社会保険

大学生の子の国民年金を親が払うと控除になる。法人化で減税額は縮む

結論

生計を一にする親が20歳以上の子の国民年金保険料を払うと、その全額が親の社会保険料控除になります(国税庁 No.1130)。令和8年度の1年分21万5,040円で、事業所得800万円の個人事業主なら所得税・住民税が年6.5万円減りますが、法人化して役員報酬を受け取る場合は年3.3万円に縮みます(概算)。

  • 減るのは所得税・住民税だけ。国民健康保険料の所得割は社会保険料控除では下がらない
  • 1年分を納めると子の老齢基礎年金は年21,183円増える。親の控除を差し引いた実質負担なら、個人事業主で5.7〜8.6年、法人化後で7.1〜8.6年で取り戻す
  • 学生納付特例で先送りした期間は老齢基礎年金の額に反映されない。10年以内に追納すれば反映され、追納した人の控除になる

20歳になった大学生の子には、国民年金の保険料(令和8年度は月17,920円)の納付書が届きます。学生納付特例で先送りする家庭も多いですが、親が払えば、その全額が親の所得控除になります。ただし、控除でいくら戻るかは親の税率で決まるので、個人事業主のままか、法人化して役員報酬を受け取っているかで変わります。

生計を一にする子の保険料は、親の控除になる

国税庁 No.1130 は、納税者が「自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料」を支払った場合に、その支払った全額を社会保険料控除として差し引けるとしています。国民年金保険料もその対象です。

大学生の子の国民年金は、本来は子本人が負担すべき保険料です。それでも、生計を一にする親が実際に支払えば、控除を受けるのは親です。下宿していても、学費や生活費を仕送りしていれば、通常は生計を一にしていると扱われます。

控除を受けるには、日本年金機構から届く控除証明書を、個人事業主なら確定申告書に、役員報酬を受け取る一人社長なら年末調整の「給与所得者の保険料控除申告書」に添付します(国税庁 No.1130)。

個人事業主のままなら、事業所得800万円で年6.5万円減る

令和8年度の保険料1年分、21万5,040円を親が払った場合に減る税を計算しました。個人事業主のままの場合と、法人化して手取りが最大になる役員報酬を取っている場合です。

事業所得(青色控除前)個人:減る所得税・住民税実質負担法人:役員報酬(月額)法人:減る所得税・住民税実質負担
400万円3.2万円18.3万円28万円3.3万円18.2万円
600万円4.3万円17.2万円42万円3.5万円18.0万円
800万円6.5万円15.0万円48万円3.3万円18.2万円
1,000万円6.7万円14.8万円48万円3.3万円18.2万円
1,200万円7.2万円14.3万円54万円4.4万円17.1万円
1,500万円9.4万円12.1万円54万円4.4万円17.1万円
2,000万円9.4万円12.1万円90万円6.5万円15.0万円

※ 子の国民年金保険料 年215,040円(令和8年度・12か月分)を親が払い、親の社会保険料控除に入れた場合。所得税は復興特別所得税を含む。実質負担=保険料−減る税。東京23区・40〜64歳・配偶者なし・子1人を扶養・青色65万円・インボイス登録あり・合同会社・経費200万円。法人の役員報酬は手取りが最大になる額。当サイトの計算エンジンで算出(scripts/kodomo-kokumin-nenkin-kojo.mjs)

減るのは所得税と住民税だけです。国民健康保険料の所得割は、所得から基礎控除43万円だけを引いた金額で計算するので、社会保険料控除を増やしても下がりません。

法人化すると、同じ控除の価値が下がる

表の右側を見ると、法人化した場合の減税額は、事業所得800万〜1,000万円で個人のままの半分程度(6.5万円→3.3万円)です。

理由は、控除が当たる税率の違いです。個人事業主は事業所得がまるごと所得税・住民税の課税所得になり、所得が大きいほど高い税率帯で控除が効きます。法人化すると、課税所得になるのは役員報酬から給与所得控除と社会保険料を引いた残りだけで、利益の一部は会社に残ります。役員報酬を最適化すると、個人の課税所得は低い税率帯に収まりやすくなります。

同じ理屈は、医療費控除などほかの所得控除にも当てはまります。医療費控除の比較は医療費控除は法人化で戻る額が減るで計算しています。法人化の損得全体から見れば小さな差ですが、判定ツールはこの控除を計算に入れていないので、子の国民年金を払う年は、個人のままの側が表の差の分だけ有利に寄ると読み替えてください。

学生納付特例で先送りした場合との違い

学生納付特例を使うと、在学中の保険料の納付が猶予されます。ただし猶予された期間は、老齢基礎年金の額には反映されません。令和8年度の満額は847,300円(昭和31年4月2日以後生まれ)なので、1年分を納めるかどうかで、子の老齢基礎年金は年21,183円変わります。

払い方実質負担増える老齢基礎年金取り戻す年数
親が払う(個人事業主・事業所得800万円)15.0万円年21,183円7.1年
親が払う(一人社長・事業所得800万円)18.2万円年21,183円8.6年
子が自分で払う(所得が小さく税が減らない場合)21.5万円年21,183円10.2年

※ 取り戻す年数=実質負担÷年21,183円。65歳からの受給で、受け取る年数がこの年数を超えれば元が取れる。当サイトで計算

学生納付特例の期間は、10年以内なら後から追納できます。卒業後に子が自分で追納すれば、子の社会保険料控除になります。ただ、社会人1〜2年目の子の税率は低いことが多く、3年度目以降は追納に加算額が付きます。免除・猶予と追納の損得は国民年金の免除で減る年金は年1万円で計算しています。

どの払い方を選ぶかは家計の事情で決まりますが、親の税率が高い年に親が払うほど、同じ年金を安く買えるという関係は押さえておく価値があります。前納で割引を受けながら控除を使う方法は国民年金の2年前納は17,370円お得で扱っています。

まとめ

  • 生計を一にする親が20歳以上の子の国民年金保険料を払うと、その全額が親の社会保険料控除になる
  • 令和8年度の1年分21万5,040円で、事業所得800万円の個人事業主なら所得税・住民税が年6.5万円減る。国民健康保険料は下がらない
  • 法人化して役員報酬を受け取る場合、同じ控除で減る税は年3.3万円と半分程度になる
  • 1年分を納めると子の老齢基礎年金は年21,183円増える。親の控除を差し引くと7〜9年程度で取り戻せる
  • 学生納付特例の期間は老齢基礎年金の額に反映されない。10年以内に追納すれば反映され、追納した人の控除になる

よくある質問

子の口座から引き落とされている国民年金も、親の控除にできますか

社会保険料控除は、実際に保険料を支払った人が受けます。子の口座から子のお金で払っていれば、控除を受けられるのは子本人です。親の控除にするには、親の口座からの振替や親名義のクレジットカードなど、親が支払ったことが分かる形で納めます。

法人化した後は、子の国民年金をどうやって控除しますか

役員報酬を受け取る一人社長は、年末調整で自分の会社に「給与所得者の保険料控除申告書」を出し、日本年金機構の控除証明書を添付します。個人事業主のときは確定申告で控除します。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。