法人化の判断

64歳で法人化した夫と58歳の妻の試算事例。65歳で妻が第3号から外れ有利が消える

結論

横浜市・64歳のプロジェクトマネージャー(年商1,400万円・経費200万円、無収入の58歳の妻)は、法人化すれば妻が第3号被保険者になり、3期目以降年2.2万円の有利です。ところが社長が65歳になると第2号被保険者から外れ、60歳未満の妻は第3号になれず国民年金(年21.5万円)を自分で払います。66歳の試算では年17.2万円の不利で、損益分岐は事業所得1,178万円から1,370万円へ192万円上がります。

  • 第2号被保険者は厚生年金に入っている65歳未満の人。65歳以上でも老齢基礎年金の受給資格がなければ70歳まで第2号だが、多くの社長は65歳で外れる
  • 社長が65歳になると、法人化していても妻の国民年金は個人のときと同じだけかかる。法人化で消える負担がひとつ減る
  • 66歳で妻が58歳のときは、妻が62歳のとき(年12.1万円の不利)より不利が大きい。国民年金の社会保険料控除が、税率の高い個人のままで大きく効くため

この記事は、実在の人物ではなく、条件を設定したモデルケースを当サイトの計算エンジンで試算したものです。

年下の配偶者がいる人の法人化には、時間で切れる効果があります。社長が厚生年金に入っていれば、60歳未満の配偶者は第3号被保険者になり国民年金を払いません。ただしそれは社長が65歳になるまでです。このケースでは、64歳で有利だった法人化が、66歳では不利になりました。

このケースの条件

項目内容
職種ITプロジェクトマネージャー(システム開発会社と業務委託契約)
年齢・家族64歳・妻58歳(無収入)。66歳の時点も計算
住所横浜市
年商(税抜)1,400万円
経費200万円
申告青色申告(e-Tax・65万円控除)
インボイス登録済み
個人事業税の業種請負業として5%で計算

事業所得(売上−経費)は1,200万円です。

64歳:法人化すると妻の国民年金が消える

項目個人のまま法人化(役員報酬月54万円)
国民健康保険113.0万円—
国民年金(妻の分)21.5万円0万円(妻は第3号)
社会保険料・本人負担—95.6万円
所得税・住民税255.3万円44.7万円
個人事業税45.5万円—
手取り(法人は手取り合計)764.7万円786.9万円

※ 横浜市・64歳・58歳の無収入の妻・合同会社・神奈川県(協会けんぽ)・3期目以降。法人の手取り合計は会社に残る額(349.0万円)を2割引いて計上/2026年(令和8年)分基準

本人は64歳なので国民年金はなく、個人のままで払っているのは妻の分の21.5万円です。法人化すると、64歳の社長は第2号被保険者なので、58歳の妻は第3号になり、これがなくなります。税理士報酬の増加20万円を引いて、年2.2万円の有利です。

66歳:妻は第3号から外れ、国民年金は法人でも残る

項目個人のまま法人化(役員報酬月54万円)
国民健康保険(介護分なし)96.0万円—
国民年金(妻の分)21.5万円21.5万円
社会保険料・本人負担(介護保険料なし)—90.5万円
所得税・住民税262.8万円41.4万円
個人事業税45.5万円—
手取り(法人は手取り合計)774.2万円777.0万円

※ 横浜市・66歳・58歳の無収入の妻・3期目以降。妻の国民年金は社長が払い、社長の社会保険料控除に入れる前提/2026年(令和8年)分基準

65歳以上の社長は、老齢基礎年金の受給資格があれば第2号被保険者ではなくなります。第3号は「第2号に扶養される配偶者」なので、妻は第3号から外れ、60歳になるまで国民年金を自分で払います。法人化していても、妻の国民年金は個人のときと同じだけかかります。

66歳の実質差額は年17.2万円の不利です。64歳の年2.2万円の有利から、19.4万円悪くなりました。

損益分岐は192万円上がる

64歳・妻58歳66歳・妻58歳66歳・妻62歳
3期目以降の実質差額+2.2万円−17.2万円−12.1万円
損益分岐(事業所得)1,178万円1,370万円—

※ 横浜市・年商1,400万円・経費200万円/2026年(令和8年)分基準

売上を変えても、65歳をまたぐと差額は年13万〜21万円悪くなります。

年商(経費200万円)64歳・妻58歳66歳・妻58歳66歳・妻62歳
1,200万円−12.0万円−33.4万円−30.5万円
1,400万円+2.2万円−17.2万円−12.1万円
1,600万円+22.5万円+3.1万円+8.1万円
1,800万円+42.3万円+22.4万円+27.5万円
2,000万円+55.7万円+42.4万円+45.3万円

※ 3期目以降の実質差額/2026年(令和8年)分基準

66歳では、妻が年下のほうが不利になる

表の右2列を比べると、66歳では妻が58歳のほうが62歳より不利です。どちらも法人化で妻の国民年金は消えません。違いは税金の側に出ます。妻の国民年金21.5万円は社長の社会保険料控除に入り、控除は税率の高い個人のままでより大きく税金を減らします。払う保険料は同じでも、控除の効き方の差だけ個人のままが有利になるのです。

64歳で法人化するなら、効果が続く年数で見る

このケースでは、法人化の有利は社長が65歳になる前の1年分しかありません。設立費用(合同会社10万円)を払って法人化しても、1期目は−7.8万円、65歳からは不利が続きます。

年社長の年齢妻実質差額
1期目64歳第3号−7.8万円
2期目以降65歳以上第1号(自分で納付)−17.2万円

※ 2期目以降は66歳時点の試算を使用

社長が65歳で第3号の扱いがどう変わるかの仕組みは社長が65歳になると配偶者は第3号から外れるで詳しく扱っています。60代前半で妻が60歳未満の事例は61歳の夫と56歳の妻の試算事例にあります。年齢と家族で損益分岐がどう動くかの全体像は個人事業主の法人化の目安にまとめています。

まとめ

  • 横浜市・年商1,400万円・64歳の社長と58歳の妻は、法人化で妻が第3号になり年2.2万円の有利
  • 社長が65歳になると妻は第3号から外れ、法人化しても妻の国民年金がかかる。66歳では年17.2万円の不利
  • 損益分岐は事業所得1,178万円から1,370万円へ192万円上がる
  • 66歳では妻が年下のほうが不利。国民年金の控除が個人のままの高い税率で大きく効くため
  • 64歳で法人化する人は、65歳以降の数字で判断する

判定ツールでは、本人が65歳以上で配偶者が60歳未満の組み合わせも計算できます。夫婦の年齢を入れて、数年先の数字も確かめてください。

よくある質問

妻が第3号から外れたら、何か手続きが要りますか?

社長が65歳になって妻が第3号被保険者でなくなると、妻は国民年金の第1号被保険者への種別変更の手続きを市区町村で行い、自分で保険料を納めます。健康保険の被扶養者のままでいられるかどうかは、年金の種別とは別に判断されます。

妻の国民年金を社長が払ったら、控除は受けられますか?

生計を一にする配偶者の国民年金保険料を社長が払えば、社長の社会保険料控除に入れられます。この試算もその前提で、個人のまま・法人化のどちらでも社長の控除に入れています。

社長が老齢年金を繰り下げて受け取っていない場合も外れますか?

第2号被保険者から外れるのは、65歳以上で老齢基礎年金などの受給資格がある場合です。繰下げ待機で受け取っていなくても、受給資格があれば外れます。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。