ません。

厚生年金の上限はこれからも65万円ですか?

厚生年金の標準報酬月額の上限は、2027年9月に68万円、2029年9月に75万円へと段階的に引き上げられます。上限が上がると、月65万円を超える報酬にも厚生年金保険料がかかるため、最適額は動きます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。