設立の手続き
相続で個人事業を継いだら青色申告の承認申請。期限は最短46日
結論
青色申告者だった親の事業を相続で引き継いだ場合、青色申告承認申請の期限は、死亡の日が1月1日〜8月31日なら死亡の日から4か月以内、9月1日〜10月31日ならその年の12月31日、11月1日〜12月31日なら翌年2月15日です。10月31日の死亡なら61日、12月31日なら46日しかありません。間に合わず白色申告になると、事業所得500万円の設例では手取りが年25.1万円減ります。
- 期限の3区分は国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」による。対象は青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続で承継した場合
- 4か月以内の区分でも、8月31日に亡くなれば期限は12月31日で122日。期限が最も短くなるのは各区分の最終日の死亡
- 白色申告になると青色申告特別控除(最高65万円)が使えない。所得税・住民税・国保がまとめて増える
親の店や工場を子が継ぐとき、事業は相続で引き継げても、青色申告の承認は引き継げません。承認は親の所得税についてのもので、相続人が事業を続けるなら、相続人が自分で承認を申請します。
その期限は、通常の開業の「2か月以内」とは違う数え方をします。親が亡くなった日によって、3通りに分かれます。
期限は、死亡の日で3通りに分かれる
国税庁の「所得税の青色申告承認申請手続」は、青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続で承継した場合の期限を、次のように定めています。
| 死亡の日 | 申請の期限 |
|---|---|
| 1月1日〜8月31日 | 死亡の日から4か月以内 |
| 9月1日〜10月31日 | その年の12月31日まで |
| 11月1日〜12月31日 | その年の翌年の2月15日まで |
提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限です。
この区分は、その年のうちに承認を受けて、承継した年から青色申告ができるように作られています。通常の承認申請は「青色申告をしようとする年の3月15日まで」で、年の途中の開業は開業から2か月以内です。相続では開業のような準備期間がないため、期限に幅を持たせています。
期限までの日数は、46日から122日まで
区分の境目で、期限までの日数がどう変わるかを計算しました。
| 死亡の日 | 申請の期限 | 期限までの日数 |
|---|---|---|
| 3月10日 | 7月10日 | 122日 |
| 8月31日 | 12月31日 | 122日 |
| 9月1日 | 12月31日 | 121日 |
| 10月31日 | 12月31日 | 61日 |
| 11月1日 | 翌年2月15日 | 106日 |
| 12月31日 | 翌年2月15日 | 46日 |
※ 2026年の日付で計算。土日祝日の繰下げは入れていない。計算は scripts/souzoku-aoiro-shinsei.mjs
1月1日〜9月1日に亡くなった場合は、どの日でも121〜122日の余裕があります。短くなるのは、区分の終わりに近い日に亡くなった場合です。10月31日なら61日、12月31日なら46日しかありません。
亡くなった直後の相続人は、葬儀、役所の手続き、親の準確定申告(相続の開始を知った日の翌日から4か月以内)を同時に抱えます。秋から年末にかけて亡くなった場合は、青色申告の承認申請を最初に片付ける必要があります。
間に合わないと、その年は白色申告になる
期限を過ぎると、承継した年の相続人の申告は白色申告になります。青色申告特別控除が使えず、青色事業専従者給与や純損失の繰越しといった特典も受けられません。
控除がなくなると、所得税・住民税だけでなく、所得をもとに計算する国民健康保険料も上がります。当サイトの計算エンジンで、相続人が引き継いだ事業の所得別に、青色65万円と白色の手取りを比べました。
| 相続人が引き継いだ事業の事業所得(青色控除前) | 青色65万円:手取り | 白色:手取り | 差 |
|---|---|---|---|
| 250.0万円 | 194.7万円 | 179.1万円 | 15.7万円 |
| 500.0万円 | 370.6万円 | 345.5万円 | 25.1万円 |
| 1,000.0万円 | 657.1万円 | 635.2万円 | 21.9万円 |
※ 東京23区・40歳未満・独身・インボイス登録済み・相続人に他の所得なし/2026年(令和8年)分基準。手取りは所得税・住民税・個人事業税・国保・国民年金を引いた後。計算は scripts/souzoku-aoiro-shinsei.mjs
事業所得500万円で年25.1万円の差です。1,000万円のほうが差が小さいのは、国保料が賦課限度額に達していて、控除が減っても保険料が増えないためです。
65万円の控除を受けるには、承認だけでなく、正規の簿記による記帳と、e-Taxでの期限内申告(または優良な電子帳簿の保存)が必要です(国税庁No.2070)。承継した日から相続人の帳簿をつけ始めることになります。控除額の条件は青色申告65万円と法人化の分岐点で扱っています。
親の分と相続人の分は、別々に申告する
相続で事業を継いだ年は、同じ事業の所得を2人が申告します。
| 期間 | 誰の所得か | 申告 | 青色申告の承認 |
|---|---|---|---|
| 1月1日〜死亡の日 | 亡くなった親 | 相続人が準確定申告(4か月以内) | 親の承認のまま |
| 承継の日〜12月31日 | 相続人 | 相続人が翌年3月15日までに確定申告 | 相続人が新たに申請 |
親の分の申告と税の扱いは個人事業主が亡くなった年の税で扱っています。準確定申告の期限(相続の開始を知った日の翌日から4か月以内)と、相続人の承認申請の期限(1月〜8月の死亡なら死亡の日から4か月以内)は近い時期に来ますが、数え始めの日と対象が違います。
事業を継ぐ相続人は、開業届も自分の名前で出します。所得税の青色申告の承認申請とは別の書類です。
事業を法人にしていれば、この手続きはない
事業が法人なら、社長が亡くなっても会社は存続します。青色申告の承認は会社が受けているもので、社長の交代で失われません。相続人が受け継ぐのは会社の株で、事業の申告は会社がそのまま続けます。
個人事業のまま次の世代に渡すか、法人にしてから渡すかで、承継の年の手続きの重さが変わります。個人事業のまま渡す場合の相続税の制度は個人版事業承継税制と小規模宅地の選択で扱っています。
まとめ
- 相続で事業を継いでも、青色申告の承認は引き継げない。相続人が自分で申請する
- 被相続人が青色申告者なら、期限は死亡の日が1〜8月なら4か月以内、9〜10月なら12月31日、11〜12月なら翌年2月15日
- 10月31日の死亡なら61日、12月31日なら46日しかない
- 間に合わないと承継した年は白色申告になり、事業所得500万円の設例で手取りが年25.1万円減る
- 法人なら青色申告の承認は会社のもので、社長が亡くなっても失われない
事業を継ぐ前に、その事業を個人のまま続けるのがよいのか、法人にするほうがよいのかも見ておく価値があります。一般論の数字ではなく、引き継ぐ事業の売上と経費で確かめてください。
よくある質問
亡くなった親が白色申告だった場合、相続人の申請期限はいつですか?
3区分の特例は「青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続により承継した場合」の定めです。それ以外は通常の期限で、青色申告をしようとする年の3月15日まで、その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は事業開始の日から2か月以内です。
期限が土日祝日に当たる場合はどうなりますか?
国税庁の手続案内では、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
亡くなった親の分の青色申告特別控除は使えますか?
親の1月1日から死亡日までの所得は、相続人が準確定申告で申告します。親は青色申告の承認を受けていたので、帳簿と申告の要件を満たせば、準確定申告でも青色申告特別控除の対象になります。相続人の承認申請は、相続人自身が承継後に得る所得についての手続きです。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。