設立の手続き

個人の青色申告承認申請、期限は3月15日か開業2か月。出し忘れた年の損失額

結論

個人の青色申告承認申請書は、青色で申告したい年の3月15日まで、その年の1月16日以後に開業した場合は開業から2か月以内に出します(所得税法144条)。1日でも遅れるとその年は白色申告になり、65万円の控除を取れた場合と比べて、控除前の所得300万円で年15.7万円、500万円で年25.1万円、税・保険料が多くなります(東京23区・単身の概算)。

  • 税務署から通知がなくても、その年の12月31日(11月以後の開業は翌年2月15日)までに却下されなければ承認されたとみなされる(所得税法147条)
  • 白色の年は、家族への給与は専従者控除(配偶者86万円・その他50万円)が上限になり、赤字の3年繰越しも原則使えない
  • 法人成りで個人事業を全部やめると、翌年分以後の承認は失効する(所得税法151条2項)。不動産所得が残るなら承認も残る

青色申告は、届け出れば自動的に使える制度ではありません。税務署長の承認を受けた年分から使えます。承認申請の期限は1日単位で決まっていて、過ぎるとその年は取り戻せません。

承認申請の期限は2通り

所得税法144条は、青色申告の承認を受けようとする年の期限を次のように定めています。

状況承認申請書の提出期限
すでに事業をしている(前年以前に開業)青色にしたい年の3月15日まで
その年の1月1日〜1月15日に開業その年の3月15日まで
その年の1月16日以後に開業開業した日から2か月以内

たとえば6月10日に開業した人は8月10日までです。開業が1月15日以前なら、2か月を数えるより3月15日のほうが遅いため、3月15日が期限になります。

承認の通知がなくても、年末に承認されたとみなされる

申請書を出した後、税務署から承認の通知が来ないことがあります。所得税法147条により、その年の12月31日までに承認または却下の処分がなければ、その日に承認があったものとみなされます。11月1日以後に開業した場合は、翌年2月15日です。

却下されるのは、帳簿が法令どおりに付けられていない場合や、取引を隠したり偽ったりしていると認められる場合などです(所得税法145条)。青色申告の取りやめ届を出した日や、承認を取り消された日から1年以内の再申請も却下できるとされています。

出し忘れた年は白色申告になる

期限を過ぎて出した申請書は、翌年分からの申請として扱われます。その年は白色申告です。失うものは3つあります。

1. 最大65万円の青色申告特別控除

控除前の所得ごとに、白色申告と青色申告(10万円・65万円)の税・保険料を計算しました。

控除前の所得白色申告青色10万円青色65万円(e-Tax)白色と65万円の差
200万円58.9万円56.5万円43.6万円15.3万円
300万円83.5万円81.1万円67.8万円15.7万円
500万円154.5万円150.7万円129.4万円25.1万円
800万円283.8万円280.1万円259.3万円24.5万円

※ 税・保険料は所得税(復興特別所得税込み)・住民税・個人事業税・国民健康保険料・国民年金保険料の合計。東京23区・40歳未満・独身。当サイトで計算(scripts/aoiro-shinsei-kigen-kojin.mjs)

所得500万円では、出し忘れ1回で年25.1万円です。65万円の控除は所得税・住民税だけでなく、国民健康保険料の計算にも効くためです。なお個人事業税の計算には青色申告特別控除が使えないため、事業税の額は白色でも青色でも変わりません。

2. 家族への給与

青色申告なら、届け出た範囲で家族への給与を青色事業専従者給与として経費にできます(所得税法57条1項)。白色申告では、事業専従者控除として配偶者は86万円、その他の家族は50万円が上限です(同条3項)。しかも、事業所得を専従者の数に1を足した数で割った額のほうが低ければ、そちらが上限になります。

配偶者に年180万円を払っている事業なら、白色の年は経費になる額が86万円に下がります。家族への給与の相場と上限の関係は青色事業専従者給与の平均で整理しています。

3. 赤字の繰越し

青色申告なら、事業の赤字(純損失)を翌年以後3年間繰り越して、黒字と相殺できます。白色申告では、変動所得や被災事業用資産の損失などを除き、繰り越せません。開業の年は設備投資で赤字になりやすいため、開業年の出し忘れがいちばん響きます。赤字の繰越期間を個人と法人で比べた記事は欠損金の繰越し 法人10年・個人3年です。

出し忘れに気づいたらすること

気づいた時点で、次の年分に向けて承認申請書を出します。3月15日を過ぎていれば翌年分からです。今年を青色にさかのぼる手続きはありません。

白色の年も、帳簿は付けておきます。翌年から青色で65万円を取るには、正規の簿記(複式簿記)による帳簿と貸借対照表が必要です。年の途中から帳簿を付け始めると、翌年1月1日時点の資産・負債の残高(期首残高)を作るのに手間がかかります。

小規模で帳簿の手間を減らしたい場合は、青色申告のなかの現金主義という選択肢もあります。控除は10万円になりますが、専従者給与や赤字の繰越しは使えます。

法人成りすると、個人の承認はどうなるか

所得税法151条2項により、青色申告の承認を受けた人が業務の全部を廃止した場合、廃止した年の翌年分以後は承認が失効します。法人成りで個人事業をすべて会社に移した場合、廃業した年の分までは青色で申告でき、翌年分以後は承認がなくなります。

ここで「業務」とは、不動産所得・事業所得・山林所得を生む業務です。法人成りの後も、個人で家賃収入(不動産所得)を得ているなら、業務の全部を廃止したことにはならず、承認は残ります。自宅の一部を会社に貸して家賃を受け取る場合がこれに当たります(自宅を法人に貸す家賃)。

いったん失効した後で個人事業を再開する場合は、改めて承認申請が必要です。期限は、再開した日から2か月以内(1月15日以前の再開なら3月15日)です。会社の側の青色申告は別の手続きで、期限も違います(法人の青色申告承認申請の期限)。

まとめ

  • 個人の青色申告承認申請は、青色にしたい年の3月15日まで。1月16日以後の開業は開業から2か月以内
  • 期限内に出せば、年末までに却下されない限り承認されたとみなされる
  • 出し忘れた年は白色申告になり、控除前の所得500万円なら税・保険料が年25.1万円多くなる
  • 白色の年は、家族への給与が86万円・50万円の専従者控除に限られ、赤字も原則繰り越せない
  • 法人成りで業務を全部やめると翌年分以後の承認は失効する。不動産所得が残れば承認も残る

青色で65万円を取れるかどうかで、法人化の損益分岐点も動きます。一般論の数字ではなく、自分の売上と経費で確かめてください。

よくある質問

開業届を出していなくても、青色申告の承認申請はできますか

所得税法144条の要件は、期限までに承認申請書を出すことです。ただし承認申請の期限は開業日から数えるため、開業届と同時に出すのが確実です。両方とも税務署に同時に提出できます。

前年に出し忘れた場合、今年から青色にするにはいつまでに出せばよいですか

今年の3月15日までです。すでに事業をしている人は「開業から2か月以内」の扱いにはならないため、3月16日以後に出すと、青色になるのは翌年分からです。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。