設立の手続き

個人事業主が亡くなった年の税。準確定申告は4か月、住民税はかからない

結論

個人事業主が年の途中で亡くなると、相続人が相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に、1月1日から死亡日までの所得で準確定申告をします。所得税の控除は月割りせず、住民税は賦課期日の1月1日に生存していないためかかりません。事業所得1,000万円の人が6月末に亡くなった場合、その年の所得税・個人事業税の合計は29.8万円で、通年の税の半年分102.3万円より72.6万円少なくなります。

  • 国税庁No.2022:配偶者控除・扶養控除等の月割計算は行わない。社会保険料控除・医療費控除は死亡の日までに支払った分
  • 個人事業税は事業主控除290万円を営業した月数で月割りし(6か月なら半分)、死亡による廃止の日から4か月以内に申告する(東京都主税局)
  • 消費税も相続人が4か月以内に申告する(消費税法45条3項)。法人の社長が亡くなっても、会社の申告期限は変わらない

個人事業主が亡くなると、その日で事業は終わります。1月1日から亡くなった日までの所得は、相続人が申告します。これが準確定申告です。

死亡した年の税は、通年の税を月数で割った額にはなりません。所得税の控除は満額のまま、住民税はかからず、個人事業税の事業主控除は月割りになります。同じ事業所得でも、亡くなった年だけ税の組み立てが変わります。

亡くなった年の税は、3つの期限で動く

相続人がやることを、期限の順に並べます。

税対象の期間期限根拠
所得税(準確定申告)1月1日〜死亡日相続の開始を知った日の翌日から4か月以内国税庁No.2022
消費税課税期間の初日〜死亡日相続の開始を知った日の翌日から4月を経過した日の前日まで消費税法45条3項
個人事業税1月1日〜死亡(事業の廃止)の日死亡による廃止の日から4か月以内に申告東京都主税局(地方税法72条の55・72条の55の2)
住民税死亡した年の所得にはかからない—地方税法39条・318条(賦課期日は1月1日)

東京都では、死亡による事業の廃止は、30日以内に「事業開始(廃止)等申告書」も出します。個人事業税の納税義務は相続人に承継されます。

前年分の確定申告を出さないまま1〜3月に亡くなった場合は、前年分も本年分も、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内が期限です。

控除は満額、住民税はかからない

準確定申告の所得控除は、国税庁No.2022で扱いが決まっています。

  • 月割りしない:配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、特定親族特別控除は、死亡の日の現況で判定し、月割計算をしない
  • 死亡の日まで:医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除は、死亡の日までに被相続人が支払った分

基礎控除も満額です。所得が数か月分しかないのに、控除は1年分使えるということです。

住民税は、その年の1月1日に住所がある人に、前年の所得をもとに課税します(地方税法39条・318条)。亡くなった年の所得に対する住民税は、翌年の1月1日に本人がいないので課税されません。一方、亡くなった年に納める住民税(前年分の所得に対する分)は残ります。相続人が納めることになり、相続税の計算では債務として差し引けます。

3月・6月・9月に亡くなった場合で計算した

事業所得1,000万円(売上1,200万円・経費200万円)、配偶者あり、青色申告65万円の人が、年の途中で亡くなった場合の税を、当サイトの計算エンジンで出しました。死亡した年の売上と経費は月数で按分しています。

死亡した月事業所得(青色控除後)所得税(準確定申告)個人事業税住民税合計通年の税×月数/12差
3月末185.0万円0.2万円8.9万円0.0万円9.1万円51.2万円−42.1万円
6月末435.0万円12.0万円17.8万円0.0万円29.8万円102.3万円−72.6万円
9月末685.0万円51.9万円26.6万円0.0万円78.5万円153.5万円−74.9万円
亡くならない(通年)935.0万円97.5万円35.5万円71.7万円204.7万円204.7万円0.0万円

※ 売上1,200万円・経費200万円・東京23区・40〜64歳・配偶者あり(収入なし)・青色申告(e-Tax)・インボイス登録済み/2026年(令和8年)分基準 ※ 死亡年は売上・経費を月数で按分し、青色申告特別控除は65万円を上限に満額とした。社会保険料控除は通年額の月数按分。消費税は含めない。計算は scripts/jun-kakutei-shinkoku.mjs

6月末に亡くなった場合、半年分の所得435.0万円に対して所得税は12.0万円です。基礎控除と配偶者控除を満額使い、累進の低い税率帯だけで済むためです。住民税の71.7万円はそもそもかかりません。通年の税の半年分より72.6万円少なくなります。

個人事業税だけは、月割りの仕組みがあります。事業主控除290万円が、6か月なら145万円に縮みます。東京都主税局が1か月ごとの額を公表しており、3か月なら72.5万円、9か月なら217.5万円です。

青色申告特別控除を満額としたのは、この計算の前提です。65万円・55万円の控除は、死亡した年でも帳簿と期限内申告の要件を満たせば受けられますが、準確定申告の期限は4か月しかありません。相続人が帳簿を締めて貸借対照表まで作れるかが、実務上の分かれ目になります。

法人の社長が亡くなった場合は、会社の手続きが続く

同じ事業を法人でしていた場合は、事情が変わります。

個人事業主が亡くなった法人の社長が亡くなった
事業その日で終わる。続けるなら相続人が新たに開業会社は続く
事業の税の申告相続人が4か月以内に準確定申告・消費税・事業税会社の事業年度・申告期限は変わらない
本人の所得税事業所得を準確定申告給与は死亡退職として年末調整の対象(国税庁No.2665)。他の所得がなければ準確定申告は不要な場合がある
本人の住民税死亡年の所得にはかからない同じ
遺族へのお金事業から払う仕組みはない死亡退職金・弔慰金を会社から払える

個人事業では、事業そのものが相続財産になり、相続人が続けるなら改めて開業届と青色申告の承認申請を出します。法人では、会社は社長が亡くなっても存続し、株が相続財産になります。役員が社長1人なら新しい役員を選ぶ必要がありますが、会社の申告期限は動きません。

遺族へのお金の出し方の違いは死亡退職金・弔慰金の非課税枠で扱っています。

相続人が続けるなら、青色申告の承認も取り直す

亡くなった人の青色申告の承認は、相続人には引き継がれません。相続人が事業を続けて青色申告をするには、自分で承認申請を出す必要があります。期限は、亡くなった日がいつかで変わり、通常の開業の2か月とは違う数え方をします。

期限を過ぎると、その年は白色申告になり、65万円の控除が使えません。承認申請の期限と、間に合わなかった場合の手取りの差は相続で個人事業を継いだら青色申告の承認申請で計算しています。

まとめ

  • 個人事業主が亡くなると、相続人が相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をする。消費税・個人事業税も4か月以内
  • 所得税の配偶者控除・扶養控除などは月割りしない。住民税は賦課期日の1月1日に生存していないため、死亡年の所得にはかからない
  • 事業所得1,000万円の人が6月末に亡くなると、その年の税は29.8万円で、通年の税の半年分より72.6万円少ない
  • 個人事業税だけは事業主控除が月割りになり、6か月なら290万円の半分になる
  • 法人の社長が亡くなっても会社の申告期限は変わらず、給与は年末調整の対象になる

亡くなった年の税の軽さは、個人事業を選ぶ理由にはなりません。毎年の手取りの差が先です。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で、個人のままと法人化の年間の差を確かめてください。

よくある質問

準確定申告の期限は、亡くなった日から4か月ですか?

国税庁No.2022では「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」です。亡くなった日ではなく、相続人が相続の開始を知った日から数えます。

前年分の確定申告をしないまま1〜3月に亡くなった場合はどうなりますか?

国税庁No.2022によると、前年分と本年分のどちらも、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内が準確定申告の期限になります。

相続人が複数いる場合、準確定申告は誰が出しますか?

各相続人の連署で1通の申告書を出すのが原則です。他の相続人の氏名を付記して各人が別々に出すこともでき、その場合は申告した内容を他の相続人に通知します。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。