法人化の判断

中古カメラ販売の法人化試算事例。仕入れが多いと「2年免税」は年67万円しか効かない

結論

堺市・41歳の中古カメラ販売(年商2,000万円・経費1,400万円・インボイス未登録)は、法人化すると1期目は年7.7万円、2期目は年17.7万円有利で、3期目以降は年24.9万円の不利です。設立1〜2期の消費税の免税は年67万円分しか効きません。経費のほとんどが課税仕入れのため、個人のときに納める消費税がもともと小さいからです。同じ年商・経費でも課税仕入れが2割の業種なら免税は年172万円分になります。

  • 免税で浮くのは「売上にかかる消費税−仕入れにかかる消費税」。年商2,000万円でも、売上の消費税200万円から仕入れの消費税133万円を引いた67万円にとどまる
  • 古物商が個人などインボイスのない相手から買い取った中古品は、一定の事項を帳簿に記載すれば仕入税額控除ができる(古物商等特例)。だから個人のときの納税額が小さい
  • 3期目以降の実質差額(−24.9万円)は課税仕入れの割合に関係なく同じ。免税の効果が大きいかどうかは、最初の2年の上乗せだけを動かす

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

年商が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になり、法人を作れば設立1〜2期は免税になる。この話を聞くと、年商2,000万円の人は「年200万円の消費税が2年間浮く」と考えがちです。物販ではそうなりません。免税で浮くのは、売上の消費税から仕入れの消費税を引いた残りだけだからです。

このケースの条件

項目内容
職種中古カメラ・レンズの買取りとネット販売(古物商)
年齢・家族41歳・単身
住所堺市
年商(税抜)2,000万円
経費1,400万円(うち仕入れ・送料・販売手数料などの課税仕入れが95%)
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス未登録(買い手は個人)
個人事業税の業種物品販売業(第1種・5%)

事業所得(売上−経費)は600万円です。

個人事業主のまま:消費税は年67万円

個人のときに納める消費税を、本則課税で計算するとこうなります。

項目金額
売上にかかる消費税(2,000万円×10%)200万円
仕入れにかかる消費税(1,330万円×10%)133万円
納める消費税67万円

※ 経費1,400万円のうち95%を課税仕入れとして計算

中古品の仕入先の多くは、インボイスを発行しない個人です。それでも古物商が棚卸資産として買い取った古物は、相手の氏名・住所など一定の事項を帳簿に記載すれば、仕入税額控除ができます(古物商等特例)。このため物販の古物商は、売上が大きくても納める消費税は小さくなります。

項目金額
事業所得(売上−経費)600.0万円
国民健康保険(介護分を含む)87.1万円
国民年金21.5万円
所得税29.7万円
住民税38.6万円
個人事業税15.5万円
手取り407.6万円

※ 堺市・41歳・単身・青色申告(e-Tax)・インボイス未登録・個人事業税5%/2026年(令和8年)分基準。消費税は売上から納めるため手取りの計算には含めない

法人化した場合:最初の2年は有利、3期目から不利

1期目2期目3期目以降
最適な役員報酬(月)45万円45万円42万円
消費税免税免税67万円
実質差額(設立費用・税理士報酬の増加を引く)+7.7万円+17.7万円−24.9万円

※ 合同会社・大阪府(協会けんぽ)・41歳・資本金1,000万円未満でインボイスに登録しない場合/2026年(令和8年)分基準

3期目以降の内訳は、役員報酬月42万円で個人に入る手取りが395.9万円、会社に残る額が8.6万円、手取り合計402.7万円です。事業所得600万円は、損益分岐(1,261万円)の半分にも届きません。

最初の2年の合計は+25.4万円ですが、3期目以降は毎年24.9万円の不利です。3期目が終わった時点で、最初の2年の有利をほぼ使い切ります(累計+0.5万円)。

課税仕入れの割合で、免税の効果は2.6倍違う

同じ年商2,000万円・経費1,400万円で、経費のうち課税仕入れの割合だけを変えました。

課税仕入れの割合業種の例個人の消費税(年)1期目の実質差額2期目の実質差額3期目以降の実質差額
95%物販(このケース)67万円+7.7万円+17.7万円−24.9万円
80%88万円+20.9万円+30.9万円−24.9万円
60%116万円+38.5万円+48.5万円−24.9万円
40%144万円+56.2万円+66.2万円−24.9万円
20%外注の少ないサービス業172万円+73.8万円+83.8万円−24.9万円

※ 年商2,000万円・経費1,400万円・堺市・41歳・単身・インボイス未登録/2026年(令和8年)分基準

経費の中身が人に払う外注費や自分の作業中心のサービス業なら、免税で年172万円が浮きます。物販では67万円で、同じ年商・同じ利益でも2.6倍の差です。

3期目以降の実質差額はどの行も−24.9万円で同じです。課税仕入れの割合は、個人と法人で同じように消費税を減らすので、免税が終わった後の比較には効きません。「法人化で2年免税」の効果を見積もるときは、年商ではなく**粗利(売上−課税仕入れ)**で考える必要があります。

インボイス未登録で、課税仕入れの少ないサービス業の事例はインボイス未登録カメラマンの法人化試算事例にあります。年商が大きくても利益で判定する考え方はネットショップ年商3,000万円の試算事例で扱っています。

免税を当てにするときの注意

古物商の許可は法人で取り直す

古物商の許可は、個人と法人で別です。法人で買取りを続けるには、法人として新たに許可を受ける必要があります。許可が出る前に法人として買い取った古物は、古物営業法に反するうえ、古物商等特例の要件も満たしません。許可の取り直しの流れは古物商の許可と法人成りにまとめています。

在庫を積み増す年は、免税が不利に働くことがある

免税事業者は消費税の申告をしないので、仕入れの消費税が売上の消費税を上回っても還付は受けられません。法人化の直後に在庫を大きく積み増すと、課税事業者なら戻ってきたはずの消費税を取り戻せません。

インボイス登録と新設法人の免税の関係はインボイス登録済みなら法人化しても消費税の免税は受けられないで整理しています。

まとめ

  • 堺市・年商2,000万円の中古カメラ販売は、法人化で1期目+7.7万円、2期目+17.7万円、3期目以降は年24.9万円の不利
  • 設立1〜2期の免税で浮くのは年67万円。売上の消費税200万円から仕入れの消費税133万円を引いた分だけ
  • 同じ年商・経費でも、課税仕入れが2割のサービス業なら免税は年172万円分。物販の2.6倍
  • 3期目以降の結論は課税仕入れの割合に関係なく同じ。免税は最初の2年の上乗せにすぎない

判定ツールの詳細設定で、経費のうち課税仕入れの割合を変えられます。物販の人は初期値のまま試算せず、自分の仕入れの比率で確かめてください。

よくある質問

法人化したら古物商の許可はどうなりますか?

古物商の許可は個人と法人で別です。個人の許可は法人に引き継げないので、法人として新たに許可を受ける必要があります。許可が出るまでの間は、法人として古物を買い取ることができません。

免税期間中に仕入れが売上を上回ったら、消費税は戻ってきますか?

免税事業者は消費税の申告をしないので、仕入れの消費税が多くても還付は受けられません。在庫を大きく積み増す年や設備投資の年は、免税がかえって不利になることがあります。

メルカリやヤフオクで仕入れたものも課税仕入れになりますか?

古物商が、インボイスのない個人からフリマアプリ等で仕入れた古物も、帳簿に一定の事項を記載すれば古物商等特例の対象にできると国税庁のQ&Aで示されています。記載事項を満たしていない仕入れは控除できず、個人のときの消費税が大きくなります。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。