法人化の判断

資本金1,000万円で株式会社を作った写真スタジオの試算事例。免税2年分の174万円を失う

結論

大阪市・39歳の写真スタジオ経営者(年商1,600万円・経費300万円・インボイス未登録)は、資本金999万円で株式会社を作れば1期目+64.0万円、2期目+89.0万円の有利ですが、資本金1,000万円にすると1期目−23.2万円、2期目+1.8万円になります。期首の資本金が1,000万円以上の新設法人は、設立直後から消費税の課税事業者になるためです。2年間の差は174.4万円です。

  • 新設法人の免税の特例は、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上だと使えない。1,000万円「以上」なので、ちょうど1,000万円も対象外
  • このケースで免税が効く消費税は年142万円。手取りに換算すると1年あたり87.2万円の差になる
  • 3期目以降の実質差額(+1.8万円)は資本金に関係なく同じ。資本金の境目が効くのは設立1〜2期だけ

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

法人を作るとき、資本金は「大きいほうが信用される」と考えて1,000万円にする人がいます。手元に資金があれば、それ自体は珍しい判断ではありません。ただし、消費税の面では1,000万円ちょうどが境目の向こう側です。このケースでは、資本金を1万円減らすかどうかで、最初の2年の手取りが合計174.4万円違いました。

このケースの条件

項目内容
職種写真スタジオ経営(七五三・家族写真・成人式の撮影)
年齢・家族39歳・単身
住所大阪市
年商(税抜)1,600万円
経費300万円(スタジオの家賃・機材・衣装など)
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス未登録(客は個人)
法人化の形株式会社。スタジオの移転と融資を見込み、資本金を1,000万円にする予定
個人事業税の業種写真業(第3種・5%)

事業所得(売上−経費)は1,300万円です。年商が1,000万円を超えているので、個人のままなら消費税の課税事業者で、年142万円を納めています。

個人事業主のまま:手取りは826.1万円

項目金額
事業所得(売上−経費)1,300.0万円
国民健康保険95.0万円
国民年金21.5万円
所得税199.1万円
住民税107.8万円
個人事業税50.5万円
手取り826.1万円

※ 大阪市・39歳・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス未登録・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準。消費税(年142万円)は売上から納めるため手取りの計算には含めない

法人化した場合:3期目以降は年1.8万円の有利でほぼ互角

項目金額
役員報酬(月54万円・年額)648.0万円
個人に入る手取り504.0万円
法人税等(均等割7万円を含む)128.8万円
会社に残る額429.8万円
手取り合計(会社に残る額は2割引いて計上)847.9万円

※ 株式会社・大阪府(協会けんぽ)・3期目以降/2026年(令和8年)分基準

3期目以降は、資本金がいくらでも同じです。税理士報酬の増加20万円を引いて年1.8万円の有利、判定は「ほぼ互角」です。差がつくのは、その前の2年間です。

資本金999万円と1,000万円で、最初の2年が174.4万円違う

実質差額(法人−個人)1期目2期目3期目以降3期目までの合計
資本金999万円+64.0万円+89.0万円+1.8万円+154.8万円
資本金1,000万円−23.2万円+1.8万円+1.8万円−19.6万円
差87.2万円87.2万円0万円174.4万円

※ 株式会社の設立費用25万円(1期目)・税理士報酬の増加20万円を差し引いた額。インボイスに登録しない場合/2026年(令和8年)分基準

なぜ1,000万円で免税が消えるのか

消費税の納税義務は、原則として基準期間(2期前)の課税売上高で判定します。設立したばかりの法人には基準期間がないので、原則として免税です。

ただし、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の新設法人は、基準期間がなくても課税事業者になります。資本金の大きい会社は、最初から一定の事業規模があるとみなされるためです。条件は「1,000万円以上」なので、ちょうど1,000万円も課税されます。

免税の142万円が、手取りでは87.2万円になる理由

免税で納めずに済む消費税は年142万円です。ところが手取りの差は87.2万円にとどまります。免税で残った消費税は法人の利益になり、法人税がかかるうえ、会社に残る額は2割引いて数えているためです。

資本金999万円の場合でも、3期目までの合計は+154.8万円です。このうち153万円は最初の2年の免税によるもので、3期目以降の年1.8万円はほぼ誤差です。このケースの法人化の利益は、ほとんどが免税の2年間から来ています。

資本金を決めるときに見るもの

資本金1,000万円と999万円の差は、消費税以外ではほとんど生じません。

項目資本金999万円資本金1,000万円
設立1〜2期の消費税免税(インボイス未登録の場合)課税
法人住民税の均等割最低の区分最低の区分(1,000万円以下)
登録免許税(株式会社)15万円(最低額)15万円(最低額)

均等割の区分が上がるのは資本金等の額が1,000万円を超えるときで、消費税の境目(1,000万円以上)と1円ずれています。資本金の3つの境目は法人化の資本金は1,000万円未満かで整理しています。

融資や取引の信用を理由に大きな資本金を考えるなら、まず999万円で設立し、3期目以降に増資する方法もあります。増資には登記の費用がかかりますが、このケースでは2年分の免税の価値のほうがはるかに大きくなります。インボイスと新設法人の免税の関係はインボイス登録済みなら法人化しても消費税の免税は受けられないにまとめています。

まとめ

  • 大阪市・年商1,600万円の写真スタジオ(インボイス未登録)は、株式会社にすると3期目以降は年1.8万円の有利でほぼ互角
  • 資本金999万円なら1〜2期は免税で年64.0万〜89.0万円の有利。1,000万円にすると免税がなくなり、2年間で174.4万円の差
  • 新設法人の免税は、期首の資本金が1,000万円「以上」で使えない。ちょうど1,000万円も対象外
  • このケースの法人化の利益は、ほとんどが免税の2年間から来ている

判定ツールの「法人が未登録の場合の設立1・2期」の欄で、免税の要件を満たす前提と、課税として概算する前提を切り替えられます。資本金を決める前に、自分の売上と経費で両方を試してください。

よくある質問

資本金999万円で設立して、1期目の途中で1,000万円に増資したらどうなりますか?

判定は各事業年度の開始の日の資本金で行います。1期目は期首の資本金が999万円なので免税、2期目は期首の資本金が1,000万円以上になるので課税事業者です。1期目の途中の増資は、2期目の免税を失わせます。

資本金を大きくすると、他に変わる税金はありますか?

法人住民税の均等割は、資本金等の額が1,000万円以下なら最低の区分(年7万円が目安)で、1,000万円を超えると上の区分に上がります。株式会社の登録免許税は資本金の0.7%で最低15万円なので、1,000万円でも999万円でも15万円です。

インボイスに登録したら、資本金をいくらにしても同じですか?

登録した法人は、資本金に関係なく設立1期目から課税事業者です。インボイス登録が必要な事業では、資本金1,000万円の境目は消費税については効きません。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。