税金の基礎
課税と非課税の仕事を兼ねる個人事業税。按分の方法で税額は38万円から2万円まで動く
結論
課税される事業と課税されない事業を兼ねている場合、確定申告書第二表の「事業税に関する事項」の「非課税所得など」欄に、番号(法定業種に当たらない事業は10)と、その所得金額(青色申告特別控除前)を書きます。経理を分けていなければ、東京都は売上総利益の割合、それも出せなければ売上金額の割合で所得を按分します。ライティング800万円・デザイン700万円の設例では、按分しなければ税額38万円、売上総利益で按分すれば3万円でした。
- 国税庁の手引きは、非課税所得の番号を、畜産業1〜装蹄師業5(税率の違う業種)、林業6、鉱物掘採業7、社会保険診療報酬8、外国の事業9、法定業種に当たらない事業10と定めている
- 東京都の事務提要は、課税事業と非課税事業の経理区分が明確でない場合、売上総利益(差益)で按分し、算定できなければ売上金額(収入金額)で按分するとしている
- 事業主控除290万円は按分後の課税部分から引くので、課税部分が小さくなるほど税額は割合以上に下がる
このテーマの全体像 個人事業税の業種と計算方法
フリーランスの仕事は一つの業種に収まらないことが多くあります。記事を書きながらデザインも受ける、書籍のさし絵と広告のイラストを両方描く、教室の専属講師をしながら自主講座も開く。このうち一部だけが個人事業税の法定業種に当たる場合、課税されるのはその部分の所得だけです。ただ、それを都道府県に伝えるには、確定申告書に書いておく必要があります。
確定申告書第二表の「非課税所得など」に書く
所得税の確定申告書を出すと、個人事業税の申告もしたものとみなされます(地方税法72条の55の2)。都道府県は、確定申告書の第二表にある「事業税に関する事項」の欄を見て課税します。国税庁の手引き(令和7年分)は、「非課税所得など」欄に、次の番号とその所得金額(所得税の青色申告特別控除前の金額)を書くとしています。
| 番号 | 内容 | 書く場面 |
|---|---|---|
| 1 | 畜産業から生ずる所得(農業に付随して行うものを除く) | 税率の違う事業を兼業している |
| 2 | 水産業から生ずる所得(小規模な水産動植物の採捕を除く) | 同上 |
| 3 | 薪炭製造業から生ずる所得 | 同上 |
| 4 | あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業から生ずる所得 | 同上(税率3%の部分) |
| 5 | 装蹄師業から生ずる所得 | 同上(税率3%の部分) |
| 6 | 林業から生ずる所得 | 非課税所得がある |
| 7 | 鉱物掘採事業から生ずる所得 | 同上 |
| 8 | 社会保険診療報酬等に係る所得 | 同上 |
| 9 | 外国での事業に係る所得 | 同上 |
| 10 | 地方税法72条の2に定める事業に該当しないものから生ずる所得 | 同上(法定業種外の仕事) |
※ 国税庁 確定申告書等作成コーナー「手順6 住民税、事業税に関する事項(申告書第二表)を記入する」(令和7年分)
ライティングやイラストの芸術活動のような法定業種に当たらない仕事の所得は番号10です。1〜5のうち視力障害のある人が行う医業類似事業など、手引きが「除く」としているものや、1〜3を主に自家労力で行うものも10になります。
東京都は、明細書で収入の内訳を聞くこともある
東京都の審査会の答申(令和6年2月13日)には、東京都の「個人事業税収入等明細書」で、イラストレーターが「さし絵・イラストで事業税の対象外となる収入」と「事業税の課税となる収入」を分けて提出していた経緯が出てきます。確定申告書の欄に加えて、都道府県から収入の内訳を尋ねられることがあるということです。この事案では、求人誌のイラストを課税外として出し直した分が認められず、課税が維持されました(イラストレーターの個人事業税)。
経理を分けていなければ、売上総利益で按分する
非課税の仕事の所得をいくらとするかは、経費の分け方で変わります。同じ答申が引用している東京都の「個人事業税課税事務提要」は、按分の方法を次のように定めています。
- 課税事業と非課税事業等の経理区分が明確でない場合は、それぞれの事業の**売上総利益(差益)**の割合で総所得金額を按分する
- 売上総利益が算定できないものは、それぞれの**売上金額(収入金額)**の割合で按分する
※ 東京都 個人事業税課税事務提要 第4章・第5節・第1・3・(2)(令和6年2月13日答申の引用による)
経理を事業ごとに分けていれば、その区分に従います。分けていない場合は、外注費や仕入など売上に直接かかる費用を差し引いた売上総利益で割り、それも出せなければ売上の割合で割る、という順番です。
設例:按分の方法で税額が19倍違う
ライティング(法定業種外)とWebデザイン(デザイン業・5%)を兼ねるフリーランスで計算しました。
- ライティング収入800万円(外注なし)
- デザイン収入700万円(うち外注費300万円)
- 共通経費(家賃・通信費・機材など)150万円
- 事業所得(青色申告特別控除の前)1,050万円
| 按分の方法 | 課税される所得 | 事業主控除後 | 個人事業税(5%) |
|---|---|---|---|
| 全額をデザイン業として申告(按分しない) | 1,050万円 | 760万円 | 38万円 |
| 売上総利益で按分(デザイン400万÷全体1,200万) | 350万円 | 60万円 | 3万円 |
| 売上金額で按分(デザイン700万÷全体1,500万) | 490万円 | 200万円 | 10万円 |
| 区分経理の一例(外注費はデザインに直接、共通経費は売上金額で配賦) | 330万円 | 40万円 | 2万円 |
※ 税率5%(第3種事業 デザイン業)・事業主控除290万円/2026年(令和8年)分基準。文筆業は法定業種外として課税しない前提。scripts/kazei-hikazei-anbun-kojin-jigyozei.mjs で計算
同じ事業所得1,050万円でも、非課税所得の欄を書かなければ38万円、売上総利益で按分すれば3万円です。売上金額で按分すると10万円で、売上総利益より3倍以上高くなります。デザインの側に外注費が集中しているため、売上で割るとデザインの取り分が実態より大きくなるからです。
税額の差がここまで開くのは、事業主控除290万円が按分後の課税部分から引かれるためです。課税部分が290万円に近づくほど、税額は割合以上に小さくなります。外注費や仕入がどちらの仕事にかかったものか、日ごろから分けて記録しておくだけで、売上総利益での按分、さらに区分経理が使えるようになります。
法人化すると、按分はいらなくなるが
法人事業税には法定業種の区別がないので、法人化すれば課税・非課税の按分は必要なくなります。その代わり、課税されなかった仕事の所得も法人事業税の対象です。
法人化の損益分岐点は、全額が5%の業種なら事業所得1,266万円、全額が課税されない業種なら2,198万円です(40歳未満・独身・東京23区・経費200万円)。兼業している人の分岐点はこの間に入り、課税外の仕事の割合が大きいほど後ろにずれます。業種区分ごとの比較はライター・エンジニア・デザイナーで法人化の分岐点は932万円違う、法定業種の線引きは個人事業税がかからない業種がある。70業種の線引きと計算方法にまとめています。
講師業の専属教室の報酬のように、契約の形で課税外になる収入の扱いは講師・インストラクターの個人事業税で整理しています。
まとめ
- 課税・非課税の仕事を兼ねるときは、確定申告書第二表の「非課税所得など」に番号と所得金額(青色申告特別控除前)を書く。法定業種に当たらない仕事は番号10
- 税率3%の医業類似事業は番号4で、その部分だけ3%になる
- 東京都は、経理区分が明確でなければ売上総利益、出せなければ売上金額の割合で所得を按分する
- 設例では、按分しなければ38万円、売上総利益なら3万円、売上金額なら10万円。費用をどちらの仕事に使ったか記録しておく価値は大きい
- 法人化すれば按分は不要になるが、課税外の仕事も法人事業税の対象になる
兼業しているフリーランスほど、申告書の書き方ひとつで毎年の税額が変わります。自分の仕事の内訳と売上・経費で確かめてください。
よくある質問
非課税所得の欄に書かないと、どうなりますか?
所得税の確定申告書を出すと、個人事業税の申告もしたものとみなされます(地方税法72条の55の2)。非課税所得の欄が空欄なら、都道府県は事業所得の全額を課税事業の所得として扱う可能性があります。兼業していることは、申告書の上で示しておく必要があります。
税率5%の事業と3%の事業を兼ねている場合はどう書きますか?
国税庁の手引きは、あん摩・マッサージ・はり・きゅう・柔道整復などの医業類似事業から生じる所得を番号4として、その所得金額を書くとしています。都道府県は、その部分に3%、残りに5%を当てて計算します。
法人化すれば、按分の手間はなくなりますか?
法人事業税には法定業種の区別がないので、課税・非課税の按分は必要なくなります。ただし、課税されない仕事の所得も法人事業税の対象になるため、非課税の割合が大きい人ほど、法人化で事業税が増える側に回ります。
出典
本記事は2026年(令和8年)分 基準の制度にもとづく一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。 制度は毎年改正されます。実際の判断は最新の一次情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。 内容に誤りを見つけられた場合は お問い合わせ よりご指摘ください。