税金の基礎

個人事業税は不動産所得と合算。法人化で290万円が家賃側に戻る

結論

個人事業税は、事業所得と不動産所得(不動産貸付業に当たるもの)を合算し、事業主控除290万円を1回だけ引いて計算します(地方税法72条の49の12第5項・72条の49の14)。本業800万円・不動産300万円なら(1,100万−290万)×5%で40.5万円です。法人化して本業が会社へ移ると、個人に残る不動産所得300万円から290万円を引けるので0.5万円になり、年40.0万円減ります。このうち25.5万円は本業の分で、残る14.5万円は事業主控除が家賃側に戻った効果です。

  • 法人化前、不動産所得は本業が使い切った事業主控除の外側で課税される。本業800万円の人は、不動産所得300万円に15.0万円の個人事業税を払っている
  • 法人化で家賃側に戻る効果は、不動産所得が290万円以上なら上限の14.5万円(290万円×5%)。本業がいくら大きくても変わらない
  • 本業が法定業種外(個人事業税がかからない業種)なら、もともと不動産所得だけに290万円を使っているので、法人化しても不動産側の税額は変わらない

本業とは別にアパートや駐車場を持っている個人事業主は少なくありません。所得税では事業所得と不動産所得は別の所得区分ですが、個人事業税では2つを1つの「事業の所得」として合算します。そのため法人化すると、本業の個人事業税が消えるだけでなく、家賃にかかる個人事業税まで下がります。

事業所得と不動産所得は合算し、290万円は1回だけ

個人事業税の課税標準は、前年の事業の総収入金額から必要経費を引いた額で、所得税法の不動産所得と事業所得の計算の例によって算定します(地方税法72条の49の12第1項)。同条5項は、不動産所得を生ずべき事業と事業所得を生ずべき事業を併せて行っている場合は、それぞれの所得または損失を合算し、または通算して算定すると定めています。

事業主控除は、事業を行う個人について290万円です(72条の49の14第1項)。個人1人につき1回なので、本業と不動産貸付業を両方していても290万円を2回引くことはできません。

東京都主税局の税額の算式も、「事業所得又は(及び)不動産所得」に専従者給与の調整と青色申告特別控除の足し戻しをしたうえで、各種控除(事業主控除など)を引いて税率を掛ける形です。

項目内容
所得事業所得+不動産所得(青色申告特別控除の前)
事業主控除290万円を1回(事業を行った期間が1年未満なら月割)
税率不動産貸付業・駐車場業は第1種事業で5%、本業は業種による(3〜5%)

ただし合算されるのは、不動産の貸付けが不動産貸付業・駐車場業に当たる場合だけです。東京都の認定基準では、一戸建以外の住宅なら10室以上、住宅用の土地なら契約10件以上または2,000㎡以上などで不動産貸付業と認定されます。基準に届かない貸付けの不動産所得は、そもそも個人事業税の対象外で、合算もされません。室数の数え方はアパートの個人事業税は「10室」の数え方で決まるで扱っています。

本業800万円・不動産所得300万円で40.5万円

本業の事業所得を800万円に固定して、不動産所得の額を変えた結果です。本業・不動産貸付業とも税率5%としました。

不動産所得法人化前(合算)うち不動産所得が増やした分法人化後(不動産所得だけ)法人化で減る個人事業税
100.0万円30.5万円5.0万円0.0万円30.5万円
200.0万円35.5万円10.0万円0.0万円35.5万円
300.0万円40.5万円15.0万円0.5万円40.0万円
500.0万円50.5万円25.0万円10.5万円40.0万円
800.0万円65.5万円40.0万円25.5万円40.0万円

※ 本業800万円だけなら25.5万円。課税標準は1,000円未満、税額は100円未満切捨て ※ 計算は scripts/kojin-jigyozei-fudosan-gassan.mjs(src/lib/individual.js の calcIndividualBusinessTax)による

法人化前は、本業の800万円がすでに290万円の控除を使い切っています。そのため不動産所得には控除が1円も残らず、不動産所得の全額に5%がかかります。不動産所得300万円の人なら、家賃にかかる個人事業税は15.0万円です。

法人化して本業が会社へ移ると、個人に残る事業は不動産貸付業だけになります。290万円の控除は不動産所得に使えるので、300万円なら(300万−290万)×5%で0.5万円です。法人化で減る40.0万円は、本業の分25.5万円と、控除が家賃側に戻った分14.5万円の合計です。

不動産所得が290万円以上あれば、戻る効果は常に**14.5万円(290万円×5%)**で頭打ちになります。不動産所得が290万円未満なら、法人化後の不動産側の個人事業税は0円です。

本業の大きさと業種で、効果は変わる

不動産所得を300万円に固定して、本業の所得と業種を変えた結果です。

本業法人化前法人化後(不動産所得だけ)不動産所得にかかっていた分(法人化前)
事業所得150万円(5%の業種)8.0万円0.5万円8.0万円
事業所得500万円(5%の業種)25.5万円0.5万円15.0万円
事業所得800万円(5%の業種)40.5万円0.5万円15.0万円
事業所得1,200万円(5%の業種)60.5万円0.5万円15.0万円
事業所得800万円(法定業種外)0.5万円0.5万円0.5万円

※ 計算は scripts/kojin-jigyozei-fudosan-gassan.mjs による

本業が290万円を超えていれば、本業がいくら大きくても、不動産所得にかかる分は15.0万円で同じです。本業が290万円未満なら、控除の残りが不動産所得に回るので、法人化前でも不動産側の負担は小さくなります。

本業が法定業種外の場合は話が変わります。個人事業税は法定の70業種にだけかかり、それ以外の事業の所得は「非課税所得」として外します。この場合、もともと不動産所得だけに290万円を使っているので、法人化しても不動産側の税額は変わりません。課税・非課税の事業を兼ねる場合の所得の分け方は課税と非課税の仕事を兼ねる個人事業税で扱っています。

本業が赤字の年は、家賃の所得と通算される

合算は、所得どうしだけでなく損失とも行われます(72条の49の12第5項の「通算」)。

本業不動産所得合算後の所得個人事業税
−200.0万円500.0万円300.0万円0.5万円
−100.0万円500.0万円400.0万円5.5万円
0.0万円500.0万円500.0万円10.5万円

※ 計算は scripts/kojin-jigyozei-fudosan-gassan.mjs による

個人のままなら、本業の赤字が家賃の所得を減らします。法人化すると本業の赤字は会社の欠損になり、個人の不動産所得とは通算できません。本業の利益が年によって大きく振れる人は、この点も比較に入れておく必要があります。

判定ツールの結果に足す額

当サイトの判定ツールは、本業の事業所得だけを入力に取り、不動産所得は計算に入れていません。本業が売上1,000万円・経費200万円(事業所得800万円、東京23区・40〜59歳・独身)の場合、ツールの結果は次のとおりです。

  • 個人のままの個人事業税25.5万円、最適な役員報酬は月45万円、法人化の実質差額は年−18.9万円(3年目以降の定常状態)
  • 不動産貸付業に当たる不動産所得が290万円以上あれば、個人事業税だけで、この差額に年14.5万円が上乗せされる

不動産所得は、所得税・住民税や国民健康保険料にも効きます。個人事業主のままなら国保料は事業所得と不動産所得の合計にかかりますが、法人化した社長の健康保険料は役員報酬で決まります。不動産所得と社長の役員報酬の組み合わせ全体での比較は、個別の条件で変わるので、ツールの結果に14.5万円を足したうえで、専門家と確認する価値があります。業種ごとの税率や計算の全体像は個人事業税の業種と計算方法で整理しています。

法人化した後に会社へ貸す場合との違い

この記事は、法人化する前から第三者に貸している不動産の話です。法人化した後、社長が自宅の一室や車庫を自分の会社に貸して家賃を受け取る場合も、不動産貸付業の基準に当たれば同じく個人事業税の対象になります。その判定と税額は社長が自分の会社に貸す物件に個人事業税はかかる?で扱っています。会社に貸す分と第三者に貸す分は合わせて室数・所得を数えるので、法人化後に会社へ貸す物件が増えると、戻ってきた290万円の枠を再び使うことになります。

まとめ

  • 個人事業税は、事業所得と不動産貸付業の不動産所得を合算・通算し、事業主控除290万円を1回だけ引く(地方税法72条の49の12第5項・72条の49の14)
  • 本業800万円・不動産所得300万円なら40.5万円。法人化で本業が会社へ移ると0.5万円になり、年40.0万円減る
  • そのうち14.5万円は、事業主控除が家賃側に戻った効果。不動産所得が290万円以上なら14.5万円で頭打ち
  • 本業が法定業種外なら、もともと不動産所得だけに控除を使っているので変化はない。本業の赤字と家賃の通算は法人化でできなくなる
  • 判定ツールは不動産所得を入れていないので、該当する人はツールの差額に個人事業税の14.5万円を足して読む

よくある質問

アパートが5室しかなくても、個人事業税で事業所得と合算されますか。

合算されるのは、不動産貸付業に当たる不動産所得だけです。東京都の基準では一戸建以外の住宅は10室以上などで不動産貸付業と認定されるので、5室だけなら不動産所得は個人事業税の対象外で、合算もされません。

本業が赤字の年は、不動産所得の個人事業税も減りますか。

減ります。地方税法72条の49の12第5項は、不動産所得と事業所得の所得または損失を合算・通算すると定めています。本業が200万円の赤字、不動産所得500万円なら、合算後の所得は300万円で、個人事業税は0.5万円です。法人化すると本業の赤字は会社のものになり、この通算はできなくなります。

法人成りした年の事業主控除は月割になりますか。

事業主控除は、事業を行った期間が1年に満たない場合に月割になります(地方税法72条の49の14第2項)。不動産貸付業を1年を通じて続けていれば個人の事業は続いているため、月割の対象になるかどうかは住所地の都道府県税事務所に確認してください。

出典

本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。