税金の基礎
大学生の子に給与を払っても個人事業は経費0円。法人なら世帯で年37万円
結論
個人事業主が生計を一にする子に払う給与は、青色事業専従者給与を除いて必要経費になりません(所得税法56条)。昼間の大学生は専従者の要件も満たしません。法人が実際に働いた子に払う給与は、不相当に高額な部分を除いて損金になり、事業所得800万円なら子に年100万円払うと家族全体の手取りは年37.1万円増えます(概算)。
- 昼間の学生である期間は、青色事業専従者の「6か月を超えて専ら従事」に数えない(所得税法施行令165条2項)
- 子の給与が年119万円以下なら子の所得税・住民税は0円。19〜22歳の子が親の健康保険の扶養に入れるのは年収150万円未満まで
- 昼間学生のアルバイトは、週の労働時間が通常の労働者の4分の3未満なら健康保険・厚生年金に加入しない
事業を手伝ってくれる大学生の子に給与を払うとき、払う側が個人事業主か法人かで、税の扱いがまったく違います。個人事業主が払った給与は、経費にならないうえに、子の所得にもならないものとして扱われます。法人が払った給与は、実際の仕事に見合う額なら会社の損金です。この違いが家族全体の手取りをいくら動かすかを計算しました。
個人事業主が子に払う給与は、原則として経費にならない
所得税法56条は、個人事業主と生計を一にする親族が事業から対価を受け取っても、その対価は事業の必要経費にならないと定めています。同時に、受け取った親族の側でも、その対価はなかったものとみなされます。家族の間でお金が移っただけで、税の計算上は何も起きなかったことになるわけです。
この例外が、青色申告者の青色事業専従者給与(57条)です。ただし専従者になるには、国税庁 No.2075 の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族
- その年の12月31日現在で15歳以上
- その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事している
大学生の子が引っかかるのは3つ目です。所得税法施行令165条2項は、学校の学生・生徒である期間は「専ら従事する期間」に含めないとしています。例外は、夜間に授業を受けて昼間を主に事業に従事する人など、事業に専ら従事することが妨げられない人に限られます。昼間の大学に通いながら空き時間に手伝う子は、専従者になれません。
つまり個人事業主のままでは、大学生の子に給与を払っても、その年の税金は1円も変わりません。
下宿していても「生計を一にする」ことが多い
56条の対象は「生計を一にする」親族です。同居しているかどうかではなく、生活費の出どころで判断されます。下宿している大学生でも、学費や生活費を親が仕送りしていれば、生計を一にしていると扱われるのが通常です。家を出ているから56条の外、とはなりません。
法人が払う給与は、仕事に見合う額なら損金
法人税には56条にあたる規定がありません。会社が社長の子を雇って給与を払えば、ほかの従業員と同じく損金になります。
制限は法人税法36条です。役員と特殊の関係にある使用人(役員の親族など)に払う給与のうち、不相当に高額な部分は損金になりません。何が不相当かは、その子が実際にした仕事の内容と、同じ仕事を他人に頼んだ場合の給与と比べて判断されます。勤務の記録と、仕事の内容に見合った時給で払っている説明ができることが前提です。
子が株式を持っている、経営の判断に関わっているといった場合は、使用人ではなく「みなし役員」になることがあります。みなし役員への給与は役員報酬のルール(定期同額など)に従います。判定の条件は家族への給与が「みなし役員」になる3条件で扱っています。
子の給与が119万円までなら、子の税金は0円
令和8年分の給与所得控除の最低保障額は74万円、所得税の基礎控除は合計所得489万円以下で104万円です。子の給与収入が178万円までなら、所得税はかかりません。住民税は、単身者なら合計所得45万円以下で非課税です(東京都主税局)。
| 子の給与(年額) | 給与所得 | 所得税 | 住民税 | 子の手取り |
|---|---|---|---|---|
| 60万円 | 0.0万円 | 0.0万円 | 0.0万円 | 60.0万円 |
| 100万円 | 26.0万円 | 0.0万円 | 0.0万円 | 100.0万円 |
| 119万円 | 45.0万円 | 0.0万円 | 0.0万円 | 119.0万円 |
| 136万円 | 62.0万円 | 0.0万円 | 2.1万円 | 133.8万円 |
| 149万円 | 75.0万円 | 0.0万円 | 3.5万円 | 145.6万円 |
※ 令和8年分。給与所得控除の最低保障額74万円、所得税の基礎控除104万円、住民税の基礎控除43万円、住民税は合計所得45万円以下で非課税(単身・東京都主税局の令和8年度の案内による)。勤労学生控除は使わない前提。当サイトで計算(scripts/kodomo-kyuyo-houjin-kojin.mjs child)
学生なら勤労学生控除(所得税27万円)もあります。令和8年分から合計所得89万円以下が要件です。ただ、上の表の範囲では所得税はもともと0円なので、効いてくるのは住民税の側だけです。
150万円と159万円は、親の側の壁
子の給与を上げていくと、親の側に2つの壁があります。
- 150万円:19歳以上23歳未満の子が、親の健康保険の被扶養者でいられる年間収入の上限(150万円未満)。超えると子は自分で国民健康保険に入ることになる
- 159万円:親の特定扶養控除・特定親族特別控除が満額63万円で取れる子の給与収入の上限
先に来るのは150万円です。下の試算は、子を親の健康保険の扶養に入れたまま払える149万円までにしています。親の控除が子の収入でどう動くかは特定親族特別控除は子の年収159万円まで満額で計算しています。
家族全体の手取りは、子に100万円払うと年37万円増える
法人化して最適な役員報酬を取っている人が、会社から子へ給与を払った場合の、家族全体の手取りの増減です。会社の利益が減るぶん、役員報酬は給与を払った後の条件で選び直しています。
| 事業所得(青色控除前) | 子に60万円 | 子に100万円 | 子に119万円 | 子に136万円 | 子に149万円 |
|---|---|---|---|---|---|
| 600万円 | +20.5万円 | +32.1万円 | +39.2万円 | +42.7万円 | +46.1万円 |
| 800万円 | +22.2万円 | +37.1万円 | +44.1万円 | +47.3万円 | +50.9万円 |
| 1,000万円 | +22.3万円 | +37.1万円 | +44.1万円 | +48.3万円 | +51.8万円 |
| 1,200万円 | +22.8万円 | +37.9万円 | +44.9万円 | +49.1万円 | +52.6万円 |
| 1,500万円 | +23.1万円 | +38.5万円 | +45.9万円 | +50.3万円 | +54.0万円 |
| 2,000万円 | +23.1万円 | +38.5万円 | +45.9万円 | +50.3万円 | +54.0万円 |
※ 「親の手取り(会社に残る利益の評価を含む)+子の手取り」の増減。子は19〜22歳の昼間学生(扶養親族1人)、社会保険・雇用保険の加入対象外、勤労学生控除なし。東京23区・40〜64歳・配偶者なし・青色65万円・インボイス登録あり・合同会社・経費200万円。個人事業主が同じ子へ払った場合は、所得税法56条により増減0円。当サイトの計算エンジンで算出(scripts/kodomo-kyuyo-houjin-kojin.mjs)
子に払った額のおよそ3割から4割弱(31〜39%)が、家族全体の手取りの増加として残ります。増える理由は、同じお金にかかる税と保険料の率の差です。親の役員報酬として受け取れば、所得税・住民税に加えて健康保険・厚生年金の保険料が会社と本人の両方にかかります。子の給与として払えば、119万円までは税も保険料もかかりません。
事業所得によって増加額があまり変わらないのも特徴です。600万円でも2,000万円でも、子に100万円払ったときの増加は32万〜39万円の幅に収まります。法人化して役員報酬を最適化している人なら、所得の水準より「子に払う額」のほうが結果を左右します。
表の数字は、子が実際に働いてその対価として給与を受け取る場合の試算です。働いていない子に給与を払うことは、損金にならないだけでなく、所得の付け替えとして否認の対象になります。
子の社会保険は、働く時間で決まる
法人は社会保険の適用事業所なので、子を雇うと、子が健康保険・厚生年金の被保険者になるかを判定する必要があります。
日本年金機構によると、被保険者になるのは、1週の所定労働時間と1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上の人です。それに満たない短時間労働者でも、週20時間以上などの条件を満たすと加入対象になりますが、この短時間労働者の要件には「学生でないこと」が含まれています(夜間課程・休学中などを除く)。
昼間の大学生が授業の合間に働く程度なら、通常は加入対象になりません。そうなれば子は親の健康保険の被扶養者のままで、会社にも子にも保険料はかかりません。上の表はこの前提です。
労働保険も確認が要ります。同居の親族だけを雇う会社では、子は原則として労災保険・雇用保険の労働者になりません。この扱いは配偶者だけを雇う一人会社に労災・雇用保険はないで扱っています。下宿していて同居していない子の場合は、労災保険の対象になり得ます。
判定ツールとの関係
判定ツールは、扶養親族の人数を入れると、その人数を扶養控除として計算します。一方で子への給与は計算に入っていません。子に仕事を頼む予定があるなら、その給与は個人事業主のままでは税が変わらず、法人化すると上の表の分だけ法人化側が有利に動く、と読み替える必要があります。
ただし、子が卒業すれば給与は続きません。法人化の損得を子の在学中の数年分だけで判断すると、卒業後の年を読み違えます。まずは子への給与を入れない条件で、法人化の差額を確かめてください。そのうえで、在学中の数年は上の表の分が上乗せされる、と考えるのが安全です。
まとめ
- 個人事業主が生計を一にする子に払う給与は、専従者給与を除いて経費にならず、子の所得にもならない(所得税法56条)
- 昼間の学生である期間は「専ら従事」に数えないので、大学生の子は青色事業専従者になれない(所得税法施行令165条2項)
- 法人が払う給与は、仕事に見合う額なら損金。不相当に高額な部分だけが損金不算入(法人税法36条)
- 子の給与が119万円以下なら子の税は0円。19〜22歳の子を親の健康保険の扶養に残せるのは150万円未満まで
- 事業所得800万円で子に年100万円払うと、家族全体の手取りは年37.1万円増える(概算)。個人事業主なら増減0円
よくある質問
下宿している大学生の子に給与を払う場合も、個人事業では経費になりませんか
仕送りをして学費や生活費を負担しているなど、親と生計を一にしていると判断されれば、所得税法56条により経費になりません。生計を一にしているかどうかは同居しているかではなく、生活費の出どころで判断されます。
子に払った給与は源泉徴収が必要ですか
法人が払う給与なので、給与所得の源泉徴収の対象です。子から扶養控除等申告書を受け取っていれば月額表の甲欄で計算し、年末調整で1年分を精算します。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。